limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

New Mr DB ⑪

2018年12月26日 15時57分13秒 | 日記
「¨機動部隊¨よりミスターJ、ベンツは、第三京浜へ転進しました!当隊は、予定通り東名へ直進し、Z病院周辺へ向かいます!遊撃隊、健闘を祈る!」「了解!先発隊、発進!ベンツを確認後、後発隊も追尾を開始します!」第三京浜に¨AD¨の社長がベンツを乗り入れる前、3台の車両が慌ただしく走り出した。彼らの目的は、文字通り¨壁¨を作る事だった。そして後続の3台がベンツを追い上げる。遊撃隊の任務は、¨ペースを乱す¨事なのだ。車速が安定しなくては思うような蓄電は叶わないし、社長が癇癪を起こして苛立てば尚更良かった。実際、社長はイライラが溜まり爆発寸前であった。大型トラックを巧みに盾として使い、前を塞いだ遊撃隊の行動は社長の運転を見事に狂わせていた。「クソ!邪魔な車共のせいで前に進めん!クソ野郎!一気にぶち抜いてくれる!」強引に右側へ踊り出すと、出し抜けにクラクションとパッシングの嵐を食らった。「社長!ランボルギーニです!相手が悪すぎます!」後ろに張り付いた3台に邪魔されたランボルギーニは、酷く苛ついていた。慌てて中央に戻ると、爆音を響かせて走り去る。その直後、覆面が猛然と追跡を開始して追い抜いて行った。「お手柔らかに走って下さい!アイツに追われたらアウトです。電圧も変動が激しく蓄電量も安定しません。社長!我慢して下さい!」サイバー部隊員が悲鳴を上げる。「分かっとる!!うーん、前の3台さえ抜き去ればペースも保てるのだが、中々追い抜けない!後ろはどうなってる?」「車間は大分空いてます。やはり3台が連携して、前進を阻んでます!」「分かった。ケツはどうでもいい!ともかく前だ!あの3台を追い抜かなくては、電気を得られん。おい!蓄電率はどうなっておる?」「まだ65%前後です。急ぐ必要はありません。定速を保った方が電圧も安定して蓄電量も増えます。95㎞前後を維持して下さい!」「仕方ないな!!分かった。お前らの顔を立てよう!¨急いては事をし損ずる¨か!だが、みなとみらいに着いたら俺自らの手で葬ってくれる!」頭から湯気を立てながらも社長は我慢を選んだ。本当は、スカッと飛ばして一気呵成に叩くつもりだった。だが、蓄電量を考えれば部下達の方に軍配は上がる。仕方なくベンツは、左車線へ移り車速を安定させた。¨AD¨の社長にして見れば¨信じられない¨我慢であった。「まあ、いい。¨司令部¨を壊滅させるためだ!今の我慢が攻撃力を高める唯一の手だ!電圧はどうなっている?」「安定しました。蓄電量も安定。5%程度の上乗せが見込めそうです!」「よし!85%を目標にする!待っておれ!ミスターJ!今度こそ俺の勝ちだ!」ベンツは、第三京浜をひた走った。

「ふむ、ペースが落ちたな。リーダー、遊撃隊の策は当たりの様だ。¨挟み撃ち¨が効を奏しておる。Nよ、このペースだと蓄電量はどのくらいになる?」ミスターJがPCの画面を見ながら問う。「80%あるか無いかでしょう。撹乱波の減衰率を考慮すると、シールドには70%のエネルギーが到達するかどうかですね。突破される恐れはありますまい」「私もそう思います。河口の橋からの距離と、エネルギー量から推測してみましたが、U事務所の様な被害は出ないでしょう!」F坊の結論も同じだった。「跳ね返してやる際は、そのままか?」「いいえ!増幅して¨倍返し¨にしてやります!恐らく、電子機器も車も動けなくなりますよ!」¨車屋¨がバッファー回路に増幅器を繋ぎながら言う。「そこを米軍が取り押さえます。海路で横須賀へご招待でさぁ!」¨スナイパー¨が嬉しそうに言う。「万事予定通りだな。遅れてくれた分、人通りも減った。闇から闇へ葬るには絶好のロケーションになった。リーダー、遊撃隊の次の任務は指示してあるか?」「はい、高速を都心方向へ引き返して、自動車修理工場へ“侵入”する手筈になっています。“機動部隊”の予備車両は、八王子を出ました。撹乱波発生器2台を奪取する計画です!」「よし、明日の朝、横須賀基地の正門前へ運ばせろ!宛先は“法務部のクレニック中佐宛て”だ!木箱へ入れて丁重に進呈しろ。それにしても、久しぶりだな。クレニック女史が“中佐”とは、1年半前の銀座作戦の際に、横田まで送り届けた彼女が奇しくもまた現れるとは。因縁めいた再会だ」ミスターJは遠い目で思いをはせた。「遊撃隊より、ミスターJ、ベンツは後5分前後で“みなとみらい”へ到着の見込みです!」「よし、分かった!総員非常態勢!遊撃隊は、直ちに次の任務へ向かえ!」「了解!幸運を祈ります!」「来るぞ!警戒を怠るな!」ミスターJが指示を飛ばす。“司令部”は緊張と殺気に満ち溢れた。

