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音の世界

「ノリのいい音楽」をテーマに、CDやライブの感想を綴ります。

東京チンドン探訪記5:決戦は金曜日

2008-10-15 22:11:46 | チンドン
【探訪記4の続き】

一日おいて金曜日。いよいよ決戦のときである。
今日こそ広目屋さんをつきとめるのだ!
ゲンをかつぎ、富山で買ったチンドン屋キティのハンカチ
(=勝負ハンカチ)を懐にしのばせ会社に向かう。

昼休みに図書館へ猛ダッシュ、明治中期の地図をコピーする。
さらに、区役所で時代地図4点セット420円也を購入。

担当の方に「屋号までわかる資料はないか」と尋ねたところ
「一部だけなら載っているものもあります」と紹介して下さり、
ラッキーにも大正初期における銀座の詳細図が見つかった。
これで初代広目屋、第二期広目屋、そして今の広目屋がわかるだろう。

夕方、会社でガサゴソと購入した大判地図を広げてみる。
これがスグレモノで、縮尺の怪しい江戸期はともかくとして
明治・大正・昭和初期の図にトレーシングペーパー製の現行図を
同じ縮尺で重ねあわせることができるのだ。

まずは明治地図の「京橋五郎兵衛町」と、大正期の区画図から
割りだした第二期広目屋のありかに黄色いマーカーをひく。

それから現在の地図とつきあわせてゆくのだが、
東京という街は破壊と再生の歴史を持つためか
当時をしのぶランドマークなどほとんど無いに等しく、
とにかく昔の地図と重ねるのが難しい。

なんとか「浜離宮」を基点に怪しいながらも場所を割り出し、
インターネットで現在の区画図を検索した。

さあ、これでだいたいの場所は分かった。
あとは自分の足で確かめるだけである。

【探訪記6に続く】
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東京チンドン探訪記6:エピローグ

2008-10-14 23:00:52 | チンドン


【探訪記5の続き】

さて、まずは秋田柳吉の広目屋創業の地、
京橋五郎兵衛町の付近に今なにがあるのか。
それは、八重洲富士屋ホテルだった!

そして第二期広目屋だが、訪ねてみて驚いた。
なんと、行きつけのドトールコーヒーではないか。



当時の区画と現在の番地は微妙にズレているし、
広目屋が二度移転しているのではないかというのは
完全な私説である。そこで、当のドトールでコーヒーを
すすりながら再度古地図を検証したが、やはりこの界隈だ。

おお、東のチンドン発祥の地ここにあり。

だから何?という結論かもしれないが、
今後銀座のドトールに立ち寄るとき、私の頭の中で
派手な衣装の賑やかな楽隊がよみがえるであろう。

地図の読めない方向オンチには苦行の連続だったが、
なかなか楽しい4日間のアクティビティでありました。

【東京チンドン探訪記:完】

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幻の大阪ちんどん紀行

2008-10-13 17:42:04 | チンドン


ここ一週間ほど悩みに悩んでいた。
大阪へ行くか、行くまいか。

チンドン界の最大手、ちんどん通信社さんの
特別公演が大阪で行われるのだ。
題して「秋の色種 野漠の賑わい」、内容は
チンドンをめぐる一大歴史教養ミュージカルだという。

日を追うごとに公演の詳細があらたかになり、
自分のチンドン熱もグングン高まってゆく。

・・い、行きたい行きたい!めちゃめちゃ観たい!!

そう思い始めたのが一週間前だが、時すでに遅し。
ギリギリまで大阪日帰りへの道を探ったが
事情が厳しく、今回は見送らざるをえなかった。

ということで、今や絶版かも?のPHP新書、
「チンドン屋始末記」(1986年)を久々に読んで
チンドンの歴史をなぞりつつ、本日の公演に想いをはせている。

江戸期の飴勝に始まり勇亀、広目屋、丹波屋くり丸・・
おそらく舞台上で歴史はもっとさかのぼるだろう。
音楽にからむ広告宣伝の芸能史がどのように調理され
ミュージカルと相成ったか、興味はつきない。

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ちんどんショー@BIG FUN平和島

2008-09-15 17:09:20 | チンドン

【前回の続き】

さて思いたったらすぐ行動、ながながと電車を乗り継いで
JR大森駅からタクシーでスッとばし、BIG FUN平和島へ向かう。
降り立つとそこは競艇場の真ん前で、BIG FUNとは
併設された複合ショッピングセンターのことだった。

