●注目記事その1 週刊金曜日
宗教政党に寄り切られた形で、腐臭を放つ政策(定額給付金)と引き替えに画策された消費税増税スケジュール化の泥仕合は、沈没が目前に迫った自公与党の泥舟上で繰り返されメディアをにぎわせた。そして、もっともらしく口を開けば「税制の抜本改革」…。まやかしはもう通らない!
「そもそも税金は、どういった人や企業などからどのぐらい取ればよいのか。また、どのような目的に使うのがよいのか――それを決めるのは当然、主権者である私たちだ。貧しい人たちに負担が重い消費税率の引き上げを画策しながら、権力闘争に明け暮れる『麻生自民党』。こんな政治家に生活を委ねていいのか」という問題意識をここであらためて想起するのも大切な事だ。
★税金は「金持ち」から取れ★
《ビジネスに精を出して従業員を養い、税金を払う》これは企業家の崇高な使命であり、資本主義の原点だ…。
「いつの頃からか、消費税増税が避けられないものとされている。でもちょっと待て! 消費税増税よりも、今ある {ムダ} をなくせば、消費税増税分のお金は捻出できる」し、「今現在、所得税にしろ住民税にしろ、大企業や高額所得者、株式配当・売買益に対する異常なまでの低税率がまかり通っている。まずはこれを是正するのが先決」だ。
週刊金曜日2009/2/20号(739号)の特集は《税金を考える》だ。
★麻生増税を嗤う永田町の闇=天城 慶
★むしられても怒らない羊たちの消費税
=三木 義一
★消費税を上げる前にやることがある=荻原 博子
★税金は金持ちから取れ!=浦野 広明
今年にはいって『週金』編集委員に3人の“新しい血”がはいった。
「保守リベラルの視点から『週刊金曜日』に新しい風を吹き込みたいと思います」という
中島岳志(なかじま たけし)さん(1/9号抵抗人名録参照)
「貧困は、人間としての誇りや生きる希望を奪い去り、ときには命さえも奪い去ります。…『週刊金曜日』を通じて、貧困に抗する市民のネットワークが広がっていくことを期待しています。」という
宇都宮健児(うつのみや けんじ)さん
「人が地に足をつけて生きていた時代から見ると、今はほとんどが、ありもしない風船をつかまえようと、ぴょこぴょこ飛び上がっていますね。そんな風だから「日本」という幻想にもしがみつきます。「一体感」とやらをほしがります。歴史から目をそむけます。無知に逃げ込みます。人々のそういう欲望を利用して、利益をむさぼる人も出てきます。そのために戦争もするでしょう。私は、自分の足もとをみつめながら、孤独に落ち着いて生きる方途を探したいのです。それを探すために、誤魔化しの向こうの事実を少しでも知りたいと思っています。」という
田中優子(たなか ゆうこ)さん
新任 三編集委員の活躍により、スポンサーに依存しない雑誌メディアの幅と奥行きの広がりに期待したい。
※『週金』は図書館で読める、借りられる(はず)/今週号のその他の記事はこちらを。
●注目記事その2は朝日新聞のインタビュー記事。
『週金』編集委員にも期待されていた内橋克人さんは、1/9号佐高編集委員との対談で「豊かになれない日本国民=その理由は瞭然…との「最新時点での『現実認識』」を述べている。
その現実認識を『朝日新聞』2009年2月23日付オピニオン欄(内橋克人氏インタビュー=聞き手 都丸修一)でも解りやすく語っているので、以下に全文引用する。
★資本主義はどこへ=協同考え新たな基幹産業を★
競争と共生●内橋克人さん 経済評論家
--内橋さんは市場万能主義、競争至上の新自由主義経済に異議を唱え、90年代から「このままでは雇用が破壊される」「社会のきずなが断たれる」と警鐘を鳴らしてきました。現状をどう見ますか。
「今の日本は一番大事なものを失いました。それは、人間の尊厳と景気の自律的回復力です。これまでは景気が悪くなっても設備投資が動き出し、やがて働く人びとの所得が増えて好況になった。しかし、日本はいびつな不均衡国家になってしまった。過剰な外需依存と格差拡大、簡単に職を奪われ、安心して消費もできず、景気変動に耐える大事な力を失ってしまったのです」
--なぜ極端な不均衡国家に。
「日本はグローバル化に『対応する』べきところを『適応する』ことばかり考えてきました。外資を稼いでもらおうとトヨタやソニーなど『グローバルズ』(日本型多国籍企業)に政策支援を集中させ、同時に国内ではリストラが進んだ。小泉構造改革の下で始まったいわゆる『いざなみ景気』の中で、製造業への派遣労働が自由化され、海外に進出していた工場が『日本回帰』と絶賛されて帰ってきた。つまり、国内でも低賃金で雇用できるようになり、輸出によって海外で稼ぎまくった。一方、多くの派遣労働者は社会保障の枠外に置かれ、クビを切られている。賃金、社会保障、地方、農業、あらゆる面で格差が拡大した。グローバルズが稼いだ外貨は十分還元されず、米国の浪費にすがることもできなくなって操業停止です」
