この頃、毎晩のように泣いている。大好きなラグビーの試合のVTRを見ながら。と、ここまでならどうってことない話なのだが、そのVTRは先月に僕が実況した試合なのである。自分の実況を聞きながら泣くなんて本当にどうしようもない。
「最後は感動して解説できませんでした」
解説を担当してくださった方にこう言わしめるほどの好ゲーム。過去に姉の披露宴で司会をしながら号泣するという離れ業をやってのけるほどの泣き虫の僕は、当然実況しながら泣いた。ノーサイドの瞬間、グラウンドに膝をつき立ち上がれない選手の姿、お互いの健闘を称えあうフィフティーン。この光景を見て涙をこらえきれなくなった。必死で泣いていることを隠しながら実況したが、少しだけ声が上ずってしまった。その声の上ずり具合は、オンエアでは泣いていることがわからないレベルでギリギリセーフだった。
僕の実況スタイルはかなり熱いしゃべりだ。事前に両チームをたっぷりと取材し試合への思い入れを強くしてから実況に臨む。ラグビーの場合は取材のときに選手とボールを使ってパスをしながら話を聞くこともある。選手との距離を縮めることは必要な情報を仕入れるために不可欠なのだが、冷静さを求められる実況に気持ちが入り過ぎてしまうというマイナス面も持っている。しかし、準備をしっかりしてから実況したいので今の取材方法を変えるつもりはない。毎回、実況しながら涙をこらえるしかないのである。
毎晩VTRを見ているのは反省点をピックアップし次回の実況に活かすためなのだが、何度見ても試合終了の瞬間からの内容を冷静にチェックできない。家で見ていると簡単に涙が流れてしまって反省どころじゃなくなるからである。あと何回見ればノーサイドのところの実況をちゃんとチェックできるのだろうか?