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面白く、そして下らない

私は批判をして何かを為した気になっている大衆の一人に過ぎないが、何か少しでも波紋を起こす小石になれればと書いている。

引きこもりに必要な社会支援

2019-12-18 23:42:14 | 政治
3つも記事を引用するので長くなってしまう。だが、社会問題になっている「引きこもり」の問題を特集した良い記事だと思うので全文を引用する。

西日本新聞は「かんぽ生命」の問題など社会問題に鋭く切り込んでいる。

~~引用ここから~~
業者に託した息子が孤独死…母の後悔 引きこもり“引き出し屋”の実態 2019/12/16(西日本新聞)

【扉の向こう 引きこもり支援の今 (上)】

 冷え込み厳しい冬の日。関東に住む女性(80)の家に、「引きこもり自立支援」をうたう民間業者がやってきた。同居する長男は当時40代半ば。仕事を辞めて部屋に引きこもるようになり、既に20年が過ぎていた。

 スタッフ5人が部屋に入って30分ほど後、長男は出てきた。「すごく泣きました」とスタッフ。女性は着替えを詰めたスーツケースを持たせ、「頑張ってね」と声を掛けた。長男はうつむき、無言で家を出て行った。

 女性が最後に見た長男の姿だった。

   *    *

 業者を知ったのは2017年1月。ホームページの「必ず自立させます」という言葉にひかれ、東京都内の本部に相談に行くと、スタッフに「早い対応が必要」と促された。提示された契約金は900万円超。自宅を売る段取りをして準備した。

 長男は都内の施設に入り、その後、提携する熊本県内の研修所に移った。ほどなくして、業者から「熊本で就職した」と報告を受けた。自立を妨げないようにと、女性は連絡を控えていた。

 今春になって突然、業者から電話が入った。「息子さんが亡くなりました」

   *    *

 女性は警察署で痩せこけた長男の遺体と対面した。ひげが数十センチ伸びて、脚は骨と皮ばかりになっていた。遺体が見つかったアパートの室内には、ごみ袋やペットボトルが散乱し、冷蔵庫は空。「元気で仕事をしていますか」とつづった女性の手紙が、血の付いた状態で残されていた。

 死亡推定日は1~2週間前。「食べるものがなく、餓死したのでしょうか。一体、どうして…」

 アパートにあった離職票や金融機関の口座を調べると、17年12月に介護施設に就職し、翌年7月に退職。それから8カ月ほどし、家賃や電気料金の引き落としが滞っていた。

 「業者が丁寧にフォローしてくれていれば、こんなことにならなかったのでは」。熊本に移る前、女性は業者に400万円近くを追加で支払っていた。その際、研修終了後も月2回、長男と面談すると約束してくれたはずだった。

 女性が経緯を尋ねても、業者側から詳しい説明はない。

「引き出し屋」頼るしか 規制なく「被害」次々

 九州南部出身の30代女性は、「あの日」を今も夢に見るという。「屈辱的で怖くてたまりませんでした」

 1年ほど前、実家に引きこもっていた女性の元に「自立支援」をうたう業者が訪ねてきた。「帰って」。女性がそう懇願しても、スタッフは鍵を壊し、部屋に入ってきた。

 研修所への入所を求め、居座ること7時間。「もう決まっている」。複数の男性スタッフから両手両足をつかまれ、無理やり車に乗せられたという。向かった先は、アパートで孤独死した男性が入所していたのと同じ研修所だ。

 過去に入所していた30代男性は、1日5時間の農作業をさせられ、「作業体験代」名目で1日千円を受け取った。それ以外は監視カメラ付きの部屋で過ごした。「低賃金の労働をさせられました。ほかに自立のプログラムはほとんどありませんでした」

 研修所がある地元の住民や役場には、過去に何度も入所者が助けを求めた。消防などによると、昨年2月、19歳の男性入所者が近くの倉庫で首をつっているのが見つかっている。

   *    *

 研修所には、東京に拠点を置く業者と契約した入所者が送り込まれている。取材を申し込むと「一切応じられない」と回答された。

 スタッフの一人が非公式に記者と会い、説明した。「うちに来る人は、家庭内暴力や親の金の使い込みなどの問題を抱え、親も手に負えなくなっている」

 引きこもりが長期化すると、家族は接し方が分からなくなる。本人は「誰も理解してくれない」と意地になる。中には親を奴隷扱いし、事件化が懸念されるケースもあるという。「本人のため、少し強引でも家庭から離した方がいい」

