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ほっぷ すてっぷ

精神保健福祉士、元新聞記者。福祉仕事と育児で「兼業」中。名古屋在住の転勤族。

Tran VAn Tho(2010)『ベトナム経済発展論』

2012-03-03 16:04:58 | Book
第1章経済発展と体制移行の歴史的視点

 経済発展を3段階で説明するとき、ベトナムは後発的ではあるが2段階目にいる。ただし、そこから一人当たりGDPが1万ドルを超えるような、先進国に行けるかどうかは、多くの「第2段階目の国」にとって分岐点である。人口2000マンに以上の国で見ると、2段階目で停滞しているのがアルゼンチン、メキシコ、ベネズエラ、ブラジル、ペルー、フィリピンといった国。一方、成長が続いているのがマレーシア、タイ、中国、インド、ベトナムである。後者はみなアジアの国々で、ベンチマークとなったのは1980年代中ごろ。1985年に日本が変動相場制に移行し、急激な円高を理由にアジアに工場を展開したこと、中国、ベトナムが市場開放政策に転換したことなどが大きい。

 さて、ベトナムは今後、このまま成長国の国々を追いかけることができるだろうか。ベトナム(と中国)には、一党独裁を続けてきたことによる「漸進主義の制約」がある。
 体制移行の観点で経済成長を見ると、2種類に分けられる。「制度的基盤」(一党制支配、国家的所有)と、「計画経済」(生産財の行政的配分、価格決定、マクロ経済政策など)の2つの要素を、2つとも改革するか、制度的基盤を残したまま計画経済を変えるか。
 制度的基盤ごと改革したのが、東欧やバルト三国だ。これは「急進主義的移行戦略」と言うこともできる。結果としては、生産の急激な低下、平均余命の短縮、貧困の増加となった。市場をサポートする制度の発展が自由化と民営化に追いつかなかったともいえる。
 ベトナムと中国は、政治体制を固守し、社会的政治的安定を保ちながら改革を進めることができた。これは「漸進的移行戦略」と言える。ただし、現在となっては、漸進主義的に進めてきたがために、既得権益が拡大し、さらに次へと制度を進化させるのに制約となっている。

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 人口規模が大きく(8600万人)、国土の広さも(日本人から見て)広大ではなく、親近感の持ちやすい国でありながらベトナム語という言語や一党独裁体制などの理由で中身が見えにくい国――多くの日本人にとってはそんなイメージじゃないだろうか。ベトナムの中にいてもそう。(国が何を考えているか、またいつ、どのように制度を変えるか分からない、というリスクがあり、それをヘッジする意味での保険の需要があるんじゃないか―と思うくらいだ。)
 というわけで、本で得られる知識は本で得たほうが確実性が高いので、『ベトナム経済発展論』を少しずつメモしながら読んでいくことにします。(著者は、Tran Van Thoというベトナム人経済学者、著書は日本語)