ごちゃごちゃと賑わう外の一角で大道芸が披露され、
15時になるとチンドン屋さんが登場した。
構成はチンドン太鼓、ゴロスの女性2名に、
サックスとオサルさんの格好をしたお兄さんの計4名。
いずれも以前よりさまざまな場所でお見かけした方々だ。

チンドン太鼓の女性がマイクで場を仕切るが、MCが実に巧みだ。
まず「ポニョ」の歌のチンドン版でチビっ子達の心をつかみ
チンドン屋さんをやってみたい小さなお友達を募集すると、
すぐさま4名が手をあげた。積極的でいいなあ!
残念ながら「大きなお友達」の募集はなかったが(笑)
それはそれとして、楽しく見物させていただく。

チンドン屋さんが取りだしましたは、チビッ子用に
特別アレンジされたオリジナルの小さなチンドン太鼓と
キラキラ光る美しい和柄の可愛い上衣に、動物をかたどった帽子。

チンドン、チンドン、チンドンドンとひとしきり皆で練習したあと
周辺を練り歩く。さらに観客のリクエストに応じて数曲を披露し
(なんとサックスのお兄さんのレパートリーは千曲あるという!)
最後は再び「ポニョ」で30分のちんどんショーはお開きとなった。

ちんどん屋さんの練り歩きには遭遇することもあるが、
このように一か所に立ちどまって行うお仕事の現場は
なかなか見ることができない。それだけに、チンドン太鼓の女性の
軽妙なトークに「人を楽しませるプロだなあ」と改めて感じた。
ショウとしてきっちり楽しませてくれたチンドン屋さん、ありがとう!

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ちんどんショーを追いかける

2008-09-15 16:47:35 | チンドン

【土曜日の続き】

豪華絢爛なインド映画を観て大満足の一日だったが、
帰る道中に問題がおきた。最近アブラっこいものを
食べ過ぎたせいか、盛大にお腹を下したのだ。

・・あちゃ~、明日はリカバリーの一日だな。

しかたなく日曜日は家でごろごろしていたものの
ある情報に気づき、いてもたってもいられなくなった。
なんとBIG FUN平和島で「懐かしの大道芸」と称し
「なりきりちんどんショー」が行われるという。
しかもちんどんショーは今日の15時からだ。
なんてことだ、どうしても見に行きたい!!

チラシを見たところ御贔屓のちんどん屋さんが出るようだし
あわよくばコスプレをして練り歩きをさせてくれるかも?

・・で、平和島ってどこ?(おいおい)

慌てて調べてみると競艇のメッカ・平和島までは遠いものの
開演に間に合わない時刻ではない。腹具合が気になるが
絶食すれば大丈夫だろう。ちょっと不安なこんなときは
先日観たインド映画の名セリフを思いだし、勇気をもらう。

「カル・ホー・ナー・ホー、今日を精いっぱい生きよう」

そう、今日はちんどんショーを精いっぱい見にいこう!

【続く】

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ドキドキ☆女だらけのチンドン祭り

2008-08-29 01:12:43 | チンドン


浅草の定席小屋・木馬亭にチンドンイベントを見に行った。
題して「ドキドキ☆女だらけのチンドン祭り」。
女性楽士さんが屋号の違いを超えてコラボするらしい。
このような企画は初めてだそうで、見る側もドキドキものだ。
予想もつかないが、いったいどんな演目なのだろう?

・・いやあ、すごくよかったです!

プログラムは3部構成だが、休憩はなくテンポがいい。

オープニングの「たけす」を含む第1部がチンドン娘のお披露目。
舞台後方から次々にチンドン娘が華やかに登場するにつれ
チンドン太鼓と賑やかな鉦の音がどんどん分厚くなってゆく。
最後に9名揃っての大合奏は迫力満点。他の楽器もそうだが、
やはり大人数での演奏は楽しいなあ~!早くも気分はうきうきだ。

数曲のあと一旦幕が閉まり第2部が「ザ・ガールズバンド」。
女性楽士さん5名の華麗なホーンズに加え、男性2名が
スネアドラムとチューバで演奏をしっかり支えている。

今や街中で聴くこともない古きよきチンドン屋さんのテーマ、
「天然の美」は、それぞれがソロで丁寧に聴かせてくれる。
特に、小さな身体をめいっぱい使い飛び上がらんばかりに
パワフルな演奏を聴かせる岩渕理緒さんに釘付け。
泣きのサックス・しげみさんの哀愁を帯びた音色も印象的だ。

