(ハヤカワ文庫 JA116)
「求婚者の夜」
「海へ一歩を」
「海の城」
「島」
「暑すぎる一日」
古書で手に取るまで知らなかった作家です。ハヤカワ文庫JAシリーズなのと、あらすじを読んで安かったのとで入手しました。JAといえどもSF味がないのでこのカテに分類。表題作「求婚者の夜」は一読、宮沢賢治の童話を読んでいるような錯覚を感じる部分もありました。そういえばタイトルも『銀河鉄道の夜』っぽいです。列車や星も出てくるし、星超峠といった地名のネーミングとかからそう感じたのかも知れません。でも内容的には宮沢賢治でいうなら『銀河鉄道の夜』よりももっとグロというかエグイやつです。「海へ一歩を」登場するキャラで、お気に入りはマリノ。最後の一行が無ければ良かったのに…。「海の城」この辺から読むのが少しずつ辛くなってきます。ストーリーの行き当たりばったり感が充満してきます。「島」読み進むのがかなり困難になってきて、惰性でページを捲っていきます。読み進めたのは話が面白かったからではなく、ただ途中でこの本を投げ出したくなかったからです。「暑すぎる一日」この本に収められた作品全般に言えることなんですが、作者は思いつくままにストーリーを綴っているような気がします。時にハッとする展開になる場合もありますが、それ以上に大半では行き当たりばったり感が強いです。もう一編、短編が収められていたとしたらおそらくは読了出来なかったと思います。残念ながら読後の満足感は得られず、ただ読み切ったという空しい達成感だけが残りました。