limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

life 人生雑記帳 - 63

2019年11月13日 17時56分46秒 | 日記
佐多岬から帰り道、牧之原台地から下りて来る白いローレルが目の前に来た。「向こうもお帰りか。鎌倉のヤツ上手くやったかな?」「大丈夫ですよ。新谷さんが、抜かり無く進めたでしょうよ」実里ちゃんが笑顔で言う。2台は連なって寮の玄関先へ滑り込んだ。先に鎌倉が車から降りて、手を振った。「先輩、お疲れさまでした!また、今度、愛し合いましょう!」実里ちゃんと別れの口づけを交わすと、僕も車から降りて手を振った。2台はゆっくりと発進して行く。「ただいま、ヒューストン。こちら、オデッセイ。無事帰って来た!」「なんじゃそりゃ?」鎌倉が唖然として言う。「アポロ13号の生還劇を知らんのか?まあ、いい。それより、鎌倉どうだった?」玄関を通りながら聞くと、「激しかったよ!すっかり、精気を吸い取られたってとこ。あのパワーの源はどこから来るんだ?」と疲れた表情で言う。部屋に戻ると、克ちゃんと吉田さんが爆睡している。僕等は、荷物を置くと1階へ戻って、談話室の隅に潜り込み「“懐妊”を狙う執念だな!それと、美人程、お声がかかりにくいから、餓えてるんだろうよ。久々だとしたら、燃えるのは当然だろう?」と小声で言う。「確かに。お誘いは2度目だが、3試合を連続して戦ったのは、初めてだよ。Y、今日も“してない”よな?」「ああ、“してない”よ。だから、穏やかに帰してくれたんだ。最低限、それは守らないとメンツ丸潰れになっちまうからな!」と囁き合う。「Y、明日は岩元さんが控えているが、彼女とも同じことになるのか?」「仔細は分からんが、狙いは同じだろうな。3試合を戦い抜く覚悟はして置け!しっかり食べて、寝て、明日に備える。連戦を潜り抜けるには、体調管理は万全にして置かないと持たないぞ!」「お前さんは、女性の扱いに慣れてるからいいが、何を話してやってるんだ?」「こっちから話すことは余り無いよ。逆に、彼女達からバンバン質問が来るから、それに答えて繋げばいいしな。仕事の話とかも裏話で盛り上がるから、事欠く事が無いんだ!」「うーん、流石は“繋ぎのY”だけあるな。先がどう転んでも話を続けたり、別方向へ誘導したりする技量が欲しいぜ!悲しいかな、俺には到底出来ない芸当だからな・・・」鎌倉は肩を落とす。「でもな。新谷さんは、鎌倉の話が聞きたいんだぜ!明日の岩元さんもそうだろう。そのまんまで行くしか無かろう。下手な小細工は要らんよ。素を出してやれば、一番喜ばれるはずだ!」と言って立ち直させる。「ちなみに聞くが、今日のお相手は?」「品質保証部の女の子さ。いざと言う時に、品証とのパイプがあるか?無いか?で事態は大きく左右される。気は抜けないよ!」「製造部門としては、欠かせないパイプ役か。着々と地盤を固めてるな!」「岩元さんと言えば、資材部門だろう?鎌倉だって地固めに動いてるじゃないか!」「まあな、お互いに“現地化”の手は繰り出してる訳だが、1つだけ“警告”させてくれ。“緑のスッポン”に悟られるなよ!Yは知らんだろうが、アイツは密かにお前さんを狙ってる節がある!ここへ派遣されるにしても、わざわざ“志願”して来てるんだよ。背中には気を付けろよ!」「分かった。ご忠告感謝するよ。ウチの“お姉さま方”もそれは察知してる!密かにマークはしてるが、僕も注意するとしよう」「えっ!“大奥”が察知してるだって?!どうやって見破ったんだよ?」「そこは、同性の強みだろうな。1発で気付いたらしいぜ!レイヤー事業部には、既に網が張られてるよ!」「まったく、末恐ろしい組織力だな!既に固着化されてるのか?」「ああ、腰までガチガチに固まってるよ。タダで逃がすつもりは、更々無い様だ」「と言う事は、俺も同じ運命か?」「多分な。あらゆる手を使って“帰さない”方向へ持って行くだろうよ。お互いに同じ船に乗り合わせたんだ。飛び込んで泳いでも逃げられるとは思えない」「よしんば、“帰還”したとしても、今の様な地位と責任は持たせてはもらえないだろうな。元の鞘に収まるのがオチだろう。だったら、今を全力で駆け抜けるしかないよな」「そう言う事さ。やれる事は全力でやり切ればいい。仕事も交友関係もな!」僕と鎌倉は、明日に向けて準備にかかった。まずは、社食でしっかり食べる事だ!

