朝鮮について知りたい

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タックルせえ!

2011年10月28日 | 帝国主義・植民地
久しぶりに全源治先生の自叙伝「タックルせえ!」を見た。

「石川です。皆さん、本日はお疲れさまでした。…みんな私のことを石川とか、武夫と呼んでくれとります。でも、そん名は私の名前ではなかです。私にはもう一つの名前、本当の名前があるとです。なぜなら、私は日本人ではなかとです」

全源治のその言葉を聞き、会場は静まりかえった。一瞬の間を置いて、全源治は続けた。

「…その名前は全源治といいます。…私は、これまで石川武夫っちゅう日本式の名前ば名乗ることによって、日本人のふりをしてきたとです。そうやって、みんなをだませてきたとです」

全源治はそう言うと深く頭を下げた。頭を下げながら、だましてきたのは目の前にいる仲間だけではなく、これまでのラグビー仲間全員だと思った。…そしてまた、だましてきたのは仲間だけでなく、この自分自身もだと思った。
… 自分は石川武夫ではなく、全源治なのだ。たとえ日本で生まれていようとも、まだ朝鮮語が満足に話せなくても、朝鮮人として生まれたという事実は変えられるものではない。そして、その朝鮮人という事実をもとに、ひとりの朝鮮人教師としてこれからも朝鮮人子弟にラグビーを教えていくのだ。若い生徒たちにラグビーを教えていく上で、自分自身に偽りがあったらどうしてラグビーを教えられようか。教育者と名乗れるだろうか。

たとえ目の前の日本人たちがこの自分をどう思おうとも、自分が全源治という九州朝高の教師、ラグビー部の監督であるということはかくしておくわけにはいかない。そう思いながら頭を下げている全員に向かって、大きな声が飛んだ。

「おお!そいは石川が生まれ変わったちゅうこつだな。これはめでたい。祝いだ祝い!」
「そーたい、そーたい、乾杯たい!乾杯せんといかん」

…そんな言葉を聞き、全源治はあっけに取られた。自分が朝鮮人であると宣言すれば、場は静まり、ところどころでヒソヒソ話がはじまるものだとばかり思っていた。中には朝鮮人は出ていけという罵声があるかもしれない。そんな言葉も受ける覚悟で、意を決して朝鮮人宣言をしたのだ。

…「乾杯!」
 「カンパーイ」

…ただ、うつむいた目からは涙があふれ出ていた。そして、みんなの大きな拍手の中、ただこらえることのできない涙を流し続けた。




2度目に読みましたが、本当に大作であり、名作だと思いました。何というか、「原点」というか。こういう民族教育の諸先輩方の教訓、経験を踏まえ、また日本の友人との素晴らしい関係を構築しつつ、今の場所で頑張ろうと思いました。


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