日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

小春日和の瀬戸内へ - せくら

2017-11-04 20:55:32 | 居酒屋
一年ぶりの松山で、まずどの店に行くかと考えたとき、自分の答えは明確でした。今回も「せくら」の暖簾をくぐります。

馬鹿の一つ覚えに走ったのは、酒よりも肴を主役にしたこの店の品書きによるところが大です。肴が主役ということは、万全の腹具合で臨み、たらふく飲み食いすることに重きを置くのが吉ということに他ならず、その点では高知の「くもん屋」に通ずるともいえます。しかも、このところ満席で振られ続けている「くもん屋」と違い、時間を見計らえば比較的難なく入れるのも重宝するところです。あえて急がずこの時間まで待ったのも、そろそろここが空いてくるだろうと期待してのことでした。
その見立ては的中し、掘り炬燵のテーブル席こそ埋まっているものの、カウンターは先客二名と落ち着いています。ただし、カウンターの中程が片付いてから通されました。あと10分、20分でも早ければ、状況は違っていたのかもしれません。その一方で、これ以上遅ければめぼしい品が切れてしまう可能性もあることを考えると、早からず遅からず絶妙な間合いだったということになります。

何度か訪ねるうちに気付いてきたのは、一品の分量が多く、わずかな品数ですっかり満腹になるということです。より具体的にいうと、見た目の物量感以上に腹が満たされるという点に特徴があります。最初に頼んだ鰹のたたきも、五切れという数以上の食べ応えでしたが、次に選んだ栗の唐揚げはそれ以上でした。大胆にたとえるならば、「シャンゴ」のスパゲティのようなものとでも申しましょうか。一見すると難なくいただけそうでありながら、なかなか減っていかないのです。それを見透かしたかのように、半分ほど箸をつけたところで、一人には多かろうという店主の言葉が。一人客であろうとも手加減することなく、何もかも気前よく盛り付けるのが当店流といえそうで、その点では長岡の「魚仙」を彷彿させるものがあります。今回も突き出しと三品でほぼ満腹となりました。

店主の記憶力は大したもので、これが四回目かとたずねられました。そういわれてよくよく数えてみると五回目でしたが、当たらずとも遠からずではあります。
最初に訪ねたのは六年前です。その間正月休みに重なって機会を逃す年が続くなど、かなりの無沙汰をした時期があったにもかかわらず、六年で五回ということはそこそこの結果ともいえます。数を追い求めるつもりはないものの、このカウンターで店主と女将相手に一献傾けるのは、自分にとって何物にも代え難い時間です。来年も必ず戻ってきたいと思っています。

せくら
松山市三番町1-13-8
089-934-5671
1730PM-2330PM(LO)
日祝日定休

小富士二合・雪雀
突き出し(黒枝豆)
深浦直送かつお塩たたき
中山の栗から揚げ
牛アキレス煮
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小春日和の瀬戸内へ - 松山ニューグランドホテル

2017-11-04 20:05:22 | 四国
市内電車に乗り継いで大街道にやってきました。東の空には満月が昇っています。気温は12度、当然半袖では肌寒く、乗船後は雨合羽を羽織ったままでした。長めの風呂に入ってようやく生き返ったところです。
広島と違って松山では定宿が確立しています。宿泊事情が恒常的に逼迫している大都市の場合、気に入った宿があったとしても、毎回そこに泊まるのは至難の業であり、仙台、福岡と並ぶ好例が広島です。これに対し、多少でも小さい街では規模の違い以上に余裕が出てくるものです。前回の宿泊では和室に泊まれることが決め手となって宗旨替えをしたものの、今回は定宿に回帰し、松山ニューグランドホテルの世話になります。
中心街では最安値の部類に属する料金に加え、価格以上に部屋も広く、温泉の大浴場まであるのが当館の特徴です。洋上で冷たい風に吹かれ続け、身体の芯まで冷えたため、大浴場が殊更にありがたく感じられました。通例を踏襲するなら明日は道後温泉を訪ねるところ、四国には来る正月休みに再訪する構想を描いており、実現すれば再来月には早くも次の機会が訪れます。今回はこちらで済ませておき、明日の活動時間を捻出するのも一案でしょう。
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小春日和の瀬戸内へ - 高浜駅

