記日きつい思れぐま気 from バンクーバー

2012年4月から妻の海外赴任に伴い主夫業と育児に励む30代男性の日常。バンクーバー関係ないことも多々あります。

感想文「孟嘗君」

2013-02-09 08:18:37 | 本の感想
面白かった!Amazonさんからオススメされて、評価も高いので1巻だけ買ってイエローナイフ滞在中に読み始めたらはまりました。

孟嘗君は戦国四君子として各国の宰相(総理大臣)を務め古代中国で活躍した人物です。紀元前350年頃の生まれ。太公望が活躍した時代から600年以上後、秦の始皇帝が中国統一を果たす100年ちょっと前のお話。太公望が助けて周が王朝を立ててからだいぶ経ち、周王朝には求心力が亡くなり群雄割拠する春秋・戦国時代と呼ばれる時代に移ります。

この物語は孟嘗君・田文が生まれるところから始まります。「5月5日に生まれた子は背が戸の高さまで伸びると親を殺す」といういわれがあることから、田文の父、田嬰は妾の青蘭に子を殺すように言いつけます。5月5日。僕の誕生日でもありまして、世が世なら僕も殺されていたかもしれなかったんですね、くわばらくわばら。さて、そんな無茶な言いつけに背き、青蘭は僕延という側用人に田文を託し、そこから田文の波瀾万丈の旅が始まります。

その後養父となった風洪という人が前半の主人公になるんですが、この風洪さんがとにかくかっこいい。剣の使い手にして洞察力に優れ、天運に恵まれていて彼が運んだ荷物は盗賊に襲われないと商人から重宝され、出入りする家は財が倍に膨らむ福の神と称されます。女性にはモテモテで会う人みんな惚れさせ、さらに勇気もあり捕われた人を助けるため敵の屋敷に単身乗り込み見事に救出。文句なしなスーパーマンなわけですが嫌らしくなく、ホントにとにかくかっこいいんです。こんな男に僕もなりたい!

そして風洪、田文の周りに現れ物語を彩る天才達もまたかっこいい。始皇帝が中国統一を果たす礎を作る商鞅、孫氏の兵法で有名な孫びん、そのライバル龐涓、田文の実父田嬰など多士済々。さらに田文に付き従う友人や食客達がまた曲者揃い。有名な鶏鳴狗盗※のエピソードでは声真似の名人と盗みの名人しか出てきませんが、他にも色々な能力を持った人達が出て来て田文を助けます。そしてこれらの人と人の絡みがすごいです。忘れた頃に再び登場して味方になったり仇となったり、「えっ!ここで出てきちゃうの?!」みたいな感じで話を盛り上げます。まあ、都合が良過ぎるとも言えなくもないですが、そこはそれで、物語ですから楽しまないといけません(笑)

全五巻と決して短いお話ではありませんが、一気に読み切ってしまいました。中国史に興味ない人でも楽しく読める本だと思います。すっごいオススメ。

孟嘗君(1) (講談社文庫)
講談社



※鶏鳴狗盗
秦に来た孟嘗君が秦王に命を狙われたため国外脱出することにするのだが、国外に出るためには許可が必要。王妃にとりなしてもらおうとするが、そのためには狐白裘(狐の皮のコート)を欲しいとねだられる。しかし狐白裘はすでに秦王に捧げてしまったため、盗みの名人が宝物庫に忍び込んで盗み出し、無事にとりなしてもらい許可をもらうことに成功する。王の気が変わらないうちに国外に脱出しようとするが、函谷関の関所についたときは夜、鶏が鳴かないと関所は開かない。そこで今度は声真似の名人が鶏の鳴き真似をし、函谷関の鶏を鳴かせることに成功、無事に関所を通過して脱出するという故事。
転じて、1)にわとりの鳴きまねをして人を欺いたり、犬のようにして物を盗んだりする卑しい者のこと、2)つまらないと思われる芸でも役に立つことがあるという意。

感想文「マックスウェルの悪魔」

2012-10-06 09:58:40 | 本の感想
ものすごく久々に手にしたブルーバックスの本。ブルーバックスには物理・数学系のタイトルが揃っていますが、今まで読んだのは数学系ばかりで物理系は手を出してきませんでした。苦手なんですよね、物理、、、大学の単位もごにょごにょごにょ、、、。ですが、この本は面白かったです。

マックスウェルの悪魔というのは、マックスウェルというおっさんが考えた空想上の生き物です。悪魔といっても別に魂と何かを交換しようぜとかは言ってきません。彼らは混ざったものを分けることができるだけです。容器の中についたてを立て、お酒と水が混ざったものもお湯と冷水が混ざったものも左右にお酒と水・お湯と冷水に分けることができます。お湯と水が混ざった状態のもの、つまりぬるま湯を分ければ容器の左右で温度差が生じ、動力として使えるようになります。つまり「永久機関」の誕生です。

本書では、実際にこのようなことが可能なのか?不可能なのであればその理由は?というのをやさしく丁寧に解説していきます(永久機関についてもやさしく説明されています)。少し専門的な言葉を使えば「エントロピー」についての入門解説書とも言えます。僕の部屋がなかなか片付かず、片付けてもすぐ散らかるのもエントロピーが増大する方向にあるからで、自然の摂理であるわけです。

考えれば当たり前の話だったのですが、エントロピーと確率論が密接に関係していることを理解でき、それだけでも非常に面白かったです。かなり専門的に突っ込んだ話も出てきますが、そのあたりをすっ飛ばして読んでも十分楽しめる内容だと思います。本書は40年前に書かれたものを10年前に組み直したものなので、挿絵とか話のところどころで昭和の匂いを感じられますが、面白さは色褪せません。物理や数学が好きな方はもちろん、苦手だけどちょっと興味があるという方にも読んでいただきたい本です。

新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)
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講談社


マンガ版も出てるみたいですね。
マンガで読む マックスウェルの悪魔 (ブルーバックス)
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講談社

