この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#232 北原白秋著 「白秋抒情詩抄」(泣きにしは)

2006年01月15日 | 日本文学
私は詩を理解する能力はない。しかし詩を眺めているのは好きである。実際にその詩で作者が何を言おうとしているのか、どのような感情を表わそうとしているのか、どのような背景があるのか、私はとんでもない見当違いをしながら詩を眺めているのかもしれない。しかし、自分の中にある何ものかが、この詩にたいして反応する。

北原白秋のきらめくようなどの詩も、それをただ眺めているだけで楽しい。私が理解できていなくてもいいのだ。

「泣きにしは」(北原白秋)

美はしき、そは兎(と)まれ、人妻よ。
ほのかにも唇ふれて泣きにしは
君ならじ、我ならじ、その一夜。
青みゆく蝋の火と月光と、
饐えてゆく無花果と、日のかげと、
瞬間(たまゆら)にほのぼのとくちつけて
消えにしを、落ちにしを、その一夜。
さるになど光ある御空より
君はまた香をもとめ泣き給う。
あな、あはれ、その一夜、泣きにしは
君ならじそのかみの我が少女

この詩もそのような詩である。



画像:北原白秋著「白秋抒情詩抄」(吉田一穂編纂)岩波文庫 昭和8年第1刷、
昭和39年11月第31刷

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