朝鮮について知りたい

朝鮮について知りたいこと、書いていきます。

社会主義強盛大国建設の現況

2010年10月14日 | 現代朝鮮、朝鮮半島
44年ぶりに開催された党代表者会議、そして朝鮮労働党創建65周年を迎え、朝鮮に歴史的転換とも言える現実的な変化、発展が起こっている歴史的な今日、チュチェ思想研究会で発表できることを光栄と思っています。
7月31日~9月25日にかけて、祖国を訪問しました。今回は大学生を引率しての祖国訪問となったので、研究活動が主な目的ではなかったのですが、社会主義強盛大国を建設している活気ある現場をほとんど見てまわることができました。
 その間、私が受けた印象を一言で言えば、「これまでの様相とは違った」ということです。私のこの印象を象徴してくれることばが「朝鮮は決心するとする!」という新しいスローガンです。今日は朝鮮のこのスローガンを、これまでの強盛大国建設過程を振り返りながら、そして強盛大国の建設と先軍政治、チュチェ思想との関連性を論じながら紐解いていきたいと思います。

1. 朝鮮社会主義強盛大国建設の現況

1) 社会主義強盛大国建設における2009年の位置づけ

 「我々は勝った。朝鮮の2009年は単純な勝利ではなく、偉大な勝利であった。世界は黎明から夜明けに、変革から理想の実現へと恐ろしくそびえ立つ朝鮮の前進速度に感嘆を禁じえなかった」 。
 この政論を見ても明らかなように、朝鮮は、2008年12月24日のチョルリマ製鋼連合企業所(カンソン)に対するキムジョンイル総書記の現地指導からの1年間を2010年に強盛大国の実体を作り、2012年にその宣布をするに足りる「偉大な勝利」と、確信をもって総括しました。

苦難を乗りこえ「強盛大国の大門」へと

振り返れば、1990年代後半に朝鮮が歩んだ「苦難の行軍」は、キムイルソン主席の逝去後、朝鮮に対するアメリカの圧力と干渉が最大限に達したばかりでなく、自然災害までもが重なった経済的に最もつらく、厳しい困難な道程でした。その後、1998年8月には初の人工衛星打上げに成功し、9月の朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第10期第1回会議にて、キムイルソン憲法が制定され、キムジョンイル総書記が国防委員会委員長に推戴され、朝鮮の新体制がスタートしました。
世界、特に北東アジアにおける朝鮮の地位が歴史的に転換していく境は、やはり2000年だと思われます。
「グローバリゼーション」というアメリカの世界戦略の煽りで、「制裁」と圧迫を受け、戦争状態の真只中に立たされていた朝鮮が、社会主義強盛大国を目指すには、アメリカの対朝鮮政策を転換させることが必須の条件でした。キムジョンイル総書記の中国訪問、ロシアのプーチン大統領の朝鮮訪問、金大中大統領との南北首脳会談と「6.15共同宣言」の採択など、朝鮮はかつての友邦であった中国、ロシアとの関係をより確固たるものとし、南北関係を対立から平和、統一へと主導的に推し進めました。これは、アメリカによる世界の一国、一極支配という構図を世界の多極化へと積極的に促す結果を生んだ重要な要因として作用しました。チョミョンロク国防委員会第1副委員長が総書記の特使としてアメリカを訪問し、クリントン大統領と会談した後には、大統領特使として当時アメリカの国務長官だったオルブライトが訪朝し、朝米関係改善のための共同コミュニケが発表されました。
朝鮮半島を中心とする北東アジアの情勢が大きく変わろうとしていたのです。この時期、「苦難の行軍」も集結します。
 そして、2002年4月には、キムイルソン主席の生誕90周年を迎え、これを機に朝鮮は植民地半世紀、分断半世紀の歴史を総決算し、民族の自主と統一、平和と繁栄の時代へと大きく躍進するロードマップを提示しました。「アリラン」が始まったのもちょうど、この年です。7月1日には経済建設へと邁進する重要な措置として経済管理を大きく改善しました。続いて2003年には小泉総理が訪朝し、朝日首脳会談が行われ、「朝日平壌宣言」も採択されました。
 このように「苦難の行軍」を経て、主導的に自主的な国際関係を樹立し、不幸と戦争の20世紀を乗りこえ、平和と自主、統一の21世紀を展望し、躍進するというのが、朝鮮の描いたシナリオでした。しかし、これはブッシュ政権の登場に伴い悪化された朝米関係により頓挫し、またも5年という歳月を費やすことになるのです。
 度重なる、国際的「制裁」の中、朝鮮は自力更生のスローガンを高く掲げ、核戦争という驚異の中で、国権を守り、経済建設を推し進めました。そしてやっと2007年に「強盛大国の黎明」を迎え、「苦難の行軍」を実質的に総括するのです。
 2007年9月にはキムイルソン主席の生誕100周年を迎える2012年には、「強盛大国の大門」を開くという趣旨の内容で、キムジョンイル総書記が発言しました。
 1980年代後半から90年代初めに、社会主義が挫折し、友邦と社会主義市場を失った中、また「グローバリゼーション」という名の「アメリカ化」によって帝国主義との直接的な対峙が激化する中、さらには自然災害との苦しい闘いの中で、社会主義を守り、強盛大国という大きな目標を掲げるのは容易ではありませんでした。しかし、それらの苦難を乗りこえたからこそ、人民が主人となり、人民の暮らす地で、自身の力、自身の技術、自身の資源で建設する「強盛大国」というロードマップに信念を持ち、それに向かって実践してこれたのです。それゆえに、2009年の総括、「偉大な勝利」という言葉は簡単にも、単純にも語る事はできないのです。

