デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/7月13日(日)~7月19日(土)

2008-07-20 00:20:09 | 入賞発表
■7月13日(日)~7月19日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★宵山の祇園ぎおんへ阪急線/桑本栄太郎
祇園祭は、一度は訪ねてみたい日本の代表的な祭りである。宵山には、本祭りの山鉾もすっかり建てられて駒形提灯に灯が入れられ、コンチキチンの祇園囃子に浮き立つ。阪急線に乗り込んで来る人は、大勢の浴衣姿もあって、みんな祇園へと流れていく。「阪急線」をためらわず使って新鮮。「宵山の祇園ぎおんへ」に工夫があって、艶が出た。(高橋正子)

【特選/5句】
★彫り深き雲来て風鈴鳴らしたり/藤田荘二(信之添削)
「彫り深き」が作者の主情であって、「雲来て」に続き、「風鈴鳴らしたり」となれば、さらに作者の主情が明らかとなる。「雲」と「風鈴」とのイメージが鮮明なので、写生を超えての、作者の思いを読み取ることが出来る。新鮮な句だ。(高橋信之)

★梅雨雲を拓きつつ入る甲斐盆地/川名ますみ
甲斐盆地は高い山の連なる中の盆地である。低く垂れ込める梅雨の雲を、それこそ「拓きつつ」青嶺に囲まれた盆地へと入って行く。リアルな実景を見せてもらった。(高橋正子)

★朝顔の今朝の一番青開く/篠木 睦
朝顔の開くのが、毎朝の楽しみである。今日一番に開いたのは、すずしい青。朝のすずしさが実感できる。(高橋正子)

★河出合い青葦の水響きあう/大西 博
二つの河、具体的には、一級河川の重信川と道後の山奥から流れてくる石手川の出合いを詠んだもの。川の出合うところに、葦が青々と育ち、快いすずしい水音がする。「響きあう」でこの句が活きた。(高橋正子)

★風蘭を吊るすや風のきたりけり/小河原宏子
細く白い糸様の花が可憐な風蘭。軒先や木の下枝に吊るすと、その風情に涼が生まれる。また、涼風が吹いてくる。朝顔もそうだが、夏の暑さを涼しく感じさせてくれる日本のいい生活文化。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★朝露を零しゴーヤの初生りを/古田敬二
朝露が置いた初生りのゴーヤ。「零し」に朝露の「みずみずしさ」、「すずしさ」が読める。自分で育てたものならいっそうのこと、すずやかな思いだろう。(高橋正子)

★水切りの音の涼しき今朝の供花/黒谷光子
お供えの花の水切りをしてすがすがしい朝を迎えます。毎日のおつとめご苦労さまです。水の音、鋏の音が涼しそうです。(池田多津子)

★空映る水を離るる蜻蛉かな/竹内小代美
やごを育んだ水底、空を映す水面、透く羽を風にのせ飛び立つ蜻蛉。全てが澄明な小景に、天地の恵み、命や季節の動きが見えます。(川名ますみ)

★かなぶんの緑一閃遠く去る/網本紘子
かなぶんの動きがシンプルに詠まれて清清しいと思いました。(竹内小代美)

★大皿に男の手料理夏野菜/吉川豊子
大皿に夏野菜が新鮮に大胆に盛られている。女性とは違う食材をそのまま生かした男性の料理が見事に詠まれていると思いました。(竹内小代美)

★山路きて靄の晴れ間の清しけり/大給圭江子
山は早発ちが原則です。朝靄が広がる中を出発し、しばらく歩いていくと靄が晴れて下界の風景が広がってきました。思わず深呼吸して、その景色を堪能すべく、しばし立ち止まります。清新な山歩きの喜びを詠われた句です。(多田有花)

★軒風鈴ちゃりんと降ろし日を仕舞う/甲斐ひさこ
盛夏の一日、涼風をとらえて軽やかな音を届けてくれた風鈴。一日の終りに感謝の思いを込めて軒からはずし、屋内にとりこみます。今日一日の日のしめくくり、丁寧に日々を送られているさまが伝わってきます。(多田有花)

★余白無き青き葉の間にはちすかな/小口泰與
池の面に葉を広げている蓮、水面が見えないほどそれらの葉がぴったりと寄り添って広がっている間にぽつぽつと顔を出している蓮の花たち、それらの様子がよくわかります。(多田有花)

