百億の星ぼしと千億の異世界

SF、ファンタジー、推理小説のブログ。感想を出来る限りネタバレしない範囲で気ままに書いています。

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』(1977)

2015年10月24日 | SF 木星

INHERIT THE STARS by James Patrick Hogan
池 央耿 訳
カバー スタジオぬえ 加藤直之
(1977/USA ◎1980/東京創元社 六六三1)


月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果,驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく,世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず,五万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び,一つの疑問が解決すると,何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星のガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが・・・・・・。ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。


確か中学か高校の頃に本書,『ガニメデの優しい巨人』,そして『巨人たちの星』と3部作を読んだのです。そして読了後,とくに本書は書店でかけてもらったブックカバーをその昔,ごく限られた本屋さんだけがしてくれた凝ったカバーがけで包み直し保管していたのです(けれどもそんな風に大切に保存していたのに,何も知らないツレによって"蔵書が多すぎるから"とディックのサンリオSF文庫やディクスン・カー,その他の貴重な古本とともにこっそりと処分されていたのが後に発覚したのですっ!)。ところが"微かにいくつかの場面を読んだかも・・・"というくらいしか思い出せないほど,見事にその内容を忘れていました。そのため読み直しながらもほぼ初読のような状態で,"この先どうなるんだろう・・・?"とワクワクしながら読み進めました。

舞台は地球,月,小惑星帯,木星の衛星ガニメデ。この物語を荒唐無稽ととる読者もいるかも知れません。あるいはホーガンの科学的知見をひけらかされ,"もしかしてひょっとしたら有り得るのか・・・?"と考える人もあるかも知れません。確かにスケールが大きすぎて笑えると言えば笑えますが,それはSFファンにとってはワクワクしながら,"よくぞここまで・・・"と,ニンマリしてしまう笑みなのです。自分はもちろん後者です♪

ハント博士が氷りつくガニメデから巨大な木星の模様を見上げるシーン(256~260頁)こそ,SFを読んでいて出会いたいと願う場面の一つです。そして当初は博士と確執のあったダンチェッカー博士が,ハントの仮説にさらに付け加えた仮説を読みながらジーンとくるものがありました。

タイトル,カバー・アートワーク,そして内容と三つ揃いした見事なハーモニーを奏でる本書は,SF史上不朽の名作といっていいでしょう。

そうそう,本書を読みながら途中,光瀬龍『喪われた都市の記録』(1972)を思い出しましたよ♪


 


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