人民の理想が実現していった2009年

 さて、2009年は朝鮮の強盛大国建設にとってその実体を明らかにしていった年と言えます。強盛大国の実体とは、一言で人民の理想を実現したものと言えます。
「国力が強く、思想、政治、経済、軍事など全ての分野が発展し栄え、人民がうらやむことなく暮らす国」が社会主義強盛大国です。社会建設の発展は人民の理想が叶う方向に進まなくてはならない、強盛大国を開かれたといっても、それを判断するのはその生活を享受する人民でなくてはならないというのが、朝鮮がいっている社会主義強盛大国です。人民が豊かになり、栄え、またそのような人民の理想が実現した国家こそ強盛大国です。
そのような意味で、キムジョンイル総書記は、全ての成果の基準は人民にあり評価は人民に受けなければならないと述べました。
 2009年は、経済建設部門において飛躍と革新をもたらすための「150日戦闘」、「100日戦闘」が成果裏に推進されました。朝鮮では2009年を『「変」が起こる年』と表現してきたのですが、年末にはこれを「全てのことがおかしいくらいにうまくいく年」、「我々の理想が実現していく年」と変えて表現しています。
 10年の工事期間を3年に縮める「フィチョン速度」、国家宇宙開発展望計画に基づいた運搬ロケット「銀河2号」による人工衛星「光明星2号」と核実験の成功、CNCの開発とその大々的導入、元山青年発電所が電気創業を開始することによって生まれた「不夜城」、100%自国の原料で先進国並の大量生産を実現した三日浦特産物工場での生産開始、花火夜会での技術、マジョンホテルの改築、万寿台通りを中心にした高級マンション10万世代のモデルルームの完成と着工、大同江タイル工場、大同江果樹総合農場、チョウザメの養殖成功、そしてチュチェ鉄の大々的生産、自国の資源と技術に基づくマグネシャクリンカー生産システムの確立、ワールドカップの出場などなど機械工業から軽工業、スポーツまで全ての部門で画期的な成果を上げました。
 「150日戦闘」では計画を112%達成し、工業生産は08年度同期に比べ、1.2倍にのび、数百の建設対象が操業し改築が完了しました。つづく「100日戦闘」では50日間の全国的工業生産がやはり08年同期に比べ、1.3倍に伸びました。
 さらに、南興肥料連合企業所では、無煙炭からエチレン、肥料を生産する肥料ガス化対象工事において大高潮新群速度が生まれたと報じられました。
 このような現実の成果に由来し、朝鮮は「強盛大国の大門」を絶え間なく叩き、2012年にそれを開く確固たる担保をもって、2009年を「人民の理想が実現されていった年」、「強盛大国の実体を明らかにしていった年」と総括したのです。
 これは、それまで、強盛大国を部分ごとにモデル化して、提示してきた前年までとは性格を異にします。それまでは経済大国のモデルを部門ごとに提示し、それに向かって全ての生産を次第に正常化させていきましたが、2009年はCNC技術の導入を筆頭とする科学技術の発展が基礎となり、めざましい経済発展につながっているのです。
この全般的で上昇的な経済発展を根拠に、朝鮮は2009年を「労働新聞」の政論で次のように締めくくりました。
『我々の強行軍は朝鮮労働党の強盛大国建設のスローガンが決して嘘ではなく、この歴史的偉業は必ず実現されるであろうことを歴史に粛として宣言した。我々の民族的自尊心と勝利の自信は百倍となり「党が決心すると我らはする!」という朝鮮の強行軍信念と意地は現実で証明された。』