明けて日曜日、千絵が指定した時間は午前9時半。彼女にしては遅い時間だった。一方の鎌倉は8時半だった。「Y、それじゃあ行って来るぜ!」鎌倉は勇んで先に寮を出た。お迎えの車は、フェアレディZ。「コイツは驚いた。高速走行か?ワインディングロードか?鎌倉もタダでは済まないな!」と呟いていると、赤いマーチも滑り込んできた。1時間も早い到着だ。「おい!聞いてないぞ!」僕は慌てて部屋へ取って帰すと、荷物を手に持って玄関を飛び出した。「あっ、ごめーん!どうしても我慢できなくて!」千絵は済まなそうに言う。「フライングもいいが、ちょっと早くない?」と言うと「ソワソワしちゃって落ち着かないのよ。まずはこれ!」思いっきりのディープキス。千絵は待ち切れなかったらしい。運転席と助手席に別れると、「今日はどうする?」と小首を傾げる。千絵らしい仕草に、思わず笑みがこぼれる。「そうだな、まず、洗車に行こうか?2人でやれば短時間で綺麗に洗える」「そうね、お手入れしましょうか?大分、土埃と灰で汚れてるし!」「コイン洗車場まで直ぐだろう?善は急げだ!急速発進、最大戦速!」僕は、市内へ向けて車を走らせた。天気は、雲が多めながらも日差しもあり蒸し暑い日だった。朝の内に済ませなくては、暑さでやられるだろう。千絵のお肌にも良くない。グリーンのTシャツにデニムのホットパンツとスニーカーである。UVケアはしているだろうが、日差しの下に長時間は酷だろう。僕等は、慌ただしくマーチの洗濯に取り掛かった。放水銃から水を浴びせると、飛沫が上がり虹が見えた。「あー、気持ちいいねー!」飛沫を浴びて、千絵は無邪気にはしゃいだ。彼女といると、自分も自然体でいられる。“やはり、千絵かな?”一緒になるなら“この子しか居ないのかも知れない”フッとよぎる思いは場当たり的なモノでは無さそうだ。土埃と灰が流されると、赤がより綺麗に浮かび上がる。備え付けの掃除機で、車内もくまなく埃と土を吸い取ると、マーチはピカピカになった。「やっぱり、2人でやると早いね!ピカピカのマーチちゃん!嬉しいー!」千絵は腕を絡ませてくる。それも、自然な流れだと思わせる形で。「さて、マーチも綺麗にしたし、次はどうする?」千絵の頬を突くと、キスをして来てから、「決まってるでしょう?抱っこちゃん!」と言う。「方角を指定して。気ままに流して行こう!」「じゃあ、南西!」「よっしゃ!行くぞ!」僕達は、国道10号を走り出した。

その日は何故か交通量が多かった。国道10号を流れに任せて走行していると、「先輩、“セイラさん”ですか?“ミライさん”ですか?」と千絵が言い出した。「機動戦士ガンダムか?2大派閥だよな。少数派で“フラウボウ”と“マチルダさん”もいたが、どっちらかを選べと言うなら“セイラさん”になるよ」「うーん、やっぱりそう来るか!聡明でブロンドの髪。戦闘メカも操縦しちゃうマルチな才能。あたしもブロンドに染めないとダメ?」「千絵は、そのままが一番可愛いから、小細工はするな!」「あれあれ?随分と強い口調で、否定するのね。その心は?」「人それぞれに魅力はあるものさ。千絵は、大樹の様に心地いい時間と場所と風を用意してくれてる。妙に他人の真似なんかしなくてもいいんだよ。自然に、ありのままに居てくれれば、それでいいんだ!」「うわ!どうしちゃったの?熱でもあります?いつもの先輩らしくないよ?」千絵は額に手を当てる。「熱は無いみたい。Y先輩、何か変なモノでも食べました?」「至って普通だよ。欲を言うなら、多少、腹が空いただけだ!」「そうなら、早く言ってよ。そこを右に曲がって。スーパーで食料と飲み物を買いましょう!」千絵の誘導で、マーチはスーパーへ突っ込んだ。買い物カートを転がして、2人で店内を歩くのだが、これもごく自然に感じられる。“近い将来こうして、2人で生きていくんだろう”と考えるのが、当たり前に浮かぶのだ。