ガールズバンドというから少しおちゃらけた感じかと思いきや
さすがプロの楽士さんの演奏はすばらしい。ポール・ホワイトマン楽団
の「ウィスパリング」もムードたっぷり、いい音楽を聴けて幸せだ。

これだけでも十分だが、チンドン祭りの真骨頂はここからだった!
第3部は「チンドンバラエティーショー」と称し、プログラムには
”歌あり踊りありお芝居ありのステージショー”と書いてある。
幕が開けると、イヤハヤこれがよく練られていて面白い!

まず感動したのが、大ベテラン喜楽家小夜子さんのチンドン太鼓。
彼女が腰を左右に振りながら叩くゴロスは天下一品、
ファンキーでたまらない。もっともっと聴かせて欲しい!

お芝居も絶好調で、男性陣扮するベタなチンピラ2名(笑)を
月島宣伝社のユウコねえさん演じる弁天小僧がみごと一蹴!
ところが、去りゆく弁天小僧を慕う女性が次々に現れ、
しがみついて離さない。(ユウコねえさんが凛々しく惚れ直しました)
そこで一人ずつ歌や踊りを披露し、誰が弁天小僧のワイフに
ふさわしいか競おうとするが・・

小芝居に連動して各人のソロへスムーズに繋ぐ演出が見事。
一人多重録音に歌と愉快なヒョットコ踊りに妖艶なベリーダンス・・
鳴り物にサックスにと大活躍の岩渕さんの口上も冴えわたる。
彼女たちの茶目っ気タップリな表情が実に魅力的で、
女っぷりというより、気骨ある芸風がむしろ男らしく豪快だ。

メリハリのきいた演出と長すぎず短すぎずの絶妙な構成、
あまりにも楽しく終わったときに「もう少し観たい!」
と思ったが、ちょうどよい頃あいなのだろう。

百戦練磨のチンドン屋さんはエンタメのプロである。
演奏よし口上(MC)よし芸よしテンポよしで
チンドン屋さんの底力をまざまざと見せつけられた。
偉そうな感想で恐縮だが、またこのような斬新な企画で
チンドンエンターテイメントの可能性をどんどん広げてほしい。

弁天小僧さまと共に私も「ちんどん丸」に乗って
どこまでもついてゆきとうございます・・

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チンドン祭り@木馬亭

2008-08-27 00:30:42 | チンドン

【↑5.5×3.8センチの入場券がカワイイ】

浅草は木馬亭で行われた
「ドキドキ☆女だらけのチンドン祭り」に行ってまいりました。

いや~、楽しかったーー!!

華やかさはもちろん、むしろガールズの男気に惚れぼれ。
かっちりショウアップされた1時間を楽しませて頂きました。
本日はこれにて、とり急ぎ・・

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F線に乗ってチンドンを(続)

2008-07-22 00:17:34 | チンドン


意外に早い時間に終わったインドネシア祭り1日目。
先日、渋谷センター街でチンドン屋さんに遭遇したが
ひょっとして今日も会えたりして・・?

などと半信半疑で夕方のセンター街を歩いてみたところ、
果たして同じ場所にいらっしゃいました!
先日の方々とは違うが、レギュラーなのかしらん?

フェス帰りの新たな楽しみが見つかりました。

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F線に乗ってチンドンを

2008-06-15 01:21:17 | チンドン


いよいよ東京メトロ副都心線が運行開始。

バングラデシュフェスティバルがあると知り、
開通したてのF線(=フェスティバル線)に乗って
わくわくしながら向かいましたは代々木公園。
3時過ぎに会場に着くと、4月に行われた
お正月祭り・ボイシャキメラに出ていた楽団が
ノリのいい音楽を奏でている。

・・ところが。

禁酒の国・バングラデシュの祭りなだけに
心の中でゴメンナサイしつつビールを飲み
カレーその他もひとしきり食べたものの、
全体的に屋台も人出も少なくなんだか寂しい。