2) 朝鮮労働党創建65周年を迎えた2010年

 今回は25名の学生を引率し祖国を訪問しました。
 何よりも44年ぶりに催された朝鮮労働党代表者会議、そして朝鮮労働党65周年を高い政治的熱意と実績で迎えようとする人民たちの姿に感銘を受けました。

朝鮮労働党代表者会議の意義

 9月28日、歴史的な朝鮮労働党代表者会議が催されました。
 今回、代表者会議は44年ぶりの開催となったのですが、今回の会議について44年ぶりということを強調するというよりも、1980年に行われた党第6回大会と比べて考察してみるのが重要と思います。
 党6回大会では、第5回大会で提起された6ヵ年計画を完遂し、第2次7ヵ年計画を成果裏に推し進めている状況を総括し、チュチェ思想の要求に即して、社会を改造していくロードマップが提起されました。
 特に、全社会の革命化、労働階級化、インテリ化政策と人民経済のチュチェ化、現代化、科学化方針、社会主義経済建設の重要課題、統一問題、反帝自主の理念で国際社会との強調を強めるなどの方針は非常に重要な課題として提起されました。
 第6回大会で、キムイルソン主席は次のように述べています。「1980年代社会主義建設の基本課題は完全に勝利した社会主義社会に見合った頑丈な物質技術的土台を築き、人民の物質文化生活を画期的に高めることです。」
 この命題からも明らかなように、朝鮮は1980年の党大会において、社会主義経済大国を目指した積極的な措置をとってきました。全社会のチュチェ思想化、全人民の革命化、労働階級化、インテリ化も、人民経済のチュチェ化、現代化、科学化も社会主義の完全勝利を見据えた社会主義建設路線、思想、技術、文化の3大革命を推進する内容で提起されています。
 このような課題が、社会主義勢力の弱体化と一部社会主義国家の挫折、アメリカによる対朝鮮政策や「苦難の行軍」など、さまざまな状況の中で遂行されなかったのが、朝鮮の厳しい現実でした。
 この第6回大会の課題が30年経った2010年に、やっと解決されるメドがついたのです。
 そういった意味で今回、一般的には党大会に準ずる党代表者会議が催された意義が、朝鮮の革命と建設、チュチェ革命事業における新しい発展段階を展望したところにあるということができると、思います。

