【時事(爺)放論】岳道茶房

話題いろいろだがね~
気楽に立寄ってちょ~

次期駐中国大使 海洋覇権にモノ言えるか

2010年06月08日 | 社説
次期駐中国大使 海洋覇権にモノ言えるか

 菅直人新首相は、次期駐中国大使に伊藤忠商事元社長の丹羽宇一郎相談役を起用する方向で調整に入った。

 丹羽氏は中国政府と太いパイプを持つ経済界の大物で知られ、有識者の「日中韓賢人会議」のメンバーだ。鳩山由紀夫首相の「中国重視」路線を継承し、米国を上回る貿易相手国になった中国との経済交流をさらに拡大発展させたい民主党の意欲の表れとみられる。

 だが、日中間の懸案は経済問題だけではない。最近、日本近海で国の主権と安全にかかわる重大な事態が相次いで起きている。

 4月、中国海軍はミサイル駆逐艦など10隻を沖ノ鳥島近海まで進出させ、2度にわたり艦船ヘリを海上自衛隊の護衛艦に異常接近させた。5月には、中国の海洋調査船が東シナ海の日本側の排他的経済水域(EEZ)内で活動中の海上保安庁の測量船に作業中止を求め、4時間近く追跡した。

 これらの危険な威嚇行為や権益侵害に対し、民主党政権は十分な対応をしてこなかった。鳩山首相は4月の胡錦濤国家主席との日中首脳会談で中国の軍事威嚇に触れず、5月末の温家宝首相との会談でやっと「懸念」を示した。

 また、東シナ海のガス田問題は上記の日中首脳会談で共同開発について早期の条約締結交渉入りで合意したものの、日本側が大幅譲歩案を示したとも伝えられ、先行きが懸念される。中国が一方的に採掘・生産を開始しないように、監視も必要である。

 このような時期に、次の駐中国大使は国益を踏まえ、中国政府に耳の痛いことをはっきり言わねばならない。日中は多くの利害を共有している。一方で基本的な価値観などで重大な相違がある。その両国が真に建設的な関係になるには、多様な意見の存在を積極的に認め合うことが欠かせない。

 とりわけ今は、日本の主権と安全保障が最重要の問題だ。中国海軍の威嚇行為がいかに日中関係を傷つけ、中国への不信感を高めるかを説明し、理解させることが駐中国大使の大きな責務である。

 この点で経済を優先しがちな商社出身者が次期大使にふさわしいか疑問を提起せざるを得ない。

 民主党はかつて大使の2割以上を民間登用する改革案を示した。これを実行し、「脱官僚」人事を印象づける狙いもあるのだろうが、今回の構想はあまりに問題が多い。菅氏に再考を求めたい。

2010.6.8 産経新聞 主張


最新の画像もっと見る