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スピルバーグと映画大好き人間、この指とまれ!

カフェには、映画が抜群に良く似合います。
大好きなスピルバーグとカフェ、アメリカ映画中心の映画エッセイ、
身辺雑記。

「マイノリティ・リポート」

2008-03-05 06:04:48 | わたしのスピルバーグ監督作品感想集!

「マイノリティ・リポート」(2002)

「ブレードランナー」の原作者であるフィリップ・k・ディックの短編小説が原作のSFサスペンス。それを脚本化したのは、スコット・フランクとジョン・コーエン。特にスコット・フランクは、トム・クルーズとジョンのキャラクター作りから始めた。撮影監督のヤヌス・カミンスキーは、黒味を増した影、ざらついた空といった要素を可能にする照明を考えた。特殊効果は、スコット・ファーラル、マイケル・ランティエリが担当し、スピルバーグの作品の中では、「未知との遭遇」以来のショット数481となった。

 未来に起こりうる犯罪を事前に予知し未然に犯人を捕まえる近未来システムの刑事の指揮官が、逆に身の覚えの無い未来の犯罪を犯すと予告され逃亡を強いられる。

 主人公の刑事である父ジョンと息子ショーンの物語でもある。ジョンの不注意で愛する息子ショーンをプールに連れて遊びに行ったときにちょっと目を離したすきに見失い行方不明になる。誘拐されたのである。

 息子への愛が感じられ、子供を失い、妻からも去られ過去を引きずってドラッグに溺れる家族を失った男の話で、そのさびしさをはねかえそうと息子を失った事件をきっかけにジョンは、多くの人が同じ体験をしないように仕事に精を出すが、映画の冒頭で刑事としての1日の仕事を終えて帰宅したジョンが浜辺で撮った在りし日のショーンの可愛らしい姿、若き日の妻の姿が写っているホロ・ファイルの映像を見て息子、妻のいない孤独な生活を紛らわしている。

 そんな日々の暮らしの中で、刑事である自分が未来に殺人を犯すことを予知され逃げるはめになる。ここから始まる逃亡劇の中で見せるスピルバーグのアクション、恐怖演出が見ごたえがある。

 アパートが立ち並ぶ狭い路地の間で繰り広げられるジョンとジェット・パックを背負った部下たちとの派手な空中戦は見ごたえ充分である。部下達が空からジョンを捕まえようとする構図、カメラアングルは見下ろし、あおり。武器として棍棒のようなものを彼らは持ちこれでジョンを叩こうとする。これで叩かれると意識が朦朧とする。ジョンが、ジェット・パックの部下たちに上昇、下降、地面に引きずられる。アパートの梯子に登るジョン。下から追っ手が迫る。すると、その梯子が外れジョンの武器となる。その後、一軒の家に入り込み格闘が始まる。下の家に住んでいるテーブルをはじめ家が揺れる。家の中にあるガスコンロの火を点けジェット・パックの警官の1人にジェット・パックの点火している部分に引火させ大火災を発生させるジョン。天井を突き抜ける。やられる警官。 

 未来交通システムである磁気浮力を利用したマグニレブシステムには、タクシーとエレベーターを合体した乗り物が登場するが、その磁気ハイウェイカーにジョンが殺人犯と予知され当局から追われる最初のシーンで飛び移るシーン。 

 ジョンとウィットワの対決。ウィットワ率いる捜査官たちとの車の自動組み立て工場でのアクション。ベルトコンベアーに落ち成形ボディに閉じ込められ絶対絶命と思いきや出来上がった車を運転しまんまと逃げるジョン。

 ジョンが、犯罪予防局に潜入するため眼球交換手術をする。老朽化したアパートに隠れているジョン。そこに犯罪予防局の網膜ID探知ロボットのスパイダーが襲う。このシーンは、俯瞰撮影を多用してアパートの各部屋を上から映しスパイダーがはいずりまわる様子と住人たちの生活の様子が交互に見せ恐怖とコミカルな演出をしているところはヒッチコックを思わせる。 この演出を可能にしたのは、3Dのコンピュータ・ストーリーボードであるアンマティクスを採用したことにある。スピルバーグが、コンピュータのエンジニアらのソフトを使い実際に撮影を可能にするためにクレーンカメラや照明の位置、俳優の動きをコンピュータ上で考えた。

 ジョンが予知能力を持つプリコグの一人であるアガサを外に連れ出すシーンで、デパートでギャップの服を買い買い物客が何を考え感じているかを予知するアガサには思わず笑ってしまう。そして、雨が激しく降りしきる中大勢の人々が傘をさしている。その中をその傘を利用して追っ手から逃げるシーンもヒッチコックタッチ。

 ジョンは、アガサによりリオ・クロウという男を自分が殺すことになることがわかる。その男がいるマンションにアガサを抱えて部屋に入る。実は、この人物こそその昔ジョンの息子を殺した犯人であったのだ。そのことが判明しジョンは予知通りにその男を殺す。そして、犯罪収容所送りになる。しかし、ここから大どんでん返しが始まる。詳細は見る方のために触れないでおこう。

 トム・クルーズの演技が素晴らしい。仕事では、指揮官として同じ男から見ても惚れ惚れするような仕事ぶりでかっこよくてきぱきと犯人を捕まえ、誰からも尊敬されているが、仕事を離れると家族のいない寂しい男、父親を熱演。また、特に体を張ったアクション、そして、自分の目がIDとなって行き先までわかってしまう社会システムのため追っ手から逃げようとするあまり眼の手術をして義眼となる手術シーンとその後、白い眼帯を巻き痛々しく気味悪く逃げるシーンは狂気迫るものがあった。

 スピルバーグが監督した作品の中で最も複雑な内容で、繰り返し見ないとわからない作品だが、同時にいろいろな要素を含んでいるので見るたびに発見があり面白い。「この映画は、こういうスートーリーだったのか」と気つ゛かせてくれる異色な作品である。 

 

 「スピルバーグ流ミステリー映画」。フィルム・ルノワール的、前衛的なタッチを中心にその背後に彼が得意とするアクション、恐怖、そして、家族の演出を隠し味にしてブレンドしている意欲作。



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