感想文「銃・病原菌・鉄」

2012-10-03 13:41:11 | 本の感想
ピュリッツアー賞まで受賞してだいぶ前に話題になっていた本で気になってたのですが、ようやく読了。

本書のテーマは「民族の盛衰を左右した要因は何か?」(帯から抜粋)、より詳しく言えば、アボリジニをはじめとする原住民はどうして白人社会に征服されてしまったのか?なぜその逆にアボリジニが征服することがなかったのか?というもので、その要因を探りながら人類の歴史を追っていきます。

戦争はある程度同じ技術を持つもの同士の戦いであり、歴史の本にもそういった戦いが描かれています。ガリア戦記でも史記でも坂の上の雲でも、多少の差はあれ、厳然たる技術力の差はそこにはありませんでした。しかし、人類史ではもっと圧倒的な戦力差、「ぬののふく」と「こんぼう」しか装備していない、まだ最初の村も出てない相手に「てつのよろい」「てつのつるぎ」を装備してパーティに魔法使いも加えて臨む戦い、いうより侵略が展開されていました。結果は火を見るより明らかであり、インカ帝国はあっというまに滅ぼされてしまい、ネイティブアメリカンは端に追いやられ、アフリカの黒人は奴隷に駆り出されてしまったのです。

ではなぜその逆が起こらなかったのか。本書のタイトル「銃・病原菌・鉄」はその答えを直接的に表現しています。スペイン人はこれらを持ち、インカ帝国は持っていなかったためスペインが勝ちインカは負けました。中でも特にペストや天然痘などの病原菌は、持ち込まれた先の免疫力を持たない種族を凄まじい勢いで死に追いやっていきました。彼らは銃火器で殺されるより遥かに多くの人数を伝染病によって失ったのです。

ではなぜこれらを持つ物と持たざる物の差が生まれてしまったのか。なぜヨーロッパ人は銃を発明しペストに対する免疫力を持ち得たのか。それは人種の優劣によるものなのか。という問いが生まれてきます。そして著者は地学や生物学、歴史など様々な学問を総動員してその原因を探って行きます。

結果、「それぞれの人種がはじめにどこに住んでいたか」ということに答えは集約されます。たったそれだけです。

もう少し詳しく見ていきますと、はじめに生活していた地域にどんな植物が生育していたか、どんな動物が生息していたか、ということがまず最初の発展に影響します。栽培を始めるようになるまで、人類はみな狩猟採集民でした。それがあるきっかけで栽培(に似た行為)が始まります。狩猟採集と栽培とで労力に対する獲得可能カロリーを比較すると圧倒的に栽培の方が秀でているため、栽培を始めることができた種族は道具の開発など他のことに力を割く余力が生まれました。また、家畜を飼うことで安定したタンパク源と労働力を手にすることができたのです。ユーラシア大陸はその点とても恵まれていました。特にチグリス・ユーフラテス川沿岸・メソポタミア文明が栄えた肥沃三日月地帯と呼ばれる地域(←世界地理で習ったのを思い出します!)は顕著でした。

さらにここに大陸の形が影響してきます。南北に伸びるアフリカ大陸や南北アメリカ大陸では農作物を他の地域からもらって育てようにも気候の違いから育たないものが多くありましたが、東西に伸びるユーラシア大陸ではそのような障害も少なく、結果として周りの地域への伝播も速かったのです。栽培地域が広がればより良い品種が生まれ、人口が増え、新しい技術が芽生える可能性も高まります。そして生活スタイルも総じて似ているためお互いの技術の伝播スピードも高くなります。こうして、ユーラシア大陸では技術が指数関数的に発展していったのに対し、その他の大陸ではなかなか発展していかなかったのです。

決してヨーロッパ人が優秀で、アフリカ人やアボリジニ、ネイティブアメリカンが劣っていたという人種の問題ではなく、たまたまヨーロッパ人がいいところに住んでいたというだけなのです。もし数千年前に戻って住んでいる場所を交換すれば、恐らく立場は逆転するでしょう(もちろん、そのときも征服するのはヨーロッパに住んでいる人たちになることが予想されるわけですが)。


そして、僕がここのところずっと抱いていた疑問、「なぜ中国は落ちぶれたか」ということにも本文では触れられています。ご存知のとおり、かつて中国は世界最高レベルの技術力と軍事力を擁していました。それがいつ、なぜ欧米諸国や日本に大きく遅れをとり、違法コピーがはびこる国になってしまったのか。

この本の著者は、中国は(一時的に国家が分裂した時期があるにせよ)ほとんどの期間を1人の君主が統治する1つの国家であったことに原因を求めています。コロンブスが大西洋を横断してアメリカ大陸を発見したことは有名ですが、彼はそのためのスポンサーを探して4人の君主を渡り歩いています。最初の3人には「いや、無理だから」と断られているんですね。当時のヨーロッパは数百の国が乱立していたからこのようなことが可能だったのですが、中国ではそのときの皇帝が「ダメ」と言ったらもうお願いしに行くところはありません。愚昧な皇帝が技術を停滞させ、時には退化すらさせてしまい、それでも他国からの侵略がなかったことが中国の不幸でした。そしてこのような事態を招いたのはやはり地形に起因するのですがもうこの辺でやめておきます(笑)


感想文というよりはまとめになり、しかもとても長くなってしまいましたが、本もとても長いです。上に書いた内容について、様々な事象から詳しく丁寧に考察・解説しています。この手の内容が好きな方にはとても面白い本ですので興味あればご一読を。


文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
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草思社

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
クリエーター情報なし
草思社

感想文『社員をサーフィンに行かせよう』

2012-07-30 11:12:49 | 本の感想
サーフィン。僕が大学生の頃は折からのサーフィンブームでして、陸(おか)サーファーと呼ばれるサーフィンをしないけどサーファーっぽいファッションをする人たちまでおりました。そこへきてへそ曲がりな僕としましてはあんなチャラいスポーツはやってなるものかと当時は毛嫌いしておりまして、別に硬派でもないのに何であんなに頑なに否定していたのかと今となっては反省する次第です。
最近になってやりたいなあなんて思うのですが、今度はなんだか難しそうだとか下手くそだと周りに迷惑をかけそうだとか冬場は寒そうだとかまた自分の中で勝手に障壁を作ってしまっておりまして、いかんなと。そんなこと言ってたら一生サーフィンやらないなと。そんなわけでサーフィンを始めるきっかけを探しているところだったりします。きっかけとかなんとかグダグダ言ってないでとりあえずやりゃあいいんですけどね。