「蓄電率は?」「75%です。予備を投入すれば80%に達します」「いよいよ、みなとみらいだ!“司令部”の位置を確認しろ!」「電波を探知!港沿いに進んで下さい。ホテルの高層階に“司令部”がある模様。観覧車の近くです」「丁度、人影もまばらだ!見咎められる心配も無い!攻撃用意!予備蓄電池を接続しろ!」“AD”の社長は不敵な笑みを浮かべた。「泣きっ面が目に浮かぶわ!灰燼と化すのだからな!」「“司令部”の位置を確認。帆のようなホテルの中層階の一室にあるものと推測されます。河口の橋へ着けて下さい。そこから一点集中で狙えます」「とうとう来たか!長かったぞ!」社長はベンツを河口の橋へピタリと着けた。「上方38度、左へ12度に電磁波及び通信波を感知。“司令部”です」「サンルーフを開けよう。直接照準でターゲットをロックしろ!発射スイッチは俺が押す!」社長は運転席から降りると、ホテルを見上げた。「ふふふふ、ミスターJ、悪く思うなよ!お前らが邪魔をするのが悪いんだ!」ひとしきりタバコを吹かすと、運転席へ座り直す。「攻撃準備完了しています」「よし!行くぞ!」社長はスイッチを手にした。「喰らえ!」撹乱波発生器が唸りを上げた。

「ミスターJ!白いベンツが現れました!河口の橋へ着けています!」「退避可能な者は、窓から離れろ!“シリウス”通信回線とシステムのシャットダウンは済んでいるか?」「はい、完了しています!帯電防止シートで覆います!」「シールド出力全開!バッファー回路正常!さあ、来るなら来い!“倍返し”にしてくれる!」N坊と“車屋”の目が光る。「サンルーフを開けています。直接照準で来るつもりでしょう!」暗視スコープを覗いているF坊が報告する。「F、退避しろ!N、“車屋”、任せるぞ!」ミスターJは物陰へ退避をしつつ言う。「シールドに変形を確認!撹乱波到達!」天井の照明が消えかかる。「そうはさせるかよ!喰らえ!“倍返し”だ!」N坊がノートPCのエンターキーを叩く。青白い光が一瞬部屋を照らした。F坊が窓際に駆け寄る。「ベンツに“倍返し”完了!車は完全にアウトです!あっ!兵士がベンツを取り囲んでます!乗員を降ろして後ろ手に縛り上げました!総員4名。連行されていきます!」「横須賀へご招待だ。ベンツも押収する手筈になっている」“スナイパー”が笑いながら言う。「被害は?」「ありません!シールドで受け止めて、跳ね返しました!シールド解除します!」N坊も笑いながら言う。「レッカー車が到着しました。ベンツを押収する模様です。連行された4名は、ボートへ移されて沖の短艇へ向かっています」F坊も笑いながら言う。「作戦成功だ!みんなよくやった!」ミスターJが高らかに宣言した。「ゲス共は、米軍の手に落ちた。今晩の仕事は終わりだ。リーダー、缶ビールを配ってくれ!乾杯だ!」“司令部”では盛大な祝杯が上がった。「さあ、第1段階の作戦は完了した。みんな、安心して休んでくれ!明日は、また別の“一仕事”が待っている!リーダー、Z病院へ“作戦成功”のメールを打ってくれ。他の者は各部屋へ戻ってくれ。疲れただろう。お疲れ様!」「うぃーす!」ミスターJはビールを飲み干すと、携帯を手にした。メールを1通送信する。「さて、枕を高くして寝るとするか。リーダー、お前さんも休め。明日からまた忙しいぞ」「はい、ではおやすみなさい」¨司令部¨に静寂が戻った。