★朝霧の顔にぶつかる奥津峡/宮本和美
奥津峡は岡山県、吉井川の上流の奥津川が花崗岩の峡谷を浸食してできた、変化に富んだ渓谷です。夏は新緑とカジカで名高く、ここの甌穴は、「東洋一の甌穴」として有名です。深い霧に包まれた奥津峡を訪れられたときの感動が「ぶつかる」で見事に表現されています。(多田有花)

★分去れの北国街道落とし文/大山正子
中山道追分宿のすぐ近くにある北国街道との分岐点が「追分の分去れ(おいわけのわかされ)」です。長旅の途中で親しくなった旅人同士が、別の行く先を前に別れを惜しみ、ともに袂を分けて旅を続けたといわれるのがその名の由来です。秘密の手紙を道端に落とし、他人に渡した「落とし文」に由来する名を持つオトシブミ、この二つの名前がよく響きあって句の世界を広げています。(多田有花)

★パン焼く匂い工房前は涼しかり/志賀泰次
パン工房前にこぼれてくるパンの香ばしい匂いは、一瞬、暑さを忘れさせるほどの強い印象で、通る人を惹き付けます。(臼井愛代)

★夏の夕水色となる残り空/小西 宏
暗くなる前のひととき、やわらかな水色の空を見せてくれる夏の夕暮れの優しさを思います。(臼井愛代)

★月涼しデモの漁師の住む村に/柳原美知子
昼間は、デモという抗議行動に参加した漁師さんたちの村も、夜には涼しげな月に照らされて安らかです。漁師さんたちの生活の安寧を願う作者の気持ちが伝わってきます。(臼井愛代)

★校庭に光残して夏休みへ/池田多津子
夏休みとなり、子供たちの居ない校庭には、夏の光だけが満ちて静かです。夏休みを過ごす子供たちの充実と安全を祈る気持ちが伝わってきます。(臼井愛代)

★ビルに添い峰雲白く湧き出づる/藤田裕子
ビルに添うように白い峰雲が湧いて、街を大きな夏の景色にしています。街の中で見上げる空にも確かな夏があることに気づかれた作者の感動があります。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/15句】
★水拭きす床さっぱりと素足に添い/小川和子
水拭きしたばかりの床を歩く素足の感触、すがすがしさが伝わります。(黒谷光子)

★味噌だれのさらにおいしく夏野菜/丸山美知子
味噌ドレッシングやもろみなどを、生の野菜につけて頂くのはとてもおいしいですね。私も大好きです。(小河原宏子)

★夏の朝少女の号令流れくる/多田有花
なにか運動部の合宿でしょうか。リーダーの少女の凛とした号令が響き渡り、溌
剌とした夏の朝の情景が伝わってきます。(小西宏)

★ここ浄土今蓮の花の咲く処/飯島治朗
池に咲き競う蓮の花。その清らかさは、まるで極楽浄土を思わせるほどなので
しょう。(小西宏)

★夏の雨小鳥の鳴き声響く夜/高橋秀之
静かな夜の夏の雨。まだねぐらに帰らずにいるのでしょうか、小鳥の鳴き声がこ
とさらに深く響きます。閉じ込められた家内の静けさが際立って感じられます。
(小西宏)

★発掘の一番杭や梅雨あがる/前川音次
古代遺跡の発掘工事でしょうか。そうした作業の始まりに梅雨が止んだのだとい
います。時の流れをも感じさせる、みずみずしい響きです。(小西宏)

★朝茜の夏は真澄みの空深し/大西 博
朝焼けの、まだ涼しさが残る夏の清澄さが隅々にまで広がり、心が吸い込まれる
ようです。(小西宏)

★乾きたる空の青さよ梅雨明ける/河野啓一
梅雨独特の気配から一転夏の季節に、ごく短期間にうつるこの変化への感動が、そのまま伝わってくるようです。「よ」が空の青に響いている感じがします。(藤田荘二)

★竹の香の樋を跳ねゆく冷そうめん/國武光雄
流しそうめんの醍醐味は、豊富な冷たい水と青い竹の輝きと香です。「跳ねゆく」にそんな水の躍動と竹の新鮮さを感じました。(藤田荘二)

