ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

アオテアロアのレディーD

2002-05-11 | 移住まで
「ホームページ拝見しました。」
と、見慣れぬアドレスのメールがメールボックスに届いたのは4月の終わりでした。開いてみてしばらく、二の句が告げませんでした。メールによれば、「NZへの移住、移住」と大騒ぎしている私たちのやろうとしていることを、同じようにお子様が2人いる日本人サラリーマン家族があっさり実現させ、しかもさっさと海の見える1軒家を買って悠々自適なキウイライフを始めているというではないですか!

それだけではなく、このご家族も海外生活が長く、特にメールを下さった奥様は以前に香港にもいらしたことがあって大のアジア贔屓。「チャイナタウンがあれば日本食なしでも生きていける」とのたまうところなど、はからずも私とそっくり。私もパリで暮らしていた頃は、名前はプラスディタリー(イタリア広場)と言いながら、実際はベトナム系シノワ(チャイニーズ)のメッカだった実質チャイナタウンが生命線でした。

「この風景に一目惚れして、この町に住みたい!」
と思ったあたりも私と良く似ていて、何だか宇宙のかなたの分身からコンタクトを受けたかのようでした。でもあちらは移住を即実行されていて、身軽にして柔軟に新生活をスタートされています。のたりのたりとしている私にとっては神業です。それ以来、"アオテアロア(「白い雲のたなびく国」というマオリ語でのNZのこと)のレディーD"(故ダイアナ妃にちなんだわけではないのですが、たまたまイニシャルが同じだったので)を師と仰ぐことに・・・

「永住権獲得に全霊を傾ける人間にとってはタイミングが全て」
「脱サラを憂うことなく、永住権を獲得できる国で子供たちとのんびり暮らしたい」
と、レディーDは移住における基本のキを、実践者ならではの説得力で淡々と開陳してくれます。
「お金を貯められるだけ貯めてくるのがよろしいようで」
「自給自足の半分ぐらいこなす心意気で来られるといいですよ」
と、的確なアドバイスも実感がこもっていて改めて考えさせられます。

「どうにもならなかったら、夫婦間もギクシャクして責任転嫁バトルが火を噴いて、子供たちも情緒不安定とエラいことになっているのでしょうが、幸い文字通りどうにかなってここまでこぎつけました。不安も喉元過ぎれば"どうにかなるさ"で乗り切れているのが私のようです。夫は最初から"どうにかなるっしょ"の人です。」
と、背中をぐいぐい押してくれます。これを読んだら私たちならずとも移住を目指す人たちであれば、
「何とかやれるかも・・・」
と勇気100倍です。

レディーDのメールにもあったように、移住には各人のドラマがあります。その中で自分と同じような理由や経緯でとっくに夢を達成している人がいるということは、どんなに心強いことでしょう。
「あの風景に心打たれただけで人生決めてしまってもいい。そこに特別な理由や計画がなくても、『ここに住みたい!』という思いがすべてであっても構わない・・・・」
白い雲のたなびく国から届く長い長いメールは文面の端々に、そんなメッセージがこめられています。

私は移住という、自身の突然の思いつきに、家族を巻き込むことをどう受け止めていいのかよくわからないままここまで来ました。さすがに思い立ってから早1年3ヵ月、今でこそ家族の中でNZ行きは規定路線化していますが、いったいどこまでが夫や息子2人の真意で、どこまでが我慢なのかよくわからず、不安に思うことがあるのも本音です。彼らはとても優しく、私が望むことであれば、強く「NO」という人間が家族にいないので、その経緯に関しては多少霧が晴れていくことがあってもすべてを見極めることは難しいことでしょう。

私にできることは彼らのそんな優しさゆえに実現する夢に誠心誠意で臨み、日々感謝の気持ちを忘れずにやっていくことだけです。しかし実際はそんな綺麗事では済まされず、夫を仕事から、子どもたちを生まれ育った場所や友人たちから引き離してしまうことに代わりありません。そんな時、レディーDからのメールに移住後の自分たちを重ね合わせられたことは、私にとってどれほど救いになったことか。彼女への長い返事をしたためながら、いつか家族が「来て良かった!」と、心の底から思える日が来ると信じて、
「夢をかたちに・・・」
と、思いを新たにしています。


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「マヨネーズ」 
「飲茶デザートの締めくくり、私は亀ゼリーで決めます。NZではまだ見たことはないけれど缶詰のならお店にあります。」
と、レディーD。実は私も本当の亀が入っている漢方デザートの王様、亀ゼリーが大好物!
「もう、どうしてここまで似てるの?」
と、メールを前にしばし腕組み。

長男は5歳から私に連れられ亀ゼリー屋に出入りしてますが、夫も次男も「一生に一回でいい」というクチで付き合ってくれません。なので長男と香港随一の繁華街であるコーズウェイベイに出ると(実は家から歩いて15分くらいですが)、
「アレ行こうか?」
と2人でいそいそと、亀ゼリーの老舗、恭和堂に入ってしまいます。

真っ黒に怪しく震えるなみなみ入ったゼリーに長男はお砂糖たっぷりで。私は漢方の五花茶が煎じこめられた、顔がゆがむような苦味を五臓六腑にまでしみわたらせるべく、そのままいただきます。レディーDのご主人のデザートは「マンゴープリン」だそうで、これも西蘭家にそっくりです。


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