「喰らえ!」撹乱波発生器が唸りを上げた次の瞬間、悲鳴にも似た声が響いた。「シールドです!あっ!跳ね返して来ます!!」青白い光がフラッシュの様に瞬いた次の瞬間、バシッ!と言う鈍い音と共に、全てが止まり闇に包まれた。「なっ、何だ?!」社長はベンツのエンジンを始動しようとするが、ベンツはウンともスントモ言わなかった。「どっ、どうした?」「撹乱波を打ち返されました!全ての機器がアウトです!逃げま・・・」と言った時にはベンツは兵士達に包囲されていた。拳銃を構えてゆっくりと包囲の網が絞られる。「なっ、何者だ?!」「米軍の海兵隊でしょう!完全に囲まれてます!」「何故、米軍に包囲されなきゃならんのだ!」社長は事態を全く飲み込めていない。兵士達は、ベンツのドアを開けると拳銃を突き付けたまま、車から降りる様に身振りで促した。「降りろと言ってます。両手を挙げて¨抵抗する意思が無い¨事を示した方が・・・」「分かっとる!!」社長の癇癪が爆発した。救命胴衣を着せられると、後ろ手に縛り上げられゴムボートに乗せられた。「何処へ連れて行く積もりだ?!」沖合いには短艇が待っている。「横須賀でしょう。我々はどうなるんです?」「分かれば苦労はせん!!¨司令部¨に米軍が絡んでいるとは、想定外だぞ!ミスターJは何を企んでいるんだ!!」社長の癇癪は治め様がない。4人は、そのまま横須賀基地に連行され、1室に収容された。2段ベッドが2基と椅子とテーブル、電話があった。社長は、受話器を取ると¨AD事務所¨へ連絡を取ろうと躍起になった。散々苦戦して事務所へ電話を繋ぐと「俺だ。何故か分からんが、米軍に拘束された!明日の朝イチで誰かを横須賀基地へよこせ!」と喚いた。「べっ米軍?!どうなっているんです?」サイバー部隊長は驚愕して声が裏返しになった。「聞きたいのはこっちだ!!2人程¨身柄引き受け¨に派遣しろ!!¨素敵なホテル¨に滞在するのは、今晩限りにしたい!弁護士軍団に至急連絡して手を回せ!!」「はっ!」「それから、姉貴にも救助を要請する様に伝えろ!確か知り合いが居たはずだ!あらゆる手を尽くせ!」「御意!」社長は湯気を立てながら電話を切った。「仕方あるまい、今晩は我慢しよう。明日になれば、事務所から救援が来る。¨素敵なホテル¨に1泊だ!」社長はベッドにひっくり返った。他の3名は、室内を物色しドアの外を伺った。「見張りが2名、銃を持って立ってます。窓には鉄格子が嵌められてます。さすがに逃亡は無理でしょう。基地内では分が悪すぎます!」「慌てるな!明日には出られる!余計な騒ぎは起こすな!後で面倒になる。1晩我慢しろ。そうすりゃあ¨無罪放免¨だ」そう言って社長はいびきをかき始めた。¨明日になれば¨誰もがそう思った事だったが、4人が解放されるのは随分先になろうとは思いもしなかった。

深夜2時、都内某所の自動車修理工場。スクラップ寸前と化した黒いベンツ2台を遊撃隊員が取り囲んでいた。「おい、あったか?」「いや、見当たらない。取り外したらしいな!だとすると、建屋の中か?」遊撃隊員は、建屋をこじ開けると静かに内部を伺う。「あったぞ!配線毎ベンツから降ろしたんだ」「幸い、木箱に収まってる。そっくりそのまま頂きだ!」遊撃隊員達は、慎重に木箱を運び出すと、¨機動部隊¨のトラックへ積み込んだ。「さて、¨送り状¨を張り付けて、悪いが横須賀基地まで頼むぜ!」トラックの運転手に依頼する。「了解だ!正門へ置いてくりゃあいいんだな?」「ああ、¨精密機械につき取り扱い注意¨で頼む!」「分かった!宛て先は間違いないか?」「見れば分かるよ。兵士にも手伝ってもらえ。じゃないと受取人に怒られるって言えば、文句は言わないさ!」「じゃあ、確かに預かった!八王子でまた会おう!」「気を付けてな!」トラックは横須賀基地へ向けて走り去った。「さて、俺達はまたまた横浜へとんぼ返りだ!」「あんまり飛ばすな!覆面に捕まるぜ!」不敵な笑みを浮かべた彼らは、みなとみらいを目指して走り出した。