で、まあそんな話とは全く関係ないのが本書です。著者はアウトドアメーカーで有名なパタゴニアの創設者でありオーナーであるイヴァン・シュイナード。タイトルにある「社員をサーフィンに行かせよう」は内容の極一部で、主にパタゴニアの歴史とその理念の紹介に紙幅を割かれています。無論、「サーフィンに…」は重要な理念の一つであり、まったく関係ないわけではありません。その狙いは、いい波が来たときは仕事中であろうといつでもサーフィンに行っても良いかわりに、いつでも行けるような仕事をしよう、というもの。また、社員がサーフィンに精通することで製品開発にも深く携われるようになることも狙いとしているそうです。サーフィンをしない社員も、趣味がロッククライミングだったりスノーボードだったりで天候によって突発的に出かけることを是とし、そして趣味以外でも家族の病気やお祝い事で会社を休むことも奨励しているそうです。他にも会社にオーガニック野菜のカフェテリアや託児施設を他社に先駆けて設けたりと社員を大切にしている社風が見て取れます。

製品開発においては、無駄を省き機能性を高め、使いやすいものを作ることに注力しています。個人的になるほどと思ったのは、「最高の製品を作る」という理念において、高級な布地を手縫いで仕上げたシャツは洗濯の手間が大変であり、そんなものは最高の製品ではない、使用するにあたり顧客の手を煩わせるというのはよろしくない、という考え方です。こういう製品へのこだわりはジョブズに通じるものがあり、いままでパタゴニアの製品を使ったことはありませんがちょっと使ってみたいなと思わされました。

また、前述の福利厚生や製品開発に関する面よりも強くその必要性を訴えているのが、企業を100年先にも存続させるために何をするべきか、ということにあり、そのためにアウトドアメーカーとして環境保護を非常に強く推進しています。自然が破壊されればアウトドアメーカーは存続できないという考えは、当たり前ではありますが果たして他の企業がどこまで真剣に考えているのかと考えさせられます。
具体的には、パタゴニアでは環境に優しい素材や染料を使用しています。また、売上げの1%を環境保護団体に寄付する「1%クラブ」を創設し毎年寄付し続けているそうです。「利益」ではなく「売上げ」の1%ってすごいですよね。曰く、「利益は会計処理の仕方次第でいくらでも変わってしまい、赤字にすれば寄付もしなくてよくなってしまう。それは誠実ではない。」ということです。まあ、シーシェパードやグリーンピースのようなちょっと過激な団体にも寄付しているのはどうかなと思うのですが、それでも考え方としては素晴らしいの一言だと思います。是非とも日本企業も1%クラブに加入して欲しいなと願う次第です。とはいえ、上場会社だと株主から色々言われてしまいなかなか難しいでしょうけどね(そのためにパタゴニアは上場せず一貫してオーナー企業を貫いています)。

とまあ、タイトルから想像するような軽いノリというよりは深く考えさせられる内容の本でした。会社の一つの形としてこういう考え方もあるんだなという点で、読んでみると面白いかもしれません。

社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
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東洋経済新報社

感想文「全然酔ってません」

2012-07-27 10:37:22 | 本の感想
年中お酒を飲み歩いている大竹聡さんのエッセイ。もうタイトルからして酔っぱらっちゃってます。この一言だけで、ベロベロに酔ったおじさんが鼻を真っ赤にして呂律の回らなくなった口で唾を飛ばしながら何事か訴えている様子が目に浮かびます。ああ、めんどくさいことになったなあ、と。

エッセイの内容は徹頭徹尾お酒。どこそこで誰それとお酒を飲んだとか閉店する飲み屋の思い出だとか失敗談だとか、とにかくお酒。ひたすらお酒。時として読んでるだけで酔っぱらいそうな内容なのですが、著者のお酒に対する愛情が文からにじみ出ていてついつい読み進めてしまいます。この方、とにかくお酒が好きなんですね。理由をつけては飲み、理由がないからと飲む。そんな話をひたすら読み続けていると僕までなんだか飲みたくなってしまうわけです。凍らせた焼酎で作るホッピーの美味しそうなことといったら!そんなシャレた(?)ものはバンクーバーにいるとまずもって飲めないわけでして、飲めないと思うと余計飲みたくなるのが人情というものでございます。

それにしてもこの著者、それだけ飲む人だからさぞや酒豪かと思いきや、電車を乗り過ごし(これを著者は「ブラックアウトエクスプレス」と表現している)、タクシーの運ちゃんにからみ、道ばたで吐き、記憶を失い、翌日ひどい二日酔いに悩まされるわけだからそうでもない。そこがまた本書を味わい深いものにしています。ほんともう、どこにでもいそうな等身大の酒飲みなんですね。

僕も最近でこそあまり飲まなくなったものの、学生時代から社会人3年目くらいまではバカみたいに飲み歩いてましたので、タクシーの運ちゃんにからみこそしなかったものの、ブラックアウトエクスプレスに乗ったのも一度や二度ではありません。でもタクシーに乗って帰るお金はなかったので、車を持っている友達を呼び出して迎えに来てもらったり(←最低ですね)、ファミレスで夜を明かしたり、駅の軒先で新聞をひいて寝たりしてしのいでました。ろくでもない経験ではありますが、今となってはあれはあれでいい思い出だなあなんて感慨にひたってしまったりしちゃいます。

そんなわけで、モツ焼きを食べながらホッピーを飲むことを帰国時の課題に加えておきますので、その節はどなたかご同行をお願いする次第です。


ぜんぜん酔ってません 酒呑みおじさんは今日も行く (双葉文庫)
クリエーター情報なし
双葉社

感想文「空飛ぶタイヤ」

2012-05-16 14:27:08 | 本の感想
父に面白いと勧められてバンクーバーへの移動中に読んだ本。すごく面白くて一気読みしてしまいました。著者は「下町ロケット」で直木賞をとった池井戸潤さんで、この「空飛ぶタイヤ」でも直木賞候補となっています。

