ブログ、巨人軍。

頑張れ、ジャイアンツ!
頑張れ、日本のプロ野球!

勝敗の上をゆく、井端、荒木、プロの技。

2009-10-24 20:32:46 | 2009年シーズン
昨日の試合、終盤からの観戦だったが、とても印象に残ったプレイがあったので、解説者の言葉、批評をもとに振り返ってみたい。

8回裏、ジャイアンツの逆転劇の中でとても印象深いシーンがいくつかあった。
マウンドには浅尾。
先頭の坂本を歩かせ、松本のヒットでノーアウト1、2塁。小笠原が倒れ、ワンアウトでバッターは四番ラミレス。
ラミレスの打った打球は1、2塁間のゴロ。逆をつかれた(アナウンサーによる)セカンドの荒木だったが、カラダをいっぱいに延ばしてやや後方に回り込むような体勢で横っ飛び。見事に補球するとすぐさまカラダを起こしてファーストへ送球、間一髪のアウトだった。
飛びついて、ボールを補球して、起き上がって投げるまでの動作の中に無駄な動きがまったくない。
抜けていれば1点、内野安打でも満塁でピンチは拡大。その時点で点を与えなかったことも、ピンチを拡げなかったことも大ファインプレーに違いないのだが、ビッグイニングになりそうな流れを断ち切るのに最も効果的な大ファインプレーでひとまずピンチを防いだというのが(結果的にはこのあと逆転されるが)何よりのビッグプレーだった。

荒木は前の回にもランナーとして驚くようなスピードプレイをみせている。
セカンドに進塁した荒木は、後続のライト前ヒットでホームを狙う。
前進気味の亀井からの送球はホームへ一直線。見た目には明らかにホームアウトのタイミングだった。亀井の送球はストライク、ホームベース上には阿部がブロックして構えている。
テレビカメラはホームベース上でブロックしながら返ってきた亀井からの返球をキャッチする阿部。まだ荒木は返ってきていない。
と思った瞬間、画面の左端からまるでスーパーマンが飛んで来たかのようなスピードでヘッドスライディングしてくる荒木が現れた。
現れたと思ったら阿部のブロックを掻い潜って左手をホームベースに差し込み、見事ホームイン。目にも止まらぬ速さだった。荒木のスピードと技を持ってして奪い獲った1点だった。

このふたつの荒木のプレイは、試合終了後の解説で、江川氏が今日の「プレイ・オブ・ザ・デイ」として選んだシーンだった。

そしてもうひとりの解説者、野村謙次郎氏が選んだシーン。やはり8回裏のジャイアンツの攻撃の中から。

先ほどの、荒木がラミレスのゴロを捌いてワンアウト2、3塁。次の亀井が打った打球は詰まりきってややスライスのかかったショートへの緩いハーフライナー。ショートは井端。
一瞬、2塁から3塁へ走る松本が前を横切ったためか、井端はボールを待って補球の構えに入った。
しかし、スライスしたボールはワンバウンドしたあとイレギュラーして井端の胸にあたって前に落ちる。
慌ててボールを拾いスローイングの体勢に入る井端。ファースト、ホーム、サード、投げるべくポジションすべてにスローイングの姿勢のまま目を走らせ、井端はどこにも投げられなかった。
しかし、解説の野村氏は、投げられなかったのではなく、投げなかった井端をファインプレーと称えた。
どうしてもエラーを帳消しにしたい心理、そしてどうしても防ぎたい失点。
あの状態で慌てて投げて暴投、エラーなどに結び付くケースは多い。そう判断したのか井端は無意味な、無謀な送球を避けた。
野村氏はあの状況下の中での井端の冷静な判断をファインプレーと称えた。
なるほど、唸る解説である。

この井端の冷静な判断と繋がるプレイがこのあとに飛び出す。
代打の脇谷は初球を叩いてライトオーバーの見事な逆転ツーベースを放つ。
ヒーローインタビューで本人が語ったように、セカンドベース上で一瞬、舞い上がって状況が飲み込めていないような素振りを見せ、すぐに我に返ってガッツポーズをした脇谷。どれほど高揚していたかが伺えるシーンだ。
しかしその次の回、9回表、マウンドのクルーンは代打の立浪にストライクが入らずノースリーとピンチを迎えてしまう。
点差はわずか1点。
ここで野村氏が前の回の脇谷の走塁を引き合いに出した。
脇谷の逆転ツーベースのあと、次のバッター古城がレフト前ヒットを放った。セカンドからホームに返って来る脇谷は完全に間に合わないタイミングでタッチアウトとなった。
野村氏の指摘した走塁はこの走塁ではない。ライトオーバーで間違いなくサードを奪えた状況であったにも関わらず、興奮していた為か脇谷はセカンドで止まって亀井の逆転のホームインを眺めてしまっていた。
大逆転劇なので興奮していたのは解るとした上で、野村氏はあの場面で冷静にサードを陥れていれば、次の古城のヒットで確実にもう1点取れていたと指摘する。
確かに、そのときは小さな走塁ミスであっても、そのあとの戦況によっては、それが大きなミスに取って代わるとこは十分に起こり得る。

傷口を拡げないよう自己の慌てる気持ちを抑えてエラーのあとボールを投げなかった井端。
方や大逆転ヒットを放ち興奮して走塁を怠ってしまった脇谷。
結果は後者の方が勝利を呼ぶプレイとなった。
皮肉なものである。

中継ぎのエース浅尾を替えなかった落合監督、エラーのあと慌てずにボールを投げなかった井端、落ち着いた守備と走塁でゲームを作る荒木。
敗戦の中で、ドラゴンズの冷静な判断が目立った試合だった。
落合監督の言葉を借りれば、内容より結果、の短期決戦。
しかし、勝敗以上に、井端と荒木のプロの技、判断力に心を奪われた。