午前6時、¨機動部隊¨のトラックは米軍横須賀基地の正門へ着いた。すかさず兵士が誰何して来たが、英語が堪能な隊員は兵士達に手伝いを依頼して¨荷物¨を降ろした。「中佐殿へ渡せばいいんだな?」「ああ、そうだ。余人が勝手に手を出すと、厳罰モノらしいぜ!ウチのボスからも厳命が下ってるんだ!」「分かったよ。俺達も厄介はゴメンだ!確かに預かった。サインはこれでいいんだな?」「OKだ。朝っぱらから済まなかったな。これで俺も家に帰れるよ。サンキュー!」トラックは反転して走り去った。「それにしても、Japaneseはよく働くな。アイツらいつ寝てるんだ?」「それより、交替の時間が迫ってる。引き継ぎ書に記載しとけよ!中佐殿が、お目覚めになり次第届けろとな!」兵士達は眠い目をこすりながら、引き継ぎ書へ書き込みを入れた。肝心のクレニック中佐は、既にお目覚めになっており、朝食を取っていた。「おはよう、ケイコ。昨夜、連行した4人と車は何なの?」「おはようございます。中佐、実は¨ある電子装置¨を密輸して使用していたんです。首都高での¨ECM¨騒ぎで使われたモノと同じ装置です!」「ケイコ、¨ある電子装置¨とは、まさか¨中国製¨ではないわよね?」「まだ、調査も検証もしてませんので、ハッキリとはお答え出来ませんが、可能性はゼロではありません」「分かった。食事が済んだら直ぐに調べましょう!少佐、おはよう。朝から大車輪でかかる仕事があるわ。打ち合わせしながら食事をしましょう!」「失礼します。クレニック中佐、おはようございます!正門に中佐宛ての¨荷物¨が届いております。如何致しましょう?」「軍曹、¨荷物¨って何なの?」「木箱が2つ、それもかなり重い、精密機械の様です」「誰が送り主なの?伝票は?」「伝票はこちらです」軍曹から伝票を受け取った中佐は、全身が凍りついた様な感覚に襲われた!「木箱は何処にあるの?」中佐は立ち上がり誰何した。「食堂の外まで運んであります。何処へお持ちしましょう?」軍曹が尋ねる。「軍曹、直ちに木箱を開けなさい!少佐、ケイコ!行くわよ!」中佐は外へ飛び出した。フォークリフトが木箱を乗せて待っている。軍曹は、木箱を降ろす様に命じると、バールを手に木箱をこじ開けにかかる。「中佐!どうされました?」「この伝票を見て!¨シャドー¨からの贈り物よ!私の勘が正しければ、中身は恐らく¨ある電子装置¨のはずよ!」木箱が開けられると、配線付きの電子装置が現れた。「これは…、例の¨電子装置¨だわ!何故ここに?しかも完全な形で!」オブライエン少佐が絶句した。「やはり、¨シャドー¨からだわ。しかも、¨中国製¨!ペンタゴンの連中なら狂喜乱舞する代物だわ!それにしても、何て手回しのいい連中なの?」中佐は呆然と言った。「中佐、何故¨シャドー¨からだとお思いに?」スタイナー少佐が尋ねる。「筆跡よ!伝票の筆跡が1年半前に筆談した人物のモノと同じなの。このクセのある筆記体!忘れた事はないのよ!そうだわ!ただ送り付けるだけじゃないはずよ!伝票の何処かに細工が隠れているはず。軍曹!¨荷物¨は丁重にオフィスへ運び込んで!まずは、謎解きよ!」中佐達は食事をあわただしく済ませると、オフィスで伝票を観察し始めた。「送り主は、東京の自動車修理工場になっています」「つまり、首都高で騒ぎを起こした車は、そこにあると言いたい様ね。¨電子装置¨を送り付けたのは、表立って動かないで欲しいと言いたいのね。まだ、彼等のメッセージは分からないけれど、¨意思¨はそんなところかな?」「一番の要求は何でしょう?」「何かしらあるはず。それもさりげなく伝え様としているはず。あれ?何よ!穴が開いてるじゃない!虫ピンで突いた様な小さな穴が!」中佐は伝票を透かして見て異変に気付いた。「アルファベットの文字を突いた様ね。文字を拾うわよ!」拾い出されたアルファベットから単語を推測する。しかし、これが意外に骨の折れる作業だった。¨three-week¨と読み解いたのは、スタイナー少佐だった。