四国鉄道文化館で思った以上に時間を消費し、いつの間にやら最終入館の時刻が迫ってきました。最後に残った十河信二記念館を見学し、六時の閉館とともに切り上げたところです。
97年の生涯を振り返った年譜、総裁時代の業績に関する展示もよかったのですが、圧巻だったのは「十河国鉄総裁の八年間」なる展示です。国鉄の外郭団体が、退任を記念して総裁本人に贈ったという手製の写真帳を複写したもので、数十枚に及ぶ写真の中に、起工式、貫通式、開業式、出発式など、在任当時に出席したありとあらゆる式典の映像が納められていました。それを見て思ったのは、我が国の鉄道史上最も華やかなりし時代が、そのまま在任期間に重なっていたのだということです。
総裁の指揮により完成した夢の超特急は、斜陽化が噂されていた我が国の鉄道を復権させたばかりか、各国に高速鉄道が誕生する契機となり、その業績は末永く語り注がれていくことになります。しかし、後世の人々がそれを正しく受け継ぎ発展させているかといえば、残念ながらそのようには思いません。
新幹線が画期たり得たのは、既存の鉄道の延長線上では考えられない、全く新しいものを一から作り上げたことにあります。ただしその背景には、限界に達した輸送力を抜本的に増強するという目的があり、既存の鉄道網を捨て去ることを意味するものではありませんでした。ところが、東海道新幹線の成功により「おらが村にも新幹線」の思想が蔓延すると、それが政治的に利用され、輸送力の限界とは何の関係もなく新幹線が造られていきました。その結果、後になればなるほど歪みが顕著になってきたわけです。
新幹線と引き替えに、北信越の交通体系が分断されてしまったのは、その象徴というべき出来事でした。富山からは新潟、名古屋、大阪のいずれにも直通できなくなり、数年後には金沢、福井も同じ道をたどろうとしています。新幹線の整備を名目にして、我が国の鉄道網が無惨に分断されていく現状を、総裁は草葉の陰でどう思っているのかが気になりました。
やや引っかかる部分はありながらも、我が国の鉄道史上に燦然と輝く業績を、余すことなく記録した秀逸な展示ではありました。趣味人の生涯の記録といえば、何といっても横浜の原鉄道模型博物館ですが、一鉄道人の記録としてはここが国内随一ではないでしょうか。総花的な四国鉄道文化館はともかく、この記念館に関していえば、他のどこにもない唯一無二の展示があり、なおかつここに存在すべき必然性がありました。
展示物のみならず、天然木と漆喰を贅沢に使った建物も、四国鉄道文化館と同じく秀逸でした。それでいながら入館は無料、四国鉄道文化館に入っても300円、JAF割引を使えば240円になり、さらに駐車も無料とは太っ腹です。ただ同然で半日楽しめる充実ぶりは、小樽の総合博物館に匹敵すると言い切りましょう。
97年の生涯を振り返った年譜、総裁時代の業績に関する展示もよかったのですが、圧巻だったのは「十河国鉄総裁の八年間」なる展示です。国鉄の外郭団体が、退任を記念して総裁本人に贈ったという手製の写真帳を複写したもので、数十枚に及ぶ写真の中に、起工式、貫通式、開業式、出発式など、在任当時に出席したありとあらゆる式典の映像が納められていました。それを見て思ったのは、我が国の鉄道史上最も華やかなりし時代が、そのまま在任期間に重なっていたのだということです。
総裁の指揮により完成した夢の超特急は、斜陽化が噂されていた我が国の鉄道を復権させたばかりか、各国に高速鉄道が誕生する契機となり、その業績は末永く語り注がれていくことになります。しかし、後世の人々がそれを正しく受け継ぎ発展させているかといえば、残念ながらそのようには思いません。
新幹線が画期たり得たのは、既存の鉄道の延長線上では考えられない、全く新しいものを一から作り上げたことにあります。ただしその背景には、限界に達した輸送力を抜本的に増強するという目的があり、既存の鉄道網を捨て去ることを意味するものではありませんでした。ところが、東海道新幹線の成功により「おらが村にも新幹線」の思想が蔓延すると、それが政治的に利用され、輸送力の限界とは何の関係もなく新幹線が造られていきました。その結果、後になればなるほど歪みが顕著になってきたわけです。
新幹線と引き替えに、北信越の交通体系が分断されてしまったのは、その象徴というべき出来事でした。富山からは新潟、名古屋、大阪のいずれにも直通できなくなり、数年後には金沢、福井も同じ道をたどろうとしています。新幹線の整備を名目にして、我が国の鉄道網が無惨に分断されていく現状を、総裁は草葉の陰でどう思っているのかが気になりました。
やや引っかかる部分はありながらも、我が国の鉄道史上に燦然と輝く業績を、余すことなく記録した秀逸な展示ではありました。趣味人の生涯の記録といえば、何といっても横浜の原鉄道模型博物館ですが、一鉄道人の記録としてはここが国内随一ではないでしょうか。総花的な四国鉄道文化館はともかく、この記念館に関していえば、他のどこにもない唯一無二の展示があり、なおかつここに存在すべき必然性がありました。
展示物のみならず、天然木と漆喰を贅沢に使った建物も、四国鉄道文化館と同じく秀逸でした。それでいながら入館は無料、四国鉄道文化館に入っても300円、JAF割引を使えば240円になり、さらに駐車も無料とは太っ腹です。ただ同然で半日楽しめる充実ぶりは、小樽の総合博物館に匹敵すると言い切りましょう。