渡辺義一郎氏が33歳の時に自費出版した「越後奴奈川姫伝説の謎」は、たった800冊しか出版されなかった幻の名著。
新潟県内のヌナカワ姫に関する口碑を丹念に調べてまとめた唯一の本といっていい。
古事記に記述のある日本最古のラブレター、すなわち出雲の八千穂神とヌナカワ姫の求婚問答歌の部分だけを読むと、出雲とヌナカワの関係性は友好関係に読み取れるが、口碑からは出雲東征によるヌナカワ郷の征服を伺わせる悲劇の歴史が浮かび上がる。
私はさらに考古学の視点も入れてヌナカワ姫伝説の検証をしているが、検証を重ねるほどに悲劇の伝説に信ぴょう性が高くなっている。
最近の糸魚川で流布されている、「ヌナカワ姫は出雲と連合して北陸一帯から山形県の一部を治めていた」という説が本当なら、糸魚川には弥生時代の墳丘墓群や古墳時代の古墳群、拠点遺跡などの裏付けがありそうなもんだが何もないのだ。
真偽のほどはヌナカワ姫本人と当時の関係者に聞くしかないのだが、公平な立場で真摯に検証を進めていきたい。