森本光☆ラグビーが好きやねん

関西エリアで活動する森本光のブログ

やっさんの言葉 あの夏がよみがえる

2005-11-09 00:21:51 | ラグビー

母校である大阪市立城東中学校が創立50周年を迎え、先日式典が開かれた。記念誌では卒業生を代表してラグビー界のスーパースター・神戸製鋼ラグビー部の大畑大介選手が後輩へメッセージを贈った。大畑選手の時代は強豪の啓光学園中学と互角の勝負を繰り広げるなど、城東中学ラグビー部の2度目の黄金期だった。一方、3年先輩にあたる僕の頃は、大会で1つ勝つのがやっとというチーム。母校の歩みを振り返る記念誌を読んでいると19年前の夏の思い出が甦ってきた。

「お前らちゃんとラグビーやってるやんけ」

日頃は強面のラグビー部顧問、“やっさん”こと安田先生がサングラスの奥の目尻を下げながら言ったフレーズに、不良と呼ばれている先輩たちが涙を流した。僕は泣きじゃくる先輩の姿に驚きながら、やんちゃな奴らが集まりテキトーにボールで遊んでいた頃とは変わったことを感じた。

大阪市立城東中学ラグビー部。かつて大阪府の大会で優勝を争うほどの強豪チームだったが、僕が入学した頃はヤンキーの暇つぶしのためのクラブだった。練習に真剣さは全くなく、大会ではいつも1回戦で負けた。ドラマ「スクールウォーズ」の影響で、同期は50人近く入部したが、「先輩がめちゃくちゃ恐いから」などの理由で数ヶ月で40人が部活を辞めた。僕は入れ替わりに卒業した兄のおかげで、森本ジュニアと呼ばれ恐い先輩たちにもかわいがってもらい機嫌よく部活を続けた。練習をしんどいと思うことはなくチームの空気に流されて何となく放課後をグラウンドで過ごした。

そんなチームが変わりはじめたのは2年生の夏だった。ユニフォームを新調したことで3年生の先輩たちが急にやる気になった。それまでの白一色からグレーと黒の段柄のユニフォームに変わり、先輩たちは「強そうに見える」とか「これで弱かったら恥ずかしいで」と新しい試合ジャージの感想を言った。このユニフォームを着てたくさん試合がしたいという雰囲気ができてきた。レギュラー争いも過熱し、誰も練習を休まなくなった。先輩たちの試合に出たいという気持ちの方が強く、僕は補欠に入るのが精一杯でレギュラーはとれなかった。元気のありあまっているメンバーが本気になると日増しにプレーが上達していった。そして炎天下のもと約2ヵ月間、誰も愚痴ひとつこぼさずハードな練習をこなし大阪市の大会に臨んだ。

対戦相手は大阪市の選抜チームに入るメンバーが顔を揃える強豪。前年までなら勝つことはおろか、トライをとることも難しいような相手だ。ところが試合が始まるとほぼ互角の展開。バックスにボールがうまくつながる。サインプレーも練習通りに成功する。タックルもまずまずだ。惚れ惚れするような先輩たちの活躍。「勝つんちゃうか。勝てるよな」 試合を見守った僕ら2年生は先輩たちのプレーに手応えを感じた。前後半の攻防で100%の力を発揮し、試合終了、ノーサイドのホイッスル。1回戦負けが常だったあの弱いチームが接戦ながらも試合に勝つことができた。

「お前らラグビーやってるやんけ」
今思うと少しシャイだった顧問のやっさんが、乱暴な表現で威厳を保ちながらかけてくれたこの言葉。忘れられない。サングラスの奥にはやさしい目を持っていることに初めて気付いた。やっさんは、安田先生は教員を早期退職され、今、北海道でペンションのオーナーをされているそうだ。中学卒業から17年。あの頃のラグビー部のメンバーと酒を持って北海道に出かけてみたくなった。


悩める新人記者へ 心に光りを

2005-11-08 03:17:33 | ちょっと聞いてくれる

放火未遂容疑で記者が逮捕され、マスコミ各社はうれしそうにNHK叩きをしている。

さて、今回の一件は、個人の問題か組織の問題かが1つのテーマに挙げられている。NHKをかばうつもりはないが、そりゃ個人の問題だろう。警察担当の記者なら誰もが同じ壁にぶちあたる。新人として右も左もわからない中、事件や事故、裁判を通して、原稿の書き方や取材のノウハウを学べるのが警察担当だ。かつて、僕もテレビ局に勤めていたときにこの“サツ担当”だった。

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【NHK ウィークリーステラ  全国アナウンサー/キャスター名鑑
                         平成9年6月20日号より】

僕はアナウンサー試験をパスして地方のテレビ局に入社した。アナウンサーでも、自分で取材して原稿を書く。カメラもまわし、編集をして、テロップの入力までこなし、そして自分で読むというのがテレビ単営のローカル局だ。警察担当記者としてスクープ合戦の渦中に身を置いていた頃は、休みの日でも事件が起きればすぐに呼び出された。ゆったりと体を休める時間は全くなかった。事件捜査の進展を聞き出すために、警察官の家の前で深夜の帰宅を待つ。新しい情報を得ることなんて簡単にはできないが、この“夜回り”は警察担当の誰もが通る道。深夜1時、2時まで働いて、短い睡眠を取るとまた会社からの電話で起こされる。他社がスクープしたのだ。「すぐにウラ(裏付け)とってこい!」