2017-11-04 18:08:06 | 四国
2時間40分の航海を終えて松山観光港に着岸。バスに乗り継ぎ高浜駅に移動してきました。ここから電車で松山市街へ向かいます。
同じ航路の同じ便、なおかつ季節にも天候にも大差がないだけに、単なる焼き直しにならないかと思いきや、今回もめくるめく場面の連続でした。中でも白眉だったのが音戸瀬戸の通過です。呉を出港してから左に大きく旋回すると、瀬戸に二本架かったアーチ橋が現れます。その直前で右旋回し、速度を落としつつ海峡部に入り、川のように狭い瀬戸を抜けて、少し進んだところにあるブイを中心にして左に90度旋回。しばらく航行してから右へ旋回すると、斎灘が広がってくるという展開です。右舷から夕日が沈むのを見届け、その後は茜色の空が次第に暮れていくのを眺めながらの航海でした。呉までの前座を含め、起承転結のある場面の移り変わりが印象に残っています。
それにしても、今日の寒さは予想外でした。経験上、11月上旬の西日本ならまだ長袖は必要なく、雨合羽を一枚持って出れば十分だろうと高を括っていたのです。しかし時間が経つにつれて風は次第に強く、冷たくなっていき、身体の芯まで冷え切ってしまいました。温泉が肌身にしみる夜になりそうです。
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小春日和の瀬戸内へ - 寒風

2017-11-04 15:25:20 | 中国
電車に揺られて宇品へ移動し、松山行のフェリーに乗り込みました。去年に続いての乗船となることもあり、趣向を変えて一本早い便を狙ったものの、惜しいところで逃してしまい、全く同じ三時過ぎの便に回るという結果です。しかし、この便でもほぼ全区間を明るいうちに航行するのは分かっています。瀬戸内の夕景を再び眺めるのも悪くはないでしょう。
中国、四国を代表する両都市を結ぶ航路ながらも、船体は小豆島航路などと比べても五十歩百歩のささやかさで、手押しのタラップから乗り降りする光景が長閑です。昼過ぎのにわか雨で空気が変わったか、午後から冷たい風が吹いてきたため、雨合羽を羽織ってデッキに上がりました。寒風に吹かれながらの航海になりそうです。
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小春日和の瀬戸内へ - 酒商山田

2017-11-04 12:38:38 | 酒屋
近年広島を再訪すると嘆かわしく思うのは、雑然としていた駅前が再開発され、画一的な眺めになってしまったことです。しかし悪いことばかりではありません。再開発の象徴ともいうべき高層ビルの1階に、地元の高名な酒販店の支店ができたのです。
評判に違わず、全国の名だたる地酒が一堂に会した品揃えは壮観です。かつては有り難がっていたこの手の酒販店にも、近年は食傷気味になっているところではありますが、この店に関していえば、売れ筋の酒だけを置く店とは一味違います。特筆すべきは県産の酒にも相当力を注いでいることで、有名どころに偏ることなく幅広い蔵を取り扱い、さらには当店独自の別注品を何種も揃えるなど、西日本随一の酒どころにふさわしい充実ぶりです。毎年ごく少量しか蔵出しされない希少品が潤沢に置かれているところにも、蔵元から寄せられた絶大なる信頼が窺われます。広島で酒を買うなら、ここ以上の店はおそらくないでしょう。今後は「源蔵本店」と並ぶ必須の立ち寄り場所となっていくかもしれません。

★酒商山田 エディオン蔦屋家電店
広島市南区松原町3-1-1
082-207-3838
1000AM-2100PM
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小春日和の瀬戸内へ - 源蔵本店

2017-11-04 11:23:51 | 居酒屋
昼酒は好まないとあれほど申しておきながら、このところ昼から一杯やる場面が続いています。先週末の「中央酒場」、昨日の「自由軒」に続き、本日は「源蔵本店」の暖簾をくぐりました。
この店を訪ねるというと、玄関を入って左手にある六人掛けのテーブル席につくのが常のところ、今日はあいにく先客が。代わって案内されたのは、左奥の冷蔵庫の前にある四人掛けのテーブルでした。しかしこちらも悪くはありません。正面に見えるのが厨房から玄関の暖簾に変わるだけで、店内の片隅から客席を見渡せるところは同じです。しかも立ち上がって振り向けば刺身と小鉢が並ぶ冷蔵庫があります。六人掛けを一人で使うのは少々気が引ける一方、この席なら気兼ねなく呑めるのも好材料です。
刺身、揚物、小鉢、一品から鍋物まで、様々な肴が揃う当店ですが、看板はあくまで大衆食堂であり、無駄な長居は野暮というものです。まず冷蔵庫から刺身を、次いで小鉢、一品、揚物から二品ほど選び、徳利を二本空けたところで切り上げるという流れが定着してきました。その揚物を選ぶにあたり、今回是非試してみたかったものがあります。昼時に訪ねた前回、周りのお客が頼んでいた定食の唐揚げが非常にうまそうだったのです。こうして注文した唐揚げは、胡麻油の風味を効かせ、皮の部分をパリパリに揚げるなどの一工夫が凝らされており、見た目、味、食感ともに完成された逸品でした。