 「暴力的な連れ出し」は否定した。興奮した入所者が暴れると危ないため、制止することはあっても、故意の暴力はないという。農作業は賃金の発生しない生活訓練であり、自由参加。説明には入所経験者の言い分と食い違う点もあった。

 なぜ、契約金が数百万円単位に上るのか。24時間体制で職員を配置し、夜勤手当などのコストがかかるからー。スタッフはそう説明し、付け加えた。

 「行政の相談窓口は、部屋を出られない引きこもりには対応できない。切迫した親にとって、私たち以外に頼る選択肢がない」

   *    *

 厚生労働省の調査(昨年2月)によると、引きこもりの自立支援を掲げる入居型施設は全国51カ所に上る。その一部が最近、当事者を強引に連れ出し、法外な契約金を求めているとして「引き出し屋」と呼ばれ、問題視されている。

 支援に携わるNPO法人でつくる「共同生活型自立支援機構」によると、入居型の費用は通常、月額15万~25万円が相場という。消費者庁には高額な契約金を巡り年間20件ほどの相談が寄せられ、各地の「ひきこもり地域支援センター」にも相談が相次いでいる。

 業者を規制する法制度や運営基準はなく、国も現状を把握できていない。一部の悪質な業者が野放しになっており、「支援に携わる団体全てが疑いをもたれ、迷惑だ」(機構幹部)。

 一方で、ほかに頼る先もなく、孤立した親と子がいることを物語る。あるNPO関係者は言う。「大金を払ってでも、何とかしてほしいと願う親がいる。業者だけを一概にけしからんというのは違う気がする」

     ××

 内閣府の推計によると、引きこもりの40~64歳は61万3千人。80代の親が50代の子と共に困窮する「8050問題」が深刻化し、「引き出し屋」と呼ばれる業者も出現している。引きこもり支援はどうあるべきか。九州の現場で考える。
 (山下真が担当します)
~~引用ここまで~~


~~引用ここから~~
親の遺体を放置、全国で相次ぐ 引きこもりの声なきSOS…支えるには 2019/12/16(西日本新聞)

【扉の向こう 引きこもり支援の今 (中)】

 細く険しい坂道沿いに立つ古いアパートの一室は今、空き部屋となっていた。

 昨年8月、長崎市の住宅密集地で異臭騒ぎがあった。アパート2階の部屋のわずかに開いた窓から、鼻につく臭いが漏れ出す。住民の通報で警察官が駆け付けると、部屋の中で70代女性の遺体が発見された。

 長く定職に就かず、引きこもっていた40代後半の息子が、女性と母子2人で暮らしていた。7月下旬、住民が見掛けたのを最後に、母は消息不明に。この後に倒れたとみられている。

 息子は母親の遺体を自宅に放置したとして、死体遺棄容疑で逮捕された。長崎県警によると、「亡くなったのは知らなかった」と話したという。鑑定留置を経て約2カ月後、長崎地検は息子を不起訴処分にした。

 近隣住民によると、息子はかつて父の仕事を手伝っていたとみられる。父の死後、10年ほど前からほとんど外に出ないようになった。アパートの外に大量のごみを山積みし、近隣とトラブルになっていた。

 母子はSOSを発しなかったのか。地元の民生委員の女性は、行政の支援を受けるよう声を掛けたことがある。「そんなのは絶対、せんでよか」。息子は拒んだという。

   *    *

 こうした事件は最近、全国で相次いでいる。昨年4月には福岡県福津市でも80代の母親の遺体が発見され、引きこもり状態にあった60代の息子が逮捕された。

 「引きこもる人たちは自らの存在を、社会にとってマイナスだと捉えている」。引きこもり支援を30年近く続け、「親の『死体』と生きる若者たち」の著書がある山田孝明さん(66)は言う。

 山田さんは逮捕された引きこもり当事者と留置場で面会し、差し入れをしてきた。多くの当事者は「人と会うのが怖かった」「どうしていいか分からなかった」と語る。胸の内では仕事に就かない自らを否定し、誰かに相談すらできない。親の後を追って死のうと思い詰める人もいた。

 「社会に背を向けざるを得なかった人は各地に潜在している。事件は氷山の一角にすぎない」

   *    *

 心を閉ざす当事者をどう支えればいいのか。

 北九州市出身の松下哲也さん(46)は20代から30代にかけ、職場の人間関係に疲れて7年ほど引きこもった。昼夜逆転の生活。同居する家族との会話も減り、母に「おまえのせいだ」といつも怒鳴っていた。