強盛大国の実体

 先ほども述べましたが、祖国は今「朝鮮は決心するとする!」という時代精神に満ち溢れています。はじめに「様相が違う」という言葉を使いましたが、それは私が訪問した全ての場所が、例外なく「強盛大国建設」と職場を直結させ、具体的な目標と勝算を持って建設に取り組んでいたということです。
例えば、興南(フンナム)肥料連合企業所では「肥料は米であり、米は即ち社会主義である」という、キムイルソン主席の言葉をそのまま実践するために、朝鮮人民が十分に食べられるだけの穀物を作るのに必要な肥料を70万トンとし、その目標を達成するために必要な設備が何で、解決しなければいけない技術的問題が何なのかを明確に示したあと、新たに建設する施設と人員の動員、そして生産の正常化、これらがすべてシステム化され、工場の全ての生産がコンピューターで管理されていました。無人工場を目指しシステムの改革を図る一方、酸素分離機や東海岸側では不足している無煙炭の代用資源を利用し、2011年を総括するときには70万トンを超える肥料を確実に生産できるように、生産過程が計画化され実践されていました。
 「強盛大国は生活的で現実的なスローガンだ」。これが私の率直な感想でした。
 今回は、「強盛大国の最前線」であるフィチョン発電所建設現場、「先軍」10景、11景である、ミゴッ(眉谷)共同農場、大同江果樹総合農場、2.8ビナロン連合企業所、キムイルソン総合大学について簡単にお話します。
 フィチョンは「千年を責任持ち、万年を保証しよう!」というスローガンを掲げ、現在30万kwの電気を生産する水力発電所建設現場です。そこでは、高さ100m、長さ555mの高台が建設されており、元来の技術と人員を動員して10年はかかると言われている工事を3年の間に完了する確固とした勝算を奇跡的にうち出した強盛大国の最前線です。この速度をさして、キムジョンイル総書記は「フィチョン速度」と名付けました。高台の周りはまだ山と川で、建設者の住宅もあります。その高台が完成するのが、今年の11月で、そこまでの高さに水位が登るのに一年かかります。来年のこの時期にはすでに壮大なダム風景となり、そこから30万kwもの電機が作られ、平壌を含め西海岸のほとんどの地方での電気事情が解決されると考えると、とてもいい時期に建設現場を見たと思っています。全国から志願者が今でも絶えず、食糧からトラックまでも支援物資として、どんどん送られてきました。建設者たちは全員口を揃えて、「楽しみにしていろ」と自信に溢れていました。壮観な景色を前に私も学生たちも驚きと感動を禁じえませんでした。
 「先軍」10景にあたる「ミゴッ共同農場」と11景の「大同江果樹総合農場」もまた壮観でした。ミゴッ共同農場は朝鮮の米生産におけるモデルでもありますが、2007年には1ヘクタールあたり8万トンを、2008年には9万トン、2009年に10万800トンを生産しました。朝鮮における米の平均生産高が4~5万トンなので、とても高い水準だといえます。特に、私が去年祖国を訪問したときに青年作業班の女性が「今年(2009年)こそは10万トンを生産するという総書記との約束を守る」と言っていたので、その目標が達成され、総書記がミゴッに現地指導をしたというニュースは感銘を与えてくれました。今年も会い、学生たちと一緒に焼肉を食べました。先軍10景と呼ばれるのは、「ミゴッの黄金畑」と呼ばれる秋の風景です。
 大同江果樹総合農場は、キムジョンイル総書記の提起により、2008年11月22日から土地整理が行われ2009年8月25日には初収穫をしたりんごを中心とした果物畑です。農場建設の第1段階は昨年末までで、土地整理と住宅建設が行われ、62トンのりんごが収穫されました。今年は第2段階に入り、大規模な土地整理と試験畑の建設が行われ1200トンの収穫高を予定しています。現在、りんご21種で、これから100種に伸ばし、朝鮮の風土に一番合うものを厳選していくとのことでした。これから、2012年までには、ヘクタールあたり50トン年間35万トン生産を展望しており、りんごの収穫から加工、積荷、出荷までの工程を完成する予定です。隣接して蜂蜜工場も建設し、りんごだけではなく、総合的な農場としての姿を築き上げるそうです。展望台から見下ろす壮大なりんご畑は先軍11景と呼ばれています。
 さて、2.8ビナロン連合企業所の説明に入ります。今回はタイミングがよく、キムジョンイル総書記の咸鏡南道咸興(ハムン)地区に対する集中的な現地指導の直後に2.8ビナロン連合企業所を含めた4カ所を見てまわることができました。ビナロン(学名はポリビニール系アルコール繊維)は石灰石と無煙炭から得たカーバイトを原料とするポリビニールアルコールによる合成繊維で李升基博士が発明しました。キムイルソン主席の指導によって1960年代に朝鮮で工業化されました。原料から生産までをすべて自身の力で作られることから、「チュチェ繊維」とも呼ばれます。 この工場では1994年以降、16年もの間、生産が正常化できていませんでした。現在、16年ぶりに生産が正常化され、生産工程もコンピューターによって管理され現代化されました。朝鮮人民は、今の朝鮮の現実をチュチェ鉄、チュチェ繊維、チュチェ肥料、チュチェタイル(大同江タイル工場)が溢れ出てくると、自信に満ちて言ったりもしています。
 キムイルソン総合大学に新しく造られた電子図書館とプールも参観し、大学生と懇談会もしました。一言で感激しました。このような大学設備があったらなと羨んだりもしましたが、これこそ強盛大国の大学であると思いました。図書館は5階建てで全ての図書がPDF化され、学生たちはIDカードを持っていつでも閲覧することができます。面談室や講義室、多目的ホールなどの設備も充実され、学生たちが勉学に励めるよう努めていました。図書館からプールまですべての大学設備が世界の最先端水準で揃えられていっているキムイルソン総合大学を見て、強盛大国をになっていく次世代も申し分なく準備されていると、安心しました。図書館が建設されてキムジョンイル総書記が大学に送った手紙には次のように書かれています。「自分の地に足をつけ、目は世界を見ろ。奮発さらに奮発して偉大な党、キムイルソン朝鮮を世界が羨むようにしろ!」と。あくまでも自国の人民のために奮発して、レベルは世界の最先端を目指す。ここに現在の朝鮮の志向があり、目標が設定されているという根拠があり、それに向かって邁進する姿が現れているのだと思います。
 このように強盛大国の実体は全ての生産部門において、着々と見出されてきており、朝鮮は自身の力、自国の原料と技術を世界最高の水準で準備し、自国の人民のために奉仕するまさに社会主義大国へと確信に満ちて、前進していました。

