これは後半、ガンに侵され余命いくばくも無い元警察官の男が出てくるところから、だんぜん良くなったという気がします。そこまでは普通?!OUTにもありましたが、男と女が相手に自分に似た要因を見つけて、奇妙な感覚と共に魅かれていく。しかしその先にあるのは、悲しい結末。していることは、敵対しての争いであったり、亡くした子供の捜索であったりしますが、これは紛れもないひとつの恋の形ではないかと思うわけです。死とか血とか、そういったドロドロした中での、甘い言葉を排除したひとつの極限の愛?さらに、その過程で自分のアイデンティを確認しようとする。で、ビデオがあったので借りましたが、小説を読んだ後では見るに耐えなかったです。これは、小説と時間に制限のある映像化との宿命なのかもしれませんけど。天海祐希の魅力を持ってしても、駄目でした。残念。
OUTがおもしろかったので読んだのですが、同様にとにかく長くて、話が重たく暗い・・・。桐野さんの作品は何冊も読んでいないのでなんですが、この長さと暗さが作品のひとつの特徴なのではないかと思いました。どの登場人物の視点に立って語るかで、同じ時期の事実関係やその奥にある感情が、正反対の顔を見せる。最後まで読み通しても、結局何が事実か分からないということで終わります。誰が何したというのは現実ではひとつしかありえないでしょうが、解釈や想いはこの小説のように各人各様のものがあるというのが本当のところでしょう。その後短編集も読みましたが、作品によってはハッとする佳作もありましたが、私としてはこういう重く暗い長編をまた読んでみたいと思いました(好みの問題でしょうが)。ただ、結構消耗しますね(笑)。
重松作品も色々読んできましたが、これはダントツですね。中学生が主人公で、同級生が連続通り魔犯だったという筋なのですが、この小説のポイントはそこにはありません。家族や友達や女の子とのかかわりという、いわばありふれた内容に対しての、主人公の言動や心理描写がすばらしい。その位の男の子を持つ親には是非読んで欲しいですね。何か役に立つとかというのではありませんが、周りにも本人にもなんともしがたい時期なのだということが、実感として分かると思います。両親がちょっと理解があり過ぎ!かなとも思いますが、うまくやってる家庭の一例?
このところはまっている、重松清の本です。定年退職した主人公の家庭とそのニュータウンが舞台となったお話です。こまかいところでは、?と思うことも無きにしもあらずですが、上手にまとめてあります。さすがです。で、筋とは直接かんけいないのですが、家を出た娘について夫婦で話す場面で、子供の頃娘が父親が帰ってくる音を聞いて布団の中でほっとするというのがあります。多分、小学生低学年かもう少し小さい頃の話なのでしょう、両親が死んだらどうしようとかいろいろと思うからとありました。が、私には全く逆の思い出があります。仕事から帰って来た父の車の音を聞いて、あわてて寝た振りをしていました。とにかく顔を合わせたくなかった、話をしたくなかったのです。小学生高学年位でしょうか。ずいぶん違うなぁと思いました。複雑な思い出です。哀しくもあり、申し訳なくもあり、仕方なかったとも思い・・・です。この本は、息子から父への物語とも言われます。子であり、父でもある私にとって、細部に感ずるところの多い一冊でした。
NHKスペシャルをベースに造られた本だそうで、インタビューの本です。利根川進、カルロス ゴーンなどおもしろいのですが、猪口邦子の軍縮の話は、とても良い勉強になりました。軍縮とか環境破壊とか、そういったことに関心を持つだけでもいい、そういうメディアを消費することでそのメディアが生き延びる、それだけでも違う、というのは、とても参考になりました。昔この人をTVで見いて、名前が印象的で覚えていたのですが、今は国連等で活躍されているそうなのですが、なかなか興味を持っていないと、国連なんて、という感じで情報が入ってこない。これを機会に、HPを持っておられるようなので、気にしていきたいと思いました。あと、この本には村上龍の友達の中田英寿のインタビューも載っていて、まだ読んでないのですが、楽しみです。