2006年11月21日
第2回は、途上国への支援とスターン・レビューについて概観したいと思います。とくにスターン・レビューについては、今後の政策を推進していくうえでの示唆に富んだ内容であると思います。
3.途上国への支援
2005年のCOP11において合意された気候変動の影響やそれに対する脆弱性及び適応に関する5ケ年作業計画の前半期(2007年まで)の具体的な活動内容について合意され、今後、各国・関係機関からの情報を集め、適応対策の策定に資する知見を集積すること、同計画を「ナイロビ作業計画」とすることについて合意しました。
また、途上国における適応対策のために、2001年のCOP7で決定されたCDMクレジットの2%を原資とする「適応基金」について、管理原則・運営形態・運営組織の構成につき決議され、これを基に、次回COP/MOP3において、同基金を付託する機関の決定を目指すこととされました。
今次会合においてその5年間の実績の見直しと継続について議論が行われることになっていた技術移転に関する専門家グループ(EGTT)については、『今後はこれを拡充しつつ、諮問的役割を果たし続けるべき』、と主張を行った先進国側に対し、途上国側は、①同グループを改組・格上げし、独自の予算執行権限を持ち、先進国から途上国への技術移転を監視・管理できる権限を持った理事会(TDTB)の新設、②知的所有権を買い取り、途上国に無償で技術を供与するための多国3間技術取得基金(MTAF)の設置、③技術移転の進捗状況を客観的に評価する指標(performance indicator)の作成、という提案を行い、意見が対立しました。
結果として、時間的制約もあり、上記論点を今次会合では解決できないとの意見で一致し、①EGTTのマンデートをもう1年延長させること、②来年5月の次回補助機関会合(SB)において同グループの評価・見直しについて継続議論すること、の2点について合意されました。
途上国への支援については、「適応基金」の適正な運営が重要なポイントであると思います。運用主体については、先送りをされましたが、特定の地域・国に偏らない運営がなされなければ意味がありません。また、途上国にとって使い勝ってのよいものであることも不可欠の要素です。
『「適応基金」は、海水面の上昇や干ばつ、水不足など温暖化による悪影響に途上国が適応するための支援策で2008年にも運用を始める。途上国の温室効果ガス排出量を削減することで先進国が得た収益のうち2%を自動的に積み立てて支出。支出先が特定の国に偏らないよう配慮し、運用方針を決める際は議定書加盟国が1票ずつ投票することで合意したが、運用主体などは積み残された(毎日新聞)』
『議定書のもとに設置されている「適応基金」は、先進国が途上国で二酸化炭素(CO2)の削減事業を行い、削減分に応じて国連が発行するクレジットの2%が自動的に積み立てられる仕組み。これを利用して、温暖化の被害を受けている途上国での農業支援などを行うのが目的だ。草案は、基金が途上国にとって利用されやすいものであるとする原則や、事業実施までの意思決定を短期間に行うといった運営形態に合意。気候変動による影響の科学的評価を優先する先進国と、一刻も早い事業の実現を求める途上国が歩み寄った形で、来年の締約国会議までに、どこが基金を運営するのかを決定し、2008年に運用が開始される見通しになった(読売新聞)』
4.スターン・レビュー
気候変動枠組条約第12回締約国会合(COP12)直前(10月30日)に発表されたスターン・レビューの著者、ニコラス・スターン卿(英国気候変動・開発政策の経済担当政府特別顧問)による下記のプレゼンテーションが行われました。
『気候変動は、世界が今まで経験したことのないような最大の市場の失敗を引き起こすだろう。今後10~20年以内に緊急に行動をとるべきだ。大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるための協力ですばやい行動の経済的コストは世界のGDPの1%にしかならないし、緩和措置は経済成長につながる。長期目標はとても重要だし、短期的には柔軟に対処しなければならない。また説得と公平という視点も重要だ。炭素市場(カーボン・マーケット)、技術開発、及び明確な政策との相互関係も重要である。また、森林破壊を解決するための国主導の努力、及び適応と開発との密接な関連は重要であり、増加しつつあるODAとグローバルエネルギーの研究開発を行なうべきである。行動が遅れることによって深刻な経済的影響が起こるだろう。排出を抑えるためのコストは成長と調和する。決定的で強力な行動が緊急に必要とされている(JCCCAホームページより)』
スターン・レビューを一読して感じたことは、①短期的は利益よりも長期的な利益に着目すべき、②気候安定化に投資をすることが、結果として投資をしないことを上回る利益を得ることができる、③気候安定化への投資は、いかなる国にとっても経済成長に水を差すものではない、ということです。どの視点をとっても、首肯できるもので、アメリカ合衆国の復帰や先進国と途上国の対立の氷解を暗に促す内容となっていると思います。
また、スターン・レビューでは、国際規模で効果的に対応するには次の3つの要素を政策に織り込む必要がある、としています。
①炭素価格で、税金、取引もしくは規制を通して実践する
②低炭素テクノロジーの開発をサポートし、実用化する
