★江差町の「百人の語り部」事業が1年間の調査を終え、来年度、いよいよスタートするようだ。この事業は、「江差の春は江戸にもない」とうたわれた江差町の古い街並みを再現した「いにしえ街道」で展開されるもの。
★この街道には商店や飲食店などが建ち並んでおり、タイムスリップできるこの空間を楽しむ観光客が立ち寄っている。そこで、北前船で栄えた往年の歴史をベースに、代々住んでいる住民は、古い道具や骨董品を持っており歴史に絡んだ様々なエピソードを秘めている。
★来年度は、語り部マップを製作して、街並みをもてなしの空間に変えようというもの。もてなすことで、地域に住む人たちが自分たちの街も価値を再認識する良い機会にもなると思うし訪れた人たちも新しい発見があることは楽しいもの。前に、松前城を訪れたときに、ガイドの人が、「この城壁のへこみは、政府軍が艦砲射撃で打った砲弾が当たった跡です。」と説明した途端、歴史を感じてしまうという体験をしたが、なんの説明もなければ歳月で欠けた程度にしか思わないんだろうね。
★私もかつて、「北方四島語り部トーク」事業というのを根室でやったことがある。これは、沖縄の古老が戦中の記憶を残すためにやっていた語り部事業や広島の原爆被災の記憶を残すために行っていた語り部事業をヒントに、北方四島にかつて住んでいた元島民の記憶を小中高校の子ども達に伝え、北方領土返還要求運動を促進していこうというもの。根室管内の小中高校を元島民の方を語り部として選定し、3年間で全部回ってもらった。
★「記憶」というのは、極めて属人的なもので、体験したその人にしか話せないもの。これを語りついで後生に受け継いでいくことは、地域にとって、一つの資産であり大切な宝物である。
★その意味で、百人の語り部は、いにしえ街道を訪れた人たちをもてなそうという試みである一方、いかに受け継いでいくかも大事な課題になると思う。
★まずは、江差を訪れる人たちをいかに自然に受け入れることができるかが第一歩。できることから一歩、一歩前に進んでいってほしいと思う。