源蔵本店
広島市南区猿猴橋町5-18
082-263-3855
平日 930AM-2100PM(LO)
日祝日 930AM-2030PM(LO)
月曜定休

上撰二本
平目さしみ
あなごつけやき
とりから
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小春日和の瀬戸内へ - 広島市民球場

2017-11-04 10:26:37 | 中国
カープ連覇の余韻を探し求めて、広島市民球場にやってきました。昨年訪ねたときは、折しも優勝報告会の前日で、特等席を求める観客が早々と入場待ちの列を作っているところでした。市内のどこへ行ってもカープ一色という光景を目の当たりにして、広島における球団の存在の大きさは、後発の地域球団とは全くの別格であることを実感させられたものです。しかし、プレーオフで敗れた今季は明らかな温度差が感じられます。
リーグ戦の首位が優勝、プレーオフ以降は別物という建前を採る現行制度ですが、同じリーグ制覇でありながら、かくも露わな温度差があるのは、選手権を争ってこそ真の覇者だと大多数の人々が考えているからでしょう。このことからも、リーグ戦とそれ以降は別物などという理屈が、プレーオフという客寄せの仕組みを維持するための詭弁に過ぎないのは明らかです。かつてのパ・リーグで採られた前後期制ならともかく、リーグ制覇の価値を無にするような現行制度は、王者に対する冒涜と個人的には思います。自分がプロ野球への興味を失い、専ら高校野球を追いかけるようになった契機の一つが、プレーオフの導入により優勝の価値が貶められてしまったことです。この仕組みが続けられる限り、自分がプロ野球に回帰することはおそらくないでしょう。

苦言を呈してしまいましたが、収穫がなかったわけではありません。スタンドこそ立ち入れないもののコンコースが開放されており、左右非対称の形をした独特な造りを全方位から見学できたことです。しかも、グラウンドではリトルシニアの試合が行われているところでした。
もう一つの収穫は、前回絶賛した一筆書きの年表に、昨年のリーグ制覇が書き加えられていたことです。去年の時点で新たに書き加える余地はなかったわけであり、縦の幅を縮小し、新たに描いた部分を含めて貼り直したということのようです。今季の連覇もいずれ付け足されるのでしょうか。来年も定点観測してみるつもりです。
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小春日和の瀬戸内へ - ニュージャパンEX

2017-11-04 08:51:34 | 中国
かねがね申している通り、何回訪ねても確立しないのが広島の定宿です。これは、秋の連休に訪ねることが多い関係上、市内の宿が総じて混むという事情によります。翌日が平日の祝日に重なり、格安で泊まることができた前回は、数少ない例外の一つでした。そのとき世話になったコートホテルは、自身にとってこれぞ決定版といえる理想的な宿でしたが、三連休の初日に同じ価格で泊まれるはずもありません。今回は割り切ってカプセルホテルにしました。いくつかの選択肢がある中から選んだのは「ニュージャパンEX」です。
直近で世話になった福岡のニューガイアインと長崎のドーミーインが、カプセルホテルの概念を変える快適さだったのに対し、こちらは薬研堀の歓楽街の只中にある、よくも悪くも典型的なカプセルホテルです。それは承知の上だったのでよいのですが、一つだけ明確な難点がありました。カプセル内が暑すぎてよく眠れなかったのです。昨秋仙台に泊まったとき、カプセル内に換気の機能がなく、やはり暑くて眠れないという経験をしましたが、こちらでは換気扇こそあるものの、その性能が貧弱すぎ、熱が籠もってしまうのです。カーテンを開けたままのカプセルが相当数あったことからしても、同様に難儀している宿泊客は多いのでしょう。カプセルホテルに泊まるとしても、次回は他を当たった方がよさそうです。ただし、アパホテルが万単位の料金をつける連休初日に、三千円を切る料金で泊まれたことには感謝しています。
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小春日和の瀬戸内へ - 二日目

2017-11-04 08:40:32 | 中国
おはようございます。昨夜はさらにお好み焼きをいただいて宿に戻りました。夜更かしがたたり、目覚めたときには八時でした。手早く一風呂浴びて出発し、京橋川のほとりから投稿しています。
昨日に引き続き、小春日和を通り越した汗ばむほどの陽気ですが、街路樹は次第に紅葉してきており、風が吹くと枯葉がはらはらと舞い降りてきます。今年の立冬は三日後です。
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