主人公は赤松徳郎は赤松運送という運送会社の社長。物語は赤松運送の社員が運転するトラックがタイヤ脱落事故を起こし、死傷者を出してしまうところから始まります。トラックメーカーの調査により事故原因は「整備不良」とされ、赤松は警察から容疑者として追求されます。家宅捜索を受け、大口取引先を失い、銀行からは融資を断られと散々な目にあいますが、赤松はこの「整備不良」という原因に納得がいかず、メーカーであるホープ自動車に戦いを挑んでいきます。そして少しずつ、ホープ自動車に巣食う腐った部分が浮き彫りにされていくのですが、赤松運送は資金繰りに苦しみ、、、というお話。

読み始めればすぐに三菱のリコール隠しを題材にした話なのだなと気付き、なんとなく結末は予想できるものの、登場人物の心理描写にグイグイと引き込まれていきました。この物語の主人公は間違いなく赤松徳郎社長なのですが、その赤松と対峙するホープ自動車の沢田や刑事の高幡、ホープ自動車に融資を求められるメインバンクの井崎など、それぞれの立場・視点での考え方や行動が丁寧に描写されているところが物語に厚みを増しています。ホープ自動車の人たちのお役所根性というか消費者をなめきった態度ってのがまた腹立つんですよねー。文中では「財閥だから」という表現でその態度に理由付けをされているんですが、結構多くの大手企業の社員さんにこういう方が見受けられるんじゃないかなあと。東京電力然り、企業ではないけど大阪市役所の職員然り。そういう会社・組織に未来はないよね、と思わせられます。

話はずれますが、こういう「それぞれの立場からの視点」で形成されている物語、結構好きです。実世界でもそうですが、他人の「バカなんじゃないのか」と理解に苦しむ言動にもその人なりの理屈であったり正義であったりがあるんですよね。それが正しいかどうかは別として、そういう背景があることを理解なり推測なりすることが自分の精神衛生上にもよろしいんじゃないかと思ったりする次第。まあ、何も考えていないということもあるわけですが。
このような複数の立場からの視点で語られる物語を「群像劇」と呼び、個人的には北方謙三の水滸伝が群像劇としてものすごく高いレベルで出来上がっていてめちゃくちゃ面白いと思うので、こちらも興味あれば是非。全18巻と異常に長いんですけど、量に圧倒されないで読み始めるとスラスラ読めます。「でも、さすがに18冊はちょっと、、、」という方は、楊家将というのが上下巻であり、これまたよくできた群像劇ですのでオススメです。騙されたと思って読んでみて!

ということで話がずれまくりましたが「空飛ぶタイヤ」、自分の身の回りに置き換えながら読んでも結構面白いと思いました、オススメです。文庫で上下巻てのも手をつけやすくてよろしいですねw

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)
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講談社


水滸伝完結BOX (集英社文庫)
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集英社


楊家将〈上〉 (PHP文庫)
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PHP研究所

感想文「スパイス、爆薬、医薬品」

2012-03-03 20:47:48 | 本の感想
めっちゃくちゃ面白かった。僕の中で今年のNo.1候補。まだ2ヶ月だけど、それくらい面白い。

内容は、スパイスに始まりDDTなどの有機塩素化合物にいたるまで色々な化学物質がどのように世界史に影響を与えたか、という化学と歴史の両方の面から迫るというもの。解説のために化学の構造式が随所に出てきますが、わかりやすく解説してくれているし、わからなくても問題はありません。でもわかった方が面白いと思います、当たり前ですけど。

そしてこの本を面白くしているのは、17つの章立て1つ1つが関連性を持って結びつけられているということ。第1章で扱われるスパイス(胡椒、ナツメグ、クローブ)はその貴重さ故に大航海時代の幕開けを担いました。大西洋を通るという別ルートでインドへ行こうとし、アメリカ大陸を発見したコロンブスの話は有名ですね。しかし大航海は壊血病というビタミン欠乏症による恐ろしい病気を呼び、そしてそれはアスコルビン酸(ビタミンC)の発見へとつながります。ここではバスコ・ダ・ガマやジェームズ・クックが登場します。そこからさらにグルコース(砂糖)、セルロース(綿繊維→サトウキビと綿は奴隷制度の象徴と言ってもいいかもしれません)、ニトロ化合物(爆薬→戦争)、、、と連想ゲームのように化学物質と歴史が複雑に絡まり合いながら紹介されるのです。それらはときに奴隷制度と密接に絡み合い、あるいは戦争、あるいはビジネスとつながりながら進化・発展を遂げていきます。これらをきれいにまとめあげたこの本は、知的好奇心を存分に満足させる珠玉の一冊といえましょう。オススメです。

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質
クリエーター情報なし
中央公論新社

感想文『潜入ルポ 中国の女』

2012-02-17 22:08:21 | 本の感想
何でオススメされて手にとることになったのか忘れてしまったのだけれど、すごく興味をひかれたので読んでみました。


「凄まじい。」


まず出てくるのはそんな一言。いやね、中国って国、なかなかちょっとちょっとな国じゃないですか。臓器売買とか人身売買とかあるよーとか、情報統制すごいよーとか、漠然とした知識としてはもちろんあるんですけどね、取材対象者の息遣いや表情が伝わってくるようなものすごく生々しくリアルな描写に触れると、改めてすごい国なんだなあと思うわけです。日本で普通に生活していたらまず見ることはおろか想像すらすることのない世界があるんだなと実感させられ、息苦しささえ感じさせられます。

この本に出てくる人たちは、エイズ村と呼ばれる、村民の多くがHIVキャリアの村の女性や、都会で楽しく暮らそうと騙されて北京に出てきて売春婦をやる女性、嫁にするために人身売買で買われてきた女性、危険思想の持ち主とされて当局に追われる女性などが次から次へと出てきます。農村では「女性に生まれるくらいなら牛や馬に生まれる方がまし」と言われるくらい虐げられる女性達。そんな彼女達を「たくましく生きています」なんて軽々しく書かず、ただひたすら現実を描写する著者の筆力に圧倒されるのです。