★夕暮れて蓮の花びら葉に散らす/祝 恵子
昼間に咲き誇っていた蓮の花が四日たったのでしょう、夕方には葉に散る。蓮の花の色と夕陽の色が重なって鮮やかな印象です。(藤田荘二)

★おとり屋の幟はためく鮎の川/奥田 稔
川沿いに友釣りの鮎を売る幟、鮎釣りをしなくても川にとっぷりと浸かっていたい季節。懐かしいこどもの頃の思いもともなってきます。「はためく」に夏の川風を感じました。(藤田荘二)

★夾竹桃赤白紅の真昼時/堀佐夜子
夾竹桃が咲くと真夏を感じる。夏の真昼時の暑さにも負けず、強く咲く花である。赤白紅の色がはっきりと目に映るが、はっきりと咲きながら、どこかにさみしさがある。(高橋正子)

★星涼し夫の歩幅の大きかり/臼井愛代
星の涼しい夜、夫と歩く。一緒に歩きながらも、ついつい遅れがちになる私。夫の「歩幅の大きかり」を実感する。ちょっと立ち止まってくれる夫との星の涼しい夜の幸せ。(高橋正子)

★夕暮れの風吹き抜けて青田波/井上治代
夕暮れの青田を風が吹きぬけると、青田がまるで海のように柔らかに波打つ。大洲平野を懐かしく思い出した。(高橋正子)

★揚羽蝶もつれもつれて青空へ/渋谷洋介
この句は、紋白蝶ではなく、揚羽蝶が詠まれている。大きな揚羽がもつれながら青空へと舞い上がる様子は、夏の小さな一景ながら、目に印象的で、涼しさをくれる。(高橋正子)

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31 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (飯島治朗)
2008-07-20 00:57:28
正子先生、「ここ浄土今蓮の花の咲く処」の句を入選Ⅱに御選頂き、誠にありがとうございました。
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お礼 (大給圭江子)
2008-07-20 12:57:46
正子先生
靄  の句を入選1にお選びいただき有難うございました。嬉しゅうございます。
多田様には丁寧なありがたいコメントを添えてくださり有難うございます。
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お礼 (小西 宏)
2008-07-20 13:02:15
高橋正子先生
「夏の夕水色となる残り空」を【入選Ⅰ/15句】にお加えくださり、たいへんありがとうございました。

臼井愛代さま
やさしいコメントをお寄せくださり、たいへんありがとうございました。

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お礼 (志賀泰次)
2008-07-20 13:14:13
正子先生、
"パン焼く匂い工房前は涼しかり"を入選Ⅰにお採りくださり、励みになります。大変有難うございます。

愛代様
素敵なコメントを有難うございます。早朝から汗をながし一生懸命つくるパンの香りにふと足を止めた一句です。

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お礼 (宮本和美)
2008-07-20 14:15:24
正子先生
「朝霧」の句を入選Ⅰにお選び頂き、有難う御座いました。
多田有花様には、同句に、丁重なコメント有難う御座いました。嬉しく拝読致しました。
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御礼 (小口泰與)
2008-07-20 14:21:14
高橋正子先生
「はちす」の句を入選Ⅰにお選び頂き有難う御座います。
多田有花様
「はちす」の句に素晴らしいコメントを頂き有難う御座います。
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お礼 (藤田裕子)
2008-07-20 17:35:41
正子先生、「峰雲」の句を入選Ⅰにお採りくださいまして有難うございます。

臼井愛代様、同句にすてきなコメントをいただきまして有難うございます。
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御礼 (大山正子)
2008-07-20 18:14:30
正子先生
[落とし文 」 の句を入選Ⅰにお選びいただき有難うございました。
多田様には素敵なコメントを頂き、大変嬉しく思います。有難うございました。
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お礼 (甲斐ひさこ)
2008-07-20 19:16:14
正子先生
「風鈴」の句を入選1にお取り戴きまして有難う御座いました。励みに致します。

多田有花様、同句へ素敵なコメントを添えて戴きまして、嬉しく読ませて戴きました。ありがとうございました。
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お礼 (吉川豊子)
2008-07-20 19:41:04
  正子 先生

  大皿に男の手料理夏野菜を、入選Ⅰにお加え
いただきまして、有難うございました。
竹内小代美様
同区に、お添えいただきましたコメント、嬉しく拝聴を
いたしました。
まるで観ていただいているようなコメントでした。
有難うございました。



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