ほっぷ すてっぷ

精神保健福祉士、元新聞記者。福祉仕事と育児で「兼業」中。名古屋在住の転勤族。

野口悠紀雄『戦後日本経済史』

2012-06-24 23:28:35 | Book

昨日書いた日本の労働制度の特殊性。これを含めて、日本の制度の多くは
「戦時体制」が基礎のままになっている――これがこの本の一番のメッセージだ。
戦時体制は重厚長大産業・製造業が世界的にもメインだった高度経済期、
特にオイルショック時には非常に効率的に機能した。しかしその後、
インターネットなどの通信技術が発達した「分権型」経済、分権型社会には
対応しにくく、間接金融から直接金融主体の資本経済などの、転換を
できないでいる。

『日本の雇用と労働法』とつながる部分も多く、より高い視点で見られた。
高度経済成長、オイルショック、バブル、バブル崩壊・・・と自分の目では
見ていない私たちの世代にとって、びっくりするような「常識」「からくり」がある。

著者が「戦時体制」(もしくは戦時体制の思想)というのは、農地改革や
経営と資本が分離された経済システム、労働組合などだ。
「戦時中の革新派が、GHQ占領下でその思想を具現化した」というような
説明も多い。農地改革のような農村(小作人)救済策は戦時中に軍部から
出ていたし、食管法も戦中にできたもの。何より、これを読むまで知らなかったが
「商工省」は「軍需省」が、占領軍がくる直前に看板をすべて書き換えただけの
全く同じ組織だったのだ。

具体的に、メモしておきたいのは日本特有の「間接金融」がもたらした功罪。

・間接金融
→企業は株主や配当を気にせず事業拡大できる
→世間に新規株式は出回らず、一般大衆は株式による資金運用の選択肢がない
→一般大衆は(郵貯などに)預金
→経済成長・物価上昇中では、預金は実質的に目減りする
 (株式は通常経済成長とともに水準が上がるので、実質価値も上がる)
→郵貯に集まった巨大なお金は、財政投融資として、日本開発銀行を
 通じ低金利で企業に回った(企業にとってはかなりリーズナブルな資金に)
→大衆にとって資産運用は土地でしかできず、バブルの原因に

この構図は、重厚長大産業に巨額の投資が必要だった高度成長期、
そしてオイルショック時にはよかった。
特にオイルショック時は、
・為替レートの悪化(円安)とインフレ
→労使協調の中で、労働側は過度な賃金引上げ要求せず
→円安を利用して輸出拡大、経常収支改善
→為替レート標準化

という回復基調をたどれた。イギリスなど労働組合が強いところでは、
インフレ→賃金引上げ要求、となり、コストアップゆえに輸出拡大がうまく
できなかった。

そのほか、バブルとバブル崩壊についても詳しく、いろんなエピソードを
載せている。もともと雑誌の連載記事だから、読みやすい。登場人物も
多く、人物像から経済政策を解くところも多い。
一日で読み終える本としてはお得でした。

濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』

2012-06-23 17:13:32 | Book
 なぜ自分が仕事を辞めるに至ったのか、なぜベトナムでは職場における女性の割合がかなり高い(80%くらい)のか、なぜ映画『ガール』に出てくる女性たちはみな「頑張っているけどしんどい」状況なのか(私は見てませんが、夫が力説するのを聞く限り)・・・私の中ではかなりタイムリーなこういう疑問は、日本型雇用慣行に起因しているのではないか。この本を読んで、いろいろな線がつながった。知識を得るとともに、概念を整理してくれる本は非常に意義深いと思う。私憤が公憤につながった気がする。

 本書の内容は幅広く、制度の歴史や判例の解釈を中心に教科書的に説明している。それでも、ページ数は少ないので読みやすい。冒頭のような問題意識をもとに、日本型雇用慣行とその帰結について、少し整理してみたい。

 「日本型雇用慣行」とは、つまり「メンバーシップ型」雇用だという。これに対し、おそらくベトナムを含む欧米型、(日本以外型?)は「ジョブ型」。メンバーシップ型では、特定の職務・部門ではなくある会社に就職するので、人事異動が部門横断的になされる。ジョブ型では、市場環境の変化などである部門を縮小するとすれば、人事異動なく人員が削減される。その逆もしかり。メンバーシップ型の方は、解雇の機会は少ないが、仕事が専門的ではなくなる可能性が高い。