読んで何をするわけでもないし、すごく楽しい本でもないのですが、色々と感じるところがある一冊。色々な方に是非読んでみてほしい本です。すごくオススメ。

潜入ルポ 中国の女
クリエーター情報なし
文藝春秋



しかし、中国がこんな国になったのはやはり共産国家になったからなんでしょうかね。毛沢東さんの手によるものなのかしら。以前いただいてまだ最初しか読んでない「マオ」を読まねばなあと思ったのでした。これも読んだらまた感想を書きたいと思います。

1日10分ずつ片付けても家は一生片付かない

2012-01-12 22:23:38 | 本の感想
いやいや、前言撤回するわけじゃないんですよ、ええ、ええ。

あれは忘れもしない、昨年の12月くらい、僕が新しい片付け法(新しくもなんともないみたいですが)「1日10分片付け」を編み出して鼻息荒くブログに書いてツイッターに報告したら、友人から
「有名な片付けの本によると毎日少しずつやってもダメらしいよ」
と。。。べ、別に何でもかんでも人の言うとおりにしてたってダメなんだから!その人が有名だからって絶対正しいなんて決まってるわけじゃないんだから!と強がってみたものの不安になっていたところへ妹からも追撃。
「あ、それ私も言おうと思ってた」

Wahoooooooooooooooooooooooo!!!!!
そうですかそうですか、どうせ俺は片付け下手ですよ、そんな奴が編み出した片付け法なんて使えるわけないですよ、ちぇっ。と不貞腐れてても仕方ないので、読むことになりました、その「有名な片付けの本」。

ご存知の方も多いかと思いますが、ときめき片付け術で有名なこんまりさんの本です。友人に章立てをメインにさらっと読ませてもらい、ぐぬぬってなり、改めて妹に借りました。むーん、確かにこうやったら片付きそうだわ。。。実際に妹の部屋はすごくきれいに片付いていた。。。正直なところ、「ちょっと極端じゃね?」とか「スピリチュアル(←好きじゃない)入ってね?」と思うところもあるので全部を実践する気はないのですが、なるほどと納得するところも多く。

細かい方法は本を読んでいただくとして(そこが結構面白いというか納得の内容なのだけど)、大枠としては「手にとってみてときめくものは残す、それ以外は捨てる」というもの。妹が興奮気味にその内容を訴えてきたとき、「えー、なにそれーw」と感じたものですが、読んでいくと「なるほどなー」と納得しちまうんですな。たしかに、ときめかないもの(特に洋服)はきっと使わないんですよね。ならばとっとと捨てた方がいいな、と。先にスピリチュアルなのがどうのこうのと言ったのは、「着てない服は捨てられた方がタンスの肥やしにするより喜ぶ」とか「家にお礼を言いましょう、そうすると幸せになります」みたいなところなんですよね。きっとそう思うことで自己暗示をかけることができて幸せになるんでしょうけど、なんとなーく受け付けないんですよねー。まあイヤなことはやらなければいいのでいいんですが。
個人的に一番「へー、なるほどー」と思ったのは、「贈り物は貰った時点でその役割を終えている」というところでした。確かに、好みじゃないものって貰っても使わないから困るんですよねー。貰ったところで役割を終えたと思えば、躊躇なく捨てることができますなw もちろん、気に入って使えるのが一番なんですけどね!(そういう意味では結構我が家は貰い物の活用率が高い気がします。確実に使ってもらえるものをおがたに贈りたい場合は先のエントリー「ウィッシュリスト」をご参照ください!)

ちなみにどうして1日10分片付け法がダメなのかというと、「そんな毎日コツコツやることができるくらいなら最初から散らからない」というごもっとも過ぎる理由でした。ただ、片付けの腰を軽くする方法として序盤はそれでもいいんじゃね?と自分を慰めることにします。

そんなわけで、こんまりさんの片付け本、面白いです。オススメ。
人生がときめく片づけの魔法
サンマーク出版


ちなみにこんまりさんがその片付け法を開眼したきっかけがこの本。
新装・増補版 「捨てる!」技術 (宝島社新書)
宝島社

過去エントリにこの本についても書いてます。
「捨てる技術」を身につけたつもり ←身に付いてなかったw

ベアフットランニングがしてみたい

2011-12-03 21:00:21 | 本の感想
BORN TO RUN という本を読みました。この本、昨年の夏くらいにTwitter界隈で人気を博していた本で、ちょこっと気にはなってたのだけどなんとなく気が向かなくて読んでませんでした。
サブタイトルの「走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族” 」ってのが(内容として間違ってないんだけど)いまいちそそられなかったんだよねー。ろくに調べもせず、「走るために生まれてきた人達」の物語と思ってました。そんな人に興味ないし。

しかし、実際に読んでいただくとわかりますが、この本が言いたいことはウルトラランナー(舗装されてない道を100マイルとか走っちゃう!)と走る民族どっちが勝つかでもなければ「走るために生まれてきた人達」の物語でもなく、「人は走るために生まれた」という、タイトルそのままのものでした。

でもね、僕、走るの嫌いなんですよ。疲れるから。マラソンとかアホなんじゃないかと思ってたんです。僕以外にもそういう人って多いんじゃないかなあと思ってます。ところが最近、自分の周囲にランニングをしてる人があまりに多いのとお腹周りのお肉がなかなかとれないこと、そして昨年この本で紹介されて一部で流行ったベアフットランニングに興味を持ち、じゃあちょっと読んでみるか、と。すると、なんと走りたくなってきちゃったんです。走るの嫌いな僕が。

ベアフットランニングというのは、裸足で走るランニングです。そんなこと街中でやったら足の裏が大変なことになってしまうので、最近は専用のシューズも売っています。いちばん有名なのは本の中にも出てくるビブラムファイブフィンガーズという、見た目がアレなカンジのシューズですが、他にもいろいろ出ている模様。個人的にはVIVO BARFOOT ULTRAというの(のカープレッド)に惹かれています。

