百億の星ぼしと千億の異世界

SF、ファンタジー、推理小説のブログ。感想を出来る限りネタバレしない範囲で気ままに書いています。

横溝正史 『獄門島』(1948)

2013年02月27日 | 日本推理

カバー 杉本一文
(◎1971/角川文庫 よ 5-3)


瀬戸内海に浮かぶ獄門島――南北朝の時代、海賊が基地にしていたこの島に、悪夢のような連続殺人が起こった。おなじみ金田一耕助に託された遺言が及ぼす波紋とは? ……その面白さは三つの殺人にそれぞれ異なった見事なトリックの設定。そのトリックを象徴するに芭蕉の俳句をしつらえ、俳句と殺人の巧みな結びつけは実に圧巻である。

これはやはり凄い作品だと思いました。終始一貫した緻密なストーリー、舞台設定、人物造形、風景描写…グイグイ引き込まれ、あっという間に読み終えてしまいました。これだけ重厚なつくりになっていると正直トリックがどうとかはもう関係なく名作だと思います。だから風雪に耐え読み継がれていくんでしょうね。

昭和21年9月下旬からの事件。金田一耕助は『本陣殺人事件』の時に出会った磯川警部と再会を果し、お互いの無事を喜びます。磯川警部の恰幅が良くなったのは歳月のなせる業でしょう。警部によると金田一耕助はちっとも変ってないとのこと。それでもあれから9年、その間に終戦も迎えお互いに年をとっていました。シリーズ作品のいいところはこうした時間経過がもっともらしく描かれるところですよね。

「金田一耕助は、そのとたん、思わず大きく眼をみはった。この不吉な名を持った島の、しかも古めかしい網元の屋敷に、こんな美しい人がいようとは、夢にも思いうけなかったからである。
 その人、年齢は二十二、三か、パーマをかけた髪をふっさりと肩に波打たせ、ゆるく仕立てた焦茶色のスーツを着ている。ただそれだけで、装飾といえば白いブラウスの襟にむすんだ、ほそいリボンの赤が一筋。(中略)
娘はけぜんそうに耕助のほうを見たが、そこで耕助の視線に会うと、燃えるように頬を染めながら、和尚の手から急いで道行きを受け取った。」(本文より)

これが早苗で金田一耕助は最後にアクションを起こしました。でもやっぱりもうちょっと会話とかしてからでないといきなりは無理なんじゃない?www


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