「千絵、こうして毎週末に、買い物に来るのが普通になればいいよな」「どうしちゃったのよ?そりゃ嬉しいけど、やっぱり先輩、変ですよ。今日はどう言う風の吹き回し?」千絵が小首を傾げる。その仕草が何とも言えない眩しさの中に見える。「こうやって生きていくんだ!この土地でな!」「えっ!えっ!相手はあたしなの?」「そうだ!今日決めた。自分らしく生きていくためには、千絵しか考えられない!前に、千絵言ってたろう?“前世では夫婦だった”って。もう1度、夫婦やらないか?」「それって、“あたしでなきゃダメ”って事なの?」「ああ、ダメだ。呼吸する様に、ごく自然にピッタリと来るのは千絵だけなんだ。既に鈴も付いてるしな!」僕は首元を指した。「ちゃんと、指輪も買ってよね!ドレスも着させて!」千絵は半泣きで言う。「ああ、約束するよ。だから、付いて来てくれよ!」千絵は嬉しそうに頷いた。

国道に戻って、南西方向へ走り出すと、「岩崎先輩達はどうするの?あたしが“独占”しちゃったら、みんな泣くと思うけど・・・」と千絵は不安げに言った。「そうならない様に、これから思案するのさ。まずは、“ご懐妊”へ持って行く。これが、一番手っ取り早いだろう?」「でもさ、みんなで作り上げた“大奥制度”だと、あたしは“側室”なのよ。岩崎先輩には勝てないんじゃ・・・」「1番最初に“お世継ぎ”を挙げればいい事だろう?そうすれば、地位も上がるし、揺ぎなくもなる。一夫多妻制はご法度だから、既成事実さえ作ってしまえば、勝ち負けなんてフッ飛ばせる!」「でもね、でもね、みんながY先輩の子供を望んでるのよ。例え“私生児”になっても、産むつもりなの!そうしたら、あたしの立場はどうなるの?」「千絵は、“僕が選んだ奥さん”になる。これ以上、何を望む?戸籍上も入籍するんだぜ!?今の法律の下では、配偶者は1人しか認められない。それは、分かるよね?」「うん、それでも愛人関係は残るでしょう?嫌とは言わないまでも、みんなに申し訳なくて・・・」千絵は一転して意気消沈に陥ってしまった。「千絵、どうした?不安か?」無言で頷いた。「怖いの?」「違う。“相応しくない”もん!」「どうして?」「セイラさんじゃないもん!」段々と泣き声になった。適当な路側帯にマーチを停めると、僕は千絵を後部席へ押し込んだ。膝にのせて抱きしめると、「千絵でなきゃダメなんだよ。遥かな過去から、今日まで千絵を探して、やっと巡り合えたんだ。離さないぞ!」と言ってキスの雨を降らせる。少しづつ千絵も落ち着いて来たのか、舌を絡ませて来る。「あたしでいいの?このままの、あたしでなくちゃいけないの?」「そうだよ。“そのままの千絵”が欲しくてたまらない。やっと分かったんだ」千絵は首に腕を巻き付けると「本当にいいの?」と耳元で聞いた。「Yes!」「“お子ちゃま”でもいいの?もっと、大人の女性の方が良くない?」「ダーメ!」「後悔しても・・・知らない・・・から。だけど・・・、やっと・・・言ってもらえた!」千絵は泣いた。思いっきり泣いた。悲しいからではなく、嬉しくて泣いた。そんな千絵を僕は抱き続けた。

どうにか泣き止んだ千絵がハンドルを握り、マーチを再び走らせて間もなく「あれ!何よこれ!ハンドルが取られる!」マーチがフラフラとし始める。「慌てるな!しっかりハンドルを握れ!恐らくパンクだろう!あそこの路側帯へ突っ込め!」僕も助手席から手を伸ばして、ハンドルを支えた。ヨタヨタとマーチは路側帯に滑り込んだ。2人して慌てて車外へ出ると、左の後輪がペチャンコになっていた。「どうしよう。これじゃあ、どうしようも・・・」「無いって言うのか?大丈夫だ!まだ、手はあるさ!ハッチを開けてくれ。幸い、後輪だからな。1度のジャッキアップで済む!」「でも、交換するタイヤなんて積んでないのよ!」「いや、あるさ!