漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

名勝負

2020年01月14日 | スポーツ
きのうの相撲、結び前の一番、
白鵬が敗れる波乱に湧き上がった歓声が少し静まった頃、

誰からともなく手拍子が起こり、
やがてそれが「エンド、エンド」のシュプレヒコールになった。

取組前ならこう云う事もあるが、
勝負がついてからの「四股名の大合唱」は珍しい。

実はこの勝負、
先場所、白鵬が遠藤を血祭りにあげた取組が伏線にある。

その勝負では、
白鵬が左から張って出て、

遠藤の顔が、
横を向きかけたその顔面へ右ひじを炸裂させた。

その衝撃で、遠藤は膝から崩れ落ち、

土俵下に降りてもからも、
タオルが真っ赤に染まるほどの鼻血があふれ出た。

普通こう云う勝負の次は闘志が萎える物だが、
この日の遠藤は冷静で、

立ち合い、少し右に動き、

先場所と同じように繰り出した
白鵬自慢の張り手による衝撃を和らげ、

続いて
下からぶつけて来た右ひじが上がりきる前に

白鵬の左腰に密着し、
ヒジ打ちを封印、そのまま深々と左を差すと、

さらばと白鵬が二度三度と繰り出す
いささか強引とも思える上手投げを外掛けでかわしつつ、

最後は切り返せば、
さすがの白鵬もたまらずそのまま裏返し、

ズッデンドウと背中から土俵に落ちた。

こんな白鵬の負け方は初めて見た。

相撲界が、
曙や小錦と云った大型力士全盛のころに、

小柄な体躯で、
綱を張っていた二代目若乃花が以前テレビで語っていた。

強豪と当たる前の晩は、
腕の一本もへし折られるのではないかと、

恐怖感が湧いて来るものですが、

その恐怖に打ち勝つためには、
こちらも「相手を殺してやる」ぐらいの気迫を奮い立たせねばならない、と。

遠藤関が、
「殺してやる」とまで思ったかどうかは知らないが、

少なくとも、
「恐怖感の克服」に成功していたことだけは確かなようだ。

いや、「相撲史に残る」名勝負でした。





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