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● 09年衆院選について ● 自民党と第2自民党とが交代して・・・ ●

2009年08月12日 | 壊憲STOP勝手連
    09年衆院選について
                              井上澄夫

 多くのマスメディアが、8月30日投開票の衆院選で政権交代がなされることは必至という基調で「政局」を報じている。実際そうなるかどうかについて、私は判断を留保する。一寸先は闇の政治の世界、投票日までに何が起きるかわからないからである。

 私は民主党を支持しない。同党が改憲を党是とし、鳩山由紀夫代表が根っからの改憲論者であるということが主たる理由である(参考:鳩山著『新憲法試案』PHP研究所)。私にとって、民主党は第2自民党である。自民党と第2自民党とが交代して政権を担当しても、それは同じチームのバッターの入れ替えにすぎず、それをもって「2大政党制」というのはおかしい。そういう政治現象は「保守再編」と言うべきである。

 小泉元首相は米国政府の要求に従い、「構造改革」によって自民党の伝統的支持基盤であった地域・業界がらみの利益誘導構造をぶっこわした。それゆえ自民党は何より支持基盤の再編・強化を迫られている。苦戦と報道される由縁は、民意を問わず首相を3人も入れ替えたことや政策の拙劣さもさることながら、支持基盤の再編・強化がうまくいかないことにあるだろう。

 次の政権は小泉流規制撤廃オンリーのネオ・リベラリズム経済政策の修正を図らざるを得ない。格差社会の現実に向き合い、社会福祉の充実に努力する(少なくとも、そのフリをする)姿勢を見せなくてはならない。だが膨大な財政赤字をどうやって解消するのか、増税以外に展望があるわけではない。
 同時に、これまで与党とマスメディアとが協力して生み出した世論の極度の右傾化・排外主義化に対応して、強硬な外交・防衛政策を打ち出すことになるだろう。
 中米間の直接対話(中米戦略・経済対話)が始まり、クリントン元大統領の訪朝によって朝米間の二国間交渉が展望され始めたが、それに伴い、かつての「旭日のニッポン」(「ジャパン・アズ・ナンバーワン」)は国際政治の谷間に沈み行く「落日のニッポン」に転じつつある。中国の軍拡、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核実験・ミサイル連射などに直面して、日本外交は戦略もそれを支える哲学も持たない。米国が差しかける「核の傘」で守られることだけが念頭にある「日米同盟の堅持」については、現与党と民主党にさしたる差異はない。
 民主党単独政権であれ、民主・自民連立政権であれ、政治の軸が今よりさらに右に移動する危険性を拭い去る条件は、残念ながら今のところ見当たらない。

 「とにかく、何でもいいから、一度民主党に政権を担当させてみたい」という意見が多いように感じる。その思いには、民意が問われることなく首相の座がたらい回しされる現状への憤りや自民・公明両党への愛想づかしがある。またその思いには「それでダメなら、また入れ替えればいい」というリアルな計算も張りついていよう。
 そういう発想には根拠があるのだから、私の民主党不支持はともかく、反対はしない。しかし民主党を支持するなら、同党が政権を担当した場合、その政策を監視し意見を表明し続ける責任を負ってほしい。格差の拡大で生活苦にあえぐ人たちの中には、かつて小泉元首相を歓呼して支持した人も少なくないのではないか。彼が平然と語った「痛み」が強度を増しながら低所得層を襲っている。ポピュリズムに踊らされて投票するのはもうやめよう。自分で自分の首を絞めることはないのだ。

 選挙では自分の考えに近い政策を掲げる政党に1票を投じるのが普通である。候補者に支持政党公認が見当たらない選挙区では、与党批判としてそれ以外の政党を選択することもあるだろう。世論調査は衆院選の投票率がかなり高くなることを示している。
 私たちはすでに戦時下にある。戦時下から脱出できるか、いよいよ戦争にはまりこんでいくかという深刻な問題に、8月30日の衆議院選挙の結果は大きな影響を与える。よくよく熟慮して投票しようではないか。さもなくば、この国の未来はいよいよ危うい。
 
(2009・8・8記)