【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会副会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

火神主宰 俳句大学学長 Haïku Column代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

「震度が伝わる一冊」

2022年06月16日 11時33分00秒 | 第二句集『肥後の城』
「震度が伝わる一冊」

 鑑賞を始めたら、止まらなくなる作品がある。
 一気に読んでしまう。一気に観てしまう。
 一気に聴いてしまう。

 引き込まれるような世界観がある場合のみ、
 そのような現象が起きたりするのだと思う。

 もちろん制作サイドの苦心の現れが、
 そこにはある。

 楽しんで欲しい。
 という意図がなければなかなか難しいことだ。
 
 梅雨の最中、一冊の句集がポストに落ちた。
 遠く九州から届いたそれは湿り気を帯びて、
 長旅をしてきた様子が見て取れた。

 まずは労い撫でるような気持ちで封を切った。

 装丁の重厚さに多少中身に気が重くなる。
 難解な俳句作品がどっさりなのか?
 という陰鬱さは、一句目で吹き飛んだ。

 自身の重い肩の荷を降ろした作者の安堵から、
 物語が始まるからだ。

 何気ない日常から切り離されたこの数年間。
 梅雨入りと共に不安になる気象災害。
 また頻発する地震災害。
 そして、疫病の蔓延。

 そんななかでも日常的な喪や生は営まれる現実。

 また瓦礫のなかに希望を見出しながらそこで生きる。
 そんな作者の姿が生々しく見て取れる。
 ドキュメンタリー映画を観たようだった。

 俳句を全く知らない人にも多分すんなり入る。
 物語として秀逸だからだ。

 また、俳句に捉われて創作に難を来している人には、
 あゝこうやっていいんだ。という視点をくれる。

 つまり、読後感の佳い「本」なのである。
 幼少期より本の虫であった私は、
 かなり「本」を選ぶのだが本日のヒット作!
 としてご紹介したい。

 こういった想いに駆られるのは、
 昨今なかったことなのでここにご紹介したい。

 修学旅行を思い出し、また足を運びたくもなる。

 永田満徳著「肥後の城」文學の森出版

   梅雨のなかで読んでも爽やかである。
   梅雨のなかだからこそ、かも知れない。

          一気に心に風が吹いた。

    流通はAmazonオンラインにて。

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