シェムリアップはアンコールワットを代表とする遺跡群の観光で成り立つ街なんだなあと、この旅行に行ってシミジミ思ってしまいました。ホテルやトゥクトゥク、レストランやパブもそうですが、遺跡に通じる道々の清掃員から、遺跡修復に携わる方まで、多くの雇用を生み出しているわけですね。シェムリアップは村や町ではなくけっこうちゃんとした街で、24時間営業のコンビニライクなお店があり、そこには商品が豊富に並び、しっかりしたスーパーに行けばフランスの有名スパークリングミネラルウォーターであるバドワも売っています。大昔に作った遺跡が、一時破壊されたりしましたけども、修復された後に、こんな大きな街を維持する源泉になっているっていうのは、アンコールワットに祀られている仏教もしくはヒンズー教の神々がもたらす富、いわゆるご利益というような表現ももしかしたらできるかもしれません。
アンコール遺跡群に向かう道路は舗装されたそれなりの物でしたが、周囲を囲む大小様々な木々の奥にボロとしか表現できない小屋とそこに住まう人々が見えたりして、立派な道とのコントラストに「うーん」と唸ってしまったりしました。でもそういう方々は、道の端でトゥクトゥク用のガソリンやら観光客用の水やお菓子を売っていたりして、ここにもアンコール遺跡群のご利益が流れているのかもなあと感じつつ、商魂に代表される逞しさが素晴らしいなあと思ったりもしました。
屋台でお水の代金をふっかけてきた女性に対しても、その商魂の逞しさにお金を払ったのだと思えば、腹も立ちません。私も大阪に縁がありまして、値切り、ひいては値切られ前提の値段設定に対する抵抗が少なく、もちろんあまりに酷いものに対してはドカドカ値切りますけども、こういうのがそれなりに楽しく思えるのですよ。
アンコールワットのご利益流れる街シェムリアップですが、もちろん東南アジア的ゴチャゴチャがありまして、市中にはゴミが散乱していますし、埃っぽいですし、生水や生野菜は怖いです。現地の通貨は旅行者にとってほぼ意味を成さず、ほぼ米ドルでしか買い物ができません。街を歩くと常に「トゥクトゥク乗らないか」って声がかかって、人によってはいちいち断るのが大変だと思われるかもしれません。街の立派なショッピングセンターに行ってエスカレーターが急に止まって、よく見たら周囲のエスカレーターは全部止まってる等もありました。東南アジアに何回も行っている私ですが、概ね大都市(バンコク、シンガポール、クアラルンプール)でしたので、ここまでゴチャゴチャなやつは初めての体験でした。
私は大丈夫でしたけども、こういう東南アジア的ごちゃごちゃが苦手な方は、何を憚ること無く有名高級ホテルに泊まり、そこのオールインワンなサービスを受けた方がいいでしょう。それだって高いといえば高いですが、永遠に払えないような値段ではありませんでしたので。
さて、今振り返って思い出すと、駅前でトゥクトゥクをチャーターして街の中をあまり見なかったアユタヤは、もしかしたらこんなシェムリアップと同じ感じだったのかもしれません。アユタヤは今でこそ工業地帯として有名ですが、それだってアユタヤ遺跡観光の街としてのバックボーンがなかったらどうなっていたかわからないでしょう。その逆として、シェムリアップも今後、観光都市以外の性質を獲得できるかもしれませんが、それはきっとアンコールワット観光都市としての整備から派生したものでしょうし、つまりはアンコールワットのご利益になるのかもしれないと、私は思います。
遺跡というのは、長く残っているからこそ価値があるものですが、それは長く残すのがいかに難しいかという事でもあります。しばしば、紛争や内戦の結果、世界的な遺跡が危機に瀕しているという話を伺います。アンコール遺跡群が内戦のせいだけで崩壊したとはいえませんが、内戦が終わったからこそ修復と整備が進んでいるとは言えるでしょうし、その結果、アンコールのご利益がかなり目に見える形で現れているわけです。
もちろん、調べれば調べる程に、
「人類の貴重な遺産を守れ」
と外野が安直に言っていいものかどうか逡巡してしまう事情や経緯や状況が見つかったりするわけですが、だからといって破壊し放題でいいとはとても思えません。国際政治経済を動かし紛争地域の問題を根源から解決できれば誰もこんな苦労しちゃいないよという複雑な話なのですが、だからといってなにもしないわけにもいかないのでしょとなった時、政治家でも富豪でもない私にできるのは、破壊をやめた遺跡を整備すればちゃんとご利益があるんだと世に知れ渡り、そいう事例が拡大発展増加するよう、自ら旅行に行き、きちんとしたものにはお金を使い、そこで人々の生活や経済が回っていく一助になることなのかもなあと思いました。そして、もちろん完璧でも闇やごちゃごちゃが一切ないわけではないにしろそれなりに上手くいっている例が、アンコール遺跡群の各種ご利益になるのではないか、と思ったのでした。
ということで、アンコールワット旅行のご報告を終わります。では皆様も次の旅行へ。