昨今のヒスイ業界では勾玉が過剰生産気味・・・と思う。
古い職人さんに聞くと、10年前より値段が安くなっているそうだ。
一昔前の糸魚川ヒスイといえば、宝石質のヒスイ原石でペンダントトップやネクタイピン、帯留めなどが作られて高値で売買されていた時代があった。
ところが宝石質のヒスイが枯渇し始めてからは、宝石質のヒスイでなくてもそれなりに売れる勾玉が大量に作られるようになったのだと思う。
小滝産のヒスイで作った磨製石器ペンダント。
表から見ると綺麗なヒスイだが、裏から見ると・・・
真っ黒に見えるのは角閃石という不純物で、ヒスイに比べると柔らかくて見栄えが悪いので、こんなヒスイで勾玉を作る人はいない。
しかし石器ならかえって迫力が出るのだ。
誰でもヒスイ製品が気軽に買えるネット販売の出現によって、さらに勾玉の大量生産と販売に拍車がかけられていった・・・のだろう。
そして売れ残りの勾玉が、ネットオークションで叩売りされていく・・・。
ネット販売のサイトを観ると、恐らく中国あたりで作られた不格好な勾玉が異常な安さで売られていたりする。
もちろんぬなかわヒスイ工房でも勾玉は作るが、人と同じことしていても面白くないし、現状のヒスイ製品の売られ方、扱われ方に心が痛む。
そんな理由から、これまで誰も作ったことのない商品を開発しているが、勾玉ばかりがウリじゃないぜ!と、得意の縄文スタイルが評価されつつある。
ヒスイ以外の糸魚川産の面白い石材を使ったり、石器をアクセサリーにアレンジしたりしているが、これが面白くて仕方ないのだ。
赤碧玉(赤玉・鉄石英)で作った磨製石器ペンダント。
色んな色が混ざってサイケな感じが、面白い風景と思うのは私だけ?
こんな石もこれまでの勾玉の概念だと商品価値のいない駄目な石ということになるが、私は二つとない貴重な石だと思えてしまう・・・。
特に最近は石笛の他に磨製石器のペンダント作りに励んでいる。
糸魚川産の蛇紋岩類の石器は、3万年も前の旧石器時代に長野県の野尻湖のナウマン象ハンター達が珍重していた。
縄文時代に入ってからは木工用の石器として磨製石器が作られるようになり、糸魚川は国内有数の磨製石器の生産拠点となっていったようだ。
糸魚川の縄文人だって、勾玉だけが俺たちの作るものじゃないぜ!って言っている・・・と思う。
面白いことに、糸魚川産蛇紋岩類の石器が副葬品として出土しており、魔除けや威信財としての価値もあったようなのだ。
実際に実用には使えそうもない小型の磨製石器に孔が開けられている出土品もあり、アクササリーとして使用されていた可能性も推測されている。
数千年の時を経て、魔除けの石器を復活させたのである。
ご先祖も喜んでいる・・・かな?