百億の星ぼしと千億の異世界

SF、ファンタジー、推理小説のブログ。感想を出来る限りネタバレしない範囲で気ままに書いています。

ジェイムズ・P・ホーガン『ガニメデの優しい巨人』(1978)

2015年11月13日 | SF 木星

THE GENTLE GIANTS OF GANYMEDE by James Patrick Hogan
池 央耿 訳
カバー 加藤直之
(1978/USA ◎1981/東京創元社 六六三2)


木星最大の衛星ガニメデで発見された二千五百年前の宇宙船。その正体をつきとめるべく全力をあげて調査中の木星探査隊に向かって,宇宙の一角から未確認物体が急速に接近してきた。隊員たちが緊張して見守るうち,ほんの五マイル先まで近づいたそれは,小型の飛行体をくり出して探査隊の宇宙船とドッキング。やがて中から姿を現したのは,二千五百年前に出発し,相対論的時差のため現代のガニメデに戻ってきたガニメアンたちだった。前作「星を継ぐもの」の続編として数々の謎が明快に解明される!


前作『星を継ぐもの』は創元SF文庫で売り上げNo.1となっていることからも,SF史上不朽の名作と言っても過言はないでしょう。そしてシリーズものとかだと出だしが良くても徐々に当初のクォリティが落ちていったりするものが多い中,この三部作の中継ぎとなる本書やいかに…。とそのような心配は全くご無用で,ハント博士,ダンチェッカー博士,といった主だった前作キャラクターは引き継がれ,さらにはガニメアンが加わり,最後にはチャーリーたちルナリアンの謎が遺伝子工学まで絡まって展開され,その学術的展開は前作同様に現代の人類への讃歌ともメッセージとも受け取れます。といっても決して小難しくなく,とっつきにくくもない良質のハードSFなのです。そして前作同様,内容を全く覚えていなかったため,初読のように楽しめましたよ♪

あとは消えたガニメアンたちの行った先はどこなのか,という問いに対する答えを提示し,ガニメアンの決断に少し切ない余韻を残しながら本書は幕を閉じます。


ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』(1977)

2015年10月24日 | SF 木星

INHERIT THE STARS by James Patrick Hogan
池 央耿 訳
カバー スタジオぬえ 加藤直之
(1977/USA ◎1980/東京創元社 六六三1)


月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果,驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく,世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず,五万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び,一つの疑問が解決すると,何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星のガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが・・・・・・。ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。


確か中学か高校の頃に本書,『ガニメデの優しい巨人』,そして『巨人たちの星』と3部作を読んだのです。そして読了後,とくに本書は書店でかけてもらったブックカバーをその昔,ごく限られた本屋さんだけがしてくれた凝ったカバーがけで包み直し保管していたのです(けれどもそんな風に大切に保存していたのに,何も知らないツレによって"蔵書が多すぎるから"とディックのサンリオSF文庫やディクスン・カー,その他の貴重な古本とともにこっそりと処分されていたのが後に発覚したのですっ!)。ところが"微かにいくつかの場面を読んだかも・・・"というくらいしか思い出せないほど,見事にその内容を忘れていました。そのため読み直しながらもほぼ初読のような状態で,"この先どうなるんだろう・・・?"とワクワクしながら読み進めました。

舞台は地球,月,小惑星帯,木星の衛星ガニメデ。この物語を荒唐無稽ととる読者もいるかも知れません。あるいはホーガンの科学的知見をひけらかされ,"もしかしてひょっとしたら有り得るのか・・・?"と考える人もあるかも知れません。確かにスケールが大きすぎて笑えると言えば笑えますが,それはSFファンにとってはワクワクしながら,"よくぞここまで・・・"と,ニンマリしてしまう笑みなのです。自分はもちろん後者です♪

ハント博士が氷りつくガニメデから巨大な木星の模様を見上げるシーン(256~260頁)こそ,SFを読んでいて出会いたいと願う場面の一つです。そして当初は博士と確執のあったダンチェッカー博士が,ハントの仮説にさらに付け加えた仮説を読みながらジーンとくるものがありました。

タイトル,カバー・アートワーク,そして内容と三つ揃いした見事なハーモニーを奏でる本書は,SF史上不朽の名作といっていいでしょう。

そうそう,本書を読みながら途中,光瀬龍『喪われた都市の記録』(1972)を思い出しましたよ♪


 

小松左京 『さよならジュピター』

2012年09月17日 | SF 木星

カバー・谷口茂
(ケイブンシャ文庫→ハルキ文庫)


二十二世紀。木星太陽化計画の調査主任本田英二は宇宙考古学者バーナード博士の突然の訪問を受けた。一か月前、火星で発見された巨大な鳥の地上絵に宇宙人のメッセージが秘められているというのだ。しかもそのメッセージは木星と深い関係があり、解読の為、博士は本田に協力を要請したいという。本田は自らの仕事を中断しての緊急調査を開始するのだが……。

 映画化もされた上下2分冊のエンターテインメントSF傑作、文句なしに面白くって読了後ちょっとした小松左京の長編限定マイブームが起きました(笑) もっとも、過去にも氏のSFは読んでいたはずなんですけどね。意外にもサブ・キャラで出てくる新興宗教ジュピター教団の代表ピーターが切なくって…いい味出しています。読んだ後は大赤班が目の前に浮かんできましたよ(笑)