「ストップ温暖化」というキャッチフレーズの割に
テーマを訴えかけるような出し物が見つからず、
これでは何をターゲットにしたイベントなのか
主旨がよくわからない。う~ん、ちょっと残念!
しかし、後で民謡のステージもあるというので
まだ帰るわけにはいかない。

そこで次なる目的地、渋谷パルコに向かって
しばしナンシー関の大ハンコ展を見ようとするも、
入口から階段のはるか下まで長蛇の列ができており
とても短時間で入れそうにない。

予想外の展開にトボトボと外に出ると、
どこからかチンドンの音色が聞こえてきた!
かけよるとそこはセンター街のど真ん中。
3名の若いちんどん屋さんが、すばらしく
イキのいい演奏で場を盛り上げている。

本来の目的をすっかり忘れ
夢中でチンドンに耳を傾けること30分、
意外な出逢いに感激しきり。

その後一旦代々木公園に戻ったものの
ふたたびナンシー関展に舞い戻り、
「マイケルとバブルス」の生ハンコと対面して
穴のあくほど見つめてまいりました。

本日の成果は2勝1引き分け、というところか?

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チンドン姫鑑賞記

2008-05-26 00:08:11 | チンドン
【前回の続き】

日曜日のお昼番組にちんどん通信社が登場すると知り、
ビデオをセットしドキドキしながらテレビの前に座る。
チラっとしか映らないんじゃないか、現場ロケはあるのか・・
「噂の東京マガジン」はそんな不安を吹き飛ばしてくれた!

ちんどん通信社の看板娘・林風見花さんの掲載誌が
「中吊り大賞」(今週のアングル)に選ばれたのだ!すばらしい~

記事紹介だけでなく大阪でのちんどんの現場やメイクの風景、
そしてご本人へのインタビューも交え、コンパクトながら
ツボを押さえた良い構成の2分間だったと思う。
「親の家業を継ぐのは普通のこと」という十代、
メディアへの露出も積極的にされているようだ。

現代チンドンの大御所、林幸治郎親方に続き
彼女はチンドン界でどのような存在になるのだろう。
この先10年、20年とチンドンファンの楽しみが続きそうです。

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チンドン姫参上!

2008-05-25 02:29:28 | チンドン
先日ご紹介したちんどん通信社は林幸治郎親方のお嬢さんにして
弱冠17歳のチンドン屋・林風見花さんが週刊誌に登場すると知り、
やってきました駅前の本屋。3大女性誌のどれかに載っているはず・・
と3誌ローテーションでくまなく立ち読み(失礼)したものの、
どこに載っているのか皆目見当がつかない。

その日はあきらめ翌日出直し、血眼になってフミカ姫を探すも
まだ見つからない!まさか地方によって記事が違うのでは?
あきらめきれず三日目の正直、しかも2店舗渡り歩いて
ようやく見つけたフミカ姫の見開き2ページは貴重だった!

決してボリュームのある記事ではないけれど、
早乙女太一さんがライバルだと語り(なるほど!)
”チンドンの原型を守っていきたい”という
風見花さんの言葉が頼もしい。若いながらも
自分の道をまっすぐ見据えて精進されているのだろう。

富山ちんどんコンクールで妖艶な花魁姿で練り歩き、
そこだけ周囲の空気を一変させていたフミカ姫。
「人に見られることに抵抗がない」という
彼女の資質は天性のものなのだなあ、と感心しきり。

おりしも本日は愛知県の萩原町チンドンコンクール。
今年も参戦はかないませんが、午後1時にはTBSを見て
風見花さんの活躍を応援したいと思います。

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ちんどん屋です。

2008-04-29 17:26:02 | チンドン


前回ご紹介した「ぼくたちのちんどん屋日記」。
その続編ともいえる「ちんどん屋です。」を読了。
(林幸次郎/赤江真理子著 思想の科学社、1993年)

これは1987年より5年半続いた「思想の科学」誌での
連載に加筆修正したもので、海外公演や娘の誕生など
この間に彼らがチンドン屋として、そしていち家族として
経験する新たな出来事がリアルタイムで描かれている。

若い著者特有の(?)ある種の”勢い”を感じた前作と異なり、
チンドンという生業をめぐる忙しくも楽しい日常をつづる
幸次郎さんの落ち着いた語り口は円熟味を増している。
基本的に一話完結でエッセイの題材はさまざまだが、
さすがにこういうお商売の方々の経験値は半端でない。
道端からみた街と人に関する貴重な路上考現学だと思うし、
実体験に裏打ちされた人間観察の鋭さにも舌を巻く。

