森絵都 作
いせひでこ 絵
講談社
クラシックビアの曲にまつわる
お話が3つ。
その中のひとつ、
「彼女のアリア」
ぼくはその日、寝不足気味で球技大会をさぼった。そして、誰も近づかないようになっていた旧校舎に入っていくと、ピアノの音が
聴こえてきた。それもそれはゴルドベルグ変奏曲。バッハが不眠症患者のために作った曲なのだ。元音楽室に入るとそこに、藤谷という他のクラスの女子がピアノを弾いていた。
彼女がぼくに放ったの第一声は、「眠れないの?」だった。
彼女も不眠症だという。「これからもお互い頑張ろう。不眠症なんかに負けないようにがんばろううよ。」と意気投合(?)する。そして毎週木曜日、この旧校舎で不眠症の話や家族の話などをしながら時を過ごすようになっていった。
しかし、藤谷のよからぬ噂を聞いたぼくは・・。