■突然ですが、この黒い袋。中身は何~んだと思いますか?

□「ズバリ!ゴミ」…ゴミにも色々ありますがね。
□「ミツマメ君の数週間分の洗濯物」…彼は心身共に清潔です(かな?)。
□「数年かかって集めたフィギア」…そりゃ<コップのフチ子>くらいはもってます、よ♪
□40数年前に女生徒からもらったお手紙の数々~♪
□40数年前に女生徒へ差し出して突っ返された手紙の数々…ショポン(涙)
□「オナゴにポイ!と捨てられたミツマメ君」…誰~れも袋なんかに入れないで捨ててます、よぉだ。
――などと考えたアナタ。なんて貧相な想像力でしょうか!
じゃぁ~開けてみましょうかね…。

あれっ? やはりゴミ、ゴミの山じゃないか、ですって?

いえいえ。よ~く見ると「マッチ箱」の山なのです。先日、押入れを整理していましたらね。忘れていた段ボールが見つかりまして、開けたら黒いビニール袋が現れましたの。以前から何度かこの袋は見かけていましたが、今回、思い切って床に開けてみましたら山のようなマッチ箱だった、というわけです。
千箱以上はあるでしょうか。手に取ると喫茶店や食事処、スナック・バー、ホテル等々。それに<ジャズ喫茶>のラベルが多く目につきますね。そうなんです。このマッチ箱の山、全国各地を旅した証なのか北は北海道、南は沖縄のラベルがみられます。でも、そのうち6割以上が在京中のマッチ箱。50年近く経っているモノは劣化が激しくて崩れる箱もありました。
――喫茶店で目につくのが<純喫茶>。何故、「純」かといえば、コーヒーやジュース類の提供を専用に酒類を出さない喫茶専門ということでしょうか。新宿駅近くの『滝沢』は会合で時折使いました。数年前に訪れたときウェイトレスはひっつめ髪姿でひと昔の前の制服を着ていたのにびっくり。『ルノワール』『ニュー信濃』などは大勢で打ち合わせをする時などに使いました。『ライオン』は渋谷・道玄坂のクラシック専門店です。

ジャズ喫茶のマッチ箱が多い理由わかります? それほどジャズに夢中になったというほどではないのですが、要はアパート暮らしをして夏場はクーラーどころか扇風機もない生活をしていますと、ともかく暑い。夏場は西陽が当たって部屋に居れない。そこで喫茶店に<避暑>へ行くのですが1時間が限界。そこで一杯のコーヒーで長時間いることができる場所として選んだのが、ジャズ喫茶というわけ。
でも、2~3時間ジッとして座っててごらんなさい。高音量で耳は麻痺するし身体は冷えるし。外に出ますと鳥肌が立っているのですよ。いまでもスイング・ジャズを聴くと、あの夏の日のジャズ喫茶の日々を思い出してしまいます。
そういえば最近はマッチ箱なんて見かけませんね。ましてや「マッチ」そのものを手にする機会はありません。ひとつは健康志向でタバコを吸う人が少なくなったこと、また日常、台所で用いるガスレンジも自動着火機能付きなのでマッチの登場する機会が少なくなったからでしょうか。
私達の幼い頃は、まだガスレンジが普及していなくて、もっぱら竃か七輪を使っていました。七輪や風呂釜の火熾しはもっぱら子供の役目で、いまもってバーベキューの着火は上手なものですよ。東北では10月も下旬となると夜は冷え込みます。凍てついた朝、ストーブに松毬を置いて薪を乗せマッチを擦る。やがて、ゆらめきながら躊躇する煙が徐々に自己を主張するようになって、そろっとお目覚め。煙突に吸い込まれるように炎が伸びて部屋全体にゴーゴーと音を響かせるようになると、冬を身近に感じるようになります――。
マッチ箱が消えた理由のもうひとつは、喫茶店が「コーヒーショップ」となってチェーン展開するコーヒー店に大きく様変わりしたからでしょう。街角には『スターバックス』や『ドトール』が並びセルフサービスで飲食物を提供するようになりました。ここにコースターや店の名前を織り込んだティシュなどは置かれていますが、マッチ箱は見当たりません。
確かに、これらチェーン展開するコーヒーショップは全国画一で、地方都市でも東京でも、ちょっと立ち寄るには統一したサービスが受けられ便利ではありますが、何か物足りない。喫茶店では女性が注文を取りにきて馴染になると、その女性と仲良くなったりしてたのですが、要は無駄とも思えた会話がない。人と人の交流がない。でも、最近の時流として余計な人間関係がない方がいいのかもしれないね。
――下北沢で途中下車。よく女生徒と立ち寄ったのが『マノン』や『ニューゴールデン』。『マサコ』は下北沢の代名詞といわれるジャズ喫茶。69年頃から当時付き合っていた仲間と頻繁に入り浸っていました。10年ほど前にフラリと入店しましたら40数年前と変わらぬ店内の様子に驚き。でも、数年前に閉店しています。