--雇用問題は深刻です。
「市場万能システムでは人間は単なる労働力であり、経営者も景気の条件反射のように労働力を切る。もともと雇用を減らすのは最後の選択だから、例えば雇われている人の数を示す雇用指数は、足元の景気よりやや遅れて動く『遅行指数』とされています。それが今や、景気の先行きを示す『先行指数』のような状況です」
★企業化した「公共」★
--内橋さんたちの異議は、しかし市場主義の潮流の中では力を持たなかった。
「過去30年に及ぶ新自由主義政策は周到につくられています。時の権力者たちは、一つの思潮を広めるのに必ず学問とマスコミを動員します。アメリカでは『シカゴ学派』を、日本では規制緩和の諮問会議などを通して、『官から民へ』『働き方の多様化』『努力した者が報われる社会を』などとあおった。私は、こう問うてきました。『民』は民間巨大資本の民ではないか。働き方の多様化ではなく、働かせ方の多様化ではないか。努力が報われる社会は結構だが、競争社会では最終的に一人勝ち、敗者は努力不足だからあきらめろというのか、と」
「日本人は、時流に乗る熱狂的等質化の傾向が強く、強い者に弱く、弱い者には強いという特性があって、少数の異議申し立てが排除されやすい。これは危険だと思います。『公共』という意識も弱く、公共の企業化という流れの本質もなかなか見抜けなかった」
--現在の資本主義は破綻しかけている、との見方があります。処方箋はありますか。
「世界の国内総生産(GDP)の合計は54兆ドル(約5千兆円)ほどなのに、金融市場を暴走するホットマネーは最大で約540兆ドルともいわれます。利が利を生む虚のマネーが巨大化して実体経済を振り回してきた。もはや制御不能です。ホットマネーはいずれ自滅すると思いますが、実体経済を救うためにも、国境を越えて本当の専門家を集め、真剣に国際協調に取り組む必要があります」
★分断から連帯へ★
--内橋さんは「共生経済」、具体的には「F(食料)E(エネルギー)C(ケア)自給圏(権)」を提唱しています。
「競争の原理は分断です。分断して対立させ、競争させる。切磋琢磨は結構ですが、共生は連帯と参加と協同を原理として食料、エネルギー、介護など人間の基本的な生存権を大事にする。FとEとCを自給し、消費するだけでなく、そこに雇用を作り出す。その価値観の下で新たな基幹産業を創出し持続可能な社会に変える。経済効果は大きいはずです」
「オバマ大統領は『無保険者に保険を』と公約し、財源として富裕層優遇減税を見直す考えです。所得再配分政策の復活です。FEC自給圏に通じます」
--国内経済優遇は保護主義につながるという意見や、逆に江戸時代のような自給経済に戻ろう、といった声も出ています。
「とんでもない。FEC自給圏は人間の安全保障です。私は古き良き日本がいいなどとは思いません。差別や身売りがあり、基本的な生存権が奪われていた時代ではなく、人間を第一義とする共生経済をめざしているのです。それは小さな地域や若者たちの間で、すでに始まっている未来です」
(引用ここまで)
さて、06年の時点で内橋さんは今日の事態を惹起した仕組みについて正確な警鐘(「悪夢のサイクル-ネオリベラリズム循環-」文芸春秋:刊)をならしていた。その内橋さんのもうひとつの《視点》について、こちら(東京新聞)も参照。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/consti/news/200706/CK2007062202026160.html
●注目記事その3は植草一秀さんの『知られざる真実』。
“企業家の使命”や“資本主義の原点”をかなぐり捨てた《小泉竹中改革》。“小泉竹中改革の帰結としての郵政民営化”、“郵政民営化の帰結としてのかんぽの宿の闇”について、植草さんは見逃すことのできない分析をしている。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-9efa.html
今後も要注目!したい。
(練金術師)
宗教政党に寄り切られた形で、腐臭を放つ政策(定額給付金)と引き替えに画策された消費税増税スケジュール化の泥仕合は、沈没が目前に迫った自公与党の泥舟上で繰り返されメディアをにぎわせた。そして、もっともらしく口を開けば「税制の抜本改革」…。まやかしはもう通らない!
