夕方というには遅すぎる7時少し前。私たちは背後から迫ってくる夕暮れを振り切るように、ダニーデンを後にしました。翌日のミルフォードサウンド観光に向けて、その日のうちにテアナウ入りをしたかったからです。しかし目的地までは289キロ。平均時速100キロで飛ばしても着くのは10時。それから宿探しとなると、どう考えても小さい子連れでは無理な行程でした。どこかで夕食もとらなくてはなりません。
「まあ、行けるところまで行ってみよう。」
早々にテアナウ泊はあきらめ、目先の問題は夕食に。NZでも特に小さい町が多い南島では夕食のタイミングを外してしまうと、一気に食べるところも買うところも閉まってしまい、モーテルにチェックインして強制自炊ということになりかねません。子どもはさっきから雛鳥よろしく、口を開けば
「おなか空いた~~」
とピーチクパーチク。
50キロも行かないうちに最初の町らしい町ミルトン着。NZでは町が近づくと、国道の制限速度が100キロからいきなり50キロに変わり、赤ちゃんが眠った絵の道路標識が出てくるため、すぐにわかります。その標識がなかったら、国道の両側の1キロあるかないかの町、というよりも集落は夜目の中ではうっかり走り抜けてしまうところです。
教会を中心に学校や小さな店が道路脇に並んでいるだけの童話の挿絵のような町に入るやいなや、何日も旅して鍛えられた勘で、
「ここにはレストランがない」
と直感しました。その次に考えることは、
「どこで買えるか?」
です。
いきなり左手にテイクアウェイの控え目なネオン。メインストリートが1キロあるかないかなので即決しなくてはいけません。チラリと見えた店の人がアジア系には見えなかったのでパス。
「次の店・・・」
と思ったら、いきなり町並みが切れて、もう目の前は高速道路・・・・。
しかし、その最後の最後、そこから先は隣の町まで何十キロも何もないのを覚悟しなくてはいけない最後に、"FOOD"と場違いに大きな看板を出したテイクアウェイが。このセンスが感じられない看板の大きさ、
「ひょっとしたら移民系の店?上手くすればアジア人かも。」
果たして、ドアを開けると一家総出状態の中華系一家。一気に我が家に戻ったような気楽さに。次男は
「ご飯がある♪」
と目がキラリ。実は彼は大のご飯党。しかも白米が大好きで、それさえあれば空飯でもいいくらいなのです。その分パンが苦手なのでNZに来てからパン食続きで半泣き状態。まだ4才ですから強要するのもかわいそうで、現地の物を食べたい親はジッと我慢し、見つけられる時はなるべくアジア系の物を食べるようにしていました。なのでこんなところで、こんな時間に中華料理とは本当にラッキー。
いきなり入ってきた東洋人一家にお店の人も、
「アレ?」
っという感じでしたが、高校生ぐらいの娘が英語で対応してくれました。半分以上が洋風メニューでしたが、
「あるじゃないのぉ!チャーハンに焼きそば!」
早速オーダー開始。「コンビネーションフライドライスにフーヨンシュリンプ。それから、チキンフライドヌードルに、え~と・・・」
あ~~面倒臭っ!いきなり普段使い慣れている中国語に切り替えて、
「楊州炒飯、芙蓉蝦仁、鶏絲炒麺・・・」
とオーソドックスなところをとっとと頼むと、それまで黙っていた奥さんらしき人がパッと反応して、
「好唖!」(OK!)
その後はお決まりの展開で、お互い
「なに人?」
(中華系は世界中に散らばっているので、お互いどこの国籍か確認し合うことがよくあります)
「どこから来たの?」
(これは単に住んでいる場所。これも往々にして国籍と合わないことがよくあります)
「何してるの?」
(旅行か移住か?)
と、敬語のない中国語の気楽さで、初対面ながら気分はアンタ状態。
「私はさぁ、英語はからっきしダメなんだよ~」
と奥さん。料理を作り終えたご主人も出てきてニコニコしながら話を聞いています。聞けば広東省から1年前に移住してきたそうで、「これからテアナウに行く」と行っても、3人ともその地名を知らず、逆に
「道を間違えてるんじゃないかい?」
と心配されたくらい。彼らがわかったのは40キロ離れたゴアだけで、それも友だちが住んでいるから知っているという程度。
「冬は雪で大変だよ。広東省は暖かいからねぇ。生活も楽ではないけど、ここに来てよかったよ。」
と奥さん。人の良さそうなご主人が隣でうなずいています。娘は1年でかなり英語をマスターしたようで、夫婦の自慢の種。
「私たちも移住して来ようと思ってるの。」
と正直に言うと、
「そうかい、いつ来るんだい?南島かい?」
と、お世辞抜きで嬉しそう。
「また来ておくれよ。」
「ええ、いつになるかわからないけれど、必ず。」
外に出るともうとっぷりと暮れていて真っ黒な夜が広がっていました。私たちの車だけがポツンと取り残されたように停まっているだけで、他に車の影はありません。ウィンドウの向こうで遠ざかっていく大きな、暖かい色のネオン。
「どうもありがとう。本当にまた来ます。どうかそれまで元気でね。」
=============
「マヨネーズ」
町にテイクアウェイが3軒、レストラン0軒のミルトンで立ち寄った「1&1テイクアウェイ」。ここまで来るとモヤシや豆腐は手に入らないようで、ニンジン、玉ネギ、セロリ、トマトといった中華素材では脇役の野菜が堂々主役を張っていました。