安易にチンドン屋を志願してくるスットンキョウな人々、
いい加減な雇い主、なぜか米米クラブの前座で公演(!)、
異文化・異業種との交流、消えゆく商店街への提言・・
笑いとペーソスがふんだんに詰まったイイ記事ぞろいだ。
きっと幸次郎さんは困った輩には苦笑いしつつ粛々と仕事に励み、
あまたの”事件”をひょうひょうと受け流してこられたのだろう。
(もちろん実際には簡単なご苦労ではないのだろうが)

いっぽう「まりちゃん」こと真理子さんの章では、歯切れのよい
パキパキした口調で子育ての苦労と喜びが連綿とつづられ、
仕事を中断せざるをえなかった彼女の焦りや不安、そして
喜びといった感情の動きが手にとるように伝わってくる。

私が子供のころ稀に見かけたチンドン屋さんは、どこか
遠い異世界からやってきたファンタジーの存在だったし、
生活感のない白塗りの彼らが堪らなく魅力的に思えたものだ。
ところが、こういうチンドンの舞台裏を描いた本を読んでも
それはそれで不思議にも違和感は全くない。
おそらく、チンドン屋さんが日常に存在する生活の場自体が
今でも自分にとってはある種のファンタジーなのだろう。
そして、だからこそ彼らの著作に強く惹かれるのかもしれない。

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ぼくたちのちんどん屋日記

2008-04-27 04:13:01 | チンドン


先日訪れた富山のちんどんミュージアムで
チンドン界の雄、ちんどん通信社の林幸治郎親方の
昔の著書を見つけ、遅まきながら読むことができた。
題して「ぼくたちのちんどん屋日記」
(林幸次郎/赤江真理子著 新宿書房、1986年)。

1980年代初頭に、立命大の「学生チンドン屋」という
もの珍しさでメディアにひっぱりだこだった林幸次郎さんが
卒業後、大阪最大手のチンドン屋青空宣伝社に弟子入りし
伴侶となる赤江真理子さんとの出会いを経て独立するまでが
イキイキとつづられる。

当時、チンドン屋は「老いて消えゆく職業」だった。
林さんは年配の諸先輩から様々なことを学びつつ、
「口きき屋」によるピンハネ等、旧態依然とした慣習を
若者らしい柔軟な発想で少しずつ変えてゆく。

面白いのが、いっけん本書の構成がバラバラなこと。
巻頭は林幸次郎さんの路上観察誌だ。
街歩きのコツ、実家の金物問屋のこと、市場について…
学者のように冷静で分かりやすい筆致だが、
赤江真理子さんの章に入ると文体が一変した。

赤江真理子さんは元気の塊のような明るい方らしい。
ひょうひょうとした雰囲気の林さんとは対照的で、
下町のお姉ちゃんの大阪弁をそのまま聞いているような
「しゃべくり」のパワーに圧倒される。
高校を中退し紆余曲折を経て、ひょんなことから
チンドン屋さんに入門することになるいきさつが
彼女が生まれ育った西成の昭和40年代の懐かしい光景や
ユーモラスな祖父とのエピソードを交え痛快に語られる。

さらに章が進むと、ある月の仕事のスケジュールや
仕事のグチや、単なる日記の羅列なども出てくるが、
活字に切り取られた彼らの「日常」がめっぽう面白い。
まるで「じゃりン子チエ」みたいな下町の人情と酒場の活気。
濃密な人間関係の中に生きるチンドン屋さんの生活ぶりを感じる。

また印象的なのが、今は亡き老齢のチンドン屋さんの
名口上をそのまま収録している点。林夫妻が敬愛する
京都のチンドン屋「でぼ清」さんの口上の見事なこと!
例えば、大売り出し中のうなぎの柔らかさを
「ふんにゃりと、こんにゃりと、はんにゃりとして…
おいしゅうございます」と表現するくだりは
でぼ清さんのやわらかい京都弁が聞こえてくるようだ。

ちんどん通信社といえば今や押すに押されぬ有名企業、
林社長は興行に執筆に大学の講師にと大活躍だが
その原点に触れることができる一冊ではないだろうか。

【追記】
ところで、真理子さんて今どうしたはるんやろ?と
気になり調べてみたところ、河内音頭の世界でご活躍の由。
そうだったのか~

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富山ちんどん紀行2008:総括

2008-04-23 21:45:56 | チンドン
富山に行ったのは3週間前なのにまだ書いてるぞ、の
全日本チンドンコンクールだが、今年も自分なりに総括したい。
(→昨年の総括はコチラ

総括:チンドンコンクールは更にパワーアップしている!