「3週間?どう言う意味合い?」「恐らく3週間は拘束しろ!って事ね!」中佐が言う。「その間に¨何かしらの手¨を打つつもりでしょう。その見返りが¨電子装置¨なのよ。無傷で持ち帰れれば、大変な価値があるわ!」「中国が我が国のテクノロジーを何処まで¨モノ¨にしているか?を子細に調べられます!」スタイナー少佐も同調する。「でも、まだ足りないわ。我々に¨待った¨をかけるには、決定的な証拠が!木箱の中身は¨電子装置¨だけかしら?」中佐は改めて木箱を隅々まで調べ直した。「あった!DVDが3枚。ケイコ、中身を調べて」中佐はDVDをオブライエン少佐に渡した。「画像ファイルがあります。再生してみますね」それは、車載カメラの画像で¨スナイパー¨の車が襲撃を受けた際の車内の様子が、克明に記録されていた。音声はカットされていた。「生々しい状況だわ。電子機器は殆どアウト。¨電子装置¨の威力を見せつけられるわね。他の画像ファイルも再生できる?」画像は監視カメラのモノに切り替わった。黒のベンツが襲撃を仕掛ける様子が、ありありと見て取れた。「首都高での襲撃の様子は、これで手に取る様に分かる!他には何が入っているの?」「車検証の写しと、書面ですね。車検証の写しから、所有者が分かります。これって、昨夜連行した男ですよ!弁護士事務所の社長です!」スタイナー少佐が驚きの声を上げる。「何となく見えてきたわ!」クレニック中佐は笑みを浮かべながら言う。「首都高での襲撃の様子と、この¨電子装置¨の威力を証明するだけの証拠を付けて来たと言う事は、¨我々に替わって捜査した¨から手を引けと言いたいのね。彼等が集めた証拠は確かだわ!¨電子装置¨も無傷で提供するから、深入りはするな!と言ってる。ただ、密輸については確証が得られなかったから、証人4名を寄越した。この件は、国際的な権益と軍事機密が絡む事だから、軍で処理して欲しい。理にかなったモノ言いだわ!」「¨シャドー¨のボスは、相当に切れる人物ですね。首都高での一件は警視庁に問い合わせるしかありませんでした。しかし、日本側も我々に対してここまで情報開示はしないでしょうし、¨電子装置¨もどうなっていたか分かりません。¨シャドー¨は実にフェアに¨取引¨を持って来ています。我々の顔をしっかり立てながら」スタイナー少佐が感嘆していた。「それで¨3週間¨の拘留依頼。密輸については、まだ明らかな点が見つかっていない。妥当な¨取引¨だわ!こちらの穴を埋める代わりに、時を稼がせろと言いたいのね!いいわ。この¨取引¨は成立よ。¨シャドー¨のお手並み拝見させてもらったわ!拘留については、彼等の要求に答えましょう!」クレニック中佐は苦笑しながら言った。「それにしても、また、彼等に¨カリ¨を作ってしまったのは、悔しいわ!」「4名の容疑者に対する取り調べに関しては、どうされます?」「極秘裏に連行した以上、我々の法に則って取り調べを行うわ!弁護人の選定から、手続きに至るまで統一軍事法廷法の定めるところでいいわ!引渡しには応じないでよろしい!そもそも、彼等が居る事を公表する義務はない。知らぬ存ぜぬで通しましょう」クレニック中佐は、ミスターJからのバトンを受け取った。彼女は携帯を取り出すと、1通のメールを送信した。「無事に連絡が着けばいいけど。さあ、何から喋ってもらおうかしら?」彼女は既にファイティングポーズを取り始めていた。

“司令部”にメールが着信した。ミスターJは、無言で文面を追う。「どうやら、承知してくれた様だな。これで時間を稼げる。次は“法律事務所”の乗っ取りだ!さて、まずは調べモノから始めなくてはならん!」ミスターJは、PCを起動するとデーターに目を通し始めた。「誰が、何時、どうやって、撹乱波発生器を持ち込んだのだ?」次々と書面を映しては、文面を丹念に追う。密輸の記録を追っていた。「データーに無ければ、事務所の金庫の中かも知れぬ」新たな1日はこうして始まった。