Storia‐異人列伝

歴史に名を残す人物と時間・空間を超えて―すばらしき人たちの物語

ハリスおばさんパリへ行く / ポール・ギャリコ

2014-02-23 16:41:55 | 音楽・芸術・文学
ハリスおばさんパリへ行く (fukkan.com)
クリエーター情報なし
ブッキング

 

原題は「FLOWERS FOR MRS.HARRIS」。だけど、インパクトとしては、ナマな感じで日本語訳の方がリアリティがあるな。では、そのハリスおばさんは、いったいぜんたい、なんでパリへなど行ったのかしら。そこで、みたものは、出会ったことは・・・?おしまいはどんなふうに?ハラハラさせられ通しとなるが、温かい人柄が偲ばれるギャラコのお話の進めた方は、なんともすばらしいね。本屋には手に取る気にさえならないのがあふれているが、これは復刻版。いいことだ。それでもすぐ手放す輩がいるのでこっちの手に入るわけで、せっかくだからもっと陽にあててあげてほんとうに復活させたいな。

コックニーというのか、おばさんのお喋りは。だけど、見知らぬ世界、パリの上流社会にとつぜん迷い込んでも、じんせいと自分には自信をもって堂々と。心の底は暖かく、くじけそうになってもいつも陽気に・・・この本の翻訳にえいきょうされて、みょうなところが、ひらがなになってしまった!まあ、いいか。いいおはなしだ。ポセイドンなんかよりもずっと、こちらのほうが、拍手が起きてFINE出るような暖かいいい映画になるだろうに。おばさんは、この何年かあと、ニューヨークにも行ったんだって!お掃除あんなにテキパキやるんでは、カーリングのイギリス代表選手だったのだろか?・・・

おお、おばさん乗ったのBAじゃないか、そのむかしリコンファームしとけなんて言われてドイツの田舎からロンドンに電話して冷や汗、えらいひとがおやまかこやまかわかんなくなったから!でも安心できるヒコーキ会社だな。ムスメもこれで一週間の弾丸旅行とか。

>>>> 「ハリスおばさんパリへ行く ポールギャリコ/ 亀山龍樹訳 fukkan.com ブッキング」より引用

りんごのような赤いほっぺたに、しらがのまじったかみ、いたずらっぽい、いきいきとした小さな目の、こがらなおばさんが、BEA航空のロンドン・パリ間の朝の旅客機に乗りこみ、客室のまどにおでこをぴったりおしつけた。
 ほどなく、この金属製の鳥は、爆音をとどろかせて滑走路をうきあがり、まだくるくるまわっている車輪を胴体に引き入れはじめた。それとともにおばさんの意気も、空高くまいあがったのだった。
 おばさんは、おちつかないでいるものの、おじけついてもいまかった。やっと冒険の旅路につけた。ゆくてには、長いあいだあこがれていたものが待っている。いまこそ、めでたい門出である。おばさんの心はときめいていた。
 
 おばさんは、いくぶんくたびれた。かば色[赤い色をおびた黄色]のあや織りのトップコートにちんまりとくるまり、清潔なうす茶のもめんの手ぶくろをはめて、すりきれたいんちき皮の茶色のハンドバッグをしっかりとだきしめていた。その中には、一ポンド紙幣が十まいーーイギリスから持ち出せる最大の金額ーーと、ロンドン・パリ間の往復切符が一まい、それから五ドル・十ドル・二十ドルのアメリカ紙幣のぶあついたばをゴムバンドでとめたのが、千四百ドルもはいっていた。
 まあ、いまのところ、おばさんのかぶっているみどり色のむぎわら帽だけが、日ごろの。はつらつとしたおばさんににていた。ぼうしのまえのところにくっついている、とっぴょうしもないばらの花が。機体をかたむけて旋回上昇させる、パイロットの手に調子を合わせるかのように、しなやかな茎の先で、あっちへぶらぶら、こっちへぶらぶらゆれていた。

 時間ぎめで、そうじとかたずけものをしにやってくる「おてつだいさん」の、いっぷうかわったサービスをしてもらったことのある、気のきいたロンドンのおくさんならーーいや、イギリス人なら口をそろえてーーすぐに、
「あのぼうしをかぶっている人は、ロンドンのおてつだいさんにきまっていますよ。」
というだろう。まさにそのとおりだった。
 乗客名簿によると、このおばさんはアダ・ハリスーーおばさん自身はロンドンの下町なまりで、いつも、アリスと発音している。住所はロンドンのバタシー区ウィリスガーデンズ五番地。たしかにおてつだいさんで、未亡人だった。
 ハリスおばさんは、ロンドンのおやしき街のイートンスクエアやベルグラビアのお得意さんをまわって、時間ぎめでせっせとはたらいてきた。
 大地からまいあがったこの目のくらむいっしゅんにたどりつくまでのハリスおばさんは、えんえんとうちつづくほねおりを毎日毎日つとめた。いきぬきは、たまに映画をみたり、夜、音楽会へいくのがせいいっぱいだった。

 もう六十ちかうにもなったハリスおばさんが、日ごろ活躍している仕事場は、ごったがえしと、よごれ水と、ちらかしほうだいの世界だった。一日のうちに、六つ七つもあずかっているかぎで、住宅やアパートのドアをあけて、流しにごっそりつみあげてある、よごれた、べとべとするさらやなべ、ごみため、起きっぱなしのしわくちゃのベッド、ぬぎすてたままの衣類などに、いさましくけなげに立ちむかうのである。

 ・・・

 ハリスおばさんは、このような、ひっくりかえった家の中をかたづける。この仕事は、おばさんの身も心もはりきらせ、また生活のかてにもなっていた。これはおばさんが神さまからいただいたお仕事だった。ただ、よごれた場所を清潔にするだけではなかった。ほかのおてつだいさんもそうだが、とくにハリスおばさんは、じぶんのかたづけた家を、いつもほこらしく思った。それに、これはものをつくりだすににたりっぱな仕事だし、むねをはってまんぞくをあじわうことができた。
 ハリスおばさんは、ぶた小屋めいたへやにはいっていって、きれいにせいとんし、ぴかぴかの清潔なへやにかえて去っていく。あくる日やってきて、またまたへやがぶた小屋のようになっていても、おばさんは、これっぽっちもいやな顔はしなかった。一時間三シリングのお礼をもらって、へやをきれいにする。
 このおてつだいの仕事を生きがいにも天職にもしている。小がらなハリスおばさんが、いま、パリゆきの大旅客機の三十人の乗客にまじっているのだった。・・・

・・・

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今日のお顔、ぼくのお腹の上の、たすけ君はチャーチルみたいな、ではハクちゃんはサッチャー風?チャーチルがご主人だった頃のダウニング街10番地にはネコがぞろぞろ十匹ぐらいいたらしいよ、戦時執務室にも自由に出入りできるネルソン君というのもいて・・・

毎日が猫の日なので、昨日2/22は猫ちゃんの日だったなんて、いろいろあって失念、すまぬ。まあ、これはお礼にギャリコに捧げるのよ。

  



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