わたしたちの住処をつくる記録

いえづくりについて、できごとと考えたことを記録しておきます

耐力壁、窓枠

2015-03-31 23:20:50 | ただいま普請中
 室内の耐力壁がとりつけられ、だいぶ部屋の形が意識できるようになってきました。

 家全体に壁はほとんどありません。見えているこの部分くらいで、あとは吹き抜けもつながってワンルームとなります。

 この壁が塗られるとぐっと柱梁が浮き出てくると棟梁。なるほど、壁で柱や梁の存在感が薄まるのではなく、塗りによってむしろ無垢の柱・梁が際立ってくるというのは、面白い、たしかにそうだろうと思い、とても楽しみになりました。

 窓枠も着々と作業されていました。この枠は実際に住むときに外に見える部材だけあって、とても綺麗に仕上げられていました。あたりまえですが、ミリ単位の精度がきちっといかないとサッシが入りません。とても繊細な仕事だなと感心します。

 二階はアルミ樹脂複合サッシにLowE複層ガラス。私たちがこうした仕様を考えているのでは全くありません。松井事務所から提案されたのが特に説明なくこの仕様。全体のコストバランスのなかで、温熱環境が最も良くなる方法を提案してくださっています。
 サッシはこのように「半外付」とのこと。手の出演はまたも棟梁です。

 この段階でとても綺麗。気分がいいですね。さて実際にどのようにおさまるか楽しみです。

家を勉強する③(古本屋の愉しみ)

2015-03-28 23:19:30 | 勉強
 初めて松井郁夫建築設計事務所へ伺った際に見せていただいた本に惚れ込みました。以来私たちは古本屋を巡ってはそれを探し続けています。
 伊藤ていじ(文)、二川幸夫(写真)の『日本の民家』。なんといっても写真の力が相当なもので、一目見て「欲しい!」と思ったのです。二川幸夫さんは私たちが松井事務所に伺った一か月ほど前に亡くなったばかりでした。ちょうどその亡くなった月まで、パナソニック汐留ミュージアムで「二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年」展が開催されていたのでした。もう少し早く知っていれば、必ず観に行ったと思います。
 パナソニック汐留ミュージアムには思い出があります。昔、「今和次郎 採集講義」展を二人で見に行ったのです。

予想外に面白い展覧会で、小さなミュージアム内を時間を忘れて数時間見入っていた記憶があります。私はつい最近亡くなった赤瀬川源平が好きで、確か『路上観察学入門』(ちくま文庫)を読んで、今(コン)の『考現学入門』(ちくま文庫)を知ったのだと思います。それで、今(コン)のユニークさが好きでしたので、汐留ミュージアムで展覧会があると知って喜んで行きました。今(コン)には岩波新書に入っている『日本の民家』という有名な著作があります。今(コン)の「民家」は、本当に何の変哲もないふつうの人々の家のことで、特に文化的に重要にみえるとか、構造的に重要に見えるとか、そういう視点はありません。とにかく普通の人たちの家をなんでも記録するという「観察」の側面が大きいと思います。「民家」をどう定義づけしていくかを探り始めた時代だったのです。
 そんなことで、私のなかでは今(コン)の『日本の民家』と伊藤ていじ・二川幸夫の『日本の民家』が、パナソニック汐留ミュージアムで出会い、どうにも伊藤・二川の『日本の民家』が欲しくなっていきました。たぶん、内容的には全く関係のない二つの書物が、私の頭の中では非常に大きな出会いとなっていたのです。
 それで、とにかく古本屋探索が始まりました。もともと古書に大変詳しい妻と一緒に、ことごとく古本屋では『日本の民家』を探しました。しかし、いまだに出会えていません。インターネット上では発見していますが、古本屋で見つかったら、さぞかし嬉しいだろうと思います。
 『日本の民家』(伊藤・二川)が見つからないので、私はまず伊藤ていじのほかの著作を手に入れてみようと思いました。それで手に入れたのが、平凡社の『日本の美術21 民家』です。ここには二川幸夫の写真もふんだんに使われています。
 