でもこれが街中の中華レストランよりよっぽど美味しくてビックリ。NZ移住の思い入れを噛み締めながら、かなりの量をみんなでペロリ。中国語の会話に入れなかった夫が聞きたかったのはただ一つ。
「ビザは何ですか?」
「まあ、行けるところまで行ってみよう。」
早々にテアナウ泊はあきらめ、目先の問題は夕食に。NZでも特に小さい町が多い南島では夕食のタイミングを外してしまうと、一気に食べるところも買うところも閉まってしまい、モーテルにチェックインして強制自炊ということになりかねません。子どもはさっきから雛鳥よろしく、口を開けば
「おなか空いた~~」
とピーチクパーチク。
50キロも行かないうちに最初の町らしい町ミルトン着。NZでは町が近づくと、国道の制限速度が100キロからいきなり50キロに変わり、赤ちゃんが眠った絵の道路標識が出てくるため、すぐにわかります。その標識がなかったら、国道の両側の1キロあるかないかの町、というよりも集落は夜目の中ではうっかり走り抜けてしまうところです。
教会を中心に学校や小さな店が道路脇に並んでいるだけの童話の挿絵のような町に入るやいなや、何日も旅して鍛えられた勘で、
「ここにはレストランがない」
と直感しました。その次に考えることは、
「どこで買えるか?」
です。
いきなり左手にテイクアウェイの控え目なネオン。メインストリートが1キロあるかないかなので即決しなくてはいけません。チラリと見えた店の人がアジア系には見えなかったのでパス。
「次の店・・・」
と思ったら、いきなり町並みが切れて、もう目の前は高速道路・・・・。
しかし、その最後の最後、そこから先は隣の町まで何十キロも何もないのを覚悟しなくてはいけない最後に、"FOOD"と場違いに大きな看板を出したテイクアウェイが。このセンスが感じられない看板の大きさ、
「ひょっとしたら移民系の店?上手くすればアジア人かも。」
果たして、ドアを開けると一家総出状態の中華系一家。一気に我が家に戻ったような気楽さに。次男は
「ご飯がある♪」
と目がキラリ。実は彼は大のご飯党。しかも白米が大好きで、それさえあれば空飯でもいいくらいなのです。その分パンが苦手なのでNZに来てからパン食続きで半泣き状態。まだ4才ですから強要するのもかわいそうで、現地の物を食べたい親はジッと我慢し、見つけられる時はなるべくアジア系の物を食べるようにしていました。なのでこんなところで、こんな時間に中華料理とは本当にラッキー。
いきなり入ってきた東洋人一家にお店の人も、
「アレ?」
っという感じでしたが、高校生ぐらいの娘が英語で対応してくれました。半分以上が洋風メニューでしたが、
「あるじゃないのぉ!チャーハンに焼きそば!」
早速オーダー開始。「コンビネーションフライドライスにフーヨンシュリンプ。それから、チキンフライドヌードルに、え~と・・・」
あ~~面倒臭っ!いきなり普段使い慣れている中国語に切り替えて、
「楊州炒飯、芙蓉蝦仁、鶏絲炒麺・・・」
とオーソドックスなところをとっとと頼むと、それまで黙っていた奥さんらしき人がパッと反応して、
「好唖!」(OK!)
その後はお決まりの展開で、お互い
「なに人?」
(中華系は世界中に散らばっているので、お互いどこの国籍か確認し合うことがよくあります)
「どこから来たの?」
(これは単に住んでいる場所。これも往々にして国籍と合わないことがよくあります)
「何してるの?」
(旅行か移住か?)
と、敬語のない中国語の気楽さで、初対面ながら気分はアンタ状態。
「私はさぁ、英語はからっきしダメなんだよ~」
と奥さん。料理を作り終えたご主人も出てきてニコニコしながら話を聞いています。聞けば広東省から1年前に移住してきたそうで、「これからテアナウに行く」と行っても、3人ともその地名を知らず、逆に
「道を間違えてるんじゃないかい?」
と心配されたくらい。彼らがわかったのは40キロ離れたゴアだけで、それも友だちが住んでいるから知っているという程度。
「冬は雪で大変だよ。広東省は暖かいからねぇ。生活も楽ではないけど、ここに来てよかったよ。」
と奥さん。人の良さそうなご主人が隣でうなずいています。娘は1年でかなり英語をマスターしたようで、夫婦の自慢の種。
「私たちも移住して来ようと思ってるの。」
と正直に言うと、
「そうかい、いつ来るんだい?南島かい?」
と、お世辞抜きで嬉しそう。
「また来ておくれよ。」
「ええ、いつになるかわからないけれど、必ず。」
外に出るともうとっぷりと暮れていて真っ黒な夜が広がっていました。私たちの車だけがポツンと取り残されたように停まっているだけで、他に車の影はありません。ウィンドウの向こうで遠ざかっていく大きな、暖かい色のネオン。
「どうもありがとう。本当にまた来ます。どうかそれまで元気でね。」
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「マヨネーズ」
町にテイクアウェイが3軒、レストラン0軒のミルトンで立ち寄った「1&1テイクアウェイ」。ここまで来るとモヤシや豆腐は手に入らないようで、ニンジン、玉ネギ、セロリ、トマトといった中華素材では脇役の野菜が堂々主役を張っていました。
でもこれが街中の中華レストランよりよっぽど美味しくてビックリ。NZ移住の思い入れを噛み締めながら、かなりの量をみんなでペロリ。中国語の会話に入れなかった夫が聞きたかったのはただ一つ。
「ビザは何ですか?」