背景:長期安定雇用思考/戦時中の雇用統制の影響/1950年代からの技術革新による装置産業での人員余剰・・・
→メンバーシップ型雇用

→なるべく解雇せず、部門横断的な人事異動
→職務ごと(人事異動ごと)に賃金水準変わると不公平感・人事異動困難なので
 定期昇給制・年功賃金
→職務ごとに労働条件交渉できないので企業別労働組合
→労働時間・就業場所の限定なく、人事部に権限集中するため人事査定を
 パスするための長時間労働助長
→特定の専門家になりにくく転職難しい

・・・この流れの中で、自分にふりかかった禍を解いてみると、部門横断的な人事異動の不可解さ(→仕事やる気をなくす)、有無を言わさぬ地域移動(配偶者、家族での生活を犠牲に)というところがまず、いまだにナンセンスと思っている。就職時に、これらが前提で就職しているわけではあるけれど、はっきり言ってやる気ある人にとって、日本のほとんどの会社では「Yes」以外に答えは用意されていない。この不利益が、(地域限定的、ジョブ限定的な)派遣社員との賃金差を正当化させてしまっている歪んだ構図は、本当に腹立たしい。
特に、出産や育児でキャリアに息継ぎをいれなければいけない女性は、部門横断的な異動でキャリアを分断されたり、地域を動かされたりすることの不利益は非常に大きく、つねにこの不確定要素が人生プランを揺るがすと考えなければいけない。

なぜほぼ日本だけがメンバーシップ型になったのか。歴史からいろいろと解説してあるが…結局、戦後の電産労組が、この賃金体系を「選んで」経営側に求めていったということではないだろうか。その際、戦前、戦中の賃金統制や職工たちの労働市場における「メンバーシップ」に近い慣行は、ルーツではあるだろうが、実際1950年代くらいまで経営側は「ジョブ型」を提唱していたようだし、必ずしもずーっとメンバーシップ型でなくてはいけないという理由はなかった。

専門性が以前に増して重要になっている国際社会で、日本人がこの雇用慣行を続けていくことのデメリットは非常に大きいと思う。女性が働き続けることが、まだまだ難しい原因もここにあると思うので、なおさら弊害ばかり大きいように見える。

夏の名物?ハノイの洪水

2012-06-19 19:12:05 | Private・雑感
これをスコールと言うのだろうか。夕方6時半ごろから大雨。
雷もとめどなく響いています。
先週にもあった夕方から夜にかけてのスコールに懲りて、
今日の重たい雲を見ながら逃げるように帰ったので
(徒歩20分の距離を、タクシー捕まえちゃったよ、途中で雨に
 降られたら困る!と思って・・・)
家の中で冷静に見ていられます。

ちなみに、先週はハノイに来て初めての、「夏の雨」だったのですが
本当に大変。また帰宅ラッシュ時に降り始めたものだから・・・

・強引に帰ろうとするバイクの川
 雨が強くなる前に帰ろうというのか、みな全身雨合羽で外に出る。だけども・・・

・雨、水たまりが原因で壊れたバイクが道をふさぐ
 しかも果敢にその場で直そうとする!余計に渋滞の原因に。なので・・・

・歩道にバイクが流入、あぶない
 歩いて帰ろうという人もいるのに、バイクがビュンビュン飛ばす。
 歩いてる人もバイクの人も裸足。湖のような道路わき&交差点脇の水たまりをばしゃばしゃ進む。
 それだけではなく・・・

・タクシーは知らん顔で休業
 こんな時こそタクシー!と思ったら大間違い。道路はがちがちに進まなくなるので、
 タクシー運転手はタクシーを道路脇に止めて路上喫茶で雨宿り。そりゃ割に合わない仕事かも
 しれないが、そんなんあり!?ちなみに、路上喫茶はビニールシートを木につないだ
 屋根でけっこうしぶとく営業。

結局私は、2時間ほど会社で待って、弱まったころに歩いて帰りました。
違う会社の友人は、「会社に泊まった子もいたよ」とのこと。
「いつも車で20分で行くところを、(車で)2時間かけて帰ったよ」という知り合いも。

6月から8月まで、多いというスコール。今回に学び、先手必勝で連戦を勝ち抜きたいです。

アメリカに渡ったベトナム人の旅で

2012-06-16 18:59:35 | Private・雑感
ベトナム戦争後期、いよいよ南ベトナムが開放軍に占拠されそうだという時、
多くの南政府関係者や南の資本主義下で成功していた人たちらがアメリカや
フランスに逃げた。この話は有名だが、実際に飛び立った/流れ着いた人たちに会ったのは、
今日が初めてだった。