チンドンコンクールがトーナメント方式になり4回目、
お客さんの数は年々増えているのではないだろうか?
この手の屋外イベントは天候に左右されるが、
晴天だった点をさっぴいても人の多さに驚いた。
予選の人出が昨年の本戦と同じぐらいだった印象で、
観客の多さがコンクールへの関心の高さを物語るようだ。

54回目という歴史あるイベントだが毎年同じではなく
運営面のマイナーチェンジを怠らない印象で、こうした努力が
コンクールのパワーアップにひと役買っていると思う。

ただ惜しむらくは、やはり観客の年齢が高いこと。
会場でふと周囲を見渡すと熟年層が多く、
チンドン屋さんに若手が多いのと対照的だ。
毎度のことだが、お年寄りから若者まで幅広い層に
このイベントの面白さが伝わるといいのにな、と思う。

今年も相当の人出(15万人?)だったというものの
昭和30年に始まったチンドンコンクールが
最も盛りあがったのは昭和30~40年代で、
観客数は20万とも30万ともいわれたらしい。
当時の写真を見ると、現在の仕掛けより
さらに大きなハリボテが登場している。
盛況にみえる今より過去はもっとすごかったのだ。

昭和のチンドン屋さんが、人気の月光仮面や
チャンバラで観客を沸かせた様子が
ちんどんミュージアムの展示写真でしのばれる。
思うに、当時夢中になって観ていた子供達が
現在のチンドンコンクールを支えているのではないか?

又これは平和の祭典なのだな、と改めて感じた。
戦災から立ち直った富山の復興を願って
チンドンコンクールを始めたそうだが、確かに
春爛漫の公園でチンドン屋さんの競演を観られるなんて、
なんとも平和で愉快なイベントではないか。
このイベントにかける富山市の意気ごみに
並々ならぬものがあるのも頷ける。

桜色の揃いのジャンパーできびきび働くスタッフ、
2日間にわたり絶妙の司会で会場を盛りあげて下さった
富山出身の三遊亭良楽さんと女性アナウンサー、
生ファンファーレで競技を盛りあげる吹奏楽団、
そして笑顔を絶やさないチンドン屋さん達。
全ての皆様にこれからも声援をおくりたい。

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富山ちんどん紀行2008:お開き

2008-04-19 17:48:21 | チンドン
(まだ書いてるぞ!)

楽しき大パレードも終わり、
そろそろ帰りの時間が近づいてきた。
しかし、旅はまだ終わらない。
富山にいる間に調べたいことがある。

2004年に初めて富山を訪れたとき、
ちんどんコンクールの豪華本が出版されると聞いた。
ところが、予約を忘れてその本は買えずじまい。
昨年もコンクール会場で入手方法を尋ねてみたが
確たる返事はもらえず、忸怩たる思いが残った。

ところが昨夕、ひと筋の光が見えた。
CICビル5階のちんどんミュージアムに
かの本が展示されているのを見つけたのだ。
ということは!階下の市立図書館にもあるのではないか。
そしてあわよくば!中身も読めるのではないか。
(市民でもないのにずうずうしいぞ、という話は
 このさい脇においておく)

・・というわけで再度向かった駅前CICビル。
インフォメーションコーナーをたずね神妙な面持ちで
くだんの書籍、「チンドン太鼓が春を呼ぶ街」が
手に入らないかと切りだしてみる。
すると親切なお姉さんがわざわざ出版社に
電話をかけてくださったものの、休日で連絡はとれず。
しかし、ありがたいことに奥付のコピーを頂いた上に
ちゃっかり原著も見せてもらい大満足。
チラっと見ただけだが内容は大変な充実ぶりで、
ちんどんファンなら是非とも買わねばならない。

急いで土産を買って帰りのハヤウマに飛び乗り、
夕日と美しい海をながめながら心に強く誓う。
・・勇気をだして出版社に電話するぞ、オー!

富山よさらば、また来る日まで。
パカランぱからんパカラン・・・

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