“テンパータイヤ”が付いてる。カーペットとボードを外して見なよ!工具とセットで積まれてるから!」千絵が恐る恐る手を動かすと「これ?こんなチビちゃんで間に合うの?」と怪訝そうな顔をする。「それが、間に合うのさ。近くのスタンドまでは、充分に持ちこたえてくれるさ!さて、まずはナットを外すか!」僕は慣れた作業に取り掛かった。ナットを緩め、ジャッキで車体を浮かせてから、パンクしたタイヤを外し、“テンパータイヤ”を装着した。ナットを締め付けるまで、約15分もかからなかった。「ほえー、手際のいいこと。もしかして、経験済み?」「秋口になれば冬タイヤに、春になればノーマルタイヤに交換しなきゃ走れない国に居たものでね。これくらいは軽いよ!問題は、何がどこに刺さっているか?だよ」と言ってからタイヤの見分に取り掛かる。「あった!木ねじらしい。落ちてたヤツを運悪く踏んじまったらしいな!だが、修理の利く場所だから、近くのスタンドまで行けば何とかなる!運転を代わろう。慎重にゆっくりと走らせないと危ないからな!」タイヤを車内へ押し込んでから工具も積むと、マーチを慎重に走らせる。「もし、前輪だったら、どうしたの?」「後輪を外してから、前に持って来てやらないとダメなんだよ。“テンパータイヤ”は、後ろに付ける事を想定してる。前だったら厄介な事になってたよ!」「それでも、切り抜けるとは、流石に男子!やってくれるじゃない!」千絵がやっと笑顔を取り戻した。「この先の右手にスタンドがあるわ。そこに頼もうよ」「よし、早いに越した事はない。走行できる距離も知れてるし、場所を選んでる場合では無いからな!」僕は目指すスタンドへどうにかマーチを引き入れた。パンクの修理を待つ間、休憩スペースに座り込むと「タイヤ修理できるよね?」と千絵が聞く。「地面に接する面、“トレッド面”って言うんだが、そこに刺さっていたから、大丈夫だよ。横だったら手の打ちようが無かったがね」「どうして?」「横の面、“サイドウォール”って言われてる場所は、タイヤの中でも最も薄い場所なんだ。しかも、一番力を受ける場所でもある。そこに穴が開けば、最悪の場合“バースト”、つまり破裂するんだよ!」「破裂?!そんな事あるの?」素っ頓狂な声が響く。「空気圧が低い状態で、高速を飛ばせば充分にあり得るし、縁石に強く擦り付けても、同じ事は起こるよ。非常にデリケートなんだ。だから、きちんと手入れをしてあげなくちゃ!」「あたしみたいに?」「そうだ。千絵よりは手がかからないが、細心の注意は必要だよ」「直ったら、“抱っこちゃん”?」「勿論!」「じゃあ、早くしてもらわないと!」「まあ、焦るな。完璧に直して置かないと、帰り道に響く!」千絵の暴走を止めるのは、ひどく骨の折れる作業だった。待つ事30分で、マーチは復活した。勇んでスタンドから出ると、一路、鹿児島市内を目指す。“誰にも見とがめられない部屋”を探しに僕等は先を急いだ。

“誰にも見とがめられない部屋”で3戦を戦い、バスルームで散々遊んでから、モーテル出た頃、2人して空腹感との戦いに突入した。「あー、お腹空いた。先輩、そこを左に」千絵の誘導でラーメン店へ入った。そろそろ、豚骨にも飽きて来たのは事実だが、他に選択肢は無いのだ。「ここは、割とコッテリ味ですから、今までに無いスープを味わえますよ」「期待しよう。だが、醤油ラーメンが食べたい気もするな。“醤油ロス”から、もう直ぐ2か月になるなー!」「あたしは、逆に醤油ラーメンが想像できなくて困ってるんです。お盆に付いて行ったら、真っ先に食べたいなー!どんな感じなんだろう?」「蕎麦も美味いぞ!ざる蕎麦の大盛もお勧めだよ!」「蕎麦つゆも、当然醤油ベースですよね?」「ああ、当然だろう?刻み葱とわさびを入れて、すするのが流儀だ。“わさび味”と“とうもろこと味”と“味噌味”のソフトクリームも食べさせてやる!」