ベトナムの古都(10世紀後半~11世紀前半)ホアルーと、タムコックという
のんびりとした川めぐりのツアーバス。席の半分を占拠したのは、カリフォルニア在住の
ベトナム人家族だった。そのうちの一人で、38歳という男性と帰り道で長々聞いた話は、
終戦からまだ40年と経っていないことを認識させられた。

家族はベトナム中部、ダナンの出身で、親せきがアメリカ大使館@ホーチミンに働いていたという。
なので、「特別に出国の飛行機チケットが取れる」ということになり、
終戦1年前の1974年に急にアメリカに飛びだったのだそうだ。
彼は1歳未満。それでアメリカへ行ったから、ベトナム語は苦手で、英語で物を考えるそうだ。

家族がベトナムで何の仕事をしていたのか、などは聞き忘れたけど、
ひとつ驚いたことがある。それは、家族での会話は英語だということ。
両親は今72歳と75歳というから、アメリカに来た時には34歳と38歳。
若いとはいえ、「彼らは気持ちの40%くらいしか英語で言えてないと思う」。
国際結婚でこういうシチュエーションはよくあると思う。
大人同士が交わした取り決めなら驚かないが、夫婦間は100%ベトナム語なのに、子供とは
英語って切ない選択だと思いませんか?そのタフさに尊敬を覚えた。

というわけで彼と、彼のおばさん家族と、そのほか誰か親せきと10人くらいで、1か月ほど旅行中とのこと。
ベトナムに来たのは初めてという。とてもmeaningfulな旅に居合わせたのだった。

彼自身は、精神科医として働いた後に大学に戻り、ドクターコースを終えたところで
キャリアを立て直す時期、だという。
英語がnativeだし、アメリカ食を食べてきたから体も(ベトナム人と違って)少し大きいし、
ベトナム人って感じはしない。むしろ日本人みたいだ。アジア人なんてそんなものだ。
ただ、「100%ベトナム人の血が流れているのに、ベトナムでは外国人に見られる。
アメリカでも、こないだベトナム人の散髪屋に行ったら、自分がベトナム人と思われなかった
らしく、ベトナム語で僕の印象やらなんやら話しながら髪切ってたんだよ。
まったく、僕は何人なんだろうね」なんて話していた。
家族の歴史が、分断されて、その継ぎ目の世代にあるということなのだろうか。


なんか、アメリカ行ってみたくなってしまった。
Vietnamese Americanな1日でした。
旅の写真はこちら

NNA記事:輸出拡大、6割は外資の貢献

2012-06-10 21:30:03 | Private・雑感
以前、ベトナムの輸入統計に関する記事を紹介したが、
今度は輸出(1-5月)。やはり構造は同じ。

総量で
外資企業は60.8%、前年同期比36.9%増
国内企業は39.2%、前年同期比8.4%増

インフレ率が10%以上ということを考えると、8.4%は低い。(物価調整前の数値とすると)
確かに、記事にあるように資金調達が国内企業はしにくい状況が
理由のひとつとは思うが、そのほかの分析はちょっとお粗末な印象。


(NNA記事)
輸出拡大、6割は外資の貢献
 ベトナムの輸出は順調に拡大して
いるが、外資企業がその6割に貢献
している。統計総局(GSO)によ
れば、1~5月の輸出総額は前年同
期比 24.1%増の 429 億米ドル(約3
兆 4,088 億円)に達した。外国直接
投 資(F D I)企 業 は こ の う ち
60.8%を稼ぎ出している。30 日付ベ
トナム・ニュース(VNS)が報じた。
  外 資 企 業 の 輸 出 額 は 同 期 に
36.9%増の 261 億米ドルを記録した。
これに対し、国内企業は 8.4%増の
168 億米ドルにとどまっている。
 こうした状況について、計画投資
省系研究機関・中央経済管理研究所
(CIEM)のボー・トリ・タイン副
所長は、「一般的には外資企業は輸出
面で優位な立場にある」と説明する。
外資企業は、親会社から低コストで
資金調達が可能なほか、ブランド力
があり、安定的な消費市場がすでに
存在する。このため、国内企業のよ
うに世界的な経済危機の影響を受け
にくいという。
 ベトナム縫製協会(Vitas)
のファム・スアン・ホン副会長は、
「繊維・衣類業界の今年の受注は厳し
い状況にあり、昨年より5~10%落
ち込んでいる」と指摘。銀行の貸出
金利は最近低下したが、融資を受け
に く い 状 況 は 変 わ っ て い な い と い
う。

