今回は介護現場でのお話です。
Mさんは、昨年10月に入所された80代前半の女性です。認知症の症状も極めて軽く、私たちとは普通にコミュニケーションをとれます。
Mさんは、高齢者にありがちな体型の変化で、腰が大きく曲がった体勢が固定されており、寝ているときは仰向けになることができません。また、ご自身で寝返りをうつことも困難です。
一方向だけに向いた状態が長時間続いてしまうと、健康な人でも苦痛を感じるでしょうが、Mさんのような骨格が変形してしまった高齢者の方は尚更です。それに、そのままの状態は褥瘡(床ずれ)を作ってしまいます。このような症状の方への対応として「体位変換」というものがあります。これは一定時間ごとに寝ている向きを左右に反転するものです。
私たちの施設では、ご自身で寝ている向きを変えることができない方には、夜間は1~2時間おきに体位変換を行っています。
Mさんへの介護について、私たち職員の間で課題になっていたことが一つありました。それは、Mさんが寝ている向きを一方向だけにしか応じてくれないことです。
Mさんは左向きに寝る「左側臥位」に頑なに拘っていらっしゃいました。右向きになると身体が痛いというのがその理由ですが、マッサージ師が診たところ、右側臥位でも問題は無いとの判断でした。Mさんの「思い込み」もあるようです。
なんとか右向きに寝てもらえるように私たちもMさんにアプローチを続けていましたが、昨夜はついに一歩前進しました
Mさんは居室に設置されたポータブル・トイレを利用されています。その使用頻度は高く、時には15分おきにトイレに立たれることもあります。その度に身体を動かすことになりますから、それが褥瘡予防になっていた面はありますが、Mさんが頻繁にトイレを使用されるのは、排泄の間隔が短いのではなく、同じ左向きの姿勢を続けることが苦痛であるからでしょう。
ただ、最近ではトイレへの移動が苦痛になられているのか、動きがだいぶぎこちなくなってきており、体位変換の必要性がより高まってきました。
昨夜の日付が替わった頃、いつものようにトイレに立たれたMさんを介助した後、
「どう?たまには右向きに寝てみない?」
と、私からもちかけてみました。
ベッドの端に腰掛けて逡巡するMさんに、私はしゃがみこんで同じ視線でお話ししてみたところ、
「じゃぁ...やってみるよ...」
と、Mさんは渋々ながら応じてくださいました。果たしてMさんは、その後は右向きによる身体の痛みを訴えることなく、1時間ほど同じ姿勢でお休みになられました。
そればかりか、その後には夜勤のペアのHさんに、Mさん自ら左向きではなく右向きに寝かせてほしいというご希望もいただき、Hさんを驚かせました。
高齢者の頑ななお気持ちを動かすことはとても難しいことがあります。この辺りは私が前職の不動産営業で顧客を説得していた状況と大きく異なります。
不動産に限らず営業では顧客の利益を合理的に訴え、それが理解されれば成功ですが、高齢者介護の場合、合理性による説得だけではなかなか成功しません。それに一人の介護職員だけでなく、全ての介護職員が同じ感覚・意識をもって説得を続ける必要もあります。
それだけに小さなことでも介護方針・手法が上手くいったときはとても嬉しいものです
トップの画像はお分かりにくいかもしれません。木立の中に鮮やかな色が見えますが、下の画像がそのアップです。
いつもの散歩コースに居るカワセミですが、とても警戒心が強いようで、なかなか近づいて撮ることができません
自然豊かな職場環境なんですね!
夕べはしもねたネギのような事件もなく、平和な夜勤で、かつ嬉しいことがあって、何よりでした。
Mさんは、これまで思い込みが激しかったにせよ、本来は素直な性格なのでしょうね。
地道な努力の結果が出る瞬間って、ある日突然やってくるのですね。
思いがけず頂いた、ご褒美のようなものでしょうか?
こういうご褒美があるから、日頃は過酷なお仕事にも、頑張ろうという気持ちになるのかもしれません。
私の行っている都内の某有料老人ホームでは、高級感をうたっている割に、入居者さんに対する介護スタッフの対応が一律ではなく、???と思うことが多々あります。
何かあったら言ってくれと運営スタッフには言われますが、告げ口するようで、やっぱりはばかられますね。
昨夜は、平和だけれどナニかが物足りない一夜でした
どんなに素直な方でも、恐怖心が伴ってしまうとなかなか一歩を踏み出せないのでしょう。
Mさんは、私たちの説得に根負けした部分もあったかもしれません。だとしても自分から「右向き」の体勢をとろうというお気持ちが生まれたことに私たちは救われています
介護職員全てが共通の認識を持つことは、なかなか困難なことです。
職員の世代や性別も異なれば、入所者も様々です。多用な対応を求められる介護の現場では、「理想と現実のギャップ」がとても大きく感じて悩まされてしまうこともあるのは事実です。
ストレスが多い職種と思われているのは、こんなところにも原因があるのかもしれません。
タコロンさんがご心配なように、部外の方が施設に進言されるのは、確かに難しいことかもしれません。
良いチャンスが訪れるといいですね。
高齢者の方がかたくなにこうと決めたことを曲げて下さるというのは、なかなかないことでしょう?
何事もなく平和な夜に起きた奇跡といってもいいかもしれません。
やっぱり、イイ男効果かε=(///ω///)=33
イケメンとして生まれて良かったことが、もうひとつ増えましたねゞ( ̄ー ̄ )
高齢者の方々、特に認知症を患われている方は、思い込みが激しかったり、他人の意見を拒んでしまいがちです。
説得するのには、時間がかかったり、アノ手コノ手でお話ししていったりと、地道なことの繰り返しです。
チビタンママさまに褒められると、その反動が少しばかり怖いところもあるのですが...
non_Bさんのこころが利用者さんのこころをうごかしたから、カラダも動いてくれたんじゃないかな~・・・なんてな。
真夏のクリスマスプレゼントのようないいお話ですね。
ちょっと話し過ぎたかな?と思えるくらい時間をかけてしまったので、Mさんが根負けしてしまったと思えます。
ただ、結果的にMさんに左右の側臥位を交互に代えてもらえるきっかけは作れたと思います。
このまま習慣になっていただければ良いのですが...