「朝鮮は決心するとする!」
 
 2009年にチョルリマ製鋼連合企業所は全国の労働階級に「連帯的革新」を促す手紙を送りました。手紙は経済強国建設の突破口を開くためには、まず鉄鋼生産で革新を起こさなければならないと指摘し、経済主要部門に切実に必要な鉄鋼は責任をもって供給すると、自身の強い決意を表明しました。手紙の中では経済各部門に対して鉄鋼部門との「連帯的革新」を起こすことを訴え、例として、電力部門に対しては、「電気だけ充分に保障されるならわれわれは現在の何倍もの鉄鋼を生産できる」と電力の増産を呼びかけたのです。
 今の朝鮮はこの「連帯的革新」が、現実化されていっている課程にあります。
 フィチョン発電所の完成に伴う電気事情の解消、電機部門の飛躍的発展によるチュチェ鉄の生産発展、鉄鋼部門から重工業、軽工業、住宅問題まで全ての経済的部門において革新が促進されていく。これが現在2010年の朝鮮の姿です。
 ビナロンを生産すると、それを咸興から平壌へと移送し、紡績工場にて加工し、人民生活の向上に還元する。肥料問題が解決されると、それを全国の農場に分配し、肥料を持って必要な米を生産し、食糧問題を解決する。タイルをすべて自国の原料と燃料、技術で作り、これをもって立派な家を建てる。このように全ての経済部門が実質的な人民生活の向上に還元されるよう、再設計され、その流れが正常化されているのが、今の朝鮮なのです。
 朝鮮は今年、共同社説において、2010年を「もう一度軽工業と農業に拍車を加える」年とし、人民生活を最大限に豊かにする今年を大変革の年、人民の幸福と理想が全面的に実現される繁栄の年とすることを提起しました。
 朝鮮労働党の創建65周年を自身の事業実績を持って迎えようという朝鮮人民の奮発は、今、「朝鮮は決心するとする」という偉大な時代精神を産んでいます。
 このような姿を見ながら、今年の7月キムジョンイル総書記は次のように述べています。『朝鮮はこのように決心するとする国です。昨日は人民軍隊において「党が決心すると我らはする!」というスローガンが出ましたが、今日はまた、このように「朝鮮は決心するとする」という党の素晴らしいスローガンが出ました。』
 「党が決心すると我らはする!」というスローガンから、「朝鮮は決心するとする」というスローガンへ。これが現在の朝鮮の社会主義強盛大国建設の現段階だと言えます。
2009年の締めの部分で『「党が決心すると我らはする!」という朝鮮の強行軍信念と意地は現実で証明された』という文章を引用しました。もともと「党が決心すると我らはする!」というスローガンは朝鮮人民軍が打ち出したスローガンです。
このスローガンが、現在朝鮮人民の大多数にまで拡散され、今では党と軍隊のみならず、全ての朝鮮人民の一心団結した姿として現れているのが「朝鮮は決心するとする」というスローガンです。人民の望むままの目標が、世界水準で設定され、人民自身の力をもってその目標を達成していく。ここに朝鮮の強さがあり、これまでとは違う新しい高い段階での一心団結した姿があるのだと、私は思います。
この新しい高い段階の一心団結が確認されたのが、44年ぶりに開催された党代表者会議であり、朝鮮労働党の創建65周年でした。


