環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

資源ごみ抜き取り事件への自治体の対応 所有権帰属型と公表型はどちらが有効か?

2006-11-22 06:42:58 | リデュース・リユース・リサイクル
2006年11月22日 
 9月11日の記事で、茨城県内で古新聞・古雑誌などの資源ごみが集積所から不法に持ち去られる事件が多発しているニュースを紹介しましたが、今度は、滋賀県内で『資源ごみとして家庭から出された空き缶の中から、アルミ缶だけを持ち去る業者が滋賀県内で横行している』とのニュースがありました(京都新聞)。原因は、中国でのアルミ需要の増加です。中国では、現在、建設ラッシュが続き、ビルのサッシ用などの需要が高く、アルミ不足になっている状況です。これにより、アルミ相場が高騰。これに目をつけた業者が家庭用ごみからアルミの空き缶を抜き取っているとのことです。

1.所有権帰属型の規定例
 滋賀県内の自治体の対策としては、守山市が平成16年に『守山市廃棄物の減量および適正処理ならびに環境美化に関する条例』を改正し、家庭系廃棄物の所有権について、『排出基準に従い排出された家庭系廃棄物であって前条第1項の規定によりごみ集積所に排出されたものに係る所有権は、市に帰属するものとする(第15条の2第1項)』『市または市が指定する者以外の者は、前項に規定する家庭系廃棄物を収集し、または運搬してはならない(第15条の2第1項)』とする規定を加えています。
 所有権という民法物権法におけるもっとも強力な権利を有することを法的に宣言する意味は、大きいといえます。しかし、抜き取った業者が第三者へ売り渡した場合の即時取得(取引により、第三者が平穏・公然・善意・無過失で動産の占有を開始した場合は、その動産の権利を取得する/民法第192条)の問題や、侵奪行為の告発など、いざことが生じたときの権利主張のための手続きが煩雑であることは否めません。それゆえ、実際に告発にまで至る例は私の知る限りまだありません(9月11日の記事では、茨城県警がパトロールの強化や窃盗容疑での検挙に乗り出した、との報道を引用しましたが、その後、実際に検挙に至ったというニュースは発表されていません)。

2.公表型の規定例
 大津市では、平成16年に『大津市廃棄物の処理及び再利用の促進並びに環境の美化に関する条例』を改正し、『市又は市から委託を受けた者以外の者が、市が行う定期収集を受けるためにごみ集積所に排出された物を収集し、又は運搬した場合には、市長は、これらの行為を行わないように命ずることができ、その命令に従わなかった場合には、その旨を公表することができる(第45条第1項第6号)』、としました。
 上記の場合、単なる行政指導ではなく、法的根拠を持つ行政命令であるといえます。こうした公表型の規定は景観条例など他の分野でも見受けられますが、公表後の社会的影響の度合いがはかりかねないため、意外と実行例は多くありません。有名な例では、東京都国立市が、国立市都市景観条例に基づき大規模行為景観形成基準に従うよう勧告したマンション業者に対して、勧告に従わなかったとして公表した例などがあります。
 しかし、今回の一連のアルミ缶抜き取りに対して、大津市では、上記の規定に基づく業者の『公表』を実施(環境部ごみ減量推進課に確認)、本格的な対策に乗り出しています。なお、本措置の行使に際しては、『市長は、前項の規定により公表をしようとするときは、あらかじめ、公表をされるべき者に、その理由を通知し、書面又は口頭により意見を述べ、及び証拠を提出する機会を与えなければならない(第45条第2項)』として、手続的保障機会も規定されています。

3.所有権帰属型と公表型はどちらが有効か?
 資源ごみ抜き取り事件に対する自治体の対策は、現在のところ、上記の2つの条例規定に大別できます。所有権帰属型の場合は、趣旨は明確ですが、窃盗罪の適用検討など、実行に至るまでが大変であるといえます。一方、公表型の場合は、所有権帰属型に対してペナルティの度合いがはかりかねるという難点がありますが、実行はしやすく、そのぶん現実的な効果があると思います。(もっとも、併記型も存在しますが)。

 廃棄物・リサイクル関連事件は、市況の変化によってもたらされます。価値が上がれば抜き取りがなされ、下がれば不法投棄の対象となります。そもそも資源ごみが資源としてのみ扱われる(廃棄物として扱われない)ならば、こうした問題が生じる余地も少なくなると思います。そのためには毎度毎度になりますが、廃棄物・リサイクル法制の抜本的な改革が不可欠であるといえるでしょう。

官報ウオッチング
〔政令〕
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(政令第362号/平成18年政令第348号の一部改正)
 北海海域における船舶の燃料油の品質の基準に係る規定の適用を平成18年11月22日から起算して1年間猶予することとした。(附則関係)
施行日:平成18年11月22日

【行政情報ウオッチング】
環境省
気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)の結果について
「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会容器包装の3R推進に関する小委員会(第4回)、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会容器包装リサイクルWG(第41回)合同会合(第1回)の開催について
遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程の承認申請案件に対する意見の募集(パブリックコメント)について
国内における毒ガス弾等に関する総合調査検討会(第3回)の開催について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会食品リサイクル専門委員会(第4回)、食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会食品リサイクル小委員会(第10回)合同会合(第3回)の開催について
平成18年度大気汚染防止推進月間について

経済産業省
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」及び「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について
水力発電設備に係る調査について

厚生労働省
第3回ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会議事録

【判例情報ウオッチング】
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【ISO14001】
◆「役立つ!ISO14001関連書籍」に新しい書籍を追加しました/2006.11.19
◆「環境法令管理室」に「11月13日から11月19日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.11.19