そもそもなんでベアフットランニングがしたいのか。どうもベアフットランニングは足の故障が減り、慣れると疲れずに長距離走れるようになるそうなんです。なぜ?詳細は本文に譲りますが、簡単に説明すると「踵で着地しないから」なんです。ナイキのエアマックスをはじめとするハイテクシューズは踵のクッション性能が高く作られていますが、だからこそより強く(叩きつけるように)踵で着地してしまい、結果として膝や足首にダメージを蓄積させてしまいます。裸足(またはそれに近い状態)で走ると、衝撃が最小限になるように指の付け根で着地します。これが良いらしい。
ナイキもナイキフリーという裸足に近い感覚のシューズを出している(つまりそれが良いと気付いている!)ことから、突拍子もない新興宗教的な話ではないと思われます。本の中でもそれは再三語られていて、上にも書いたとおり人間の体っていうのは走ることを目的に作られている、っていうんです。そんなこと言われちゃったら試してみたいじゃないですか!

ということで、ベアフットランニング用シューズが欲しいなー、ベアフットランニングしてみたいなーと思ってる今日この頃。すでに始めてるお友達は感想をきかせてね!



BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”
クリエーター情報なし
日本放送出版協会

沖縄旅行と本

2011-06-11 12:48:41 | 本の感想
旅行が好きです。年に数回は旅行に行くし、もちろん海外も行きます。
だからといって旅上手というものではなく、旅行の手配は100%奥さん任せ。僕は現地を楽しむだけ。
でもせっかく楽しむなら目一杯楽しみたいなあと思っていたところ、この本に出会いました。


サバイバル時代の海外旅行術 (光文社新書)
光文社


この人、沢尻エリカの旦那、という認識しかなかったのだが、なかなかどうして面白い本を書いてます。「サバイバル」とか言われると「ナイフ片手にトカゲを捕まえて…」とかそんなことを連想してしまいますが(僕だけ?)、そんなサバイバルな話はまったくありません。主に書かれているのは、どう旅行を有意義なものにするか、ということです。
いちばん興味深かったのはのっけから出てくる旅行ガイド本に関する話。曰く、日本のガイド本のほとんどは広告である、ということ。「そんなことわかってるよ」と思いながらも旅行に行くときはだいたい「地球の歩き方」だとか「るるぶ」、「まっぷる」等を持っていく自分としては、どうしたものかと思ってしまいます。さらにこれらの本は現地を知ってる人がほとんど絡んでいない、という大きな問題を抱えているのです。現地を知らない人が書いた現地の案内本。冷静に考えてありえないものにお金を出してるわけです(僕はほとんど図書館で借りてますがw)。この本によると、海外のガイド本はテキスト 主体ではあるものの、ちゃんと現地を知ってる人によって記事が書かれていて、もちろん広告なんかほとんどないそうです。では我々はどうしたらいいのか?それは本に書いてありますので、興味がある方は読んでみてくださいw

さて、今度沖縄に行くことにしたのですが、上記の教えを守って、かつ沖縄を楽しもう、ということで、幸いにも沖縄に関して書かれたテキスト 主体の沖縄文化紹介本が結構あったので、それをいくつかピックアップして読んでみました。


沖縄上手な旅ごはん 美ら島に遊び、うま店で食べる (文春文庫PLUS)
文藝春秋


人気ブロガーでもあるさとなおさんの本。食べ物に絞られているものの、読んでいるとどれも食べたくなるものばかり。浅過ぎず、深過ぎず、すごく楽しそうな沖縄の楽しみ方が描かれていて、いますぐにでも長期滞在したくなります。文もライトなカンジでさらさらと読めます。沖縄に行くなら是非とも目を通したい一冊。



裏ワザ!沖縄のすごし方―大満足!の旅ガイド〈3〉 (KAWADE夢文庫)
河出書房新社


文庫サイズのガイド本。少し情報が古いのですが、それでも沖縄の雰囲気、ざっくりとした楽しみ方を知るには十分。写真はもちろん、絵もほとんどありませんがその分情報量がぎっしりです。でもサラリと読めるので沖縄に行く前に読んでおきたいところです。



うりひゃー!沖縄 (知恵の森文庫)
光文社

上の「裏ワザ!沖縄のすごし方」とかぶるところが多く、情報もさらに少し古いのですが挿絵が多く、文字だけはちょっと、という方は読みやすいかも。さらに普通のオススメと一緒に裏番というマニアックなお店や商品の紹介もしていて、これをもとにネットで調べれば結構面白いかもしれません。

どの本も沖縄をリゾートとしてだけではなく、違った楽しみ方を紹介してくれるのでどれか1冊でも読んでおくとグッと楽しく過ごせると思います。


さて、今回の沖縄の個人的メインは海ではなく、水族館だったりします。実は僕は水族館が大好きで、学生の頃はよく1人で行ってボーッとしてたりしてました。最近はあまり行ってませんが、大好きなことには変わりなく、そして世界トップクラスの水族館にやはり一度は足を運ばないとと思っていたので、行くのをものすごく楽しみにしています。
水族館に行くなら水族館についてもっと知らなければいけない。

ということで、この本を紹介。


水族館の通になる―年間3千万人を魅了する楽園の謎 (祥伝社新書)
祥伝社

中村元さんという水族館プロデューサーの本です。水族館に関する情報がふんだんに詰め込まれていて、裏表紙には荒俣先生の賛辞の言葉も述べられているほどの情報量。日本の水族館の数に始まり、ジンベエザメの運び方やスタッフになる方法、エサ代の話などありとあらゆる水族館にまつわる話が詰まっています。水族館が好きなら間違いなく楽しいので、是非読んでみて欲しい本です。


旅行に行くためにガイド本以外でこんだけ色々な本を読んだのは初めてなのですが、たしかにこの方が絶対たくさん楽しめるだろうな、と思います。旅行の予定がある方は是非一度、事前に本を読んで予習してみてください!

