第一次世界大戦の勝者である、英米仏は戦犯のドイツを思いのままに支配しようとし、莫大な賠償金を課した。それは、敗戦国の返済能力をはるかに超えるものであり、米は返済を履行させるために、さらに貸付を行うなど、独の負債は減ることはなく、理想的な憲法のワイマール憲法ですら、戦勝国から押し付けられたものというイメージが国民にはあった。
チャーチルは、この歴史の流れに対し
「また、近代戦争の経費の埋め合わせをするだけの、年貢を納めることができる敗戦国民や社会はあり得ないということを、その国民に理解させることができなかったためであった。
国民大衆は、ごく簡単な経済的事実さえ理解できないほど無知に陥ったままであったし、彼らの指導者達は、選挙の投票を求めるため、あえて大衆の誤りを正そうとしなかった」
という、見解をしめしている。
賠償支払いの影響で、無鉄砲な紙幣増発を行ったドイツでは、1923年以降インフレーションが暴発する。
こうした、ドイツ国内の混乱の中、ヒトラーの国家社会主義を受け入れる心理的素地がドイツ国内に生まれ、世界史上最悪の戦争に繋がっていく。
ドイツの処刑場での、子供も含めた、六、七百万の大量殺人は、その恐怖において、ジンキスカンの暴虐無尽の虐殺をもとるにたりないものであるが、ファシズムや大日本帝国の殺戮は、連合国による二十倍の報復をうけることに結果となり、悲劇は原爆で頂点を迎える。
チャーチルの自著を書く目的に文章は、まさしく名文である。
「私の目的は、この時期に生き、そして行動した人間の一人として、第二次世界大戦の悲劇はいかに容易に防止できたか、邪悪なるものの悪意が、いかに有徳なるものの弱さによって強められたか、民主主義国家の構造と習慣は、さらに一段と大きな組織に結合されない限り、いかに弱い大衆に安全感をあたえることのできる、持久力と確信の絶対要素を欠くものであるか、また、自己保存という問題においてさえ、いかなる政策も同時に十年、あるいは十五年のあいだ持続できるものでないことを示すことにある。
慎重と自制の助言が、いかに致命的な危機となる主因となる可能性があるか、あるいは、安全と平穏な生活のために採用された中道が、逆にいかに災害の中心点と直接結びつくものであるかを、われわれは知るであろう。多数の国家がその国政の盛衰に関係なく、長年にわたって国際的行動の大道を進むことが、いかに絶対的な必要事であるかを、われわれは知るであろう」
一次大戦終戦の1919年から、第二次世界大戦開戦の1939年までわずか二十年。その間に政権をとり、経済軍備を回復させ、ポーランドに侵攻した、恐怖の天才ヒトラー。
民主主義は完璧なシステムではないし、2010年の今も経済と政治の混乱はつづいている。
我々地球人が進むべき、大道とはなんだろうか、真剣に考えさせられる名著である。
第二次世界大戦1
著者:W・S・チャーチル
訳者:佐藤亮一
河出文庫、新装版2刷
から、引用している個所があります。
チャーチルは、この歴史の流れに対し
「また、近代戦争の経費の埋め合わせをするだけの、年貢を納めることができる敗戦国民や社会はあり得ないということを、その国民に理解させることができなかったためであった。
国民大衆は、ごく簡単な経済的事実さえ理解できないほど無知に陥ったままであったし、彼らの指導者達は、選挙の投票を求めるため、あえて大衆の誤りを正そうとしなかった」
という、見解をしめしている。
賠償支払いの影響で、無鉄砲な紙幣増発を行ったドイツでは、1923年以降インフレーションが暴発する。
こうした、ドイツ国内の混乱の中、ヒトラーの国家社会主義を受け入れる心理的素地がドイツ国内に生まれ、世界史上最悪の戦争に繋がっていく。
ドイツの処刑場での、子供も含めた、六、七百万の大量殺人は、その恐怖において、ジンキスカンの暴虐無尽の虐殺をもとるにたりないものであるが、ファシズムや大日本帝国の殺戮は、連合国による二十倍の報復をうけることに結果となり、悲劇は原爆で頂点を迎える。
チャーチルの自著を書く目的に文章は、まさしく名文である。
「私の目的は、この時期に生き、そして行動した人間の一人として、第二次世界大戦の悲劇はいかに容易に防止できたか、邪悪なるものの悪意が、いかに有徳なるものの弱さによって強められたか、民主主義国家の構造と習慣は、さらに一段と大きな組織に結合されない限り、いかに弱い大衆に安全感をあたえることのできる、持久力と確信の絶対要素を欠くものであるか、また、自己保存という問題においてさえ、いかなる政策も同時に十年、あるいは十五年のあいだ持続できるものでないことを示すことにある。
慎重と自制の助言が、いかに致命的な危機となる主因となる可能性があるか、あるいは、安全と平穏な生活のために採用された中道が、逆にいかに災害の中心点と直接結びつくものであるかを、われわれは知るであろう。多数の国家がその国政の盛衰に関係なく、長年にわたって国際的行動の大道を進むことが、いかに絶対的な必要事であるかを、われわれは知るであろう」
一次大戦終戦の1919年から、第二次世界大戦開戦の1939年までわずか二十年。その間に政権をとり、経済軍備を回復させ、ポーランドに侵攻した、恐怖の天才ヒトラー。
民主主義は完璧なシステムではないし、2010年の今も経済と政治の混乱はつづいている。
我々地球人が進むべき、大道とはなんだろうか、真剣に考えさせられる名著である。
第二次世界大戦1
著者:W・S・チャーチル
訳者:佐藤亮一
河出文庫、新装版2刷
から、引用している個所があります。