NNA記事:「狭い住宅も必要」

2012-06-10 21:15:15 | Private・雑感
先日のNNAの記事。ベトナムでも、都市ではかなり核家族化が
進んでいるみたい。家賃も高いし、1人暮らしはほとんどないと思うけど。
小家族用に「狭い住宅の供給も必要だ」という方針転換の認識が
示されているが、25㎡=15畳。1LDK、たぶん今の我が家くらいか。
子どもが小さいうちはいいが・・・というのが日本人の感覚だが・・・


建設相「不動産市場は今が底」

 長期にわたって冷え込んでいる不
動産市場について、チン・ディン・
ズン建設相が5日、政府公式サイト
開催のオンライン対話で、「市場は今
が底」との見方を示した。5日付V
Nエクスプレスが報じた。
 ズン建設相は不動産市場の冷え込
みが続いた原因として、銀行の貸出
金利が高く融資が受けにくいことや、
消費者の購買力が低く供給過剰が起
きていることを挙げた。
 市場の回復のためには、銀行が企
業に融資するだけでなく、消費者に
も条件の良い住宅ローンを提供して
物件の売買を活性化するほか、需要
に合致するよう1戸当たりの床面積
の小さい物件を増やす必要も指摘し
た。
 ズン建設相は、ハノイでは昨年第
2四半期(4~6月)から、ホーチ
ミン市では 2009 年から市場の厳し
い冷え込みが続いていることについ
て、「冷え込みがこれほど長引くのを
見れば、(下降してすぐに上がって行
く)放物線状の底ではないようだ。
しかし、不動産取引が増える兆しも
見られ、現在が底であることは確か
だ」と述べ、これ以上厳しい冷え込
みは続かないとの見方を示した。

狭い住宅も必要

 ズン建設相は、一部の企業が1戸
当たり 25 平方メートルの狭い集合
住宅を提案していることについて、
「2005 年の住宅法では、企業が開発
する住宅は 45 平方メートル以上、公
共住宅は 30~60 平方メートルと規
定しているが、世帯状況の変化を十
分考慮していたとはいえない」と指
摘した。
 ズン氏によれば、全国の1世帯当
たり平均構成員は、1999 年の 4.5 人
から 09 年には 3.7 人へと減り、現在
では都市部の約 690 万世帯のうち、
構成員が4人以上の世帯は約 52%、
3人以下が約 48%となっている。
 1~3人の生活に適した広さの住
宅を建設するために規定の改定が必
要な時期に来ているとの考えだ。

直接投資が投資受入国の開発に及ぼす効果

2012-06-09 09:21:04 | Book
開発金融研究所(2002)「直接投資が投資受入国の開発に及ぼす効果」

タイトルずばりのことが知りたくて、このペーパーを見つけた。
ベトナムにおける日系企業は、何を隠そう海外直接投資(FDI)で、
その従業員から見るベトナム経済はFDI、もしくはODAだらけ。
あまりに「他人任せ」に見えて、「この国はこれでいいんだろうか」と思う場面もある。
他人任せに見える、というのは、ベトナム国内で起きている投資の結果に対して
ジャッジしたり、責任を持ったりしないということ。
ODAで出来た道路が、大幅に工事遅延した上に表面はガタガタでも、
彼らの税金は入っていないわけだからため息をついて終わり、と言うわけ。
あきらかにFDI後押し機関による、かつ10年前の論文ではありますが、
教科書的に勉強になりました。

さて、FDIはどんな効果があるのでしょうか。
FDIの定義を「FDI=資本ストック、ノウハウ、技術の組み合わせ」と一般的に考えるよう

だ。
つまり、金の動きだけではないことが共通認識。

そのメリットは
・資本需要に合った資金が安定的に供給される
・技術、経営ノウハウなどの移転
・競争の深化
・人的資本の発展
・コーポレートガバナンスの促進
・法制度の整備

デメリットは
・国内投資をクラウド・アウト(市場から地場企業を排除しかねないということ)
・輸出増、利益の本国送還により国際収支悪化
・海外からの投資企業に対する税制優遇などに伴う税収低下
・などなど