 前を向くきっかけはNPO法人青少年サポートセンター「ひまわりの会」の訪問支援だった。松下さんの父から頼まれた村上友利会長(75)が1年8カ月間、自宅を毎月訪ねて声を掛けた。話すのは野球やテレビの話題。たわいのない内容でも、家族以外と会話する唯一の時間は新鮮だった。

 「どうなってもいい気持ちと、どこかで助かりたい気持ちが半々だった」。実は、会を取り上げた新聞記事を切り抜き、父に見せたのも松下さん自身だった。

 「将来のことを考えたら」。「友だち」と思えるようになった村上会長の言葉に背中を押され、家を出た。今は1人暮らしをしながら会の活動を手伝う。

 村上会長はこれまで40人を、引きこもり状態から外に出した。「環境を変えたくてもタイミングをつかめず、親や社会のせいにしている。けれど、救いを待つ気持ちもある。全てを引き受ける覚悟で、粘り強く訪問するしかない」
~~引用ここまで~~


~~引用ここから~~
引きこもり 家族ぐるみで支援 全国に広がる「伴走」モデル 2019/12/17(西日本新聞)

【扉の向こう 引きこもり支援の今 (下)】

 家族だんらんの場となるはずのリビングで、40歳くらいの女性が耳を手で覆い、何かをつぶやきながら歩き回る。その傍らで白髪姿の父親が床に座り、うなだれていた。

 「これは、私がかつて支援に訪れた家庭です」

 佐賀県で引きこもり支援を続けるNPOスチューデント・サポート・フェイスの代表理事、谷口仁史さん(43)が、女性の状態を病院に伝えようと撮影した映像を見せてくれた。

 女性は元教員。学級崩壊に直面して心を病み、10年以上引きこもっていた。父は仕事を退職して女性を世話したものの、自らもうつ状態に。2年間風呂に入らず、テレビばかり見ていた。暴れる女性を殴ることもあった。母は被害妄想が強く、相談に乗ろうと訪れる行政の担当者に厳しい言葉を浴びせた。

 谷口さんは言う。「私たちが向き合うのは、本人だけではないんです」

   *    *

 佐賀県子ども・若者総合相談センターの実態調査によると、2010~16年度の利用者約2400人のうち、家族自身も悩みを抱え、疲弊しているとの回答は63・7%に上る。

 谷口さんの原点の一つは、学生時代の経験にある。家庭教師のアルバイトで、周囲に暴力を振るい、授業を欠席しがちな男子中学生を担当した。「恵まれた家庭にいるはずなのに、どうして…」

 通ううち、両親から体罰を受けていることを知った。衝突する原因を探り、両親とも対話を重ねるうち、男子は学校に行くようになった。「家庭に入らないと解決できない問題があると実感しました」

 03年にNPOを立ち上げ、出会ったのが冒頭の家庭だった。女性は「盗聴されている」とおびえていた。谷口さんは盗聴器発見器で部屋を調べて安心させ、精神科病院に連れて行った。パソコン資格を取る勉強を勧め、技術を生かした在宅ワークを紹介した。

 女性の働く姿を見ると、父も次第に元気を取り戻し、母も落ち着いていった。父には多重債務の整理を促し、収集していたコインや切手を売って生活費にしてもらった。その後、女性は医療系の仕事に就き、一家は少しずつ、平穏な暮らしを取り戻していった。

   *    *

 谷口さんの活動は、複数の専門職を巻き込みながら拡大。NPOには今、臨床心理士や社会福祉士など合わせて29の専門資格を持つスタッフ約250人が登録し、家族に寄り添い、「伴走」する方策を考える。家庭を訪問支援する手法は「アウトリーチ」と呼ばれ、全国に広がっている。

 相談者に費用はかからない。NPOが国、県、市などから14事業を担い、委託費で運営しているためだ。公的支援と民間のノウハウを組み合わせたモデルケースとして注目されている。

 こうした包括的な支援ができる団体はまだ、限られている。行政の相談窓口は縦割りで連携は乏しく、職員の異動で継続的な支援も難しい。政府の施策も、就職氷河期対策などの「就労支援」に偏りがちだ。