本の感想文「人は、なぜ約束の時間に遅れるのか」

2011-03-05 22:08:48 | 本の感想
「人は、なぜ約束の時間に遅れるのか」という本を読みましたよ。内容はこの手のタイトルの本にありがちな、タイトルの問題を解決にする手法について説明する本です。
本の中で、色々な行動の理由を探るために行動心理学を用いています。ある行動を起こすのには理由がありい、その理由を具体的に「視考」することで解析していきます。大切なのは行動の原因を「性格」に求めないこと、と本の中では繰り返されています。遅刻するのは「だらしない」からではない、という具合に。実際にこの本の中で出される「遅刻しない理由」には釈然としないものがあるのですが(笑)、考え方自体は非常に興味深い内容でした。
例えば、行動には随伴性というものがあり、強化の随伴性と弱化の随伴性とがあります。早起きするという行動に対し時間が有効に使えるとか電車が空いてるとかは強化の随伴性、寒い(から布団から出られない)とか前夜に夜更かしして寝不足とかは弱化の随伴性、といった具合です。色々な要因(随伴性)を分析することで、なぜ行動するに至ったのかがわかる、というのは、当たり前ではありますが面白いなあと。
あと、「忘れる」とか「間違える」という(意識した)行動はない、というのもなるほどーってなりました。「忘れる」という事象が発生したのは、「思い出す」ための強化の随伴性よりも弱化の随伴性が強かった、という解釈。「忘れっぽい」で片付けちゃダメなんですね。失敗に対し個人に責任追求せず、原因を解析し、二度と起きないようにする上で重要な考え方だなー、と思いました。「なんで失敗したのか」を考えるより、「どうやったら失敗しないのか」を考える方が建設的ですからね。

ということで、自分のメモ的に記録。


人は、,なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」 (光文社新書)
島宗 理
光文社


本の感想文

2010-12-04 11:49:59 | 本の感想
すっごい久々の更新がまた本の感想文です。書いておくと、後で読み返したときに思い出しやすいのよね。半分備忘録ではございますが、基本的にオススメ本について書いてるので興味があれば是非読んでみてください。

新書がベスト (ベスト新書)
小飼 弾
ベストセラーズ

成毛さんが絶賛していたので読んでみたのですが、面白かった。影響されやすい僕はこの本のせいで読む本の新書率が急激にアップしましたよw 要するにタイトルのまんまで「新書がいちばんお得で面白いよ」ということを書いているのだけど、本の読み方なんかも書いてあって参考になります。1冊の本を一生懸命読み込むより、よくわからないままでもいいから10冊の同系列の本を読んだ方がいい、というのはすごく納得しました。そうそう、そうなんだよねー、わかってるんだけどねー。また、出版社別の新書の傾向やオススメの新書なども紹介されていて、つい面白そうなのをメモしていったら数十冊になってしまいました。ブルーバックスなんか久しぶりに聞いたよ。また読もう。
ということで、この後に紹介する本の新書率の高さに注目w



トポロジカル宇宙 完全版―ポアンカレ予想解決への道
根上 生也
日本評論社

トポロジー(位相幾何学)を用いて宇宙の形を考察しよう、という本。といっても高校生でもわかるように書かれた本なので、必要なのは数学の知識よりも想像力。なぜなら地球の形は三次元で表現できるけど、宇宙の形は四次元世界でないと表現できないからです。四次元世界といえば昔読んだ「第四次元の小説」という短編小説集を思い出しました。四次元世界とはかくも不思議で面白い世界なのかと感動したもんです。
話を戻すと、普通の人間には四次元世界を立体として想像することすらできないのだけど、それを「こんなもの」と理解させることで理論は先へ進みます。これもまずは我々が知る二次元→三次元への展開から始めるのでわかりやすい構成になっています(と思います)。決して簡単に読める本ではありませんが、宇宙の形を想像するというだけでもロマンがあると感じられる方にオススメ。



かけひきの科学―情報をいかに使うか (PHP新書)
唐津 一
PHP研究所

日本人が苦手なかけひきについて、ゲーム理論も交えて考察、してたような気がする。まあまあ面白かったけど、特段印象には残ってないっす。



スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
カーマイン・ガロ
日経BP社

スライドを使ったプレゼンでいかに相手に訴求するか、というのをプレゼンの天才でもあるスティーブジョブズのやり方をベースに解説する本。これはスライドを使ってプレゼンする人には必読の本だし、そうでなくとも人に何かを説明するにあたってはとても参考になる本。ただし、スティーブジョブズのプレゼンのくだりがずっと出てくるので、いつのまにかMacの素晴らしさを刷り込まれて欲しくなるのが難点w お金を払ってMacの宣伝をされてる、という見方も出来ます。



食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉 (光文社新書)
山田 真哉
光文社

「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉 (光文社新書)
山田 真哉
光文社

「さおだけ屋はなぜ潰れないか」の作者が書いた会計入門書第二弾。まあ書いてあることはそう大きく変わらないですが、より具体的に説明されていてすんなり入ってきます。作者も簡単に読んでもらうことを念頭に書いたと言っている通り、二冊で二時間半くらいで読める内容。面白いです。



完全教祖マニュアル (ちくま新書)
架神 恭介,辰巳 一世
筑摩書房

この本はいいですよ。新興宗教の教祖になるためのマニュアル本の形をとった宗教学の本で、過去の成功事例(仏教、キリスト教、イスラム教他)を紹介しています。曰く、キリスト教も最初はかなりきちゃってる新興宗教だった、などかなりライトテイストなので好き嫌い分かれるかもしれませんが、宗教学に興味のある方にはいい入門書になると思います。また、宗教は人をハッピーにするもの、という基本や、戒律が厳しいことは実は信仰の助けになる、などなるほどなあと感心させられる内容も多いです。オススメ。