「そもそも税金は、どういった人や企業などからどのぐらい取ればよいのか。また、どのような目的に使うのがよいのか――それを決めるのは当然、主権者である私たちだ。貧しい人たちに負担が重い消費税率の引き上げを画策しながら、権力闘争に明け暮れる『麻生自民党』。こんな政治家に生活を委ねていいのか」という問題意識をここであらためて想起するのも大切な事だ。
《ビジネスに精を出して従業員を養い、税金を払う》これは企業家の崇高な使命であり、資本主義の原点だ…。
「いつの頃からか、消費税増税が避けられないものとされている。でもちょっと待て! 消費税増税よりも、今ある {ムダ} をなくせば、消費税増税分のお金は捻出できる」し、「今現在、所得税にしろ住民税にしろ、大企業や高額所得者、株式配当・売買益に対する異常なまでの低税率がまかり通っている。まずはこれを是正するのが先決」だ。
週刊金曜日2009/2/20号(739号)の特集は《税金を考える》だ。
★麻生増税を嗤う永田町の闇=天城 慶
★むしられても怒らない羊たちの消費税
=三木 義一
★消費税を上げる前にやることがある=荻原 博子
★税金は金持ちから取れ!=浦野 広明
今年にはいって『週金』編集委員に3人の“新しい血”がはいった。
「保守リベラルの視点から『週刊金曜日』に新しい風を吹き込みたいと思います」という
中島岳志(なかじま たけし)さん(1/9号抵抗人名録参照)
「貧困は、人間としての誇りや生きる希望を奪い去り、ときには命さえも奪い去ります。…『週刊金曜日』を通じて、貧困に抗する市民のネットワークが広がっていくことを期待しています。」という
宇都宮健児(うつのみや けんじ)さん
「人が地に足をつけて生きていた時代から見ると、今はほとんどが、ありもしない風船をつかまえようと、ぴょこぴょこ飛び上がっていますね。そんな風だから「日本」という幻想にもしがみつきます。「一体感」とやらをほしがります。歴史から目をそむけます。無知に逃げ込みます。人々のそういう欲望を利用して、利益をむさぼる人も出てきます。そのために戦争もするでしょう。私は、自分の足もとをみつめながら、孤独に落ち着いて生きる方途を探したいのです。それを探すために、誤魔化しの向こうの事実を少しでも知りたいと思っています。」という
田中優子(たなか ゆうこ)さん
新任 三編集委員の活躍により、スポンサーに依存しない雑誌メディアの幅と奥行きの広がりに期待したい。
※『週金』は図書館で読める、借りられる(はず)/今週号のその他の記事はこちらを。
●注目記事その2は朝日新聞のインタビュー記事。
『週金』編集委員にも期待されていた内橋克人さんは、1/9号佐高編集委員との対談で「豊かになれない日本国民=その理由は瞭然…との「最新時点での『現実認識』」を述べている。
その現実認識を『朝日新聞』2009年2月23日付オピニオン欄(内橋克人氏インタビュー=聞き手 都丸修一)でも解りやすく語っているので、以下に全文引用する。
競争と共生●内橋克人さん 経済評論家
--内橋さんは市場万能主義、競争至上の新自由主義経済に異議を唱え、90年代から「このままでは雇用が破壊される」「社会のきずなが断たれる」と警鐘を鳴らしてきました。現状をどう見ますか。
「今の日本は一番大事なものを失いました。それは、人間の尊厳と景気の自律的回復力です。これまでは景気が悪くなっても設備投資が動き出し、やがて働く人びとの所得が増えて好況になった。しかし、日本はいびつな不均衡国家になってしまった。過剰な外需依存と格差拡大、簡単に職を奪われ、安心して消費もできず、景気変動に耐える大事な力を失ってしまったのです」
--なぜ極端な不均衡国家に。
「日本はグローバル化に『対応する』べきところを『適応する』ことばかり考えてきました。外資を稼いでもらおうとトヨタやソニーなど『グローバルズ』(日本型多国籍企業)に政策支援を集中させ、同時に国内ではリストラが進んだ。小泉構造改革の下で始まったいわゆる『いざなみ景気』の中で、製造業への派遣労働が自由化され、海外に進出していた工場が『日本回帰』と絶賛されて帰ってきた。つまり、国内でも低賃金で雇用できるようになり、輸出によって海外で稼ぎまくった。一方、多くの派遣労働者は社会保障の枠外に置かれ、クビを切られている。賃金、社会保障、地方、農業、あらゆる面で格差が拡大した。グローバルズが稼いだ外貨は十分還元されず、米国の浪費にすがることもできなくなって操業停止です」