2.社会主義強盛大国建設の現況は「先軍」の成果、思想の勝利

 これまで、社会主義強盛大国建設の現況についてお話してきましたが、次に強盛大国という現実的勝利が何によってもたらされたのか、一言で、強盛大国を建設してこられた根拠について述べたいと思います。
 朝鮮がめまぐるしく変わってきた国際情勢の中で、社会主義を守り、成果的に強盛大国を建設してこられた所以は、ひとえに先軍政治とその思想的基礎としてのチュチェ思想にあります。

1) 先軍政治の成果

先軍政治の全面的具現

 みなさんもご存知の通り、朝鮮において先軍政治が全面的に具現化されたのは、1990年代の中頃からです。帝国主義勢力の干渉と圧力が強まる中、社会主義と人民の自主性を守りながら、その上で強盛大国をも建設していける政治は先軍政治をおいてはありません。
 先軍政治は先軍思想に立脚した政治方式です。社会主義における軍事先行の原則、先軍後労の原則を具現した政治方式が先軍政治です。社会主義革命と建設を推し進める朝鮮にとっては、帝国主義が存在する限り恒久的な政治方式となります。
 先軍思想につきましては、いずれお話しする機会を待って、今日は社会主義の主体を発展させるという側面から先軍政治を見て述べさせていただきます。
 先軍政治は軍事を第1国事とし、革命軍隊を主力に祖国と革命、社会主義を擁護し、なおかつ全般的な社会主義建設を力強く推し進めていく政治方式を言います。
 人間にとって自主性が命のように、国家にとっても自主権は命です。朝鮮は民族受難の100年史からこのことをどの国よりも深く認識しています。
 先軍政治は何よりもまず、社会主義国家を守り、人民の自主権を擁護するために軍事を第1の国事とし、政治を営んでいます。
 先軍政治は次に、朝鮮人民軍を革命の主力とし、社会主義革命と建設を全般的に推し進める政治方式です。
 規律性、組織性がもっとも強固な軍を中核部隊とし、社会主義を守り、発展させていく模範と位置づける。特に、「苦難の行軍」のような難しい状況の中で、どの階級、階層よりも、革命的な軍が祖国擁護だけではなく、社会主義建設もするというのが、先軍の核心部分です。
 社会主義の主体は領袖と党、大衆の一体としての自主的な人民大衆です。この主体を強化発展させるという場合に、どのようなものが必要なのか。人間が自主性、創造性、意識性を持った社会的存在であることから、社会主義の主体である人民大衆もやはり、自主性創造性、意識性をもった社会的存在です。人間が自主的で創造的で意識的な存在であるからこそ、全ての人間行動、人民大衆の活動は自主的で創造的で意識的な集団的活動になります。社会主義の主体を発展させるというばあい、それは人民大衆の思想意識と創造的能力が強化され、社会的協力体制が強まることをさします。
 先軍政治によって人民大衆の思想意識水準、創造的能力、知的水準、社会的協力関係、一心団結がどのように強まっていったかをみることにします。

革命的軍人精神の一般化

先軍政治が強盛大国を建設してこられた根拠となるのは、第1にこれが全社会に革命的軍人精神を一般化する政治だからです。
先軍政治は、人民軍が全てを解決する政治方式ではありません。人民軍を主力部隊、模範として建てることによって、全ての人民が一心団結し祖国を守り、建設にも邁進するのが先軍政治です。
1990年代中頃、帝国主義の圧力によって朝鮮の社会主義建設に難関がぶつかりました。まさにこのような時期、キムジョンイル総書記は社会主義を守り、社会主義建設における重要部門にて突破口をひらくことをすべて人民軍に任せられました。
特に、アンビョン青年発電所を建設していた人民軍などは「最高司令官の命令を貫徹する前には祖国の青い空を仰がない。」、「党が決心すると我らはする!」といったスローガンをかかげ、苦難を乗り越えていきました。
このようなことから、1997年3月17日には、キムジョンイル総書記が「革命的軍人精神を見習おう」という労作を発表しています。
革命的軍人精神は革命の領袖を決死擁護する精神であり、党の要求を決死貫徹する革命的な自己犠牲精神です。
帝国主義との熾烈な争いの中で、社会主義を固守し、革命と建設を推し進めるためには、労働階級も革命的軍人精神で武装しなければならず、そうしてこそ自身の階級的本懐と使命を果たすことができます。革命の中核部隊である軍の思想的水準まで全ての人民の思想意識をレベルアップさせるところに先軍の狙いがあるわけです。
この革命的軍人精神をそのまま表しているスローガンがまさに、2009年の総括でくくられた言葉である、「党が決心すると我らはする!」というスローガンなのです。
このように先軍政治によって革命主体の思想意識が強化され、全人民の思想意識が90年代までには軍においてのみ普及されていた「党が決心すると我らはする!」という意識水準にまで高まったというところに、強盛大国へと進むことのできる大きな根拠があるわけです。
それが今日には、「朝鮮は決心するとする」という新しいスローガンに変わったというところにはこのような所以があるのです。