 箱の写真がまたいい。表紙には倉敷の民家、裏表紙は信州の本棟造り。倉敷にも二人で行ってきたところですし、本棟造りにもなじみがあるのでなかなかいろいろなつながりを考えてしまいます。伊藤ていじの文章がまたなかなか良くて、やや晦渋なところもあるのですが、かなり面白い部類だと思います。伊藤ていじの本は『日本デザイン論』(鹿島出版会)も手に入れました。これも大変勉強になる内容です。『民家は生きてきた』の新版出版記念か何かのインタビューがどこかにあったのですが、伊藤ていじはかなり面白い人で明晰です。八田利也の『現代建築愚作論』のことも知りました。

 『日本の民家』が手に入らないかわりに、「民家」つながりで、こんな本も手に入れました。写真の真ん中あたり。

 『民家型構法の家 理論と実践』、『民家型構法の家づくり 現代計画研究所の試み』です。 これは『住宅建築誌』で田中文男棟梁のことを知って、そこからたどっていたわけです。詳述しませんが知る人は知る、という感じですね! ここに出てくる執筆陣は… となるといろいろ点と線がつながってきます。
 田中文男棟梁関係でいえば、これは新品ですが、INAXブックレットの『継手・仕口―日本建築の隠された知恵』も手に入れました。

私が購入した直後に在庫がなくなったようで、つい最近新版が出るまでとんでもない値段がつけられていました。いまは正常化しています。ここに出てくる田中文男さんの語り口は非常に興味深いものがありますので、お勧めです。

 さて今日最後です。「継手・仕口」という言葉が出てきましたが、極めつけの本に出会い手に入れました。なんといってもこの存在感。そしてこの著者! 清家清『日本の木組』(淡交社)です。
 
 すごい本です。今はこういう本は作れないと思います。

 縷々紹介して、だからなんだという感じですが、ネタバレしてもいけないので中身は書きません。あくまで記録(覚書)としてこのブログに残しておくだけです。伊藤・二川の『日本の民家』が見つからないがために、かわりに様々な本を手に入れることになり、様々な出会いがあったのです。それで、「民家」という文脈に、自分たちが建てようとしている「マイホーム」とやらを位置づけるとするとどうなるか、と考えるのです。すると不幸にも下手な「マイホーム」は建てられないぞ、と意を強くするのです。
 私たちはいつか必ず『日本の民家』が見つかると信じて、これからも古本屋探索を続けてゆくことになるでしょう。そして、きっとまたその周辺の本から刺激をうけて、「民家」の奥深さを知り、「マイホーム」づくりの社会的「責任」を背負おうとしてしまうのです。

壁下地、電気配線逃げ、屋根通気層

2015-03-26 22:03:48 | ただいま普請中
 仕事の関係で現場近くまで行けたので、見てきました。5日前から写真ではあまりかわらないかもしれませんが、壁下地がかなりできて雰囲気が変わっていました。 
 

 こちらはキッチン。

 こちらはお風呂。

 お風呂には補助的に羊毛断熱材が用意されていました。

 電気配線の逃げも着々と進んでいます。
 電線の束がこんなにも↓なるんですね、なんて棟梁に話したら、

 ふつうはこう↓だそうです。

1階天井がほとんど下の写真のように「現し」で天井裏の配線スペースがないため、一か所にまとまってくるのだそうです。床下へ行っているということでしょうか。キッチン上は表しにならないため、上の写真のように配線はすっきり。ここには天井が張られ配線は隠れます。

(現し天井には配線ができない)

 それから、斉藤棟梁に見せてもらったのがこちら。

軒下に透湿防水シートがふんどしのようにたれさがっています。よく見せてもらうと…

 この隙間から空気が屋根を抜けてゆきます。壁にも通気層があり、こことつながるそうです。片流れの上のほうにも当然壁からの通気の隙間がありますが、ここに手をかざすとだいぶ暖かい空気が感じられました。

 屋根の上はこのようになっていて、

 最終的にここから空気が抜けます。

 ちなみに指してくれているのは棟梁です。この「換気棟」は“TOKO片流れi-ROOF”(たぶん)。

 壁に通気層がないと、壁の中が蒸れてしまうと棟梁。特に寒冷地なので、室内で暖房すれば壁で結露するでしょう。結露を防ぐには壁内に湿気を入れないことと、入った湿気を逃がすこと。湿気を入れないために通常は断熱材の室内側に「防湿」防水シート(気密シート)を張るはずです。そのうえでさらに壁の外側に「透湿」防水シート+通気層を設けるということをやるのでしょう。しかし、うちは仕様書をみるかぎり室内側の「防湿」気密シートはありません。その秘密は断熱材の調湿性にあると理解しています。調質性のある断熱材+外側の「透湿」防水シート+通気層で壁内の「蒸れ」を防ぐということだと思います。(だれからも説明されてないので、この理解で当たっているかはわかりません。また教えてもらおうと思います。)