③エネルギー効率化の妨げとなっている障壁を取り除き、気候変動に対処するには一人ひとりに何ができるのかについて情報を与え、教育し、説得する
①はいわゆる経済的手法による規制で、今できることを実践しようというもの、②は中長期的な視点で人間の英知に期待しようというもの、③は①②を実行していくうえでもっとも大切な教育をしっかりやっていこう、というもの、であるといえると思います。現在の日本の状況について考えると、②がやや優先されて進んでいるような感じがします。この問題を根本的に解決し、将来世代に禍根を残さないためには、やはり三位一体で政策を進めていく必要があるのではないでしょうか。
【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。
【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会自然環境部会(第8回)及び自然公園小委員会(第12回)の開催について
平成18年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰について
「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会」の第1回「指定に関する分科会」の開催について
グリーン購入法に係る特定調達品目及びその判断の基準等の見直しの概要(案)に対する意見の募集について
平成18年度 街区まるごとCO2 20%削減事業の採択案件について
日本経団連との懇談会について
生態影響に関する化学物質審査規制/試験法セミナーの開催について
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について
経済産業省
気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)の結果について
廃棄物埋設施設及び特定廃棄物管理施設並びに原子炉施設(廃止措置及び運転終了)に係る平成18年度第2四半期の認可、検査及び確認の実施状況について
国土交通省
「下水道事業におけるストックマネジメント検討委員会」の設置及び開催について―ストック増大に伴い、今後の事業手法のあり方について検討します―
【判例情報】
新しい情報はありません。
【ISO14001】
◆「役立つ!ISO14001関連書籍」に新しい書籍を追加しました/2006.11.19
◆「環境法令管理室」に「11月13日から11月19日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.11.19
第2回は、途上国への支援とスターン・レビューについて概観したいと思います。とくにスターン・レビューについては、今後の政策を推進していくうえでの示唆に富んだ内容であると思います。
3.途上国への支援
2005年のCOP11において合意された気候変動の影響やそれに対する脆弱性及び適応に関する5ケ年作業計画の前半期(2007年まで)の具体的な活動内容について合意され、今後、各国・関係機関からの情報を集め、適応対策の策定に資する知見を集積すること、同計画を「ナイロビ作業計画」とすることについて合意しました。
また、途上国における適応対策のために、2001年のCOP7で決定されたCDMクレジットの2%を原資とする「適応基金」について、管理原則・運営形態・運営組織の構成につき決議され、これを基に、次回COP/MOP3において、同基金を付託する機関の決定を目指すこととされました。
今次会合においてその5年間の実績の見直しと継続について議論が行われることになっていた技術移転に関する専門家グループ(EGTT)については、『今後はこれを拡充しつつ、諮問的役割を果たし続けるべき』、と主張を行った先進国側に対し、途上国側は、①同グループを改組・格上げし、独自の予算執行権限を持ち、先進国から途上国への技術移転を監視・管理できる権限を持った理事会(TDTB)の新設、②知的所有権を買い取り、途上国に無償で技術を供与するための多国3間技術取得基金(MTAF)の設置、③技術移転の進捗状況を客観的に評価する指標(performance indicator)の作成、という提案を行い、意見が対立しました。
結果として、時間的制約もあり、上記論点を今次会合では解決できないとの意見で一致し、①EGTTのマンデートをもう1年延長させること、②来年5月の次回補助機関会合(SB)において同グループの評価・見直しについて継続議論すること、の2点について合意されました。
途上国への支援については、「適応基金」の適正な運営が重要なポイントであると思います。運用主体については、先送りをされましたが、特定の地域・国に偏らない運営がなされなければ意味がありません。また、途上国にとって使い勝ってのよいものであることも不可欠の要素です。
『「適応基金」は、海水面の上昇や干ばつ、水不足など温暖化による悪影響に途上国が適応するための支援策で2008年にも運用を始める。途上国の温室効果ガス排出量を削減することで先進国が得た収益のうち2%を自動的に積み立てて支出。支出先が特定の国に偏らないよう配慮し、運用方針を決める際は議定書加盟国が1票ずつ投票することで合意したが、運用主体などは積み残された(毎日新聞)』