最先端の科学技術

先軍政治が強盛大国を建設してこられた根拠となるのは、第2に最先端の科学技術で国家が武装することによって、経済発展も促す政治だからです。
国防工業を発展させ、国防力を強化し、国際関係の安定を図ってこそ、経済発展を安心して行われます。平和を維持しなければ積極的な経済建設に取り組むことはできません。そういう意味で、アメリカの核脅威から自信を守る抑止力を持ったことはとても大きいと思われます。
もちろん、戦車やミサイルなど先端技術を開発しなくてはならず、それらが民需に転用されるとさらなる経済効果を期待できる、ということをいうこともできますが、本来的な経済効果から見ると浪費でしかありません。
しかし、現実的にアメリカと対峙している状況の中では、国防に力を当てながら最先端技術の開発促す方向を取らざるをえないでしょう。
朝鮮半島の非核化を実現する上で欠かせない先軍は、平和と自主を構築する政治であり、平和的な交流に支えられた経済建設を担保します。
その上で、国防兵器のために使う先端技術開発のみならず、民需のために使う技術も同時に開発していっているのが朝鮮の現状です。
そういった意味で、現在朝鮮では「銃とCNCは守護と創造の二つの戦線で」あり、柱であるといっているのです。

人民大衆の一心団結

先軍政治が強盛大国を建設してこられた根拠となるのは、第3にこれが革命の主体を強化させる政治だからです。
社会主義建設にとって革命の主体を強化することは何よりも大事な問題です。
先軍政治は、司令官と軍の関係を一般化させようすいばかりではありません。先軍政治によって人民の実質的な生活に何も還元されないのならば、それはスローガン上での自主でしかなくなります。
先ほども申し上げたとおり、軍は革命と建設の一番緊要な難しい部分を任されます。
経済発展にとって必ず解決されなければならない問題、発電所から鉱山部門など人民にとって最も要求されるものを追求し経済建設を推し進めるのが郡です。
このようなことから、人民は軍隊を救け、軍隊は人民を救ける「軍民一致」という新しい言葉が朝鮮に飛び交うようになったのです。軍の人民のための含むとは領袖、司令官の命令によるものであり、その部門を解決することによって、領袖を中心とした一心団結がより強くなっていくのです。


2) チュチェ思想の勝利 ―むすびにかえて―

 これまで、朝鮮における社会主義強盛大国建設の現況と題しましてお話をさせていただきました。
 今回、朝鮮を訪問してやはりとおもったことは、朝鮮がチュチェ思想のそこくであるということです。
 キムジョンイル総書記は次のように述べています。「この空のしたに、この地の上にチュチェ思想が全面的に具現された社会主義強盛大国を建設し民族の尊厳を全世界に轟かそうというのが党の確固とした決心であり、わが軍隊と人民の共通する熱望です。」
 社会主義強盛大国とは結局、政治と軍事、経済と文化など社会生活のすべての部分でチュチェ思想が勝利し、人民の理想が実現される国家です。
 自主の思想であるチュチェ思想を持っているが故に朝鮮は先軍をしました。
 朝鮮が政治における自主、国防における自衛を実現していく上で、自立的民族経済を中心とする経済建設によって担保されます。
 これから、朝鮮は「朝鮮は決心するとする」というスローガンをより高く掲げ、チュチェ鉄、チュチェ繊維、チュチェ肥料に代表されるチュチェ思想の勝利を現実のものとして納めていくでしょう。