以前は、タバコを吸う人はシガーケースにタバコを入れ替えて、吸う際にはおもむろにケースから取りだし、タバコをケースで軽く叩いて口元に運ぶ…そんな一連の動作がエレガントで大人の雰囲気さえ感じたものです。
また、両切りのピースを納めた缶、通称「ピー缶」を手にボサボサ頭に朴歯を履いて歩く男性を見かけると「大人っぽいなぁ~」と憧れの眼差しで見つめたものです。タバコを吸うという行為が「タバコを嗜む」というひとつの作法に現れている、といった感触がありました。確かに、マッチ箱からおもむろにマッチ棒を取りだし点火する。それはタバコとマッチの相性、一体性として<絵>になっていたのでしょう。
マッチといえば、米国映画では男性がタバコを咥え革靴の踵のところでマッチを擦って、手許にもっていって火をつける動作がキザで様になっていました。時折、米軍兵士が壁にマッチを当て点火してタバコを吸う…。でも、このマッチは日本では見かけません。通常のマッチとは種類が異なるのでしょう。
――新宿の『追分だんご』。下級生の女生徒と下校時、何度か行きました。いつだったかな。女生徒と二人で<蜜豆セット>を前にお話ししていたら、隣の席では四名の女子高校生が夢中になってお喋りしていました。ボクの相方の女生徒が会話の流れのなかで突然、「…ゆうべ、悶えちゃった」と話し出したので、ボクはうろたえて何と反応してよいものか一瞬、間が空きました。すると、隣の女子高校生たちの会話がピタッと止まったのです。
その突然、時間の止まった感触。ボクと相方の女生徒は互いに驚く表情と可笑しい表情が入り混じったまま見つめ合うかたちとなりました。それは、ほんの一瞬だったようであり数秒続いた感じでもあったのですが、隣の女子高校生たちの会話が再開されるとともに、相方の女生徒と一緒に大きく息を吐き出したものです。「彼女らは何気ないようで、ボクらの会話に耳そばたてていたのだ…」とね。何しろボクと彼女は高校の制服を着ていましたからね。

――『千疋屋総本店』は、学友がバイトしていたので覗きに行ったことがあります。
代々木高校近くの代々木上原商店街では『アベニュー』や『コルシカ』を使っていたのですが、地元?はあまり使わず、どうしても新宿や渋谷を利用していましたね。新宿寄りの代々木八幡駅近くの喫茶店は下級生の女生徒がバイトしていたので、図書館の帰りに寄っていました。

「最近のオナゴは耐火資材が進化したのか、ちっとも燃え上がらないなぁ…」と、お嘆きのアナタ。「キミのハートに火を点しちゃおう!」な~んて思ってマッチの火で対応しても彼女はちっとも燃え上がりません。それじゃ着火器やバーナーを用いるか。かえって耐火材を重ねて彼女は燃え上がらない。
ゴールドカードやプラチナカードをチラつかせても、かえって軽蔑されるだけ。そんなとき、蝋燭にマッチでゆっくり火を点し炎の揺らめきを互いに見つめましょう。すると、何故か何故か「ボクのハートに火が点いちゃったぁあ~」となります。
そして「ボクのハートの火を消して下さい!」と訴えます。彼女は「勝手に燃えてろ…」と去って行きます。そんなオナゴは悪いこと言わない。別れなさい。
⇒<第3章>へ続く。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます