雅藍(がお)っぽさまるだし2。

芝居やゲームやWWEや映画やライブを糧に人生を何とか過ごしてる、そんな雅藍(がお)さんの日々をまるだし。

「TAKESHIS'」:久々に北野武監督の本質全開。

2005年11月18日 | 大スクリーンに無限の夢(映画)
最近は「DOLLS」とか「BROTHER」とか、
あるいは「座頭市」のようなエンタテインメント重視の路線が続いてたから、
確かにそこから武作品が好きになった人は戸惑うと思う。

だけど、最初期からの武ファンにとっては、
この映画はまさに「お帰りなさい、武!」というべき怪作と評すべきだろう。


というわけで、今週色々あって、ちょっと疲労気味な中、
「TAKESHIS’」を見てきた。

「超売れっ子タレント「ビートたけし」が、とあるテレビ局で自分そっくりの
売れない役者「北野武」とであったことから起こる、不思議な出来事…。」

っていうのが、一応の最初のストーリ。
だけどコレはホント導入部の説明付けみたいな面があって、
映画開始20分を経過した時点から、ストーリーを追う意味が全くなくなる。
あとは、妄想か夢かパロディかシュールか、
そんなものがごちゃごちゃと混ざり合った不思議な光景が延々広がる。

それはまるで、「奇妙な肌触りのシーツにねっころがってるような感覚」
ぞわっと異様な感触で最初はびっくりするけど、
どうしてもそこから離れられず、気がついたら感触を楽しんでしまってる。

で、この感覚は以前感じた覚えがある。
記憶を遡ってみたら、コレって北野武監督の初期の怪作、
「3-4X 10月」を見たときの感覚に非常に似ているのだ。
そしてもう一つ、「ビートたけし監督」の怪作「みんなー!やってるかー!」にも、
同じような感覚がある。
この二つを掛け合わせ、さらにそれ以降の北野武エッセンスを抽出して、
ぐつぐつ煮詰めて煮詰めすぎて残ったのが、
この「TAKESHIS’」ではないだろうか?

そういえば「3-4X 10月」との共通点も多い。
今回の「TAKESHIS’」では、BGMがほとんど全くついてないのだ。
クライマックスのタップダンスから20分ぐらいはBGMがつくけど、
それだって解釈を変えればBGMとは決していえないわけで。
「3-4X 10月」も全編BGMがない。
昔のオマージュが色々含まれてるけど、多分、モチーフにしたのは
この作品だと思う。ある意味、「作家性のリメイク」といえるかもしれない。

淫猥で猥雑で、だけど妙に軽くて。
そういえば監督の初期作品にはそんな感覚に満ちていた。
多分こっちが監督の本質なのだと思う。
その作家性をこの時期にここまで全開にすることで、
確かに「監督:北野武」は一つのピリオドを打ったのだろうな、と。
ある意味エンターテイメント性を無意識に求められていた最近の作品に、
多少なりともフラストレーションを感じていた、その反動なのだろう。
その証拠に、今回大々的に「編集:北野武」を表明してるじゃないか。
最初から最後まで、北野武の好きなように作り上げた映画。
それこそが「TAKESHIS’」なのだ。

だからこそ、周りの声を何もかも無視して、作家性を前面に出して、
スッキリしたこの後の作品が、どっちに向かうのか、
確かにコレからが楽しみではあると思う。

もうひとつ気づいた点。それは「軽すぎるバイオレンス」だ。
北野武=バイオレンス、って言うのが最近の定説だけど、
実は監督自身はバイオレンスに興味がないのではないかと思う。
例えばこの映画でも銃の乱射は全編にわたって出てくる。
マシンガンうちまくったり、二丁拳銃ぶっ放すシーンがそこかしこに。
ひょっとしたら最近の作品の中で一番打った弾の数は多いかも。

だけど、軽いのだ。ものすごく。
まるで「大の大人が空砲の拳銃で打ち合いごっこして楽しんでる」かのように。
銃の乱射シーンが「ロケット花火の打ち合い」みたいな軽さにしか、
感じられないのだ。
そしてこれが、武監督の本質なのだろうと思う。
バイオレンスが嫌い、というわけではないだろうけど、
監督はバイオレンスにはもう興味がないんじゃないかと。
「撃って、死んで、おしまい」なシチュエーションがつまらないんじゃないかと。
その端的な例が、岸本加代子であり、寺島進のポジションだったと思う。
岸本加代子さんの飄々とした狂言回しポジションが非常に面白かったし、
「死なない寺島進さん」って、初めてじゃないか?

そんなわけで、この映画は完全に人を選ぶけど、
それは別に今に始まったことではなくて、
久々に「北野武監督作品」を見たっていう満足感を、
私は感じることが出来た。そういう意味で、楽しかったとおもう。

もう一つ賞賛すべきこと。
それはこんな極私的な映画で、
京野ことみ嬢がのびのびと演じ、
あまつさえ素晴らしい脱ぎっぷりを披露した事。

ついこの間まで、色気とは無縁の存在だったのだけど、
この間の「吉原御免状」といい、急激に「いい女」路線に進行中で、
今後の活躍に期待せずにはいられませんです。
ハイ。



※とりあえず喪を開けたので、ブログ再開します。
この3日間も色々ありましたが、それは書きません。
喪に服していましたから。
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