--雇用問題は深刻です。
「市場万能システムでは人間は単なる労働力であり、経営者も景気の条件反射のように労働力を切る。もともと雇用を減らすのは最後の選択だから、例えば雇われている人の数を示す雇用指数は、足元の景気よりやや遅れて動く『遅行指数』とされています。それが今や、景気の先行きを示す『先行指数』のような状況です」
★企業化した「公共」★
--内橋さんたちの異議は、しかし市場主義の潮流の中では力を持たなかった。
「過去30年に及ぶ新自由主義政策は周到につくられています。時の権力者たちは、一つの思潮を広めるのに必ず学問とマスコミを動員します。アメリカでは『シカゴ学派』を、日本では規制緩和の諮問会議などを通して、『官から民へ』『働き方の多様化』『努力した者が報われる社会を』などとあおった。私は、こう問うてきました。『民』は民間巨大資本の民ではないか。働き方の多様化ではなく、働かせ方の多様化ではないか。努力が報われる社会は結構だが、競争社会では最終的に一人勝ち、敗者は努力不足だからあきらめろというのか、と」
「日本人は、時流に乗る熱狂的等質化の傾向が強く、強い者に弱く、弱い者には強いという特性があって、少数の異議申し立てが排除されやすい。これは危険だと思います。『公共』という意識も弱く、公共の企業化という流れの本質もなかなか見抜けなかった」
--現在の資本主義は破綻しかけている、との見方があります。処方箋はありますか。
「世界の国内総生産(GDP)の合計は54兆ドル(約5千兆円)ほどなのに、金融市場を暴走するホットマネーは最大で約540兆ドルともいわれます。利が利を生む虚のマネーが巨大化して実体経済を振り回してきた。もはや制御不能です。ホットマネーはいずれ自滅すると思いますが、実体経済を救うためにも、国境を越えて本当の専門家を集め、真剣に国際協調に取り組む必要があります」
★分断から連帯へ★
--内橋さんは「共生経済」、具体的には「F(食料)E(エネルギー)C(ケア)自給圏(権)」を提唱しています。
「競争の原理は分断です。分断して対立させ、競争させる。切磋琢磨は結構ですが、共生は連帯と参加と協同を原理として食料、エネルギー、介護など人間の基本的な生存権を大事にする。FとEとCを自給し、消費するだけでなく、そこに雇用を作り出す。その価値観の下で新たな基幹産業を創出し持続可能な社会に変える。経済効果は大きいはずです」
「オバマ大統領は『無保険者に保険を』と公約し、財源として富裕層優遇減税を見直す考えです。所得再配分政策の復活です。FEC自給圏に通じます」
--国内経済優遇は保護主義につながるという意見や、逆に江戸時代のような自給経済に戻ろう、といった声も出ています。
「とんでもない。FEC自給圏は人間の安全保障です。私は古き良き日本がいいなどとは思いません。差別や身売りがあり、基本的な生存権が奪われていた時代ではなく、人間を第一義とする共生経済をめざしているのです。それは小さな地域や若者たちの間で、すでに始まっている未来です」
(引用ここまで)
さて、06年の時点で内橋さんは今日の事態を惹起した仕組みについて正確な警鐘(「悪夢のサイクル-ネオリベラリズム循環-」文芸春秋:刊)をならしていた。その内橋さんのもうひとつの《視点》について、こちら(東京新聞)も参照。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/consti/news/200706/CK2007062202026160.html
●注目記事その3は植草一秀さんの『知られざる真実』。
“企業家の使命”や“資本主義の原点”をかなぐり捨てた《小泉竹中改革》。“小泉竹中改革の帰結としての郵政民営化”、“郵政民営化の帰結としてのかんぽの宿の闇”について、植草さんは見逃すことのできない分析をしている。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-9efa.html
今後も要注目!したい。
(練金術師)