 「単純に仕事につなげばいい、というものではない」。福岡県立大の四戸智昭准教授は、一人一人の特性に合った居場所づくりが大切だという。

 引きこもりになる理由や背景はさまざまであり、「自己責任」では片付けられない根深さをはらむ。閉ざした扉の向こうへ、踏み出せるようにするには―。その鍵を見つける現場の模索は続く。 (山下真が担当しました)
~~引用ここまで~~


「内閣府の推計によると、引きこもりの40~64歳は61万3千人。80代の親が50代の子と共に困窮する「8050問題」」が社会問題になっている。

引きこもりも引きこもりたくて引きこもっているわけではないのだ。

自分は社会にマイナスの存在だと自分を責め、社会や親のせいにしつつ、生きることに意欲もあまりない。それでいてどこからか「救いの手」が来るのを待っている。

親が高齢で子供も中年になると、何とかしないとと焦ってくると思う。しかし無理やり部屋から追い出しても解決しないのだ。

「引き出し屋」に大金を支払い引きこもりを部屋から連れ出しても、引きこもりには働く意欲がない。自立する能力もない。

そもそもそんなものがあるなら引きこもっていない。

「引き出し屋」は悪徳業者が多いように思える。「引きこもり」の子供を何とかしたいという親の弱味に漬け込んで大金を支払わせて、引きこもりを自立させるプログラムや丁寧なフォローもない。

だから冒頭に引用したような記事のように自立する能力がない引きこもりの男性は餓死する羽目になった。

親に暴力を振るったり、親の金を使い込む場合は無理やりにでも引き離した方が良いのかもしれない。全国に61万人も引きこもりがいれば61万通りのケースがあるからだ。

だが、基本的には無理やり部屋から追い出しても解決しないと考える。

支援団体が粘り強く引きこもりの家庭に通って、家族にまでカウンセリングしてようやく改善に向かう_そのようなものではないか。

引きこもりは犯罪者ではないが、薬物の常習者と同じかもしれない。支援者が金にならない行為だと知りつつも息の長い更正プログラムを組み、また薬物を使用しても見捨てない。

引きこもりに対してもそんな息の長い取り組みが必要だ。

「戸塚ヨットスクール」がマスコミと世間を騒がせたことがあった。不良や引きこもりなどを更正させることを謳ったフリースクールだ。

戸塚宏が傷害致死で逮捕起訴され注目を浴びたのだ。石原慎太郎も戸塚ヨットスクールを称賛するほどではあったが、石原は「大衆は豚」だと考える思想の持ち主だ。弱者に優しいわけではない。

「戸塚ヨットスクール」のスパルタ式指導はいわゆる不良の少年少女には効果抜群だ。不良少年少女は引きこもりと違って生きる意欲はあるからだ。ただそのエネルギーの使い途がわからないだけだ。

そこをスパルタ式で指導すれば自信がつき、不良行為などに手を染めることなく、建設的なことに有り余るエネルギーを使える。

しかし同じことを引きこもりにしてはいけない。彼らは生きる意欲がないのだ。エネルギーがない。スパルタ式の指導には耐えられない。現に自殺した子供もいる。

当たり前だが、病気に罹ったら適切な医療が必要だ。薬を呑むにしても医師が診察して適切な薬を処方しなければならない。

引きこもりにスパルタ式指導は間違いなのだ。

例としては逆に分かりにくいかもしれないが、「胃もたれ」と「胸焼け」がある。食べ過ぎで「胃もたれ」なのに、「胸焼け」の薬を誤って飲んだら逆効果だ。死ぬことはあるまいが、気持ち悪さは倍増だ。救急車で運ばれてしまうかもしれない。逆もしかり。

引用した記事のように外部の支援者が家族も含めてまず話を聞いてやる必要があるのではないか。引きこもりを無理やり部屋から連れ出しても身体と精神がついていかない。

40~61歳の引きこもりは全国に61万人もいるとされる。39歳以下の引きこもりも何十万人といるだろう。支援体制が追いつくまいが、「引き出し屋」は規制して、引きこもりに対して親身になって話を聞いてやる支援者を見つける必要があるのではないか。

引きこもり問題は経済は関係ないかもしれない。しかし緊縮財政で必要な予算が必要な箇所に回らなくなったことが社会全体から余裕を奪い、引きこもりを増やした面があるのではないか。そう思える。

國としても社会問題化した引きこもりの問題にもっと熱心に取り組んで欲しいものだ。


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