この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#472フランス映画「天井桟敷の人々」10

2008年05月05日 | 映画、ドラマ
#461フランス映画「天井桟敷の人々」9より続く)
先回のバチストに恋するナタリーとパントマイム役者のバチストの会話である。
ナタリーが「まるで回転木馬みたい。
     私はあなたを愛し、あなたはガランスを愛し、
     彼女はあの男を。」
これに対しバチストは次のように反論した。
バチスト「彼女がフレデリックを?」
ナタリー「だって二人は一緒に暮らしているわ。」
バチスト「だから何だ。一緒にいれば必ず愛してるのか。
     あの二人の生活はただのまねごとだ。」
では、一緒に暮らしているガランスとフレデリックとの間はどうなっているのか。
この映画はすぐ同じ場所、すなわちこの楽屋で私達観客に見せている。

パントマイムの演技が終わって楽屋に帰って来るガランスにフレデリックがおどけた様子で声をかける。
(今では、女芸人ガランスもシェークスピア劇の俳優を夢見ているフレデリックもバチストと同じパントマイム劇団で働いている。)

フレデリック「ガランス かわいい小鳥 どこに隠れていたんだい?
       昼には花のよう 夜には光のよう
       星空のイゾルデ 優しきイフィゲネスよ。」
ガランス  「いい加減にして。」
フレデリック「つれない人だ、せっかくの愛の声を」
ガランス  「愛の声ですって?」
フレデリック「何と考える?スフインクス」
ガランス  「たわいのないことばかり。
       たとえばこの広い世界には静かに愛し合う二人や
       何気ない言葉で愛を語る恋人たちがいる。
       ステキだわ。」
フレデリック「俺といると不幸か?」
ガランス  「あなただってそうでしょう?」
フレデリック「俺がか?」
ガランス  「だから冗談を言い続ける。私が幸せだと思うなら無理に笑わせない       はずよ。   
       私たちは幸せでも不幸でもない。愛し合っていないのだもの。
       いずれにしても自慢できることじゃないわ。」 
フレデリック「淡き月光が漆黒の髪を照らす。それなら君が質問責めにされ、
       過去を探られる方がいいか!どこに行くにも尾行され、
       壁に君の名前を書かれたいのか?
       誰の夢を見ているのか。起こして聞きたい。
       いや、その必要はない。」
ガランス  「なぜ?」
フレデリック「寝言を聞けばわかる。」
ガランス  「聞いたの?」
フレデリック「ああ聞いたよ。昨夜もはっきり寝言を聞いた。」
ガランス  「何と?」
フレデリック「つまらんことさ。バチストと。」
ガランス  「彼の名を?」
フレデリック「そうだ。彼を呼んだぞ。」
ガランス  「ほかには?」
フレデリック「何も。ただ一言バチストと。」
ガランス  「それだけ?」
フレデリック「そうだよ。でも俺を絶望させるには十分な仕打ちだ。
       オセロはもっとささいなことで妻を殺した。
       自分の手でデスディモーナを葬ったんだぞ。
       疑惑はとるに足らんこと。小さなハンカチだ。
       麻(バチスト)のハンカチで命とり。バチストのさ。」

なるほど、一緒に暮らしているガランスとフレデリックの間はこういう関係なのである。             

つづいてこの楽屋にパントマイムの劇に出ているガランスの美貌に魅されたモントレー伯爵の届けた大きな花と本人伯爵が現れ、見事な?求愛の台詞が述べられることになる。これに対するガランスの受け答えが素晴らしい。 以下次回である。 (つづく)



画像:映画「天井桟敷の人々」フレデリックがガランスに語りガランスが冷たく答える。







 


 



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