トーキング・マイノリティ

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足立美術館展

2021-06-06 21:40:08 | 展示会鑑賞

 宮城県美術館の特別展「足立美術館横山大観竹内栖鳳、華やかなる名品たち」を昨日見てきた。今回の特別展で初めて私は島根県に足立美術館があることを知ったが、展示された日本画は秀作ぞろいだった。美術館HPでは特別展をこう紹介している。

足立美術館は、島根県安来市出身の実業家、足立全康氏が長年にわたって収集してきた美術品をもとに、1970(昭和45)年に開館しました。優れた近代日本画を所蔵する美術館として広く知られ、中でも横山大観のコレクションは、初期から晩年に至るまで120点にも及びます。
 また、出雲の豊かな自然を借景にした広大な日本庭園を有し、庭園の美と名品の美を共に味わうことのできる美術館として、国内外の来館者を魅了し続けています。

 本展では、足立美術館の数あるコレクションの中から、近代日本画の二大中心地である東京と京都の画壇で活躍した画家35人の作品66点を展示します。
「東の大観、西の栖鳳」と謳われたように、東京画壇の中核として活躍した横山大観、京都画壇を牽引した竹内栖鳳をはじめ、上村松園川合玉堂安田靫彦榊原紫峰など、それぞれの土地の空気を吸った画家たちは、個性を開花させ、数々の清新な表現を生み出しました。
 この機会に足立美術館の珠玉のコレクションを、近代日本画の精華とともにお愉しみください。



 横山大観のコレクションで知られる美術館ゆえか大観の作品は13点あり、画家たちの中で最も多かった。最初に展示されていたのは教科書にも載っている「無我」、懐かしい~と思った来館者も多かっただろうが、意外に小さめの絵だった。



 №4「十六羅漢」も大観の作品。これまで仏画に描かれた十六羅漢は日本人的な平たい顔族に描かれていたが、さすが明治になるとインド人風の濃い顔立ちになっている。もしかすると、釈迦の容貌も深目隆鼻だったかもしれない。



 今回の特別展で私が最も見たかったのは、安田靫彦王昭君(№30)。かなり前、何かの中国の歴史シリーズに載っていたが、描いたのが日本人だったことはずっと後で知った。美しいが、よく見ると確かに日本画的な美人だった。



 菱田春草の「猫梅」(№15)は、猫キチに堪らないだろう。猫に梅の組み合わせはミスマッチに感じたが、まるで写真を思わせる猫のモフモフ感はさすがプロ。犬を描いた画も何点かあったが、私的にはこの作品の方が印象的だった。



 竹内栖鳳という画家は今回初めて知ったが、「獅子」(№38)は面白い。ライオンが描かれている日本画は初めて見たし、たぶんあまりない作品だろう。竹内は渡英して実際にライオンを見ていたそうだ。

 鏑木清方の作品も2点あった。鏑木清方といっても、現代では半ば忘れられた美人画家かもしれないが、父が鏑木清方の画集を購入していたため、名は知っていた。
 むしろ現代では、鏑木と並び称された女性画家・上村松園の方が知られているかもしれない。女性画家の珍しくない現代と違い松園は1875(明治)8年生まれ、明治は女が画家を志すことなど認められない時代だった。1948(昭和23)年、松園は女性として初めて文化勲章を受章している。



 松園をモデルとした宮尾登美子の小説『序の舞』は映画化ТVドラマ化されており、映画版のコピー、「男はんには分かりません……」は当時話題になったので、憶えている中高年世代もいるはず。
 松園の作品は2点展示され、上はそのひとつ「待月」(№48)。気品溢れる美しい日本画だが、個性的な前衛芸術が持てはやされる現代では古風な印象がある。

 とかくコロナ禍で重苦しい日が続く中、第一級の日本画が見られ、心が洗われる思いになれて嬉しい。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も足立美術館楽しめました (珈琲)
2021-06-11 15:57:03
私も5年前に島根県に足立美術館を訪問しました。
一代で富を蓄え、こんな立派なコレクションをつくったことにも感銘を受けました。
このブログから数回に分けて、記事を書きました。
http://rootakashi.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/1-a8e5.html
コロナなどのなか、良い旅だったのですね。私も、また旅しようと思います。
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Re:私も足立美術館楽しめました (mugi)
2021-06-12 22:58:12
>珈琲さん、

 直に足立美術館を訪問されたとは羨ましい。私の場合、地元・宮城県美術館の特別展で足立美術館から貸し出された日本画を鑑賞しました。そのため旅はしておりません。

 リンクされた記事を拝見しましたが、創立者・足立全康は尋常小学校を卒業後に働き始め、一代で財を成したとは大した人物です。足立美術館は庭園の素晴らしさでも定評があるそうで、いつか行ってみたいものです。
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申し訳ございません (珈琲)
2021-06-13 08:01:50
ついつい記事のタイトルから、足立美術館のなつかしい思い出がよみがえり、冒頭の地元美術館での鑑賞というパッセージを読み飛ばしてしまいました。申し訳ございませんでした。老化現象です。
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Re:申し訳ございません (mugi)
2021-06-13 21:29:55
>珈琲さん、

 どうか、お気になさらずに。読み飛ばしなら私もあるし、読んだばかりの作品でも印象の薄い登場人物を忘れたこともあります。これも老化現象でしょう。
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