マグネシウム文明論 (PHP新書)
矢部 孝,山路 達也
PHP研究所

この本はヤバいです。感動します。化石燃料のエネルギーをマグネシウムが酸化するときのエネルギーを使って代替する、という話で、マグネシウムは化石燃料と違ってCO2もNOXも発生しない夢のクリーンエネルギーなのです。クリーンエネルギーといえば水素燃料がありますが、こちらは扱いが難しいのでなかなか実現への道は遠いです。一方、マグネシウムはただの金属なので扱いは簡単です。ではなんでそんないい物があるのに使われていないのか、というと、現状はマグネシウムを精錬するコストがかかり過ぎるためというのがその理由。そしてそのコストを解決する技術があり、実用化を目指しているというのです。ワクワクしちゃいます!わかりやすい話なので、あまり科学とか得意じゃない方にも読んでもらいたい本。



フリーライダー あなたの隣のただのり社員 (講談社現代新書)
河合 太介,渡部 幹
講談社

副題の「あなたの隣のタダ乗り社員」がフリーライダーです。もう出世の見込みがないのでやる気なしなおじさん、部下の功績だけを持っていく横取り上司、他人の提案を潰すだけ潰して提案は一切ないクラッシャー等、各種フリーライダーの紹介とその対処法が書かれています。人事制度から見直す必要がある場合もあり、人事の担当者は読んどいた方がいいかもです。

「捨てる技術」を身につけた(つもり)

2010-09-11 23:14:57 | 本の感想
「捨てる!」技術 (宝島社新書)

辰巳 渚 

宝島社


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「捨てる!技術」という本を読みましたよ。
「『○○整理術』とかそーゆーのはどうせうまくやれないんだから、そんなことよりとにかく捨てようぜ!」って内容。そうなんだよね。どう整理しても、絶対に持っている容量だけの収納スペースは必要で、せまい我が家にそんなスペースはないから色々なところに物が溢れだしてしまうんですよ。これ読んでバシバシ捨てれば、生活感ないけどすっきりきれいなドラマみたいな生活空間が手に入る!はず!

忘れるといけないし、せっかくなので要旨だけ紹介。

【捨てるための考え方10箇条】
1.「とりあえずとっておく」は禁句・・・賞味期限微妙な食品とか名刺とか資料とか
2.「仮に」はだめ、「今」決める・・・「仮に」そのへん(机のはしとか)に置いちゃダメ
3.「いつか」なんてこない・・・服とか
4.他人の「とっても便利」は、私の「じゃま」・・・他人に勧められて買ったものとか
5.「聖域」を作らない・・・思い出の品とか
6.持っているモノはどんどん使う・・・「○○のとき専用」の○○なときは滅多に来ない
7.収納法・整理法で解決しようとしない
8.「これは捨てられるのでは」と考えてみる・・・そのへんに置いてあるものをそのままにしない
9.「しまった!」を恐れない・・・そのときはあきらめる・どうせ大した被害じゃない
10.完璧を目指さない・・・頑張り過ぎない

【捨てるためのテクニック10箇条】
1.見ないで捨てる・・・手紙・本・雑誌
2.その場で捨てる・・・新しいのを買ったら古いのはまだ使えても捨てる
3.一定量を超えたら捨てる・・・収納に入りきらなくなったら捨てる
4.一定期間を過ぎたら捨てる
5.定期的に捨てる・・・毎月・毎年etc.
6.使い切らなくても捨てる・・・処方された薬とか、飽きた化粧品・香水とか
7.「捨てる基準」を決める・・・4~6のまとめ
8.「捨て場所」をたくさん作る
9.小さなところから始めてみる・・・洗面所とか、やりやすいところから
10.誰が捨てるか、役割分担を決める・・・主担当を決める

ほとんど備忘録みたいなもんなので、なんのことやらと思ったら本書をお読みくださいw

東野圭吾3連発

2010-08-10 13:16:14 | 本の感想
別に特に理由はないのだけど、東野圭吾の本を3冊連続で読んだので感想を。

パラドックス13
東野 圭吾
毎日新聞社

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何かの書評を見て面白そうだなーと思ったので読んだのです。内容は、諸般の事情で世界から人が消えてしまった中を、なぜか残された13人が彷徨い、そこに地震をはじめとした天変地異が襲う、という漂流教室っぽいカンジ。
まあまあ面白かったけど、後で読んだ2冊に比べると一段か二段落ちるかも。でも、大震災が来た時にどこが安全か、食糧確保の道は、等、考えさせられるところもあり個人的には興味深かったです。


容疑者Xの献身 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋

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この作品は福山雅治主演で映画にもなったのでご存知の方も多いでしょう。天才数学者が作った殺人事件のアリバイを、ガリレオこと湯川博士が崩していく、という内容。古畑任三郎シリーズと同様に最初に犯行があって、犯人は誰かわかっているというスタイルです。
これ、一気に読んでしまいましたよ。すごく切なく哀しいお話でした。オススメ!!!
おまけ:映画は石神(数学者)の役が堤真一でかっこよすぎてダメだ、とツイッター仲間に言われた。そう思うw
おまけ2:感想で、モラルがどうのとか言ってる人はもうこの手の本は読まなくていいと思うよ。


天空の蜂 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社

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バイト時代の先輩から面白いと勧められて。何者かによって乗っ取られたヘリコプターが原発の上空でホバリングし、そして脅迫文が届く。「爆発物を積載した超大型ヘリを高速増殖炉に墜落させる。それを防ぎたければ日本中の原発を即刻使用不能にせよ」
原発のあり方について考えさせられる重たい内容。でもさすがというか、緊迫感のある描写に手に汗握り、とても面白かった。しかし作者はよく調べてるなー。まあそうでなければリアリティは出せないわけだけど、他の作家さんもみんなこんくらい調べてるのかなー。
これは映画にしてほしいけど、色々と面倒なことが起こりそうだから映画化しないんだろうなー。それとも話は水面下深くで進んでいるのかしら。映画化したら、誰役かはわからんけどなんとなく織田裕二が出てそう。


ということで、どれも割と面白かったです。まだ3冊読んだだけだけど、この作者は悪人も完全な悪人と描かず、その人のドラマというかいい面も悪い面もしっかり折り込んで書くあたりがいいなと思いました。またヒマができたら東野圭吾の本は読もう。