「えっ!“わさび味”と“とうもろこと味”と“味噌味”のソフトクリーム?!どんな味がするんだろう?想像すら付かない!」千絵が絶句する。「清里高原で、搾りたての牛乳と清らかな空気!佐久平で鯉料理!善光寺で七味唐辛子煎餅!小布施で栗三昧!まだまだあるぞ!」と追い打ちをかけてやる。「鯉に煎餅に栗?!」「秋になれば、林檎と葡萄と干し柿とワインが加わる!ざっと言ったが、まだまだこんなもんじゃない!胃袋が幾つあっても足りないぐらいに、味わわせてやる!」不敵な笑みを浮かべて言い放つと、千絵は及び腰になった。「おデブにするつもり?そんなに食べたら育っちゃうじゃない!」「無論、回るコースにも寄るが、長野に行く以上、それなりに育ってもらわなくゃ困るんだ!“懐妊”した折に、体力を落とさないためにもな!」と言ったところで、巨大な器が届けられた。大盛の鹿児島ラーメンのご到着だった。「シメは白くまだからね!」千絵と共に箸を割った。空いた腹に豚骨スープが染み渡る。コッテリとはしているが、これまでに味わった事の無いスープは新鮮味があった。「お醤油のスープにも、バリエーションはあるんですか?」「あるよ。土地柄によっても随分違うが、鶏ガラに野菜、煮干しにカツオ、他にも店独自のバリエーションは、多々あるさ。“醤油豚骨”が流行りになりだしてるらしいよ」「えー!豚骨にお醤油?!濁った茶色のスープがあるの?!」「都内を中心に、“醤油豚骨街道”がある様だ。向こうの新しいトレンドになりつつあるよ!」「うーん、増々育ちそう。でも、“醤油豚骨”にもチャレンジしなきゃ!」千絵は貪欲さを隠さずに言った。お盆の旅が待ち遠しくなった。

お腹を満たした後、マーチは指宿スカイラインへと上った。桜島が真正面に見える駐車帯に車を入れると、2人並んで景色に見入った。「この国象徴。厄介な事もあるけど、やっぱり桜島が無いと鹿児島じゃないよな」「うん、みんな、少なからず恩恵を受けてるの。この山は、宝の山。なにしろ元気いっぱいだもの!先輩、もう1回頑張れる?」「千絵、また、病が出たか?」「うん!“抱っこちゃん”希望!と言うか、熱望!」「ここじゃあ人目に付くぞ」「大丈夫!秘密兵器があるから!車を奥へ入れ直して!」千絵がキーを放って寄越す。マーチを奥まった場所へ入れ直すと、千絵は日よけを吸盤で貼り付けて窓を塞いだ。「簡易式“誰にも見とがめられない部屋”の完成!これならいいでしょ?」千絵はすっかりその気だ。肩を竦めるしか無かった。後部席へ入り込むと、千絵は唇に吸い付いて来た。「ねえ、早く・・・脱がせて」身体をくねらせると、ホットパンツを脱ぎ捨てて、湿り気を帯びたパンティに触らせる。手を入れてかき回しながら、キスの雨を降らせる。「あー!出る!もう・・・、出ちゃいそう!」愛液がパンティと腕を濡らした。ピクピクと小刻みに身体が震えて千絵はイッてしまった。「次は・・・、タイズラ坊やを・・・、ちょうだい」小声で千絵はねだった。ブラのボックを外して、乳房を露にする。僕の好きな大きさと弾力に溢れている“お気に入り”のヤツだ。千絵は馬乗りになり、僕は乳房を鷲掴みにした。「大きい、しっかり入ってる。さあ、動くわよ!」ゆっくりと千絵が腰を使う。喘ぎ声高まるのに左程の時は必要なかった。フィニッシュにたっぷりと体液を注いで、最終戦は終わった。「これで・・・、出来る・・・かな?」千絵はぐったりと身体を預けて来た。「神様次第さ!」濡れた座席を拭いて、後始末を終えると僕等は外でゆっくりと身体を伸ばす。その時、南岳から噴煙が上がり、遅れて「ドーン!」と音が轟いた。「桜島が祝福してくれてるわ!きっと女の子よ!」千絵は確信しているようだった。「最初は、女の子か。次が、男の子?」「ええ、4人は作らなくっちゃ!」「頑張らないと、生活が大変だ!しっかり稼がないと!」「あたしも頑張らなくちゃ!4人を産むんだから!」千絵が肘で脇腹を突いた。しばらく2人して桜島を見ながら風に吹かれた。

