Mr.& Mrs.スミス 2005年【米】ダグ・リーマン監督

　ブラピとアンジェリーナ・ジョリーという、ハリウッドのトップスター共演のアクションムービー。アクションものはまず見ない私でも結構楽しめた。やはり主役２人がカッコいいし、絵になるので映画栄えするのだ。

　腕利きの殺し屋同士が出会って恋に落ち、互いの正体を知らぬまま結婚したという映画は他にも『女と男の名誉』があった。この映画はジャック・ニコルソンとキャサリン・ターナー共演。しかし「Mr.～」と違い、あくまで組織に忠実に従った男が、愛を優先した女を殺害する最後だった。ゴルゴ１３でも、凄腕の女殺し屋が正体を知りつつゴルゴを愛する『海に向かうエバ』という作品がある。もちろんゴルゴは結婚などしないし、女を射殺して終わりだ。
　しかし、ブラピでは非情な殺し屋役は無理だろうし、『ローズ家の戦争』ばりに家で派手に撃ち合い殴り合いをしても、「やはり僕には殺せない」と先に敗北 宣言するのも彼。本心では「殺せない」のは女も同じだが、口先では強がりを言っているのは時代もあるのだろうか。殺し屋としても男が60人代に対し、女の 方が３百人を超す“成果”を挙げている。この殺し屋カップルは彼らを追う組織を出し抜いて、改めて夫婦生活をやり直すラストになっているが、これでは夫は 妻の尻に敷かれそうだ。

　それにしても、映画や小説では女の殺し屋がよく登場するが、実際にはどうなのだろう？数は少ないにせよ、実力では男に劣らないのだろうか。来年公開予定 のスピルバーグ監督映画『ミュンヘン』の原作本『標的は１１人』を以前読んだ事があるが、著者ジョージ・ジョナスは殺し屋としての女の腕は決して侮れない と書いていた。女と見くびったばかりに命を落とした者もいるそうだが、元モサドの精鋭なので説得力がある。旧約聖書にも美しい未亡人ユディトに鼻の下を伸ばして、寝首を掻かれた将軍の話がある。この未亡人、じつは刺客だったのだ。