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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2814 国民民主党が見つけたブルーオーシャン

2025年05月02日 | 国際・政治

 夏の参議院議員選挙を控え、4月中旬にNHKが支持政党に関する世論調査を行っています。報道によれば、各党の支持率は、「自民党」が29.7%、「立憲民主党」が5.8%、「日本維新の会」が2.4%、「公明党」が3.8%、「国民民主党」が7.9%、「共産党」が2.1%、「れいわ新選組」2.6%、(以下、「参政党」が1.0%、「日本保守党」が0.6%、「社民党」が0.4%、「みんなでつくる党」が0.1%、「特に支持している政党はない」が36.9%)となった由。

 これを年代別に見ると、70代以上では、自民党支持が30%台後半から50%近くを占め(相変わらずの)強さを見せ、他の政党は1桁にとどまっている一方で、30代以下の若い年代では自民党支持が16.4%に落ち込むのに対し、国民民主党が22.1%と自民党を大きく引き離し(ダントツの)「第一党」となっている状況が見て取れます。

 現役世代の「手取りを増やす」ことは確かに喫緊の課題でしょうが、所得税減税、消費税減税、ガソリン代値下げ、社会保険料軽減など、財源問題を無視した公約の数々が(年寄りの目からは)無責任にも見える国民民主党に、若い世代はなぜこれほど惹かれるのか。

 彼らの心に響く玉木雄一郎代表の言葉に関し、4月24日の情報サイト「Jbpress」が、『頑張ったサラリーマンが搾取される社会…現役世代で社会保障制度に怒り爆発、超高齢化の次は世代内格差で社会分断』と題する作家の橘玲氏へのインタビュー記事を掲載しているので、同氏の指摘(の一部)を小欄に残しておきたいと思います。

 厚労省の基準では年収800万円は「富裕層」に当たるが、例えば共働きで世帯年収が1000万円を超えていても、東京でマイホームを買い子ども2人を私立に通わせれば家計はカツカツのはず。にもかかわらず、この「貧乏な富裕層」が今、さらに多くの社会保険料を払わされようとしていると橘氏は話しています。

 年金、健康保険、介護保険を問わず、日本の社会保障制度は「頑張って働いた者が罰せられる仕組み」と言える。そしてその一方で、都内の一等地に時価何十億の不動産資産を抱えていても、年金収入しかない高齢者は「低所得者」に分類されているというのが氏の指摘するところ。

 日本には「リベラル」を掲げるメディアや団体がたくさんあって、「あらゆる差別と闘う」と宣言しているが、こうした不公平・不平等に対しては「世代間対立を煽るな」と恫喝し、黙らせてきたのが(現役世代から見た)日本の現実だということです。

 20代・30代が国民民主党をはじめとした新興政党に投票するのは、他党には希望を持てないから。そんな中、社会への一種の「破壊願望」をもつ者たちが現れても不思議はないと氏はしています。そして、そういう意味で、国民民主党代表の玉木雄一郎氏は「ネットのどぶ板」を続けるなかで、これまでどの政党も拾い上げられなかった「現役世代の怒り」というブルーオーシャンを発見したのだろうということです。

 それでは、この不公平・不平等な社会保障制度はどうやってできたのか。第2次大戦によって植民地主義・帝国主義が破綻すると、先進国を中心に「国家の役割は国民の幸福を最大化すること」に変化した。こうして欧州諸国で国民皆年金や国民皆保険が整備され、高度経済成長で豊かになった日本がそれに追随したと氏は話しています。

 日本で年金制度が始まった60年代は平均寿命も短く、60歳で引退して65歳で死亡することを前提に制度が設計された。そのうえ、当時の高齢者は戦争経験者で戦後の復興に貢献してきたこともあり、「現役世代からの仕送り」という理屈を誰もが受け入れたということです。

 ところが現在は平均寿命が伸び、社会保障制度を維持するためのコストは増える一方。就職氷河期で割を食っている世代からすれば、高度成長やバブルでいい思いをしたうえに、自分たちの負担で「悠々自適」をしているように見える団塊の世代などを支える義理はないと感じるのも当然だと氏は言います。

 そもそも、バブル崩壊の90年代に新卒の若者たちが正社員として採用されなかったのは、当時40代〜50代だった団塊の世代たちの雇用を守るためだったわけで、そんな彼らの割を「また」喰うのは願い下げだと思う気持ちもわかるということです。

 さて、現在、先進諸国はどこも高齢化で社会保障費が膨らみ、それとともに「(老後資金を含めた)社会保障は自己責任で」という風潮が強まっていると氏はしています。そうした中、いくら政府や社会に文句を言っても誰も助けてくれないとしたら、(これは「ネオリベ」とか「市場原理主義」とかいわれて嫌われているが)自分の身は自分で守るしかないというのが氏の認識です。

 そうした視点に立てば、20代からNISAなどで積極的に資産運用をしているいまの若者達は、20年後、あるいは30年後に、「自助努力」を怠って貧困に陥った同世代のことをどう思うのだろうかと、氏は記事の最後に話しています。

 今は現役世代と高齢者の世代間対立が顕在化しているが、将来的には同じ世代の中での格差が拡大し、対立が先鋭化してくることが予想される。コツコツと地道に資産運用をしてきた「アリ」が、将来になんの備えもしてこなかった「キリギリス」を果たして助けようと思うのか。そんな日本の未来を想像すると恐ろしくなると結ぶ橘氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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