よその新聞やテレビが何を報道しようが、こっちの知ったこっちゃない。追いこまれた状況で何かスクープをと、憶測で記事を書く記者も当然いる。しかし、「他社に抜かれた」と上司から責められるのである。学生時代はある程度一生懸命やれば何かしらの結果がついてきたが、社会に出ればそううまくはいかないことを思い知らされる。僕もわずかに持っていた自信とかプライドはすべて粉々になった。エリート意識のかけらもない僕でもそうなのだから、東大をはじめとする有名大学を卒業した新人記者にとって、思い通りにいかない歯がゆさや上司からの叱責がどれだけストレスになるかは簡単に想像できる。

今、振り返ってみても警察担当だった頃は、つらかった思い出の方が多い。そんな日々を送る中で、事件や事故の取材では一度も褒められたことはなかったが、雪山に登りながらのリポートなど、自然を舞台にした特集を手がけたときは高い評価をもらった。「これなんだ!」 自分もやっていて楽しいし、やっと褒めてもらえた。毎日が事件、事故の取材だけじゃない。自分が楽しめる内容を見つけられたことで目の前が明るくなった。重大な罪を犯したNHKの記者。暗くなってしまった心へのあかりの灯し方を彼は間違ってしまった。


両想いのロケは難しい

2005-11-06 14:31:49 | 仕事 ロケ

番組のスタッフたちは不満を持っているらしい。彼らの言葉を借りれば、最近の僕は“ラクなロケが多い”というのだ。言われてみれば、たしかにここ1ヶ月以上、昼間にスタートして2、3時間で終了する内容が目立つ。以前のように早朝4時とか5時に起きて、丸1日をかけるようなロケは最近少ない。
051104
【大極殿正殿の復原工事リポート '05.11.04】

「もっと汗をかいてもらわないと」
「もっと体を張ってもらわないと」
「もっと命懸けのことをやってもらわないと」
これがスタッフたちの希望だ。僕が危険な目にあったりしんどい思いをすれば彼らは満足するようだ。出演する側にとっては、おいしいものを食べて、温泉に入るのがいちばんの理想。双方の考えが出会うところは、道なき道を進み、毒蛇やクマに襲われそうになりながら幻の秘湯を見つけるようなロケになるのだろうか?悪くはないが、実現の可能性は低い。ニュース性がイマイチだからだ。バラエティーなら多少の演出もありで充分通用するが、僕のロケは、すべてが本物で小細工はいっさいしないことが信条。入浴シーンではいつもタオルを巻かせてもらえない。風呂に入るときはスッポンポンでなきゃ真実ではないのだ。このようにギリギリのところまでリアリティーを追及している制作サイドと僕の理想が合致するロケはいつ実現するのだろうか?

yoshinogawa0408
【もっとも危険だった激流リポート】
 ↓
追記:2005年11月8日 このときの様子はこちらに書いてます。


ラグビーってええなぁ

2005-11-04 00:40:37 | ラグビー

秋の深まりとともに胸に去来するのはラグビーの思い出。
6歳から25歳まで現役を続けたが、
中でも大学生活最後のリーグ戦のことが浮かんでくる。

副キャプテンでありながらケガで戦列から離脱し
チームに何一つ貢献できなかった。
最後の試合だけは痛み止めの注射を打って出場したが
ゲーム感覚が戻らないままノーサイド。
4年間で初めてリーグ最終戦で負けた。
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【足首を骨折 全治1ヶ月】

あのときのグラウンドの風景が今も心に焼き付いて離れない。
木の葉をそっと運ぶ風、傾く太陽、役目を終えたゴールポスト。
この風景が浮かぶとき、ほろ苦さのあとに
ラグビーを続けてよかったと心から思える瞬間もやってくる。
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【1996年11月 ラストゲームを終えて】


種まきは秋の夜長に

2005-11-02 02:57:59 | 何でもない日常

沢尻エリカ主演の「1リットルの涙」でボディブロー、
そして松嶋菜々子の「火垂るの墓」のラストでKO。
きっちり泣かせていただいた。

「何やってんだろ、オレは」というのがいちばん強く思ったこと。
「1リットルの涙」では余命幾許かの少女が懸命に病気と闘う姿。
「火垂るの墓」では誰もが食べる物さえないという状況の中、
必死に生きていこうとする人たちが描かれていた。
一方、痩せるためにきょうもジムで2時間過ごした自分。

あまり幸せという実感はないが、たぶんそうなんだろう。
何不自由なく暮らしてきて毎日たっぷりご飯を食べて
いっぱい無駄遣いをして。
もっと真剣に生きなければ。
一生懸命に何かを成し遂げて思いっきり泣きたい。
眠れない秋の夜長は、その何かに向けて種を蒔いていく。