『議定書のもとに設置されている「適応基金」は、先進国が途上国で二酸化炭素(CO2)の削減事業を行い、削減分に応じて国連が発行するクレジットの2%が自動的に積み立てられる仕組み。これを利用して、温暖化の被害を受けている途上国での農業支援などを行うのが目的だ。草案は、基金が途上国にとって利用されやすいものであるとする原則や、事業実施までの意思決定を短期間に行うといった運営形態に合意。気候変動による影響の科学的評価を優先する先進国と、一刻も早い事業の実現を求める途上国が歩み寄った形で、来年の締約国会議までに、どこが基金を運営するのかを決定し、2008年に運用が開始される見通しになった(読売新聞)』
4.スターン・レビュー
気候変動枠組条約第12回締約国会合(COP12)直前(10月30日)に発表されたスターン・レビューの著者、ニコラス・スターン卿(英国気候変動・開発政策の経済担当政府特別顧問)による下記のプレゼンテーションが行われました。
『気候変動は、世界が今まで経験したことのないような最大の市場の失敗を引き起こすだろう。今後10~20年以内に緊急に行動をとるべきだ。大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるための協力ですばやい行動の経済的コストは世界のGDPの1%にしかならないし、緩和措置は経済成長につながる。長期目標はとても重要だし、短期的には柔軟に対処しなければならない。また説得と公平という視点も重要だ。炭素市場(カーボン・マーケット)、技術開発、及び明確な政策との相互関係も重要である。また、森林破壊を解決するための国主導の努力、及び適応と開発との密接な関連は重要であり、増加しつつあるODAとグローバルエネルギーの研究開発を行なうべきである。行動が遅れることによって深刻な経済的影響が起こるだろう。排出を抑えるためのコストは成長と調和する。決定的で強力な行動が緊急に必要とされている(JCCCAホームページより)』
スターン・レビューを一読して感じたことは、①短期的は利益よりも長期的な利益に着目すべき、②気候安定化に投資をすることが、結果として投資をしないことを上回る利益を得ることができる、③気候安定化への投資は、いかなる国にとっても経済成長に水を差すものではない、ということです。どの視点をとっても、首肯できるもので、アメリカ合衆国の復帰や先進国と途上国の対立の氷解を暗に促す内容となっていると思います。
また、スターン・レビューでは、国際規模で効果的に対応するには次の3つの要素を政策に織り込む必要がある、としています。
①炭素価格で、税金、取引もしくは規制を通して実践する
②低炭素テクノロジーの開発をサポートし、実用化する
③エネルギー効率化の妨げとなっている障壁を取り除き、気候変動に対処するには一人ひとりに何ができるのかについて情報を与え、教育し、説得する
①はいわゆる経済的手法による規制で、今できることを実践しようというもの、②は中長期的な視点で人間の英知に期待しようというもの、③は①②を実行していくうえでもっとも大切な教育をしっかりやっていこう、というもの、であるといえると思います。現在の日本の状況について考えると、②がやや優先されて進んでいるような感じがします。この問題を根本的に解決し、将来世代に禍根を残さないためには、やはり三位一体で政策を進めていく必要があるのではないでしょうか。
【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。
【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会自然環境部会(第8回)及び自然公園小委員会(第12回)の開催について
平成18年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰について
「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会」の第1回「指定に関する分科会」の開催について
グリーン購入法に係る特定調達品目及びその判断の基準等の見直しの概要(案)に対する意見の募集について
平成18年度 街区まるごとCO2 20%削減事業の採択案件について
日本経団連との懇談会について
生態影響に関する化学物質審査規制/試験法セミナーの開催について
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について
経済産業省
気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)の結果について
廃棄物埋設施設及び特定廃棄物管理施設並びに原子炉施設(廃止措置及び運転終了)に係る平成18年度第2四半期の認可、検査及び確認の実施状況について
国土交通省
「下水道事業におけるストックマネジメント検討委員会」の設置及び開催について―ストック増大に伴い、今後の事業手法のあり方について検討します―
【判例情報】
新しい情報はありません。
【ISO14001】
◆「役立つ!ISO14001関連書籍」に新しい書籍を追加しました/2006.11.19
◆「環境法令管理室」に「11月13日から11月19日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.11.19
映画村で、水戸金門の撮影してて、由美かおると握手出来ました☆
はちべいや、里見幸太郎も見ましたよ☆
京都の町中はやっぱり観光地とあって、綺麗でした。
どこの町も、見られて恥ずかしくないようにいつも常に綺麗にしておきたいですね(o^∀^o)