FDIをめぐる大きな論点は、FDはと投資受入国の経済成長を促進するのか、ということ。
研究では、大方FDIと経済成長は相関があるという結果になっているが、
FDIが経済を成長させるのか、経済成長があるからFDIが増えるのか、という
根本的なところが不明だという。

では、技術移転は確認することができるのか。
技術移転には
1)垂直的連関(材料供給先として取引する地場企業、商品の卸先として取引する地場

企業への技術伝播
2)水平的連関(市場競争を通じて、競合する同業地場企業が模倣などで技術伝播)
3)労働移動に伴うもの(投資する多国籍企業で訓練された人材が起業したり転職したりする)
4)投資先での研究開発に伴うもの

に分けられる。

この点を、ベトナムの外資企業にいる身で考えてみると
1)すそ野産業が育っていないことが大きな悩みのベトナム。実際、材料から部品から
日本、もしくはタイやインドネシアから輸入することが多いので、地場産業とのかかわりは
それほど大きくない。技術伝播は限定的では。

2)ベトナム北部は輸出専門企業(これにより消費税は0%)が多く、
ベトナムの市場で事実上競合していない企業が多い。
たとえばバイクなどは完全にベトナム市場向けだが、
地場企業が後発すぎて競争になっていない。自動車も、日系と韓国、中国系の競争が
激化する一方、地場自動車メーカーは消えそうな存在感。
まさに、国内投資を「クラウドアウト」している状態に見える。

3)これが一番現実的にありうるかも、、と思う。それは私が製造業ではなく、
サービス業に従事しているからかもしれない。
ただ、レポートにも書いてあったように、外資系でばりばりやっている人はかなりの給料を
もらっているから、地場企業で給料が下がるとしたら移動するインセンティブはない。
地場企業から外資系に転職してくる人はいるが、外資系から地場産業、、というのは
あまりなさそうな気がする。

ベトナムの目線で見ると、「産業を育てる」という段階は決定的に必要だと思う。
今「WTO」や「TPP」などで貿易条件の平準化、基本的な開放姿勢がスタンダードになっているが、
新興国で、産業が育っていない国々にはかなり酷な話だ。
外資系の参入で、消費者としての要求水準はどんどん上がっていく中で、
生産者としてはその水準の商品を作れないまま。
これは過渡期なのか、構造はエスカレートして固定化されるのか、どっちなのだろう。


自動車ローンの案内

2012-06-05 22:11:33 | Private・雑感
利用しているベトナム地元銀行からメールが届いた。
自動車ローンの案内。

Dear valued Customers,

From June 1st to Sep 15th 2012, individual customers wishing to buy Truong Hai cars can apply for loans at any Vietcombank branch with interest rate of only 15.8% per year. Application criteria for are just:
- Age from 25 – 50
- Monthly income of at least VND 8,000,000

For more details, please contact with any Vietcombank branch or our 24/7 Call Center at 1900 54 54 13.

Thanks and regards,

月収VND 8,000,000とは、月収3万円ちょっと。
Truong Haiというベトナム資本の(町ではほとんど見かけない)車を、
年利15.8%のローンで買いませんか、という話。
ベトナム国内車だから、輸入完成車(100%関税により日本円で、日本の車の2倍以上する)ほど高くないにしろ、全部部品を自前では作れないはずだから、そんなに安いはずはない。
月々3万円払えるならまだしも・・・

政府が急に導入する交通規制などにより、自動車、バイクの新車市場は振るわない。
その一端の動きなのか・・・

4か月経過のある日。

2012-06-02 22:18:31 | Private・雑感
今週は、月曜日に北朝鮮レストランに行ったから(?)か
疲れが残ったまま毎日を過ごしてしまった。
あまり仕事が忙しくないと、疲れてしまう性分。

早速、クローゼット(いつも全開にしているのだけど)の中の一部の洋服に
カビが生えているのを発見。
服にカビが生えているのを初めて見た衝撃。
本日、ダウンジャケットは初の手洗い。その他の冬物&夏には着ないスーツはクリーニングへ。

昨晩は「ハノイで働く女子の会」。
いろんな人がいる。
一番のベテランは20年目のKさんだが、
「駐在員の人は、みんな『通行人A』よ」と前に言っていた。
通行人Aのくせに、上から目線。
なんだか、日本が先進国でベトナムが途上国だからか、日本人は「上から目線」という
気がする。新興国はみんなそんなもんなのかな。
ワールドカップでは日本を応援するというベトナムの、妙な居心地の良さゆえに
その視点に居座ってしまっているのかしら。
そんな状態を客観的に見よう(自分はそうならないようにしよう)と思っている今日この頃です。