「あなた、もうお別れなの?寂しいわ!」千絵は唇を離そうとしない。「しょうがないだろう?住まいは寮なんだから」「早く、2人で暮らしたいの!そうすれば、何も心配しなくていいのに。夜も抱き合って眠れればどんなにいいかしら・・・」「そうしたいよ。だけど、千絵の寝姿と寝相が心配だ!」「あら、全裸で抱き合うのはダメなの?」「マグマが冷えて固まるぞ!」「大丈夫よ、一晩中温めてあげるから!」千絵は中々解放してくれない。寮の手前で、既に15分もの“お別れの儀式”が続いている。「千絵、もう決めたんだから、他の女性に手は出さないよ!だから、落ち着け!」「それは、無理よ!“大奥制度”で決まってるもの!今まで関係した女の子達とは、これからも輪番で“お付き合い”をしなくちゃダメよ!子種は均等に付けなくちゃ!勿論、優先順位は変わるけど、あたしが“ご懐妊”するまでは、ちゃんと付き合ってあげて!それと、岩崎先輩と千春先輩の“承認”を取り付けなきゃ!“大奥総取締”には、あたしから“申告”しとくから!」「おいおい、そこまでやるのか?どう言う仕組みなんだ?」「それは、知らなくてもいいの!“女の問題”だから、“殿”は口出し無用!大丈夫よ!ちゃんと調整するから」キスを繰り返しつつ千絵は言う。「どうやら、自由にはさせてはもらえないのは分かったが、僕は出来れば千絵とだけに・・・」「それは、無理よ!あたしの立場も考えてよ!“正室”は、岩崎先輩なんだから!“側室”第1位にはなるけど、“正室”のメンツは潰したらダメ!」「うーん、そうなのか?」「そうなの!それは承知して!」と言うと舌を絡ませてくる。僕は無意識に千絵の胸元に手を触れる。Tシャツなので、隙間から乳房に触れるのは無理だ。すると、手を入れやすい様に裾を持ち上げた。千絵の乳房は、大きさ・形・弾力共に、僕の好み。千絵もそれは承知している様だ。「なごりの“おっぱいちゃん”をあげるから、我慢するのよ!」ディープキスを繰り返して、やっと寮の玄関前に車を着けた。「バイバイ、また明日ね!」「おやすみ」と言ってから車を降りた。千絵は手を振りながら、駐車場へ車を回した。「ノー天気でいいわね!みんな必死に働いてるのに!」吐き捨てる様な声が聞こえた。“緑のスッポン”こと、高山美登里だ。明らかに敵意むき出しの表情をしている。レジ袋を下げているところを見ると、買い出し帰りだろう。僕は、意に介すことなく寮の玄関に向かった。「O工場の恥晒しもいいとこよ!真面目に働きなさいよ!」美登里は尚も言って来るが、僕は答えなかった。感情的になっている以上、まともな話し合いは無理だろう。“三十六計逃げるに如かず”で、僕は部屋へ戻った。克ちゃんと吉田さんは、相変わらず爆睡していた。鎌倉は居ない。「Y,インターフォンだ。5番に出てくれ」田尾が呼びに来た。「誰だ?」「面倒臭いヤツじゃねぇか?」肩を竦めて言う。この手のリアクションの場合、まず間違い無く面倒臭い事に巻き込まれる。相手は“緑のスッポン”だった。「さっきはどうも。今、時間取れる?真面目に話したいんだけど」「悪いが、他を当たってくれないか?こっちもやる事あるし」「お願い!10分だけでいいから!」“緑のスッポン”に喰い付かれたら、最低でも1時間は解放してはもらえない。僕は、あれやこれやの苦情やわがままに付き合う気分では無かった。「田中さんに代わるよ。苦情とかは担当外なんでね」「そうじゃなくて、仕事の話!頼むわ!お願いします!」流石に“スッポン”だ。諦める事を知らない。「10分以内にしろよ!こっちだって、色々とあるんだから!」「OK、10分でいいから、出て来て!」止む無く、玄関先へ出ると“スッポン”が走って来た。「あなたは、何故、早番だけなの?」