My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

$100Kグランフィナーレで今学期も終了

2009-05-15 04:01:36 | MBA: クラブ活動・講演会

本日で今学期の授業が全て終了。(試験は残ってるが)
そして今
学期の締めくくりにふさわしい、MITのビジネスコンテスト$100Kのフィナーレも漸く終わった。

私は今回はあまり音頭を取れなかったのだが、最後までOrganizerとしての責任は果たすべくお仕事してきました。

MITで一番大きなホールである、Kresge Audotrium。
コンテスト最後のショーはここで行われる。

と、Kresgeの前の芝生に立てられた巨大なテント。
これは、フィナーレの前に行われるレセプションパーティの開場。
ファイナリストのチームと我々のスポンサー企業、その他アントレ関係のMITの教授やアルムナイなどが招待されて、フリードリンク&フリーフードと共にネットワーキングをするためのパーティ。

残念ながら一般の招待客は入れない。
$100KのOrganizerも準備で忙しいので、せっかくOrganizerをやってるのにパーティに参加できないのは残念。

中ではOrganizerがせわしなく働いている。

そして下の写真はAuditoriumのロビーに設置された受付。
スポンサーから送られてきた大量のグッズを並べている。
起業に役立つ法律用語やIPの取り方をまとめたブックレットや、バッグ、帽子、ペン、チョコレートなど。

ただでもらえるものなので、大体イベントが終わる頃にはいつもなくなる。

$100Kは今年で20周年なのだが、そのロゴも後ろに美しく映し出されている。
こういう準備は今回は、Sloanに来る前にイベントコーディネータをやっていたJoshが全てオーガナイズしてくれた。
やっぱりプロはすごいと思う。

ロビーでは、セミファイナリストたちがポスターや試作品を持ってきて説明するポスターセッションが開かれている。
まだ準備中の段階なので人がそんなに集まってないが、開始直前は歩けないほど人が集まっていた。

ロビーの外には特別展示で、いつだかの$100Kのファイナリストのチームが作った会社の製品で、羽を折りたためる自家用コンパクトプロペラ機のデモが行われた。
羽を折りたたむと、自動車みたいになってちょっとかわいい。

今回は、ボランティアで6人くらいの私の友人が来てドアコントロールを手伝ってくれた。
ものすごい混雑ぶりだったので、彼らがいなければとてもじゃないけどコントロールできなかったと思う。
感謝。

7時半。ショーの開始だ。
まず最初は、マサチューセッツ州のEconomics development庁(経済促進庁とも訳すんだろうか)のトップによる挨拶。
こういう$100Kのような試みが、如何にマサチューセッツ州の経済発展に大切かを説く、良くある政治家のご挨拶だった。

そして次が今回のメインイベントのひとつである、元MIT教授でiRobotのFounderの一人でもある、Rodney Brooks教授による講演。
iRobot って、あの掃除機ロボットのルンバを出してる会社ですよ。
床でくるくる回りながら勝手にお掃除してくれて、人と会話まで出来る可愛いロボットで、6万円という高価に関わらず、日本でも爆発的なヒットを記録したという。

Rodney Brooksは、もともとはMITのロボット工学や人工知能の研究所のヘッドで、NASAの月面調査ロボットなどを作っていたが、大学からスピンオフしてiRobotを起業。
そんなわけで、大学からの起業の経験について聞けるのを楽しみにしていた。

教授が壇上に立つと、スクリーンに彼の代表作のロボット「Domo」の写真と、「ドモアリガトーMr.ロボット」の曲がかかってくる。
この辺り、またも我々のイベントコーディネータのJoshのアイディアなのだが、とにかくよくコーディネートされてるなあ、と感心する。

「Domo」の名前の由来は、本当にこの「ドモアリガトー」の曲から取ったのだとか。
私も昨日のリハーサルでJoshからその話を聞いて、日本人としてはちょっと面白いなあと思った次第。
Amandaも「この曲があるから、アメリカ人はみんな「ドモアリガトー」という日本語だけはしゃべれるんだ」と言っていた。
なるほど。

それはともかく、講演のほうは本当に面白かった。

Brooks教授はもともとオーストラリア生まれ。
小さいときから物を作るのが好きで、高校生の時にはトランジスタを大量につなげて、コンピュータを自分で作ってみたりしていたという。
スタートレックや2001年宇宙の旅に触発されて、将来は絶対にロボットを作りたい。
ロボットを作るなら、やっぱり世界最高の科学技術の大学に行きたい。
絶対にMITに行きたい。

そう思って、MITにアプライする高校生のBrooks教授だったが、敢え無くリジェクトされる。
しかし、

教授はスタンフォード大学に何とか引っかかって、渡米することにした。
当時のスタンフォード大学は今ほどは有名ではなかったという。
行ってみて、余りの何も無さに驚いたと言う。

ここでゼロからロボット作りを立ち上げ、機会を見つけてはMITの研究チームとの関係を築く。
そのままスタンフォードの大学院に進学するが、途中で何度もMITにアプライ。
そして、3度目にして漸くMITへの鍵を手にする。
Opportunity(機会)を見つけたら、とにかくPersistence(執拗さ)が大切だと強調。

その後、MITのロボット工学の教授として、さまざまなロボットを開発。
前述の通り、NASAとの共同研究で、月面や火星に下りて調査を行うようなロボットを開発していた。
しかし、時代も変わり、NASAも余りお金がもらえなくなって、プロジェクトの進捗が遅くなり、だんだんNASAとの共同研究がつまらなくなってくる教授。
ついに、自分で月面探査ロボットを作る会社を立ち上げて、打ち上げることにした。
これがiRobotの前身となった会社。