今夜、急に雨。
明日は朝からライチ狩り。


森嶋通夫(1994)『思想としての近代経済学』

2012-06-02 17:12:53 | Book

経済学は、もしくは経済学の思想は非常に現実に役に立つものだ。
本書ではリカードからケインズに至るまでの7、8人の経済学者を
取り上げ、彼らの人生や思想、主な貢献と彼ら同士のつながりなどを
紹介する。ケインズは何がすごかったのか、それは彼に至るまでの
経済学者が極端な「セイの法則」(供給が需要を作る)の仮定から抜け出せず、
ケインズはそれを正したところだと展開する。
「耐久財」市場ではセイの法則が仮定出来ない一方で、
世の中には耐久財の占める割合がどんどんと大きくなっていった中で、
これは決定的に重要なことだった。

といってもこういった理論の論点のみを書いているわけではなく、
彼らが見た世界、これに引きずられる形で読者も「社会」を俯瞰的に
分析する癖を求められていき、なるほどと腑に落ちてしまう経験が
なんとも心地よい。著者の視点が洗練されていて、日本語がうまいのも
ひとつの理由だと思う。たとえば、ウェーバーの官僚制について書いている
ところでは、機械化された経済の中では企業労働者の能力(限界生産性)を
査定することは難しく、年次に応じた評価、これに応じた地位の上昇を
約束することで企業も官僚化する。
日本の企業が特別官僚的だという考察での彼の意見は、説得力がある。

「財閥追放は日本経済の『民主化』という名の弱体化のために行われたが、
結果は意図と逆のものになった。財閥家族は株の所有を制限され、
自分の会社の役員になることも禁じられた。追放された株は、同じ
財閥系だったほかの会社が所有し、空位になった役員席は「官僚職員」の
昇進によって埋められて、すべての旧財閥会社の社長、副社長の席は
「官僚職員」の占めるところとなった。その上、法人大株主を代表するのもこのような
官僚職員上がりの社長たちであったから、彼らは会社の経営陣だけでなく、
株主会議をも支配して配当率は低く抑えられた」

このほか、はっと気づかされた部分を備忘録的に書いておきたい。
数学者ノイマンは、もちろん本書で主人公として登場したわけではないが、
彼の言葉の引用がある。
「社会科学の場合、実験は不可能であるから、合理的思考と実験の二つが社会科学の
柱であることはない。ノイマンは経験の源泉を、実験でなく現実の観察の求める。
現実の観察が不十分だと、数学的思弁だけが近親繁殖して、結局その学問は
退化してしまうとノイマンは考える。ウェーバーの社会科学方法論は、このノイマンの
精神に合致するような形で展開されている」・・・

例えば日々ニュースをチェックすることも、世の中の「観察」だ。
当たり前のことだが、自分にはタイムリーな指摘だった。

ハイルブローナーの『世俗の思想家たち』で読んだ誰もが思うのと同じで、
この本を読んでもまず、これら経済学者が自分の立ち位置、経済的環境、
家族の影響などから多分に影響を受けていることに興味を覚えるだろう。
著者が意識的に、「彼にはマルクスやウェーバーのように、2、3年失業する余裕はなかったから」
などと紹介するからなおさらだ。
また、学者という生き物が、「生涯で成した仕事を系統だてて整理したがるもの」だという
視点も面白い。
ウェーバーは政治家になりたかったが、紆余曲折を経て学者の仕事を残し、
情熱のままに研究したテーマを系統だてるのに苦労した。
ワルラスは研究当初から「規範的」研究と、「実証的」研究のどちらも手掛けるつもりで、
まずは実証的研究で動学的均衡の問題で実績を残したが、
彼の信念でもあった「土地の国有化」を説得するべく理論は後世に残せなかった。

他のだれもが明らかにしていないことを明らかにしなければいけない学術世界にいると、
「個性的」になりやすいのかもしれない。
たとえ人生の最後に系統化するのが難しいとしても、まずは「仕事」を残すことが
大事だ、と森嶋氏に言われている気がした。

ちなみに、今回のこの本で最も面白かったのは社会主義の記述だ。
というのも、現在社会主義の国にいるから、今まで以上に社会主義の国の分析、
どういう帰結がありうるのかという意見に敏感だった。
これについてはまた別に書くことにしたい。