中国貴州省とそこで暮らしている苗族トン族等の少数民族を紹介しています。

日本人には余り馴染みのない中国貴州省と、今私が一時滞在中の雲南省や大理白族自治州大理古城について

中国では4億人が普通語を話せない

2013年09月07日 | 中国の農村教育事情

9月6日付の光明日報(電子版)に拠ると、「目下のところ、わが国では普通語で話が出来る人は70%しか居ない。それも多くの人は普通語のレベルも高くない。さらに30%すなわち4億人が普通語での会話、交流が出来ない。」「なかでも農村地区、辺境地区、少数民族地区においては、これからも普通語教育をさらに推進する事は、依然重要である」と教育部の関係者が述べたとの事です。(注:このニュースを中国の多くのメディアの電子版(人民報、新華網、新浪網、南都網)が扱っていますが、引用元、情報源(来源)は光明日報に拠ると明記しています。)

中国では、1998年から毎年9月の第3週を「全国普通語推進週間」と定め様々な宣伝活動を行って来ており、今年で既に16回目となるとの事。第16回目となる今年の「全国普通語推進週間」は、「普通語を広く普及する共に、中国の夢を築こう」をスローガンに海南省三亜市で9月11日から開催されるそうで、来週から開催される「全国普通語推進週間」を前に、現在の中国における「普通語」の普及状況について、今回教育部の関係者が発表した様です。

私は、以前貴州省に3年程住んでいましたが、貴州省の省都貴陽市でも貴州弁を話す人が圧倒的多かったです。以前私が籍を置いていた大学構内等でも、その大学は貴州省出身者が多い事もあり、日常的には貴州弁を話す学生が圧倒的に大多数を占めていました。大学構内には「普通語を話しましょう」とか大学の某部門には「普通語で話さないと受付はしません」と言うような張り紙も有りましたが、学生達は日常的には方言(貴州弁)で会話するのが一般的でした。

貴州省以外から来ている学生の何名かに聞いた所では、貴州弁で話している学生同士の会話を理解出来るようになるのには、一年程時間が要るとの事でした。場合により、2年位経っても貴州弁は理解出来ない部分もあるとの事でした。貴州省滞在中は、大学構内や貴陽市内を歩いていても普通語が聞こえる事は本当に少なく、普通語が聞こえると何かホッとするような経験も多々ありました。貴州省では、普通語で話す人が本当に少ないと言うのが、私の実感でした。無論こちらが普通語で話せば、それに合わせて相手も普通語で答えてくれますが、私は当然ながら貴州弁は分らずに貴州を離れ、今は雲南省に滞在しています。最初に私が住んでいた黔東南苗族トン族自治州凱里市を中心にした地方にも凱里市弁と言われる物が有るそうです。

貴州省でも貴陽市周辺で話されている言葉と凱里市周辺で話されている言葉は、やはり違うそうです。私には二つの言葉がどのように違うかは、当然の事ながら全く分りません。

今では大学や高校、中学等では、当然ながら先生達は普通語を使い授業や講義をしますが、以前私が1988年に中国で留学していた時などは、大学は無論、小中高校等では普通語では無く、その地方の方言で授業をする先生も数多かったです。1988年留学先の大学で、中国人学生と同じ科目の内の、何科目を聴講しようとしたところ、先生が河南弁で講義する科目が多い上、河南弁の為講義が全く聞き取れず受講を断念した記憶があります。今ではさすがに、大学、高校、中学校段階では、方言で授業をするという様な現象は無いようです。中国でもある時期から、普通語を話せない人は教職には就けないという制度、規則が出来ました。

今回のニュースで、私が気になったのは、少数民族地区でさらに普通語教育を推進すべきとしている点です。貴州省の少数民族の住む村を訪れる機会も多いのですが、多くのそのような地方では、家庭では当然ながら少数民族の言語で会話をしています。ですから、子供達は小学校に入学して初めて、いわば外国語である漢語(普通語)を習う事になります。

つまり苗語やトン語を母語として育った子供にとっては「漢語:普通語」は、全くの外国語となりますが、教える側の先生にはそう言う自覚が欠けている様に感じられました。ある先生に聞いた所、最近は子供達は家でテレビ等を見て普通語にある程度慣れているので、それほど漢語の習得は難しく無い様だとの事でした。ある先生の話では、「子供は自然に覚える」との答えでしたが、残念ながら少数民族の子供達にとって、外国語としての「普通語」を習得する上でどのような問題があるか話は及びませんでしたがいろいろと問題は有るようでした。子供が、普通語を習う過程でどのように感じているかという様な問題も全く考慮されていないようでした。

貴州省の少数民族の住む多くの村等では、ある年齢層にまでいかないと普通語を話せない人が多いようです。小学校を終えていない、小学校を中途で辞めたという人も沢山いますので、そういう人は、成人になっても普通語はあまり話す事が出来ないという人も多いようです。最近では沿海部等の都会へ出稼ぎに行く人が多い事もあり、その様な人達は、当然必要上普通語は自然に身に付けていますが、村を出ることもなく農村に住み続けている人は、ある年齢層では普通語も不自由な人も多い様です。というより別に普通語を話せなくても生活する上で、何も不便を感じないし、自分の母語を話せれば何も問題が無いからで、そういう人達にとって普通語の必要性は、あまり切実ではないからのようです。

最近、とある少数民族の住む村を広東人と一緒に訪れたところ、その広東人が、その村の若い人と広東語で話していたので、どうしてかと思ったらその村では広州等沿海部に出稼ぎに行くが多いから、そのような人は当然広東語を話せる人との事でした。

 

 

 

 

 



最新の画像もっと見る