百億の星ぼしと千億の異世界

SF、ファンタジー、推理小説のブログ。感想を出来る限りネタバレしない範囲で気ままに書いています。

石原藤夫 『光世紀パトロール(『ランダウの幻視星』改題)』(1981)

2014年02月15日 | SF 系外
(◎1986/徳間文庫/216-5)
カバーイラスト=増田千晴
カバーデザイン=秋山法子


 時は二十二世紀。太陽系文明は、驚異の新技術《光速伸張航法》によって、今や宇宙船が光速の数百倍のスピードで飛び交う《光世紀世界》へと発展を遂げていた。この直径百光年に及ぶ大版図を守るは《光世紀パトロール》。自閉症のケプラーを隊長に、失神女のエロイーズ、音痴のシューベルトら、いずれもちょっとおかしな偉人の再生クローンたちが、《オレーム二世号》を駆って宇宙せましと大活躍する。


まず最初に触れておかなかければならないのは、増田千晴のこの素晴らしいカバーイラスト! これだけで本書を手にとる価値がありますよw

日本ハードSFの先駆として知られる石原藤夫はいつか読みたいと思っていました。"~パトロールっていうSFのタイトル、昔流行ったんですよね~"などと思いながら読み進めると、"何だ、コレ? これがハードSF? 健全なエロスも入って、これは軽ハードSFじゃないかっ!(何だ、ソレw)"っていうのが正直な感想です。5話からなる連作なのですが、かの宇宙の英雄ペリー・ローダンからの影響大かな? と思ってたところ、読後、倉田卓次の解説を読むと、どうやらかの英雄キャプテン・フューチャーの日本版ということらしいです。キャプテン・フューチャーを知らない若い世代の方がいるかも知れませんが、この『キャプテン・フューチャー』は、かって宮崎駿の『未来少年コナン』の後釜アニメ番組としてNHKで放映されていました。もっとも、コナンが面白すぎたせいで、この『キャプテン・フューチャー』の方は内容的にイマイチだった感は否めなかったのですが…。ハヤカワSF文庫から出ているペリー・ローダンものは30巻余読破しましたが、同文庫からのキャプテン・フューチャー・シリーズが書棚にはあるものの未読なのは、このアニメーションの影響なのかも知れませんw

話が逸れてしましました。文庫冒頭には21~22世紀の"遺伝子遡及工学"、"光世紀星図"、"光世紀世界・勢力分布図"、光世紀パトロール《オレーム2世号》形式図があり、また本文中に登場するそれぞれの星も実在の星とのことで、哨戒艇《オレーム2世号》ともどもハードSF的演出はなされているのですが、内容が軽いのですwww そしてキャプテンであるケプラーの存在感が薄っ!w むしろ修道女のクローンである脇役エロイーズの方が多く登場してきたようにさえ思えます。せっかくそれぞれに個性的キャラクターを持つクローンの面々(一人だけ非クローンがいます)を脇役に配したのに、全体的に人物の描き込みが薄味でもったい気がします。そして読者サービスのつもりなのか、このエロイーズの健全なお色気が散りばめられているので、カバーイラストから純粋なハードSFを期待して読んだために肩透かしを喰らってしまいました。ただし、娯楽エンターテイメント作品としては十分に楽しめる内容なので、最終話の5話「ヴァン・ビーズブローク星」(この5話は迫力満点です!)まで一気読み出来ました。やはり惜しむらくは、おそらくこの時代のハードSFと呼ばれるもの総体的な弱点、人物造形と描き込みかな~?


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