問題は当時の民間の会社で月面までロケットを飛ばすことに成功した会社がどこにもなかったこと。
結局、いくつものロボットの試作品を作ったものの、月面まで行くことはなく、赤字がたまるばかりだった。
仕方ないのでロボット技術を使って、消費者に売れるようなものをいくつか開発していたが、その中で大ヒットしたのが、掃除機ロボット・ルンバだったというわけ。
ルンバの成功後、iRobotは月面ロボット事業からは撤退し、家電製品の会社としてIPOも果たした。

講演の最後で、教授は「自分がコンサルタントだったらこんなフレームワークを作る」とかいって、

Passion
Rejection
Opportunity
Persistence

と書かれたスライドを出した。
「まずPassion(情熱)を持つこと。そしてどんなにRejectされても、Opportunity(機会)を見つけたら、執拗に(Persisitence)チャレンジすること。
私はこれをPROPと呼んでるが、これが起業に成功するには一番大事。」

フレームワーク的にまとめたのは彼のギャグだと思うが、最後まで面白かった。

その後は、ファイナリストの6チームがプレゼンテーション。
Audience Choiceで1チームが選ばれた後、Grand Winnerの発表だ。

Grand Winnerに選ばれたのは、昨日のリハでも圧倒的な商品力・プレゼン力を誇っていたチーム、Kspliceだった。

このチームは、MITの大学院生5人でやっているチーム。
システムの再起動なしにソフトウェアのリヴァイズやインストールが出来る技術を持っている、ということで、それを商品化するのだという。

優勝者に送られる$100Kのチェック。(実は私がデザイン&印刷しました)

これをもって今年の$100Kも終了。
「あー、これで終わったんだなー。としばしの感慨。
後片付けをして帰る。

実は私自身は、このイベントを以って$100KのOrganizerからは引退しようと思っていた。

ひとつは、ここにこれ以上いても、使う時間に比べて大きく学べることは少ないな、と思ったから。
去年の秋から関わってきて、時間もたくさん使ったし、色んな経験をして、悩んだり、苦しんだりもしてきたのは確かだ。
でも、そのおかげで、文化が違う人たちと働くときの限界、自分の限界、そしてどうやって克服すればよいのか、と言うのが分かってきて、最近はチームでもうまく働けていた。
それからMITの中でもイベントの組み方なども分かってきて、もう、何を言われても、一人で何でも企画できる。
そうなってくると、何と言うか、ここにこれ以上いても学べるものはマージナルだなあ、と思ったのだ。

もうひとつは、やっているうちにイノベーションとアントレは違うものであるということがよーく見えてきて、
そして自分が興味があるのはあくまでイノベーションであって、アントレではない、ということがよく分かってきた。

例えば、イノベーションとアントレでは関わっている人の種類が全然違う。
この仕事をやっていて、ボストンのアントレのコミュニティにいる色んな人-我々のスポンサーである、ボストンベースのVCやローファーム、コンサルタント、$100Kのアルムナイなど-に会えた。
彼らはとてもエネルギッシュで、常にOpportunityを探している。
新しい、面白い技術やアイディアはないか、そしてそれでお金が稼げるか、とアクティブに考えている人たちが多く、それはそれでとても刺激を受けた。

でも今学期になって、イノベーション論をやっているUtterback先生や、Christensen教授に出会い、
同じくイノベーションに興味のあるチームメンバーに恵まれたりして、
自分が話していて、つぎつぎと面白いアイディアが沸いてきて、活動的になれるのは、こっちのコミュニティだな、ということに気がついた。

そしてもう一度自分がMBAに来た目的に立ち返ったとき、イノベーションについて自分が前から抱えている問題意識をクリアにし、それに答えを出すこと。
それには、今までのその辺りの研究について勉強し、自分でも調査を行って、論文も2,3本は書くことになるだろう。
それに残された時間は、あと1年しかないのだ。
唯一の日本人として$100Kのようなものに携わっていく価値はあるとは思うが、もうその時間はないな、と思った。

そんなわけで、私にとって最後の$100Kのイベントになったので、感慨もひとしおだった。

いつも応援してくださってありがとうございます。これからもMBA生活&研究のほうを頑張っていきたいのでよろしくお願いします。



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2 Comments

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Brooks先生がんばれ! (マサル)
2009-05-20 11:14:16
はじめまして。

Brooks先生の記事があったのでコメントします。
僕は現在ロボット工学エンジニアとしてアメリカ国内で働いていますが、以前にBrooks先生のラボで彼と会って話しをしたことがあります。(そのときは彼の書いた本にサインをもらいました。(笑))Domoも近くで実際に動いているところも見たことがありますが、やっぱり
MITのAI関係の技術は超一流校のひとつと感じています。
MITをやめてからはiRobot以外にもまたロボットの会社を始めると聞きました。これから会う機会はほとんどないと思うのでちょっと悲しいですが、がんばってほしいと思います。

MITでMBA大変だとは思いますが、どうぞがんばってください!
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ロボット工学 (Lilac)
2009-05-23 01:07:26
>マサル様

コメントありがとうございます。
風邪ひいててお返事遅れました・・・

Brooks教授の講演は本当にすごかったです。
あれだけの仕事をした人だからなのか、技術だけじゃなく、本当に人を魅了するものを感じました。

マサルさんは、日本人エンジニアとして米国で働いていらっしゃるんですね。
そうしたいと思っている人はたくさんいると思いますが、なかなかできることではないと思います。
アメリカで働くっていうのが、どういうものなのか、一度伺ってみたいです。
これからも頑張ってください!
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