 いろいろ教えてもらうと面白いことが沢山ありますが、最初から教えてもらわずに、自分で考えてから教えてもらうともっと面白いと思います。最初からこれはこうでこうだからこんなにいいんですよ、って言われるとなんだか疑ってしまうひねくれた性格なのかもしれません。どんどん良さをアピールしてくる営業さんが居なくてよかった。奥ゆかしいくらいが信用できるものです。




建て方を振り返る

2015-03-22 21:36:02 | ただいま普請中
 2015年3月13日(金)から建て方が始まり、14日(土)に上棟式を迎えました。私は仕事があり13日には現場に行けなかったため、「カケヤ」の音を聞くことがほとんどできませんでした。しかし、施工の田中製材工業さんが写真に加えビデオも撮ってくださいました。せっかくなのでいただいた写真のいくつか(ほんの一部ですが)と動画(膨大な動画データから適当に編集しました)を記録しておきます。
 
 
 
 
 
 

 プレカットと違い、手刻みの長ほぞ込み栓うち。ほかの建て方の現場を見たことがないので、自分の中では比較のしようがありませんが、金物に頼りませんのでボルトを締めるような作業は少なく、掛矢の甲高い音が響きます。また、通し貫を同時に入れて行くのも、他の現場では今はあまり見ないのではないかと思います。
 貫構造が、しなやかで粘り強く倒壊しない建物を実現すると松井郁夫先生は言います。専門的なことはわかりませんが、その考えには私も妻も直観的に共感できたのです。しっかり作られた家具もそうですし、木製品でなくとも、丈夫で長持ちする日用品は、もとの素材が持っている特徴をしっかり踏まえてつくられるものですよね。「木組み」や「貫」は、素材に対して無理をせずその良さを引き出す構法なのではないかと思います。何事も無理をするというのはよくない。
 また、工業製品は一定の品質を確保することは得意なのでしょうが、品質だけでなく製品からそれを作った「人」が見えてくるようなものにも、私たちは心惹かれるようです。手仕事によって生み出されるものには、作った人のひととなりが見え、あたたかく感じます。建物が立ってずっとあとになっても、墨付けや刻みからすべてを取り仕切ってくれた若き斉藤棟梁のこころが、建物に宿っていくという気がします。高く不安定な足場の上で、松本平の絶景を背景に軽やかにカケヤを振る会長さんの姿とか、ずっと心に残って、この家はああいう人たちが関わって作ってくれたんだよ、だから大事なんだよ、と娘に話してやりたいと思います。

建て方

 動画編集なんてほとんどやったことなかったので、勝手わからずちょっと間延びしてしまいました。もうちょっとうまく編集したいな…。

屋根・間柱着々

2015-03-21 21:55:59 | ただいま普請中
 現場まで峠を越える一時間強の道のりがあるため、なかなか見に行けないなか、なんとか今日差し入れを持って行ってきました。

 1階天井と2階天井(化粧野地板)が張られ、間柱も着々と数を増やし、だんだん家らしくなってきました。

1階吹き抜け部分から2階天井を見るととても気持ちのいい空間が広がっています。


 屋根板金もおおむね終わったようです。シルバーのガルバリウム鋼板、立てはぜ葺きになりました。私の親戚にあたる犬塚板金さんにお願いしています。なんと叔父は「現代の名工」(卓越した技能者)の表彰を受けています。丁寧な仕事です! シュッとしてすっきりシャープで綺麗な屋根が出来上がっています。これからもう少し仕上げがあるそうです。午後の日差しにまぶしく光って、どうやっても写真がアンダーに写ります。
 

 こんなものも設置されていました。これがどうなるかは、またのお楽しみ。


 今日は棟梁と大工さん一人の森澤建業お二人での作業。東御市からですので、毎日片道1地時間強の道のりを通ってくださっています。「頼まれれば基本的にどこへでも行く」と大工さんはおっしゃっていましたが、本当に大変な仕事を引き受けてくださりありがとうございます。作業後に一杯!といきたいところですが、また長い道のりを運転して帰られます。お体に気を付けて、安全第一でこれからもよろしくお願いします!