「これでも、パートさん28名を預かる立場なんでね。仕事は勿論、勤怠や時間管理もやらなきゃならない!これだけの大兵力を統率するんだ。当然、後工程との調整や出荷の段取りもある!効率良く回すには、それなりの“方策”は必要性があるだろう?これから、次月に向けての段取りと方策を思案したいんだ!もう、いいか?」「待って!待ってよ!引継ぎの期間はどれくらいだったの?」「2週間さ。1週間で仕事全般を覚えて、残りの1週間は、実質的な指揮の執り方の実践。後は、“任せるよ”でおしまい。上からは、“2ヶ月は自由にやってみろ!”って言われて、丁度2か月目になる。他には?」「たったそれだけ?!それだけで、パートさん28名を預かってるの?」「ここでは、当たり前だろう?“見込まれた”か“計算できる”と踏まれれば、容赦と言うか、否応なしに“責任ある立場”に置かれるんだ!後は、結果次第だよ。結果さえ出せば、自由にやらせてもらえる。何か不満でもあるのか?」「“マルチレイヤーパッケージの品質保証をやってくれ!”って言われたのよ!データー取りから記録、管理、営業との折衝まで!あたしに出来る訳無いのによ!」美登里は唇を噛んでいた。「ほお!見込まれたものだな。やればいいじゃん!それだけの“器量がある”と岩留さんが認めたなら、乗らない手はないぞ!」「アンタはいいわよ!あたしは女なのよ!そんな責任、背負えると思うの?」「ここは、実力の世界だ!O工場の様に“年功序列”じゃない!力のある者は、どんどん責任のある地位へ引き上げてくれる。それを鼻から“無理です”って蹴るのは、自ら墓穴を掘るのと同じだ!“ピンチをチャンス”と捉えられないなら断りな!それなりの仕事しか回してもらえなくなる。即ち、“交代勤務でヘロヘロ”にされるのがオチだ!自由を謳歌したければ、引き下がるだけじゃ栄光は掴めないぜ!」美登里は考え込んだ。断れば、岩留さんに徹底的に叩かれるだけで終わる。反対に、この機に乗じて受ければ、大変ではあるが他の派遣隊の連中よりは、上で仕事が回せるのだ。最終判断は、美登里が下さなくてはならない。僕は、美登里の性格上、挑まれれば“受けて立つ”と踏んだ。「サーディプ事業部で“安田順二に雷を喰らって無いヤツが居る”って噂だけど、アンタの事?」「ああ、幸いにもその通りだよ。向こうは、落としたくてウズウズしてるがね」「それだけ、努力してるんだ。あたし、何も見えてなかったわ。確かに、ここは実力の世界。見込まれたなら、受けて立たなきゃ礼を失するわね!いいわ!受けて立つわ!アンタや鎌倉の様に、あたしにも自由を謳歌するチャンスだもの!」予想通り、美登里は受けて立った。「結局、何が聞きたかったんだ?」「上に行けるかよ!アンタはチャラチャラと遊んでる風にしか見えなかったけど、裏では渾身の力を振り絞って戦ってるのがやっと見えた。ならば、あたしも続くまでよ!」「ほう、やる気になられたか。まあ、自己責任だからやれるだけやってみな!そうすれば、違う景色が見えてくるだろうよ!」僕は踵を返すと寮の玄関へ向かって歩き出す。「ここに“ドップリ”と浸かるのも悪くはないぜ!」と言って右手を振る。「困ったら話、聞いてくれる?」美登里は聞いて来た。「時と場合によりけりだ。だが、まずは、自分で戦って見な!援軍が必要か?は、こっちで決める。どの道、事業部が違えば口出しはご法度だ。己を信じて突き進むんだな!」もう1度振り返ると、不敵に笑う彼女が居た。「ありがとう。これで、迷いは振り切れた!先輩、共に戦おうよ!」「そんなセリフを聞くとは思わなかった。だが、O工場では、絶対に出来ない事をやれるんだ。それを忘れるな!」そう言うと僕は、談話室へと入っていった。「さて、鎌倉のヤツどうしてるかな?」タバコに火を点じると、窓の外を見た。梅雨の晴れ間が広がっていた。夕闇はまだやって来ていなかった。