
HOUSUKE NOJIRI The Sun Usurper
Cover Direction & Design 岩郷重力 + Wonder Workz。
Cover Illustration 撫荒武吉
(ハヤカワ文庫 JA787)
西暦2006年、水星から突如として噴き上げられた鉱物資源は、やがて太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により、破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でこの巨大リングを創造したのか?――異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが……。新世紀ハードSFの金字塔、ここに屹立す!
初野尻抱介(笑) 面白い! これを傑作と言わずして何を傑作と言いましょうか。もったいないけど面白すぎて一気に読了してしまいました。プロローグは後に何かの伏線になるのだろうと予想されるものの、第一部冒頭の高校の天文学部の話が導入部などではなく、そこから一気に展開していくストーリーはお見事。この内容なら重厚に描けば少なくとも倍くらいの頁数になったと思うんですけど、作者は無駄な肉付けを削ぎ、たった一つマーク・リドゥリーの泣かせる場面のみを挿入したあとはもう、ただ純粋にストーリーを展開させてやがてファースト・コンタクトへ。この辺は本書がSFマガジンに掲載された「太陽の簒奪者」「蒼白の黒体輻射」「喪われた思索」をもとに長編小説として大幅にリライトされたことと関係があるのかも知れません。SF史上、それこそ無数に描かれたファースト・コンタクトものですが、違和感なく納得のいくファースト・コンタクトものが少ない中、林譲治『ストリンガーの沈黙』、その続編『ファントマは哭く』とともに屈指の一冊です。最近になって本格的に読み始めた一連の国内作家SFなんですが、いつの間にかそのレベルは海外を凌ぐほどになっていたんですね。